鬼さんパリへ行く -Le diable va à Paris- ・4
さて、場面は移りまして、南欧行政局といすぱにあの都であるマドリードの王宮地下にある停車場。
ピオ皇子駅とかいう名前だそうですが、穴の中にあるのはイスパニアの王族や要人のための乗降場であるとお伺いしております。
比丘尼国の時の刻みで申しますと昼五つと四つの間…辰と巳の刻の境となります時にこの停車場に降り立ったわたくしども、そのまま昇降機で謁見の間が存在する階に連れて来られておりました。
で、南欧行政局宛の着任状と巴里への赴任願い状の奉呈や授与に続いて、私、茨木童子への個人的な贈り物としてヴァロワ王家の紋章が入った飾り物、イザベル陛下から頂ける栄誉に預かりまして。
つまりは、このマドリードで南欧行政局が日本行政局から派遣された要人、南欧行政局の傘下となるフランス支部のパリへ着任させるための、あらかたの主要な儀式を終えてしまったという次第なのです。
その後は王宮の大食堂に…と思いきや、王賓庭園なる王家の客を歓待する触れ込みの庭にて、炊き込み飯の大鍋を囲んだ宴となったのです…。
「ほほほほほ、この後のパリでの歓待、どうせテレーズのことですからお抱えの料理人どもが趣向を凝らすに決まっておりましょう。違いますか、フラメンシア…」
(カレームの弟子にエスコーフィエっちゅう新進気鋭の料理人がおりましてな。ロンドンのサヴォイで働いとった際の同僚のリッツっちゅうおっさんと一緒に不祥事起こした嫌疑をかけられてフランスに戻って来た男ですけど、今はキャバレー紅風車併設の料理店で修行中の身ですわ。リッツ自身は旅館業をやりたい実業家ですがエスコーフィエの腕前を高く買うとります。で、こいつらはパリにぜひ自分らが経営するホテルを開きたいっちゅう請願をよこしてますんで、その修行の一環として時々はベルサイユに呼んでますねんわ)
(ふむ…テレーズも隅に置けぬ子ですわね…英国で問題を起こした者がフランスで身を立てれば嫌味の一つにもなろうもの…ま、あの子もあの国をどうあしらうかは修行中の身でしょう。フラメンシア、くれぐれもソフィーはまだしもテレーズを暴走させぬように…)
などという裏の話はともかく、フラメンシア王女殿下はさらっと返してますね。
「まぁ、美食についてはカレームのみならず、有望な料理人を今や多数輩出しておりますから、少なくともどこの国の誰が来ても唸らせる手筈はととのえておりますわ、母様」
「ならば重畳。しかるにフラメンシア…ジャポンのサムライは質素倹約を尊び、見た目には誤魔化されぬとお聞きしておりますよ。ましてや、ムッシュ・ハセクラの主君は料理の腕前を誇っておられるとか…ならば、なるべく口に合うものをお出しするが道理かと思いましてね」
というわけで、山の中に都が所在する女裂振珍の後に訪れたということもあって、鱈やいわしの焼き料理のみならず、海老烏賊蛸貝といった海鮮を盛り付けたイスパニア風炊込飯の振る舞いを受けたのです。
折りしも、時は春。
王賓庭園の名に相応しく、花壇や鉢植えには花が咲き誇る中での緋毛氈が敷かれた歓迎の卓子に、白い服の料理人が目の前で調理した料理を振る舞われるのは、花見の宴会や茶席を知る支倉氏にとって、それなりに贅を尽くした歓待に受け取ってもらえたようです。
ただその、いえその。
ええ、この王賓庭園の本来の目的ですけどね、フラメンシア殿下から密かに心話でお教え頂きましたけどね。
(母様、ムッシュ支倉には、そういう歓待は不要ですからな…)
(ではせめてプラウファーネ様の分だけでもっ)
(ええとなんですか、私が呼ばれてるのはその辺もあるみたいなんですけどねぇっ)
で、室見様が呼ばれておる理由ですがね。
私、茨木童子。
私と姉の外道丸にとっては不倶戴天の宿敵の首魁でもあるのですけど、しかるに私たちが従わなくてはならないいやらしい存在たる、おかみ様がですね。
何の嫌がらせかはともかく、かつての古代の比丘尼国…まだ八百比丘尼国を名乗っていない時代に暴れ回った化け物である「やまらのおろち」の力を私に授けよったのです。
で、わたしは最大256本のあれを生やして伸ばせるようになりました。
どこから生やすかとか、生やしたものの形やら太さについては細かいこと、伏せさせて頂きます。
で、イザベル陛下が純血の鬼の血が流れております姉か私の精を欲しておられるのは重々承知しておりましたが、私か姉が授けられる鬼の血の濃さを必要以上に濃くしてもまずいという話、欧州地区本部から釘刺しが届いておったのです。
そこで、汽車の御者がおできになる上に黒化白金衣を着用できる室見様…理恵さんがお越しになることで、陛下や娘御に与える鬼の精の力を密かに加減する話となったのです。
ええ、クララ様とカタリナ様と、そしてイザベル陛下との食事の席の最中、卓子に敷かれた緋毛氈の下で私の何本かを出して、密かにお渡ししていたのです。
何をどう、お渡ししたのかは内緒ですが、食事の宴席が終わるや否や、クララ様とカタリナ様の二人の姫君、速攻でアルムデナ大聖堂という、この庭園からも見えるすぐ側の大きな聖母教会に運ばれて行きました。
Isabel Clara de Valois クララ Thousand Suction. (Limited Hundred thousand)千人卒(限定十万) Slut Visual. 痴女外観 Red Rosy knights. 赤薔薇騎士団 South-Euro Branch, Imperial of Temptress. 痴女皇国南欧支部
Catalina Micaela de Valois カタリナ Thousand Suction. (Limited Hundred thousand)千人卒(限定十万) Slut Visual. 痴女外観 Red Rosy knights. 赤薔薇騎士団 South-Euro Branch, Imperial of Temptress. 痴女皇国南欧支部
Isabel 1st. (Élisabeth de Valois) イザベル1世 Ten Thousand Suction.(Limited Ten million) 一万卒(限定千万卒)Slut Visual. 痴女外観 Caballeros femeninos de españa. スペイン王立婦人騎士団 South-Euro Branch, Imperial of Temptress. 痴女皇国南欧支部長 Reina de españa. スペイン王国女王
(うちが鬼の気を当てたせいもあるんやろか…)
(姉さん、これはイザベル陛下からのお願いですから、仕方ありませんよ…)
ちなみに姉がこれの担当をしなかった理由。
大人にしか見せられない聞かせられない話になってしまう上に、私のやりかたよりも更にきつい結果になってしまうからです。
姉の部下扱いで大江からの姉との腐れ縁の仲の悦吏子ちゃん…エレンファーネ設備副部長、あの子が姉のお相手可能な理由、ちゃんと存在するんですけどね。
Ellenfahne(tamamo-no-mae) 悦吏子 Hundred thousand Suction(Limited Ten million)十万卒(限定一千万卒) Slut Visual (White face Terrible mode) 痴女外観 Facility department, Palace of Temptress. 痴女宮設備管制室 Facility Sub-Technical Manager, Imperial of Temptress.(job assignment) 痴女皇国痴女宮出向・設備管理副部長待遇
…そして、いよいよと支倉氏一行が私と交代して赴任する地たる、パリへと向かう汽車に再度乗り込むこととなったのです。
「いや、本当に諸々の歓待、かたじけのうございまする…女王陛下におかれましては比丘尼国との引き続きの親善友好をお図り頂きたく」
ぺこぺこと頭を下げるさむらいの手を取り、お気遣いなくと言われるのは、昨今流行りの脚を見せるすーつ姿の南欧行政局長にしてスペイン王国の女王様であるという、イザベル陛下。
もともとはフランスの王様の娘であり、純粋なイスパニアの人ではないそうですけどね。
「ほほほほほ、わたくしもさりながら、不肖の娘と、遠縁の姪たちを盛り立てて頂ければ…」
(ほんまは対比丘尼国の貿易や外交を独り占めしたいうちの母親ですけどな、それやると他の支部や部局からものごっつ怒られるじゃ済みませんのでな…母様も、比丘尼国との貿易は欧州統括本部輸出入事業部の管轄になるのだけはなにとぞお忘れなきように…)
(フラメンシア、あなたは我がイスパニアの味方ですか、それともフランスの味方ですかっ)
(それを言うなら比丘尼国ですわ。一応は痴女皇国日本行政局を含めて経済的に独立採算部署でもあるわけですから、各支部の抜け駆け取引はことさらに問題になるゆうて支部長会議でも議題に出ましたやん…真珠や絹糸を独占するとかいらんこと考えんといてくださいよ…)
ええとですね。
実は私の派遣も、たった今イザベル陛下とフラメンシア殿下が言い合ってる件に絡んでおったりするのです。
といっても、銭金のことの詳細はともかく、抜け荷…つまりは、密輸防止が絡んでいたりするのです。
元来の比丘尼国ですと江戸の幕府を介して南蛮との貿易を行っておりましたが、制度改革と南蛮向けの船が入れる港の開港にともなって、あちらの銭金とこちらの金の価値のすり合わせやら何やらが必要になったのです。
そこで、比丘尼国も痴女皇国の中の組織であるという方便で「かねの価値を揃える」という処置を行ったとお考えください。
(この辺は聖院や痴女皇国におりました関係で、両替処で小遣いを受け取る立場でしたからねぇ、私も)
で、小判を始めとしたぜにの中の金銀の量で価値が変わるというやり方から一歩先に進んだ金勘定に移る必要もあって、比丘尼国から来た勘定奉行配下の役人連中をフランス側の財政役やら誰それに引き合わせる必要があったのですよ…。
それと、ものすごく重要な件をマリアさんから聞かされています。
そもそも痴女皇国や聖母教会の息のかかった場所では巾着やら財布の代わりに聖環で支払いが済みますが、そのぜに勘定の礎になるかね、紙で刷るものを中心に流通させようという話が進んでおります。
そのあたりの実務についてはともかく、比丘尼国の産品と技術はこの、紙で刷ったかねの普及に必要不可欠であったことから、和紙漉きの職人や機械器具の融通の話が出来る人物を欧州に度々招く必要が生じておりました。
そう…廉価かつ強靭な和紙、連邦世界でも紙幣の印刷に重用されておるようですね。
この職人たちや勘定奉行の配下の者をパリに招いた際に、宿泊の場や欧州側との面合わせの段取り、私どもパリ駐在の公使館の者どもがつけてやる必要があったのですよ。
いやはや、痴女島でそれなりに南蛮人紅毛人との交流を持っておらねば、私とて目を回しておったかも知れません。
(これがプラウファーネさんを大使として派遣した理由の大きなところなんですよねぇ…)
私どもを見送るイザベル陛下や王女・王子様方にアウグスティーナ騎士団長といった要職者の姿が窓の後ろに流れる中、汽車は再び穴の中を走っております。
その先頭で舵を取る室見様…理恵さんいわく。
(バルセロナ・サンツ駅で運転停車してフランス側の運転要員や客室乗務員と交代します。あ、鉄道娼婦最終編のロケ撮影も兼ねてますから、弥助くんとサラ・ベルナールさんもサンツ駅で乗ってもらいますよ…)




