痴女宮クリスマス事情・聖院暦105*年版
青井孔雀氏と
この日のための犠牲になった鶏たちに捧ぐ
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「ちょっとちょっと!そっちのグリルのチキン、焼けたってブザー鳴ってる鳴ってる!」
「誰よクリスマス定食とかいうの考えたの!これお子様ランチと大差ないわよ!」
ええと。
女官食堂調理室からお送りしておりますのは、痴女皇国厚労局・第二女官管理室長の勅使河原絹枝です。
で、さっきから厨房でうるさい声が響いている理由ですが、うちの実家の珠絹亭の従業員名目の、痴女皇国伊香保保養所の職員女官です。
なにせ、連邦世界の伊香保保養所ときたひにはこの日は閑古鳥が鳴いているのが確実。
という訳で、痴女宮の食堂のお手伝いに呼び寄せたのです。
その理由は、冒頭で彼女たちが悲鳴を上げていることでお分かりでしょう。
今日の女官食堂、夕食のメニューはただ1種類。
グリルチキンを主菜にしたワンプレートものの定食、これなのです。
そしてですね。
盛り付けの量やチキンの大きさは違えど、罪人食堂も同じメニューなのですっ。
(二代目様…誰ですかこんなもん、認めたの…)
(マリアリーゼに言いなさい。彼女の発案です)
(えええええ…マリア先輩っすか…)
ええ、私の上司にして聖院二代目金衣の経歴も持つ、ベルナルディーゼ厚労局長の鶴の一声。
さすがに、単にわたしが卒業した神戸のどこぞ高校の高木まりあ先輩というだけならまだしも、この痴女皇国の頂点であるマリアリーゼ上皇陛下に理由なく逆らうのは避けたいところです。
そして、このために痴女宮前の工場街にある屠畜工場だけでなく、八百比丘尼国の品川屠畜場や木津川畜肉処理場の協力と支援を仰いでまで、ニワトリさんだけでも数千羽が天に召されたのです。
ああ、かわいそうに。
しかし、コンビニなどのクリスマス関係の廃棄と違って、痴女皇国では食物を無駄にしません。
必要なニワトリの数はあらかじめ算出されていたのです。
しかし、普段は牛や豚を処理しているラインを鶏用に転換するだけでも大ごとだと言うことで、数日前からシメては羽毛を処理して冷凍庫に入れるという作業を繰り返して必要羽数の鶏肉を確保していたのだそうです。
そして、この日の朝に木津川と品川からその鶏肉を運んで来たのは、なんと宇宙空母兼コンテナ船のテンプレスとテンプレス2世。
ええ、普段はどっちか1隻が必ず痴女宮背後の聖院湖のダムに係留されている、あの船です。
聞けばあの船、最大で一度に2千人以上に供食するための厨房が備わっているそうでして、そのための食品冷凍・冷蔵庫も艦内にあるとか。
更にはコンテナ船としての運用能力もあるのを活かして、冷凍コンテナに鶏肉鴨肉七面鳥他を満載してきたそうですけどね。
(七面鳥は聖院学院の子供たち用。スタフィングを詰めて焼いて出すように…)
ええ、文教局では感謝祭とクリスマスをごっちゃにして教えているのかという疑問はともかく、七面鳥の場合は純粋な鶏肉よりも可食部位が少なめなのを補うために、お芋や果実などをお腹に詰めてグリルまたはローストして仕上げるのが一般的なアメリカでの調理法だと言うのは存じております。
んで。
調理する鳥類、単に焼いて出すだけならまだしも、従来の痴女皇国世界では馴染みが薄い調理法の伝授のためにカリブ海は海賊共和国の本拠地であるナッソーから、中井ティアラさんのお父さんである中井義文さんたち、痴女皇国の料理学校関係者が呼ばれて来ております。
更には、クリスマスケーキの作成はもちろん、このクリスマス定食なるメニューの調理指揮を中井義文さんと一緒に取っているのは、フランス支部から派遣されてきたアントナン・カレームという腕利きの調理人の方です。
この方々の監修監督であれば味については間違いないと思えますが、問題は供食量。
痴女宮4棟の居住者だけで、余裕で万超えしているのです。
その食事量、聖院学院初等部と教育部の在籍児童・生徒・学生はもちろん千人卒以上の「必ずしも食事を必要としない」完全体痴女種と言われる女官、そして常時4000人は在寮している罪人男性を含めて1日2万食は供給する必要があるのです。
そして普段であれば注意深く組まれた勤務シフトや授業スケジュールに基づいて、女官食堂と罪人食堂ではピークタイムを発生させないようにしております。
しかし、クリスマスイブのこの日に、こんな定食企画が持ち込まれては各食堂はフル回転させざるを得ません。
仕方がないので、テンプレスとテンプレス2世の食堂や厨房を稼働させてでも殺到する客を捌け、となったのです。
まず、罪人食堂と女官食堂ですが、元来は罪人と女官で利用する食堂を分けています。
しかし、今日に限っては罪人の皆様を優先して供食、ということで女官食堂も罪人の方々への供食を担当することに。
そして聖院学院では地下大講堂も使用して、初等部の児童・生徒向けの供食が優先されました。
で、割を食った教育部学生や女官たちのために、テンプレスとテンプレス2世の食堂を利用させることで食事供給を滞りなく行おうとなったのです。
で、女官寮からテンプレスとテンプレス2世に向かう列や、食事を終えて勤務や自室に戻る女官で堤防の上の酷道1号線扱いの道、時ならぬ賑わいを見せております。
しかし、そんな中で、厚労局のオフィスに詰めている私の方に、報告が。
「離宮詰めの女官の食事、どうするんですか。あの方々も定食の計算には」
「ええとですね…アフロディーネ女官長に聞いてみましょう…」
(勅使河原しつちょお〜〜〜〜いりませんよ〜〜〜〜〜あ〜〜〜クラシがはかどりますぅ〜〜〜)
(ちょ、ちょっとアフロ、あんた脱ぎ上戸かい…雅美母様!!)
(いや〜〜アシルティコを取り寄せた甲斐があったわね〜〜〜〜あ、あたしは冷酒だけどぉ〜〜〜)
一体全体、何がどうなってんのか。
で、離宮の田中家のベランダの監視カメラの映像、警務局を経由して第二女官管理室から見ることが出来ますので私のパソコンの画面に出してもらいます。
そこには、ベランダに炭火コンロを持ち出し、焼き鳥を焼いている部屋付け女官の姿が。
そして、桃薔薇騎士団の服を半脱ぎにしてワインボトルを持ちながら踊っているアフロディーネ女官長の姿も。
(田中内務局長…いえ雅美さん、なにやってんですか…)
あ、雅美さんも「田中先輩」という立場なんですよね、私からすると。
(見てわかるでしょ、焼き鳥よ焼き鳥)
ええ、クリスマスらしい飾り帽子を被り、クラッカーを鳴らしている雅美さんの姿が。
そして今は最年少級の衆議院議員になっている田淵誠先輩のご実家が贈ったとおぼしき、右川県産の生酒らしいのがラベルから窺える冷酒の青い瓶もテーブルに置かれています。
で、こちらも酒には強そうなペルセポネーゼ警務副局長が、諦めた顔で赤ワインらしい黒いボトルからラッパ飲みしている姿も。
では、他の皇族はどうなのでしょうか。
国土局の室見局長…理恵先輩のお部屋は…。
ええと、言えません。
ダリア統括騎士団長と部屋付女官2名の合計4人で、大人の世界に突入しているからです。
しかし、室内を覗き見てみますと、手羽先の唐揚げらしいものを載せた皿がテーブルに窺えるのです。
ああ、室見局長がだぎゃーの民…三河監獄国に該当する県の出身者であることが図らずも思い出される、この一瞬。
でまぁ、執務中らしく部屋にお留守の方々は飛ばすとして、在室者は他には…。
…ちょっと!ベラちゃん!あんたは何をしているのよっ!
(何って…頂いた鳥の料理に決まってるわよ…おキヌちゃんも食べに来る?)
(あたしは今夜の供食が滞りなく行われたのを確認するまでは厚労局を動けんのじゃっ!)
ええそうです。
厚労局では、元来の食堂を管理している担当である供食室や調理部だけではこの事態を乗り切れないとして、私や第一女官管理室長であるリミルシューネさんまでもが緊急召集で厚労局オフィスに詰めて事態を監視しているありさまなのです。
もちろん、厚労局長である二代目様も、事務所詰め。
しかし、我々の前には女官食堂謹製の唐揚げ弁当が置かれているのです。
いえ、既に箸をつけている者も。
なんでわしらが唐揚げ弁当やねん。
そういう悲しみ、グンマー出身でありながら関西弁で出てくることに、私の痴女皇国への馴染み具合とともに感じ取って頂ければと。
そして、唐揚げ弁当に文句を言ってる理由。
ベラちゃんのお部屋のキッチンと、そしてベランダですよベランダ。
底の浅いフライパンにオリーブオイルを浸して、何やら鶏を焼いとるのです。
どうも、小麦粉と卵とチーズを混ぜた衣に漬けてから、イタリアのカツレツよろしく揚げ焼きにしておるようなのです。
そして、バローロの瓶どころか、グラッパらしい変な形のボトルまでもがベランダのテーブルに登場しているのです。
んで、鶏を焼いているのは他ならぬベラちゃんと、白薔薇騎士団長のゼアラニーネさん。
(姉に料理くらいはできるようになっておけと言われてんのは知ってるでしょ…)
ええ、ベラちゃんの部屋ということで予想していた、すけべ行為どころか、鶏を焼いて食事の支度を用意しておる模様。
そして、これまたベランダに持ち出された炭火コンロでは、添え物らしいパスタを茹でているらしい伊藤瞳・内務局皇帝室秘書課長様と、財務局副局長である田野瀬麻里子先輩の姿が。
要は、ベラちゃんの部屋では部屋付きの女官2名も含めて総出で、自分たちの食事を用意しているようなのです。
ああ、皇帝自ら自分の食事をこしらえるとは女官のかがみ…ちょっと待てい。
で、わたくし勅使河原絹枝、厚労局においては保養所の管理を担当する複利厚生部長兼務です。
その権限をもって、ベラちゃんの茸島の別荘の秘匿映像を見せてもらうことにします。
ああ、やっぱり。
ファインテック社の茸島の役員専用代用社宅、つまりクリス・ワーズワースCEO専用別荘の建物と連結状態なのはまだしも、その中では大人の世界が始まっています。
それも、クリスさんの秘書であるジョアンナ・カーライルさんとその妹さんのベリンダさんを交えて…ちょっと待てベラちゃん、リンジー・ギャラハン聖院学院神学部長・茸島分校長がそこにいるのはなんでよっ。
ええ、ベラちゃんも今や、分体をいくつか出してもらえる立場。
そして普段は、その一体が茸島のクリスさんの別荘に常駐しとるはずなのです。
ですから、本宮ですけべ行為をしていない状況に同情の灯を点火しかけた私が、その事実に思い至らなければベラちゃんのリア充行為を見逃すところだったのです。
ええ、この勅使河原、高校時代はベラちゃんと同じ教室で授業を受ける立場だったのです。
そして、彼女の性格言動行状、だいたい予想がつく程度には色々知ってる立場なのです。
しかも、そっちの別荘だとファインテックの茸島支社工場事務棟にある食堂で用意されたらしい、ヨークシャープディングらしい塊や、七面鳥までもがお皿に。
ええ。
この瞬間に決意しました。
同じく、クリスマスということで、淋の森やクラブジュネスでの痴態醜態を記録してエロ本作成用のデータ編集に追われているであろう、どこぞ高校同期の桜である宇賀神雪子・痴女皇国内務局広報部長と一緒に、明日はベラちゃんの本体が離宮の自分の部屋で食べてるもんと同じのをベラちゃんに作らせるか、さもなくば連邦世界の日本のイタリア料理店のええとこのディナー、二人分、ベラちゃん持ちで奢らせようと。
いいわね、ゆっきー。
(是非もなし。広尾かポンギなら東京支部から地下鉄乗り換え1回よ)
(なんですかそれは!)
(うるさいっ。あたしとゆっきーが喪女状態なの知ってて茸島でクリスさんたちといちゃいちゃしおってからに!)
ええ、喪女の怨念ってやつですよ。
ちなみに、ゆっきーも私も、決して外観的には問題があるわけじゃないのは自認しています。
私、今は痴女皇国東京支部から分体を大学に通わせているのです。
同様に、池尻大橋の実家に近い東京支部が偽装している高級賃貸マンションの一室から通学用分体を出してもらっているゆっきーも、東京生活をしているわけですから、大学でのゼミや教室で男の子に声をかけられるなど、それなりのお付き合いはあるにはあるのです。
しかし、ゆっきーの場合、お母さんの桔梗さんはまだしも、お父さんの邦彦さんの写真を見せると、男は皆、一様に引くそうなのです。
ええ、サングラスをかけてポロシャツ姿で金属バットを肩にかけた筋骨隆々のいかついおじさんがそこにいれば、一体何者かと思うでしょう。
そして、背後に愛車の黒いフォード・マスタングや、青いキャディラックが停まっていれば、なおさら。
しかも、ゆっきーの場合、遅刻しそうになって東京支部の近所にあるお父さんのマンションから車を出してもらって、大学前で車を降りる姿を目撃されとるのです、度々。
それにこの勅使河原絹枝、通常はチャリ通でして、結構筋肉質なパワー系って感じの印象を与えているようなのです…。
ええ、見た目は筋肉ムキムキにしてるつもりはないのですが…。
それに、ゼミの合宿で暴走半島の岩井ってとこの民宿に行ったのが運の尽きでした。
あそこ、都内の大学に通っている方ならご存知かも知れませんが、部活やゼミの合宿の場として有名でして、それ用の営業で知られた民宿が何軒も立ち並んでるんですけど、そこの打ち上げ用にと酒やおつまみの買い出しに出かけた際にですね、男でもうげっとなる量の荷物、ひょいひょいと運んでしまったのですよ。
ええ、この勅使河原、ベラちゃんやあずさん…五百旗頭梓・通商局鉄鋼業担当部長ほどではありませんが、身長はある部類なのです…。
そう、酔わせたり押し倒せる部類ではないと、同じゼミの子を通じてサークルなどにも広まってるようなんですよ、私の噂…そして、私の実家の珠絹亭が、それなりに名前の知れた温泉宿の老舗だってのも悪い方向に作用しているのです。
つまり、迂闊に手を出せば本気のお付き合い、それも旧家や名家の部類のお付き合いが待っているという風に認識されとるんですよ…。
ええそうです、私もゆっきーも、親ガチャでは勝ち組かも知れませんが、同時に親の地位や立場で避けられているようなのです…。
ですから、たとえちょっとマシな家に生まれたからといって、男運もマシかは疑問に思って頂きたいのです。
(うう、家がうるさくなければ…)
(おキヌちゃん、私もそう…彼氏作ってもさ、邦彦父さんに会わせる時を考えるとね、気が重くなるのよ…)
(確かにヤクザでも道、開けるもんね、あの人…)
はい。
もてない男女の方々の仲間入りをしている憐れな女二人です。
だからベラちゃん。
あんたの奢りで、ちょっとはいいもの食べさせるくらいバチは当たらんと思うのよ!
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べらこ「理不尽や」
ゆきこ「高木企画の経費でもええねんで」
おきぬ「珠絹亭の通称不倫部屋ってのがあってね。一泊二食で20万円コースなんだけどさ、そこの領収証、内務局皇帝室宛に切ってもいいかな」
マリア「まぁ、事態は理解した。ベルサイユの王妃の間か小トレアノンの食堂でいいかな」
おきぬ「それ、痴女皇国世界の方の…」
ゆきこ「まりあ先輩、テレーズちゃんたちは確かにフランス王女として専属のシェフを抱えて毎日フランス料理のはずですけど」
マリア「なんなら罰姦に話をつけるよ。逝麺の男性枢機卿たちに囲まれてイタリア料理とか、指導偽女種の助祭付きとか」
おきぬ「なんかそれ、痴女皇国の身内のせいか、ありがたみが失せるような気も」
ゆきこ「確かに連邦世界のあたしたちの身分じゃ難しいんですけど…そんな贅沢」
べらこ(それ以前に二人とも、姉が経費をケチってるのに気づくのです…確かに贅沢は贅沢ですけど、痴女皇国の姉の立場ならタダ同然にそういう贅沢を体験させられるのです…連邦世界でそんなことしたら3桁や4桁万円のお金が吹っ飛ぶのですが、痴女皇国世界ならなんとでもなるということに思い至るのです…)
マリア(バラすなベラ子…それに、たのがうるさいだろ、経費)
ゆきこ「ベラちゃんたちと美味しいものぱくぱく食べてた田野瀬先輩には言わせませんよ(がんぎまり)」
おきぬ「トゥール・ダルジャン辺りで手を打って欲しい気もするけど…まぁともかく、田野瀬先輩も喪女なので逆に話に乗ってもらいましょう。ひひひひひ」
たのの「ううう、私だって…私にもいつか花が咲く日がぁっ」
べらこ「おだまりたのきち。あんたはあたしの家畜やっ」
たのの「それこそ横暴や!(泣)」
ひとみ「そんなわけで2024年も更けようとしておりますが、お話はまだまだ続きます…」
べらこ「ちな瞳さんの分体、大富豪の実家でF1パイロットのジャン…セニョール・パスカルの奥さんですからね」
ひとみ「まぁ、ジャンはそれなりにちゃんとしたディナーの席、用意してくれたし」
たのの「リア充や、ほんまもんのリア充がおる…」
ゆきこ「裏山な人が身近におった…」
おきぬ「皆からのしっと光線はやむを得ませんね、瞳さんだと…」
ひとみ「ベラちゃん!恨む、恨むわ…!(涙)」
他全員「というわけでメリークリスマス、いえ、メリークルシミマス(泣)」




