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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど


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鬼さん月へ行く -Le diable va à Luna- ・7

「全く、余計なことしてくれるなぁ、マリアリーゼ…」


「うるせぇっ、あたしは無責任は困るってことを口じゃなくて実力で語らせてもらっただけだよっ」


「黒マリに同意。まぁ、これで1万年は頑張ってもらえるんじゃないかしら…」


「ま、うちらと同じでM-IKLAシリーズと共通の本体に繋がせてもらいましたよって、少々のことではくたばりまへんやろ…ふぉほほほほほ」


「黒エマが無茶するから…でも、この措置は妥当と思いますよ、ミスター・サン=ジェルマン…」


「インマヌエル…僕も一応、君たちの生みの親に限りなく近いはずなんだが…」


「生みの親より育ての親と申しましてな」


「それに私たちが聖院や痴女皇国に派遣されたのはM-IKLA-21扱いとなったマリア姉さんやベラ子おばさまのためでもありますから…」


うぐぐと唸って天を仰ぐサン=ジェルマン氏ですが、どうやら勝負はあったようですね。


「しかし、えまこもせやけど、まりやもむちゃをしよるのぅ…婢女(じーな)のむすめなのがようわかるわ」


「マリアリーゼ…あなた、クレーゼの娘でもありますからね…あの子も大概、口より先に手を出す部類ですから…」


ええと、手術というのですか。


何やら何かを終えて、部屋に戻って来られたのはサン=ジェルマン氏と二人のマリアさんとエマニエルさん、そして聖院初代様と比丘尼国(うち)の歩く迷惑酒呑みおばはんです。


「もっとゆうたれ、茨木っ」


「いばらき…わしがこわいことないんか…」


「そりゃ、怖いか怖くないかと言えば怖いに決まってます。しかし、そこのサン=ジェルマン氏と同じで、強いからと言って好き勝手にできませんよね?」


と、にっこり微笑むわたくし、茨木童子。


この私の発言で、心底嫌そうな顔をなさってるサン=ジェルマン氏ですが、敢えて無視しておきます。


「確かにプラウファーネ…いや、茨木一等権宮司の言う通りだ。私やマイレーネとて、その力を誇示して勝手に暴れ回れぬ立場だしな…」


「おかみ様、申し訳ございませんが、御神酒が時折行方不明になる件、阿波内侍殿が痴女宮に滞在しておられた時期から発生しておりまして、その苦情も本宮厚労局に入っておった件、私のいも…いえ、二代目様からも耳に入れられております」


「ま、おかげで比丘尼国の酒については本宮でも入手が容易になったのです。おかみ様、ここは笑って流して差し上げましょう」


と、アレーゼ様とマイレーネ様から言われては、さしものおかみ様とて黙るしかなかったようです。


ちなみにアレーゼ様の大江山滞在時ですけどね、おかみ様はおろか、うちの武将連中や化外の大物たちまでもが月に1度は講話を拝聴してたんです…。


(ばらすなやといいたいが…あれーぜにはいろいろせわになったしな…)


ええ、強い弱い以前に、話を聞くしかない状況を作られたんですよ、アレーゼ様ご自身が。


でまぁ、おかみ様を横にして色々と方々の事情や比丘尼国への支援のもろもろを取り付けた件などの報告会めいたことを中心に、比丘尼国でもこうしてはどうかなどなどのお話を伺うこと、しきり。


滞在は一年ほどでしたか…しかし、比丘尼国、特に大江山の内部のことどもについて色々と風通しをよくして頂いたというのは姉の弁。


ともかくも、不平不満たらたらでしたが、ある程度のことは何とかなったようですね。


で、どのように話がまとまったのか…今はまだ、伏せておくそうです。


「あらぬ混乱を防ぐためにも、情報漏洩については厳しくせざるを得ないんだよね…」


「でさ、せっかくプラウファーネさんや外道さんが来てるんだし、工場見学くらいはいいんじゃない?」


とか、聖院の方のマリアさんがしれっと申されます。


「僕としちゃ、真剣に施設内に君たちを入れたくないんだけどね…」


「見返りは払ってるだろ…」


どうやら、それなりの取引がサン=ジェルマン氏と痴女皇国、そして聖院の間には存在するようですね…。


「まぁ、マリアリーゼたちはともかくとして、比丘尼国の面々には信用取引の証明ってことで案内にはやぶさかじゃないけどね…」


そんなわけで、私らの体に合わせた「ここ用の服装」に着替えるように要請されますが。


さて、ここで問題があります。


アレーゼ様もそうですけど、マイレーネ様はあの伝説の「脱ぎ殺し」の人です。


聖院はもちろん、痴女皇国で唯一と言っていい「長袖+腰巻き姿」で、肌を露わにしておられるのが顔か手首くらいというお方ですけど、その体は大兵肥満というより、筋骨隆々なのが服の上からでもわかるのです。


その、恐ろしい噂のお方の素肌、さすがの私も拝見したことはありませんよ。


「マリア、私はまだしもマイレーネはなんとかならないか…」


「ああ、おばさま…ご心配なく、対策は今からさせてもらいますよ…エマ子、悪いけどここの見学者用気密服、ちょっとコピって全員分、聖環の更衣機能に載せて着せ替え処理頼む」


(へいへい、で、殺菌消毒処理もですな…)


あら。


なんと、全員がお揃いの服に変わってしまいます。


「ええとね、これ着たことない人…ブーツの爪先に力入れるとカチっと音がして何かのスイッチが入るような感触あるよね、これ覚えておいてね」


「無重力活動に慣れてない人は床への吸着スイッチを入れて歩いてな…それ入れたら足運びに少し抵抗があるけど、うかつに浮くとまずい場所に行くからな…」


どうも、ジーナさんとマリアさんはこの長靴、履いたことがあるようです。


そして、卓子の上に置かれた、兜。


「これを被ると音声での会話は出来なくなるから…心話で話をするように」


「呼吸系とか無線通信機のセットはいいわよね」


「まぁ、服の生命維持機能がワーニング発生しそうだったら、その時はエマ子に頼もう」


「君ら…本来ならこの服、ヘルメット着用後に設定がいるんだぞ…」


言いながら、自分も私たちと同じ格好になられるサン=ジェルマン氏ですが…いえ、服のところどころに巻かれた帯の色が私たちと違うのです。


そして、服の色も、微妙に。


「作業者と役職者や査察者は、ヘルメットや識別帯の色ですぐわかるようにわざと違った色にしてるんだよ」


でまぁ、エマニエルさんやマリアさん、ジーナさんたちが手分けして、不慣れな方々に兜を被せていきます。


『あーあー、マイクテストマイクテスト』


『で、この服のお腹のところについた巻き取りリールから引き出した安全紐のうち左側を、前の人の腰のベルト通しにつないでください』


慣れておられますね…マリアさんたち。


で、私の前に姉が立たされまして、その姉の背中側の腰のところに、私のお腹の部分のからくりから伸ばされた紐が繋げられます。


『この順番通りに歩くこと。で、船から出たら、廊下でガイドウェイへの安全索の繋ぎ方を教えるからなー』


『ここの工場、これがあるんだよなぁ…』


『宇宙未体験の人もいるからしゃーないわよ…』


で、いきなり私たちは、何隻もの船らしきが繋がれている広大な場所に移されます。


船らしき、と申し上げたのは、私の知っている船とはまた違った形や色だったからです。


その時、兜の中にうるさい警報が響き渡ります。


『A埠頭常時気密区画外に滞在中の方へ出港連絡です。まもなく出港艦の気閘(きこう)通過作業が開始されます。気密区画外、A埠頭並びに接続船舶気閘(えあろっく)付近での港湾外作業者は出港船舶の港内航路や係留アームの作動範囲外へ退避してください』


そして、この大きな大きな明るい洞窟のあちこちで、赤や黄色の光が点滅したり回り始めるのです。


『ええと、とりあえずそこの壁際の銀色の棒にこの索を繋いでな』


と、これまたジーナさんマリアさんエマニエルさんが、私たちのお腹の部分から引っ張り出した紐を壁から張り出した棒に繋いでしまいます。


『これは簡易セーフティワイヤー…命綱やから。警報が止まって赤や黄色のコーションライトが消えるまでは外さんといてな』


『ええと、出港するのんどれや…あー、改装工事の終わった(サイン・オブ・トロピ)(カル・ゾディアック・)(クラス)かいな』


『今から引き渡し前の試験航海に入るのさ。ほら、マリアリーゼが回して来た連邦宇宙軍向けのICD推進機搭載改修アップデートプログラムの仕事の分だよ』


で、人の列の一番前のサン=ジェルマン氏らしい人影が、左手を挙げて指差す方向には、灰色の船らしきがおります。


(あれ全長450mやからテンプレス級より更にでかいんよな…紡錘形状やからあんまりパッとせんけど)


(で、前方のエアロックモジュールから出て来た拘束アームが船体を掴んで穴の中に引っ張り込むんよ)


『CAUTION in Dock A-04, Departure. CAUTION in Dock A-04, Departure』

(ドックA-04より出港注意、ドックA-04より出港注意)


『All personnel working should review their safety equipment.All personnel working should review their safety equipment.』

(全作業員に告ぐ、安全装備を再確認せよ、安全装備を再確認せよ)


見ておりますと、テンプレスの1つ空けて横にいたその船に、何やら巨大な腕が掴みかかって行ったかと思うと、警告らしい赤い光をちかちかさせながら、船を穴の中に突っ込んでしまいます。


ただ…その、穴のふたが開いた際に、吸われるか吐くかの風の流れが起きたようで、私たちの体も揺すられ飛ばされそうになるのです。


(物の重さ…ものを地面に繋ぎ止める力が地球の1/50以下になるんだよ。だから飛ばされやすくなるのさ)


(慣れてたら何かに掴まるとかできるんだけどね…)


で、その命綱らしきを繋いだまま、前の姉について、私は歩き始めます。


『壁の移動支援用のパーソナルムービングドーリーは動かしてくれへんのかっ』


『かーさん…初心者に何の説明もなしにあれ使わせたら逆に事故のもとだって…』


『とりあえず初心者向けの追随状態だからね…』


よく見れば、私たちの腰から壁に伸びている方の命綱、根本が動いております。


『で、こっからは一旦、命綱を外すからなー』


『はいはい、外して行きますよー』


で、案内されたのは、壁に開いた穴の中の小部屋。


そこで命綱を外され、歩いて先に進みま…うわとととととっ。


あるところからは、爪先に力を込めなくとも靴底、とりもちのように床に貼り付くのです。


さっきとは別の意味で歩きにくいと思ったのですが、すぐに何やら、頑丈そうな扉の前に着いてしまいます。


で、ジーナさんたちがこの手のしろものをよく知っておられるようで、痴女皇国の方のジーナさん、サン=ジェルマン氏が開いたらしいその扉の向こうに、一緒に入ってしまわれます。


『ここからは一人づつ穴をくぐるからなー』


『出た先で痴女宮のうちが待ってるから、もっかい命綱と迷子防止索付け直しやでー』


めんどくさいものですね…。


『おっさん、この先は組み立て棟やったよな…改装艦だけやなしに…』


『そうだよ。ジーナ・高木…君たちにも縁の深かったユニオンキャリーの発注の、船団用旅客船や貨物船も一部はここで生産してるからね…週刊駆逐艦とはいかないけど、月刊航空母艦くらいのペースでアークロイヤル級サイズの新造船を送り出すことは送り出せるんだよ、ここ』

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