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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど


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237/296

痴女宮よいとこ一度はおいで・1

「建て替え?」


瞬間、皆が一斉に顔を青ざめさせます。


ここは、痴女宮本宮の22階、幹部会議室。


その席上で、室見局長がそんな発言をなさったのです。


聖院暦105*年11月現在:痴女宮本宮21階以上概略

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本宮

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屋上庭園

24階ペントハウス

エマ子・カシウス・ロンギヌス居住室

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23階

貴賓宿泊室・貴賓食堂

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22階

幹部会議室・秘書課・内務局・準貴賓宿泊室

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21階

財務局・外務局・国土局(海事部含む)

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「ええ。理由は手狭…というよりも、財務局の規模が拡大しておりまして、オフィスの面積を増やして欲しいという要望があったからなのです。デルフィリーゼ局長」


「うむ。田野瀬副局長から話してもらう方が適切だと思うが、とりあえず私の方から概略を申し上げさせて頂こう。現状、財務局では旧・出納(すいとう)部を含めて組織を見直して再編した結果、内務局他と連携して痴女皇国財務計画を立案企画し予算策定と確保を行う財務1部、それから厚労局との連携部署であり、報償金他、女官給与の類を支給する担当部署である財務2部、そして旧・出納部を含む財務3部の3部署に分かれて業務を行っているのだが…田野瀬副局長」


「では、局長に変わりまして財務局副局長の田野瀬より説明申し上げます。このところの支部の行政支局や行政局への底上げと組織拡大に伴い、女官報償金計算業務の業務量が級数的に増加しておりまして、担当職員の増員をもって業務遂行を図らねばならない事態に陥っております」


ここで、南米や中米、そして欧州の行政局長連中だけでなく…ええ、フラメンシアと私までもが、田野瀬財務部長改め、財務副局長様にじろーっと睨まれたのです…。


「で、逼迫する業務量に加えて地下の旧・出納部オフィスを転用して業務に当たっている財務3部ですが、実のところこの部門も、昨今は業務量増加に伴って職員数を増員しておりますものの、地下に事務室が存在する関係で地上ほどには大きくお部屋を増やせない実情があります。ディアディリーネ財務第3部長」


「はい。地下ですからいくらでも穴を掘れば良いのではないか、穴さえ掘れば何とかなるだろう、穴であれば何でもいいだろうなどなどのご意見を頂いたディアディリーネですが…確かに私もそりゃそうだとは思ったのですが、意外な弊害を国土局建設部から聞かされることになったのです…室見局長」


何かこう、ディアディリーネ第3部長様の声と顔に怨念がこもっておられますが、おそらくこの方が一番に被害を受けているのではないか、そう感じます。


聞けば湯田屋系の方だそうですけど、お金に細かくて執念深そうなお顔です。


(どんな顔やねん…)


(フランスでも湯田屋の金融商人は嫌われ者だったのよ…)


「で、お話を引き継がせて頂きますと、この痴女宮本宮と、本宮構造を模した女官寮・罪人寮そして聖院学院棟は基本的に聖院開闢当時に初代聖院金衣テルナリーゼ様の指揮にて建設された構造そのままであるか、その構造を引き継いでいます。すなわち、高さ200メートルを超す地上20階建ての石造りのビルが基本なのです」


ええ。建築年次で細部に違いこそあれど、基本はそうだと前に教わったことがあります。


で、会議室正面の映写幕に聖院(せいいん)開闢(かいびゃく)記念(きねん)大堤(だむ)なる、どどっと長い堤防と、その前に立つ4つの黒光りする建物が写し出されます。


「この建物の元来の構造ですが、当時の女官の体から発せられる高熱による被害を防ぐために、聖院開闢記念大堤で堰き止められている聖院湖の水を利用して、常時、屋上から水を流すことによって建物や室内の冷却を行っていました。言ってみれば、直接水冷式空調を採用した驚異の技術に支えられて女官の暮らしと、いわゆる聖娼神殿の事業を行っていたのです。が」


と、水がざっばざばと建物外壁を伝って流れておる当時の映像が映し出されます。


そして、裸足またはサンダルが足元のこしらえである聖院女官が廊下を行き交う姿や、当時の聖院本宮ただ一棟だけの状態の時代の光景も。


「で、この建物ですが、水冷冷却だけでなく室内の水風呂兼水洗便器への給水排水を行うためにも、上の階と下の階の間に空間が設けられておりまして、通風による冷却効果増加も考えられておりました。つまり、連邦世界の高層ビルのように、外部と完全に空気を遮断した密閉構造でもなかったのです」


なるほど、天井の上を伝って流れる水や、廊下から外の光景と、外壁を伝うある種の噴水のような水が流れておるのを映像で見せられます。


「私はかろうじてこの時代の構造の聖院本宮、そして同等の構造だった痴女宮を知っているのですが、確かに裸足で過ごすのと、床が濡れていることさえ注意すれば、この暑い暑い痴女島の気候とは切り離された快適な空間だったことは事実でした。しかしですね…そこの上座に座っている、私の学友たる通称まりりでもある上皇マリアリーゼ陛下が痴女皇国初代皇帝の時代に、聖院事業を大きく変更して痴女皇国世界の地球各地への行政への干渉を開始したことにより、必然的に女官の数を増やすことを余儀なくされたのです」


と、今度は「あんた何をしよった」的視線がマリアリーゼ陛下に飛びます。飛びますが。


(痴女宮の増築はベラ子が皇帝に就任した直後の記念事業も兼ねて着手した話じゃんか…あたしだけの責任じゃねぇよ…)


(それ以前にまりりが痴女皇国を開いたことに起因してるんだから、ここはあたしの説明を聞きなさい…)

https://novel18.syosetu.com/n5728gy/47


ええ、お二人の内輪話の心話、あえてだだ漏れにしておられるようですね。


それはともかくとして、室見局長のご説明は続いております。


「まず、痴女宮に名を改めた聖院本宮と同じ建物を本宮前にもう1棟建設して、本宮の面積を拡大することから、通称第一次痴女宮改築事業は始まりました。そして、大型化した痴女宮と同じ構造の建物を東側にもう2棟建設して、女官寮と罪人寮に充てたのです。そればかりか」


で、今度は田中雅美・内務局長をじろーりと睨む、室見局長。


(あれはたのちゃんの思いつきが発案の根拠です!)


(ショタ飼育小屋の建設になるからって全力で賛同してた上にですね、当時の修学宮学長、どこの雅美さんだったかを音声できっぱりと言いましょうか…)

https://novel18.syosetu.com/n0112gz/39


(ううううう、ひどい、ひどいわ理恵ちゃん!)


(泣き真似してる前に私の話を聞いてくださいっ)


「で、聖院当時から存在した学究・研究施設であった修学宮。これを大きく拡充して孤児救済を含めた一貫教育施設とした聖院学院への発展が計画された結果、本宮西側にも本宮同等の建物が建設されました。これで、現状の痴女宮本宮を含めた4棟体制が一応の完成を見たのですが…マリアヴェッラ陛下、いえ初代様」


と、ここでマリアリーゼ陛下の隣にお座りのベラ子陛下の髪の毛が一瞬だけ青くなります。


「そうですわねぇ、エマちゃんが一瞬でこれらのたてものを複製してくれたのはともかく、ほんとうであればこれだけの建物をたててしまうと、後ろのだむがくずれてしまう危険があったのですわ…」


「つまり、聖院本宮とその背後の聖院開闢記念大堤は、同じ地盤の上に載っています。この地盤は、聖院湖がそもそも初代様の手によって造成された巨大人工湖であるが故に、硬質火山岩系の分厚い地層の上に載っておりまして、これほどの規模の方形ピラミッドの集合体とでも言うべき聖院本宮と、石造りのダムである聖院開闢記念大堤のみならず、聖院湖の水の膨大な質量を支えています。歴代聖院の墓所が地下深くに存在するのも、あまり浅いとこの基盤岩盤に穴を大きく開けたり掘った結果として、圧力が集中して岩盤が崩壊する危険があったからだとお伺いしております。これが、地下に地下室を増築することが難しい理由でもあるのです」


 本宮建物

 ↓ 聖院開闢記念大堤

 ↓ ↓

 ⬜︎⬜︎⬛︎⬛︎

 ⬜︎⬜︎⬛︎⬛︎---------

 ⬜︎⬜︎⬛︎⬛︎

 ⬜︎⬜︎⬛︎⬛︎  聖 院 湖

-------

||建物基礎層||

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/////////////////

//地 下 岩 盤 層//////

//高密度火山岩系岩盤//////

/////////////////

//地下24階墓所洞穴//////

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

/////////////////

地下100階(旧・ニワトリ研究室&生化学研究室)

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と、聖院湖とその前の堤、そして痴女宮の断面図とおぼしき絵が映し出され、室見局長の手に持った棒から放たれた赤い光が「ここやで」ということを示すのです。


「つまり、この痴女宮と、同じ構造の他の建物3つは、見た目以上に中身がスカスカなのです。この肉抜き軽量構造とも言える作りによって、必要以上に本宮建物の足元の地面に負担をかけないように考えられ建設されているのです…ですので、うかつな増築や改築はこの頑丈な大深度岩盤層はともかく、その直上にある建物基礎層と、そこに載っている聖院開闢記念大堤の崩壊を招きかねないのです…」

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