弥助の大冒険 -少年は巴里を目指す- 7.5
さて、痴女皇国世界の分だけでも数十万人分の衣料品の製造や再生管理を行っている重要拠点である、ファインテック・ケミカルズ茸島支社工場。
その面積たるや、なんとあの巨大な三河監獄社の田原工場が10箇所くらいは入るほどの広大な敷地の中に、何棟もの建物が整然と立ち並んでおります。
我が父ゆかりの職場であり、私の分体も来年4月から勤務する予定の…新幹線やリニア車両だけでも年間100両以上を生産可能な通称豊川社の工場ですら、敷地面積が0.25平方キロなのですから、その巨大さを想像頂きたいのです。
(天の声曰く、西暦2024年現在で日本最小の区制度行政区の大阪市浪速区が4.39平方キロ、田原工場が4.03平方キロらしいんですけどね、浪速区が小さいんだか、田原工場が大きいんだか…)
まぁともかく、日本でも最大級の単一工場敷地の10倍の面積ということは罰姦…いえいえ、バチカン市国の100倍の面積を有する、もはやちょっとした都市中心部が入りそうな広さの敷地を持つ工場だと思って頂ければ。
そして、ここの建設にも国土局長であるこの室見理恵は大きく関わっています。
で、現在の茸島工場がここまで大きく拡大された理由ですが、珠絹丸以外にも多くの船が実のところは出入りして卸しているものにあります。
そう…痴女皇国世界で生産された植物あるいは動物性繊維素材を、半生体衣料素材に転換してから縫製工程に回し、オーダーに応じて迅速に生産する他、リネン類などはあらかじめ製造してストックしておくための倉庫も含まれているのです。
一般的な縫製製品についてはNBの本社工場でも生産を行っているのですが、半生体素材による新規開発や痴女皇国向け…特に、私たち女官など痴女皇国仕様の聖環を装着している対象が利用可能な瞬間更衣システムで回収された汚れ物はここの生分解再生ラインに乗って新品同然に再生されるのです…。
例えば私がとね服にコーヒーをこぼして着替えたいとか思った場合、聖環操作で一瞬にして着替えることができるのも、ここの設備があってのものだね。
そして、素材別の原液とでもいうべき原材料タンクだの反物ストック倉庫だのがどん、と茸島の西北部に広がっているのです。
もっとも、ほぼバリ島に等しい大きさ…つまり、愛媛県より少し広いくらいのの茸島ですので、用地は割とあるのです。
で、船で送られて来た羊毛や綿花に麻、あるいは先ほど珠絹丸から降ろした絹素材各種などは、半生体素材への転換工程ラインを経て布化原料倉庫に送られるべく、そのプラントに運ばれてしまいます。
しかし、今の私たちは、その大規模な衣類工場を見学するのではなく、弥助くんの緊急治療のために入らせてもらった立場。
そう…かつては痴女宮の地下にあって厳重な警戒と微生物管理の下に置かれていた、駄洒落菌研究などを担当する生化学研究室棟に向かっているのです。
ですので、ここから先の工場の詳細についてはあまり詳しくは話せないようです。
有り体に申し上げますと、国土局で管理している竣工前の初期の建築計画図面と実際の工場内部、意図的にかなりかけ離れているのです。
そして、工場敷地内は…NBの海外軍事基地、すなわちNB領土と同等の扱いです。
実際に、警備についてもNB陸軍の兵士資格者が派遣されて任務に就いていることを聞かされていますし。
何せ、扱っている駄洒落菌変種ときた日には、かつてジーナさんが看破した通り…いえ、それ以上の危険物に変貌した代物も含まれていると聞いておりますし、一部の変種はこの室見自身が凶悪な効果を知ってしまった立場です。
https://ncode.syosetu.com/n6615gx/51/
https://kakuyomu.jp/works/16816927860203867915/episodes/16816927860251650143
https://novelup.plus/story/361723636/760543044
で、弥助くんの治療に向いた場所は、自動縫製ラインがいくつも内部に存在する工場棟群や半生体素材の溶解再抽出棟といった施設群からは、少し離れた場所の…それも地下に設けられていることくらいは申し上げてもOKという許可が出ました。
ただ、そこに至るまでは一旦、全員が素っ裸になって消毒洗浄チャンバーを通過したり云々の、半導体製造工場も真っ青の身体浄化行程ラインを通過したり、あるいは無菌洗浄室内で瞬間更衣システムを起動して着替えろとか言われたりと、相応の扱いを受けることを余儀なくされています。
しかも、弥助くんはこの行程途中で、被験体や患者を入れるためというシリンダーを載せた担架に入れられ、室内の空気を直接呼吸できないようにされてしまっているのです。
で、このシリンダーごとMRIやCTに該当する分析機器に収まって、身体の内部に至るまでのデータを取られるという説明、担当の生化学研究員の方から受けます。
(触れと言われるまで、そこらのものに触ってはなりませんよ…)
と、プラウファーネさんが弥助くんのお母さんや妹さんに注意を促していますが、実のところはプラウファーネさん、まりりが聖院の運営に噛んで以降、毎年実施されている健康診断を受診していたのです。
この健康診断、テンプレスまたはテンプレス2世の医療室の備品機材に加えて、航空機の格納庫やコンテナ積載時の船倉となる広大な密閉甲板を区切って実施する代物でして、罪人の方も女官も流れ作業で次々と受診していく必要があるのです。
ですが、プラウファーネさんについてはその天然ニューハーフな容姿、男として扱うのか女として扱うのかという問題が出ました。
そこで、プラウファーネさんと聖院本宮や痴女宮に居住していた当時のクリスさんなどの一部の「他の女官にあまり姿を見せたり接触させたくない人」については別の日に健康診断や身体測定を受けていたそうです。
で、その際には企業や学校での集団検診に匹敵するか、それ以上の近代的な測定機器を繋がれたり、指示を受けて聴力や視力測定機器の流すアナウンス通りのスイッチ操作を行なったりします。
そして地下の設備室を縄張りとしていたプラウファーネさんですから、からくり物には慣れておられるのですよ。
(ぱそこんも使えるのですよ…自分の名前と和数字洋数字と南蛮文字程度は最低打てるようにとマリアさんが特訓した中に、私も入ってましたしね…)
そう、世にも珍しい、茶筒パソコンのバーチャルキーボードはもちろん、実キーボードやマウス類タッチスクリーン類の操作も出来るし報告書の類も作れる鬼さんが、ここに。
鬼細胞の影響による行動制限がなかったら、連邦世界を一人で行動してもらってもいいくらいなのです。
そんなことをしている間にも、弥助くんの身体状況調査は進んで行きます。
本人は眠ったままですが、その状態で色々調べて行く分析装置の類が動いているとお考えください。
で、解析結果を拝見します。
むろん、指導偽女種になってもらうことが一番の解決策のようですけど、比丘尼国出身者が痴女皇国仕様の偽女種へのいじられ方をされたり、こちらの聖母像から噴き出る聖水や慈母観音像のお水を取ると、今後は弥助くんのような身体不適合めいたことが起きる可能性もあるので、クリスさんとしては対策を取っておきたいようですね。
「ただ、できれば日本人の遺伝子は有効にしておきたいんですよ…指導偽女種になれば解決しますけど、奉仕偽女種や懲罰偽女種の状態だと有機身体細胞が多数残っている状態ですから、白人や黒人と違って体臭を発生させる染色体の欠損が存在するんですよね…東アジア系モンゴロイド…」




