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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど


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弥助の大冒険 -少年は巴里を目指す- 7.3

ぽ・ぽ・ぽんと上がる祝砲。


いよいよと錨を上げて竹芝桟橋を離れる珠絹丸ですが、岸壁の皆様との別れの挨拶やらはアルトさんとプラウファーネさんたちに任せて、わたくし室見理恵は珠絹丸の船橋にお邪魔しとります。


と申しますのも、この珠絹丸の船員教育にも、わたくし率いる国土局は関わっておりました。


厳密に言えば、国土局海事部。


そう…アルトさんの妹さんのナディアさんが率いる部署です。


もっとも、警務局所属扱いの瀬戸凛ちゃんが指揮する紺碧騎士団長との混成部署ですので、海事部員は紺碧騎士団員を兼務していることが多いのです。


そして、部門の性質上、所属員は比丘尼国か、はたまた海賊共和国に厄介になっていた海賊上がりが相当数を占めています。


で、このお船の船長を務めているのは、久留島みちという方。


(伊予来島家…伊予村上氏が改名した家の出ですきん)


つまり、村上水軍絡みのお方です。


村上水軍は関ヶ原以降に出番があまりなくなったのですが、比丘尼国の海上交通に痴女皇国が手を貸し始めたことで事態は一変しました。


まず、土佐の超助平(ちょうすけべい)一家…長宗我部(ちょうそかべ)一族が色々あって強制的に改姓されたそうです…がカツオ漁のみならず捕鯨にも人を出し始めました。


一時期はカリブや大西洋のクジラ漁にも関わっていたほどだったのですが、昨今では主に太平洋側で活動中の模様。

https://novel18.syosetu.com/n5728gy/198/


で、比丘尼国の廻船…内航海運船も動力化が進みましたが、こちらはナディアさんのコネで九鬼水軍の出身者が多数を占めています。


そして、海やくざの瀬戸組の頭の娘である凛ちゃんの伝手で、痴女皇国が関与または運用するヘリカルジェット推進帆船の運行に関わる仕事を与えられたのは、主に村上一門の出身者だったのです。


で、わたくし室見、言いたいことがあります。


ナディアさん。


この制服、私が承認した覚えはないんですけど。


ええ、船長席のみちさんも、ナディアさんも、紺碧騎士団制服のTバック・セパレートウェットスーツじゃないんです。


洋風の上級船員用金筋ジャケットに帽子ですけどね。


下半身がデッキシューズまたはブーツなのもわかるんです。


けれど、なんで、ふんどし。


これではまるで好色食い込み海女さんではないですか。


「ええとですね、紺碧騎士団の制服扱いですから、室見様がご存知ないのも無理はございませんわ…」


「しかし正直ですね部長、これ、上着が大漁法被やら何やらならまだ納得はできますが、どうも違和感が」


「わたくしも正直、鳥羽の海で海女をやっておるならばまだしもですね…」


「とりあえず制服についての不満は後でお聞きします。変えてくれるかはともかく、女官長権限で請願も通しますし、なんなら国土局海事部の制服にでも」


ええ、国土局の制服はあるのです。


ただ、ですねぇ…私も本宮で着てますけど、凶悪なミニスカートの通称「たかお服」なのですよ。

https://x.com/725578cc/status/1868899380776124769


一応は船員、それも幹部船員に見えますけどね…。


まぁ、服装はともかく、今後の航路とか何やら諸々の打ち合わせがありますので、東京湾を出てもしばらくは船橋から離れられんのです。


なにせ、今回は通常の絹輸送航路と違って暗黒大陸東南岸のモザンビークに寄港する予定ですので、その打ち合わせに呼ばれておるのです。


それに、浦賀水道を抜けると制限航行速度12ノットを超えてよし、となりますから、前方を行く細身の軍艦である華厳号ともども、サブ推進機関のはずのヘリカル水流ジェットエンジンを起動して加速する予定なのです…。

https://x.com/725578cc/status/1869135707924770959


そうなると、船がかなり揺れるのは知っておりますので、それまでに色々済ませておきたいのです。


まず、本船の前を行く華厳号は、ヘリカルジェット水流推進機を起動しなくても、かなりの高速艦です。


この珠絹丸の二倍近い高速を出せる上に、海外領土を有していたフランス共和国の巡洋艦が原型ということで、凌波性能がもともとかなり高いそうですね。


しかし、今回の航海では珠絹丸に付き従ってもらわなくてはなりません。


幸いにして、華厳号の原型となった巡洋艦エミール・ベルタンは最高速度こそ35〜39ノットであるものの、普段の巡航航海では15ノット程度を推奨速度にしていたそうですから、最高速度こそ18ノットで華厳号に劣るものの、巡航速度が16ノットを維持することができた畿内丸を原型とした珠絹丸であれば、ほぼ同じ足並みで進むことができるでしょう。


そう、珠絹丸の原型となった畿内丸型貨物船、「太平洋の隼」の異名を取っており、同型艦ともども日本からは生糸、アメリカからは諸々の工業製品や鉄屑など様々な貨物を積んで西海岸と日本の間を往来する活躍を華々しく繰り広げた経歴のある船だそうです。


不幸にして太平洋戦争に徴発された全船が沈没して現存はしていないようですが、今も横浜に残る貨客船の氷川丸などと同様、太平洋航路に特化した設計の高性能船であったことが、まりりの目に止まったとお考えください。


で、この時代の東京湾または江戸湾。


東海道本線を通している辺りはまだ海岸だったところもあったのですが、埋め立てが進んでいます。


しかし、江戸前と言われるほどの魚の産地であった東京湾、連邦世界のように派手に埋め立てるかについては慎重にしようということで、幕府と打ち合わせつつ開発工事を進めております。


というのも、漁業補償の問題などが出ておるからです。


そこで、暴走…いえ、房総半島側…夢の国辺りから先については、連邦世界のように工業化を推進するのをちょっと待ったと止めて自然のままにしております。


で。


沿岸をある程度自然のままにしているということはですね。


当然…というべきか、漁船がいるんです、江戸湾に。


それも、1隻や2隻ではありません。


しかし、大型船の入港を横濱(よこはめ)港どまりにするのも、今後を考えるとよろしくはありません。


なにせ、今後はアメリカ海軍の航空母艦並みのサイズと喫水寸法を持つテンプレス級はもちろん、おおまかに言って倍のサイズのアークロイヤル級が不定期に入港してくることすらあり得るのです。


そこで、竹芝桟橋から、太平洋から見て浦賀水道入口の間について、一定の基準の大きさの外航船については先導船…パイロットランチによる誘導航行を必須としました。


そして一方で、漁船側については沿岸から一定の距離を超えて操業する場合は精気駆動船外機を装備することなど、漁船の方でも船を避けてもらう対策を義務付けたのです。


(で、東京湾の漁師については漁業手形持ちでないと処罰するとかいうはなしになったのですよねぇ…)


(横濱から竹芝までの漁場で稼いでいた漁師さんへの補償の話もありましたし…)


というわけで、我々の前を行く軍艦・華厳号の更に前には、吸不(すえず)運河や連邦世界のスエズ運河を航行する際の先導船よろしく、パイロットランチと呼ばれる種類になる小船が航行灯を点灯させるわ旗を掲げるわで、とにかく漁船と揉めないようにしながら進んでいるのです。


で、今の江戸湾にいるのは、何も漁船だけではありません。


先述した理由もあって、江戸と大坂の間はなるべく鉄の道にて荷を運ぶべしですとか、安治川口や名護屋港から江戸への貨物列車を頻発させる対策も行ってはおりますが、それでも直接、竹芝やその先で荷下ろし荷積みをしたいという話もありまして…。


ええ、従来は手漕ぎまたは和式帆船が多数行き交っていた江戸湾ですが、こうした近代化を受けて漁船のみならず一般船舶であっても、沿岸を除いては動力船以外の航行を禁止せざるを得なかったのです。


(もっとも、廻船は軒並みあの水流機関とやらを積み込んだものにされておりますし、南蛮の帆船においてもしかりでございますから、あとは小舟のみ…)


まぁ、こうした事柄について対処するためにも、犬飼葉子さんのように連邦世界、わけても国土交通省あたりからの出向者を受け入れて対応策を出すチームに加わって頂いておるわけですが…。


という訳で、私たちはとりあえず、茸島への航路につきました。


本当ならばまりりに依頼して、茸島付近への転送を依頼するところですが、船も初体験の弥助くんに色々と見せたいということもあって、通常通りに三浦半島を出て南下する航路についてもらったのです。


この後は、伊豆大島の西岸沖を通過しながら南下して、適当なところで転送をかける予定にしております。


(茸島のロビナビーチ桟橋への着岸は現地時刻で17時前後となる予定です…)


(ナディアさん、それ、ちょうど痴女島からの女官を乗せた帆船が入港する時間では…)


(貨物桟橋は離れているから、大丈夫と思うのですけどね…)


ええ、私たちが何を懸念しとるのかと申しますとですね。


茸島保養所を利用する女官のための船、現在は増船しておりまして、毎日1便が必ず、日没前に茸島の女官保養所や聖院学院神学部校舎に近い桟橋に寄るのです。


更には、その少し前に、海事部と文教局の合同運行となっている海洋実習船兼・淫棒茸(いんぽたけ)採集実習児童輸送船のエルトゥールル号も入港しとるはずなのです…。


もう、お分かりでしょう。


…未成年の方には絶対にお見せできないことが、その桟橋で繰り広げられるのです!


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まさみ「まさにそれをお伝えすべきじゃない」


りええ「あきまへん。闇堕ちマリアならともかく、せめてアルトさんの枠でないと」


あると「あたくしのおはなしで、ですか…」


りええ「天の声に書かせたい場合は要望希望、だそうです…」


なであ「まぁ、前にもさんざんお話がでておりましたかと…ほほほほほ」


あると(なでぃあもあそこでえろえろといろいろしとりますからね、ようしっておるのですよ、きのこ島のこと…)

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