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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど


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弥助の大冒険 -少年は巴里を目指す- 7.9

暗黒大陸南部、赤道から更に南へ下ったインド洋沿岸の港湾都市であるマブートの近代船用岸壁に接岸係留された軍艦・華厳(けごん)号と貨客船・珠絹(じゅけん)丸。


まともに航行すれば日本からだと1ヶ月はかかってしまう行程ですが、わずか数日で痴女島からここまで到達しているのは、まりり…上皇マリアリーゼが2隻の船を臨時転送してくれたおかげです。


(完全に転送しなかったのは珠絹丸と華厳号の耐熱装備の試験だと思って…)


(まぁ、海事部出身の方々なら熱帯域での活動も慣れている部類だし…)


で、陽光の中で船から降り立った私たちを歓待して下さるのは痴女皇国・暗黒大陸地区本部の希望峰広域支部長、そして乳首隠彩国(もざんびーく)支部長と名乗られた黒人…というには肌の色がダリアや弥助くん程度には浅い方々です。


差し当たって、茸島で搭載した衣料品の一部や暗黒大陸向けの貨物を取り卸す作業だの、給水などの補給だの船舶点検だのと船側では色々とお仕事がありますけど、私とプラウファーネさん、そして弥助くん一家はマブートの港湾事務所に招かれてお話をさせて頂くことに。


「昨今はこの地にも白い方々の来訪…それも以前のような侵略者ではなく、痴女皇国ゆかりの方々が多くお越しになりますので…」


「ただ、ヤスケくんですか。彼の父親が生まれた地や部族の方針によっては、ヤスケくんを一族の者として素直に迎え入れてくれるか、いささかの疑問とせざるを得ませんね…」


ええ、この地に到達した冒険者や交易者の中には、人買い商人はもちろん、人を誘拐して奴隷にしようとした者もいたそうなのです。


で、そうした行為によって被害を受けた部族の方の中には、白人を異様に敵視する風潮もあると申されます。


「室見様のお国のサムライについては、まだ見ぬ東洋の島国の戦士階級であるとして聖母教会での教育内容に含めております。他の国につきましても、なるべくは良い印象を与えておきたいものですから…」


「特に南欧行政局が主体となっております暗黒大陸からの出稼ぎ労働者事業に参加する場合、どういう印象を抱いているかはともかくとして、絶対に白人と触れ合わざるを得ませんから…」


「救いはイザベル陛下、混血者を婦人騎士団の要職に取り立てたり、出稼ぎ者や売春婦に稼がせようとする政策をお取り頂いておられることですか…」

https://novel18.syosetu.com/n0112gz/388/


(あのー、あの母親は単に黒人の股間に目がいってるだけですよ…)


(フラメンシア。パリから戻る気はないと思っておるようで)


(イザベル母様。それはともかくとしてもですよ、そのヤスケに関しては例の鉄道娼婦の撮り直しというか続編制作許可の依頼もきておりますしね…)


どうやら、フランス支部や南欧行政局としては弥助くんがパリに来る方がありがたい模様。


しかし、弥助くん自身の気持ちというものもですねぇ。


というわけで、弥助くんのお父さんの生まれた土地の方と、現地の聖母教会経由でお話をしてみますと。


(確かにこのヤスヘとかいう子の父、どうやらマカタの生まれであるという話が正しくあろうと思われます。マカタの王家の末裔であったという現地のヤオ氏族出身の東方尼僧がおりますが、その尼僧を始めとしてマサイの者の言葉でヤオの者をヤオスケと名乗るとか。つまり、比丘尼国の武将に自らの名を名乗った際に「自分はヤオ族のものだ」とスワヒリ語で話した可能性があろうと思われます)


と、当地の担当司教と司祭が教えてくださいます。


つまり、弥助くんの父親の出自を探る試み、私たちがモザンビークに到着するより先に行われていました。


そして「痴女皇国暗黒大陸地区本部としても、決して弥助くんとその今は亡きお父さんを無下に扱ってはいませんよ」という事にしろとはっぱをかけた存在がいた訳です。


これには、モザンビークに上陸した海綿菓子国の商人の行状が影響しています…。


ええ、奴隷貿易の件です。


幸いにして痴女皇国世界では大規模な奴隷貿易に発展する前に干渉が入りましたが、それでも連れ出されていた人々が存在してはいたのです…。


更には、モザンビーク海峡を挟んで向かい合っているマダガスカル島に海賊の拠点があったことや、そこへの手入れのための基地としてモザンビークの港が使われたなどなど、現地の住民を巻き込んでの武力行使行動や略奪めいた行為が発生していたのも悪い方向に働いていました。


つまり、マカタ王家など、モザンビークの土着豪族と白人やアラブ系インド系の交易商人、必ずしも良い仲ではなかったようなのです。


そんな中で、はるか海の彼方に渡ってそこで子供を作った者がおり、その子が父親の国を訪ねて来たというだけでは簡単に信じてもらえないような状況に陥っていた、外国人に対して友好的に接したくとも疑いの目を向けてしまう状況であったことを説明される現地の教会司教と司祭。


そこで、弥助くんのお父さんが戦士として比丘尼国の武将に取り立てられて最後まで主君に仕えていたことや、謀反から逃げ延びて子供を作ったことなどが現地で紹介されたのです。


いわば、部族の若者が功績を上げたというお話をあらかじめ広めてもらったと。


(で、室見局長、そしてアルト閣下…これはアーペディオーネ本部長からの提案なのですが、今、ヤスヘの息子さんに現地を訪問してもらったところで勇者の息子である以上の評価は得られないであろう、とも。であればパリで名を挙げてから故郷に凱旋してもらう方が、より覚えめでたくなるのではとも…)

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