弥助の大冒険 -少年は巴里を目指す- 7.8
海の向こうに見える港と岬、そして港の向こうに広がる町。
痴女皇国・暗黒大陸地区本部モザンビーク支部の要所であるマプートの港です。
ここと南アフリカ共和国に該当する希望峰支部との間には既に鉄道が敷設されておりまして…敷いたのはこの室見理恵率いる痴女皇国国土局ですが…この鉄道、連邦世界では19世紀には既に敷かれていたほどに、この地については早期に開発が進んでいたことを示しているでしょう。
(モザンビークって鉱物資源が豊富なんだよな…)
(連邦世界の話だけどね…)
では、連邦世界ほどにはあらゆる鉱物資源が少なめであるのが明確になっている痴女皇国世界の地球では、果たして鉄道敷設の意味はあるのか。
答えは…。
(りええは意外に趣味にばかり走らない件)
(そりゃ、いくらなんでも不要なものは敷かないわよ…)
で。
痴女皇国世界の希望峰支部、降雨量のカイゼンや農業化がそれなりに進行しておりますが、いかんせん南アフリカ同様に緑は少なめなのです。
で、その上のモザンビークやザンビア・アンゴラ・コンゴといった森林面積の多い地域から木材を輸送する計画が立案されたのです。
つまり、南米や北米同様に、石炭や石油の代替資源ですとか、建材やら繊維資源の輸送のために鉄道を敷設した次第。
更には、漁業基地港でもあるマブートやマダガスカルからの漁獲分をアフリカ本土での食料として水揚げしたり、あるいは欧州やアラビア半島方面への輸出積出港として整備する事業も行っておったのです。
ええ、この室見、複数分体を出す許可を得た背景には「それだけ色々お仕事が増やされた」って件があったんですよ。
決してどっかの痴女皇国皇帝のように、未成年の方には詳細をお話しできない事のために分体を出しているわけでもない、ないのですっ。
(パイセン…ほんまにしばきますよっ)
(ベラちゃん、あたしと組まない…?)
(それはいい考えですね雅美さん)
(あんたら…ゆっきーに話をして宇賀神さん呼んで来ようか?)
(それ反則じゃないですかパイセン!)
(いつの間に宇賀神さん味方につけてんのよ!)
(いえいえ、ちょっと実家に寝かしてあった山崎社の高級ウィスキーをお贈りしたとか、あるいはケンタッキーバーボンやらスコッチウィスキーの貰い物を押し付けいえいえお贈りしただけですよ)
ええ、宇賀神雪子さんのお父さんの邦彦さんと、お母さんの桔梗さん、お酒の味がわかる人だってのは存じてますから。
更には、お友達の放送作家の方も含めて、お酒の好みもきっちり調べ上げております。
ふひひひひひ、賄賂とはこのようにしてさりげなく、自然に贈るというもの。
(そう言えば叔父が言ってましたよ…パイセン、連邦世界のバローロの結構たっかい瓶、罰姦教皇庁に叔父宛てで届けたりしてるでしょ!)
(ふぉふぉふぉふぉふぉ、酒の味がわかる人には酒を送りつけるのは効くのよっ)
(意外に絡め技を使うのね…理恵ちゃんって下半身だけで男性と仲良くなるって思ってたわ…)
(それは雅美さんの誤解というものなのですっ)
まぁ、わたくし室見理恵、以前もお話ししたかと存じますが、痴女皇国世界であろうと連邦世界であろうと、なぜか男性と下半身で親しくなるのを避けてしまう部類なのです。
その代わりに、人間の三大欲求の一つである食欲で、男性を釣る技を覚えたようなもの。
「で、室見理恵…弥助の故郷の手がかりなどは承知しているの?」
「ええとですね、とりあえず連邦世界の弥助さん…弥助くんのお父さんの方ですけど、モザンビークのマコンデ族という部族にヤスフェなる名前の人物が複数存在していたり、キマウという名称かつ日本の着物…特に武士の衣装に類似した服が伝わっていたりという傍証があるんですよ」
と、わたくし室見理恵が珠絹丸の船橋で話をしているお相手は、運命の女神のスクルドさんです。
この方の受け持ちは痴女皇国世界の地球ではないのですが、運命選定種とやらの管轄には入っております。
そして、何の因果か、人間の世界で実際に動ける体を与えられてまでしてこちらで活動することを余儀なくされておられる嘆きを、時折漏らされるのです。
ええ、NBでは愚痴を聞くこと聞くこと。
特にこの室見、お酒は弱い方でないのが災いしてか、英国本国同様に飲酒文化が存在するNBへの出張時には何かあるとボトルの封を切られて水割りだのオンザロックのグラスが目の前に並び、そのお酒と共に愚痴もセットでついてくる状況あまただったのです!
(理恵ちゃんは愚痴を言うのにちょうどええんや)
(あたしは地面の穴ですか、王様の耳はロバの耳とかいう風に使われてた気がするんですが)
(穴は使われてたな、確かに)
(じぃなさぁああああああああん!)
それはともかく、マブートの港。
実は連邦世界のモザンビーク同様、どっちかというとお米や麦よりはキャッサバのような芋類が主食だったアフリカ中南部のサバンナ地帯の食糧事情をカイゼンするためにも、アフリカ大陸に適した麦や豆や稲の耕作、国土局と通商局の連携で進めてはいる状況なのです。
しかし、あまりやりすぎると現地の生態系を乱すのはもちろんのこと、地球の酸素供給量が増加しすぎるとかえって環境にもよろしくないという話もあります。
そこで、他地域からの食糧輸入や、逆に生産品の輸出も順次行っているのです。
で、南北にそこそこ長いこの地域、中東地域から伝わった帆船であるダウ船という浅瀬に強い独特な帆船を用いた、主に海岸伝いに航行する航法での移動や漁業が行われていました。
https://x.com/725578cc/status/1874052009311244748
このダウ船、南洋王国周辺でも類似の組み立て方法で作られた船がそこそこ存在するのですけど、鉄の釘を使わずにヤシの繊維で作ったロープを使って板を編むという、独特の組み上げ方で組まれているのが特徴的なのだそうです。
(普通に釘を使って組み上げた帆船よりも薄い板で組める上に、柔らかく出来ますから浅瀬の岩礁や珊瑚礁に乗り上げたり引っかかっても逃げ出すのが容易な上に、修理しやすいのですよ)
と、水先案内船に同乗しておられるらしきモザンビーク支部の方が心話を送って来られます。
(あの…うちの支部、公式では乳首隠彩国支部とされておりましたかと…まぁ、なんでそんな当て字めいた聖院第二公用語での命名由来を知ってしまいましたからには、その、連邦世界でのモノモタパ王国の領地の後の名前の方が良いとは思いますが…)
ええと、まりり。
それと、たの。
あんたらやろ。
モザンビーク支部の痴女皇国世界での正式名称、決めたの。
(ちょっと待て!今回は雅美さんも噛んでるぞ!)
(マリアちゃん!あたしを売るのやめて!)
ええとですね、国名命名規則、改訂しましょうか。
いくら早婚が多い傾向があって町のそこらで授乳してる傾向があると聞いても、いくらなんでも色々物議を醸す国名の採用については地図を管理している部署の長でもあるこの室見理恵、異議を申し立てる権利はあると思うのです!
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りええ「というか国名や支部名決定の際にあたしを混ぜる事。これで解決する気がするわよ」
たのの「余計にひどい名前になりそうな気もすんだけど!」
マリア「そーだそーだ、だからりええを入れずにだな」
りええ「とりあえず今回は現地支部の人からも苦情をもらったって事で請願入れます」
まさみ「国土局の横暴に断固抗議します!」
りええ「国土局としては内務局に反対である!」
たのの(どっかの陸軍と海軍みたいな事やってるわね…)




