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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど


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鬼さん月へ行く -Le diable va à Luna- ・3

で。


結局は、聖院の方のテンプレス3世とかいう船のすぐ隣に入ることが出来たようです、私の乗っているテンプレスという船。


ただ…鬼の私もおるということで、サン=ジェルマンなる人物がこちら…聖院のテンプレス3世に出向いて話をするということになりました。


ただ…ですね。


「おいっ何やねんこれ…聖院の方のマリア、どんな仕様で建造、頼んだんや…」


「あら痴女皇国のかーさん…ヘンリーお祖父様を乗せるかも知れないから上級船室をお願いしますって頼んだだけよ…」


「あー…そっちはまだ、ワーズワースの爺さん存命中やったな…」


ええと、えらく贅沢そうな部屋に通されたのですよ、私たち。


そして、こういう大きな船では船頭のみならず、軍隊の将も乗せることがあるので、そのための部屋を用意しておくのが普通であるとジーナさんから聞かされます。


更に、その大将や偉いさん向けの部屋には軍議を行うための部屋も併設されておりまして、聖院側の面子と向かい合わせに座ることになりました。


で、聖院というからには、聖院の方の世にも私・茨木童子がいるはずなんですけどね。


…向こうの私に連絡を取って聞いたところ、ですね。


(姉は大江、聖院本宮の下の責任者が私の状態よ…その状況で、月まで行けると思う?)


(はいはいわかりました。私のおつむの中を見せるようにしておきますっ)


そんな訳で、我々の前に現れたのは…どちらかと言えば、印象に残らない平々凡々とした老人でもなく若者でもないといった風体の紅毛人でした。


もっとも、痴女種女官と同じようなもので、見た目を変えられるらしいんですけどね。


「で、痴女皇国のマリアリーゼが血相変えてる件なんだけどさ、聖院の方のマリアリーゼ、そっちに兆候は出てんの?」


と、挨拶抜きに切り出す、そのサン=ジェルマンなる御仁。


「しほちゃん、この数年のこっちの地球の気温観測データ推移、出してあげて」


「へいへい、じゃこれ、見てくださいね…」


と、我々から見て左手側の壁に、青い球が写されます。


むろん、私たちが普段暮らしておる、地球という名で聖院と痴女皇国の幹部には知られておる星で間違いはないでしょう。


「一番に注目して欲しいのは、まず北極の氷の厚みとグリーンランドの氷河の状態、それから南極大陸周辺環流とフンボルト海流の水温ですかね…で、痴女皇国の側の地球と比較してみます。アンジェ、お願い」


で、紅毛人の面相の聖院女官…吉村アンジェリーナさんが、痴女皇国から提供を受けたらしい私たちの側の地球の絵を映します。


「問題は極冠部の画像映像だけでなく、南極と北極を中心とした温度状況にあります…」


「ええとデースね、私タチ聖院は痴女皇国セカイのおおむね5年前の時間を進んでいる状態と見られてマシタ。しかし、しほこサンの示した聖院の方のアースの数値と、痴女皇国側のアースの数値を見比べて頂きたいのデース…」


(プラウファーネさんにわかりやすくご説明しておきます。ほぼ…同じ状態なのです…そして、じわじわと氷が増えているのが観測されているんですよ)


(聖院のマリアさん…氷が増えているというのは…)


(それだけ冷えてるってことなのよ、地球…そして、その冷え具合は…普通に冬になったから冷えたとかいう訳でもないのよね…)


「しかし、気温低下がそちらで問題になっていないのはどういうことかな、痴女皇国のマリア」


「聖院の父さん…ほら、うち、基幹農業にチン◯ネックスを投入してるでしょ、あの肥料を使うと少々の異常気象は問題にならないくらい作付面積は確保できるし、今、中原龍皇国と天竺以外のあらかたは痴女皇国が制圧してるから、住んでる人には気温があまり気にならない状況なんだよね…」


「聖院でも投入する話になってたけどさ、あれを聖院側の地球(こちら)でも使うとなると、生産施設も他も含めて痴女皇国に近い政策を採用せざるを得ない状況になっちゃうのよねぇ…」


渋い顔をしているのは、聖院のマリアさんです。


で、そっちのマリアさんとこっちのマリアさんの見た目の違いですが、聖院のマリアさんは白を基調とした金衣服…ただし、昔と違って周りに普通の人が立てないほど熱くなるわけではありませんから、それこそ三代目様以降の金衣の姿を存じている私から申しますと、ずいぶんと大人しい服になったものだという印象です。


ただ…お尻のところはふんどし状ですから、当たり前のように剥き出しですよ。


(まぁ、この場で聖院側でもお尻剥き出しじゃないのはマイレーネさんとアレーゼおばさまだけだし…)


そして重要なところですけど、痴女皇国のマリアさん、普段の通りで日の本の地味なおなご風なのです。


つまり、目の色も髪の毛も、日の本の人間そのもの。


しかし、聖院の方のマリアさんは、紅毛人らしく金髪で青い目なのです。


(これでも一応擬態なのよ…私も、痴女皇国の私と同じでさ、ある時までは本当の姿を隠して暮らしてるから…)


だ、そうです。


まぁ、どっちのマリアさんの父母もよく存じてますから、生まれてきた娘さんがどう育つかはだいたい、想像つきます。


「で、サン=ジェルマンさん。もう一つ…やばい話がないか」


こう切り出したのは、聖院の方のジーナさんです。


そして、痴女皇国の方のジーナさんも。


「連邦世界の地球は聖院も痴女皇国も同じ時間軸のはずやったかな。とにかく、一時の温暖化はどこへやらで南極も北極圏も、氷河や氷山の成長が確認されているんやわ」


「これ、そっちの会社の存続にも一応は関わるやろ。なんせ、商売の相手先の連邦政府が統治してる地球も冷え込んでる傾向を示してるわけやからな…痴女皇国側と連動してる方やと、チン◯ネックスを一部で使うとるから今すぐの食糧危機にはなってへんけどな…」


で、このジーナさんたちの質問ですが、私にも趣旨はわかります。


このサン=ジェルマンという人物も、鬼とは別の意味で人類とは一蓮托生ではないのか。


人々を見捨てて、自分だけ冷え込む世界から逃げ出すつもりなのか。


本当に、ジーナさんたちが聞きたいのはそこでしょう。


しかし、サン=ジェルマン氏の回答、その…飄然としていると言えば聞こえは良いのですが、どことなく人を食ったような風貌や振る舞いと同等に、私たちを唖然とさせるか、驚かせるものだったのです…。


「ま、あなた方の懸念はわかるよ。ただ…気付いてるかな。このルナテックスの工場だけじゃなくてさ、連邦宇宙軍の月面基地についても、痴女皇国のマリアリーゼとは違う方法で能力向上を果たした人類に置き換えていってるのに…」

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