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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど


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葉子さんの異常な信仰 またはいかにして私は信心の対象を変え◯◯を愛するようになったか・1

皆様、おはようございます。


今日も大聖人様、そして上人様の教えを胸に刻み、お経をお唱えして参りましょ…。


すみません、昔の癖が出ました。


わたくし犬飼葉子(いぬかいようこ)、かつては仏教系の某・大手宗教団体の信者でした。


で、皆様の中にもその信者の模範的な生態をご存知の方がいらっしゃるかも知れませんが…ええ、朝は仏壇の前で読経、そして毎朝届く新聞は()()、しかも複数部数を購読するという云々の、信者の鑑のごとき生活を送っておりましたよ。


しかし、国土交通省に入省して、そんな信者生活兼・官僚生活を続けておりましたところですね、暫くしてから…下っ端に近いとは言えど役職を授かった後に、上司と共に別室に呼ばれたのです。


そこには、更に幾人かのお偉方がいらっしゃいまして、幾つかの質問を受けた後で。


「犬飼さん、あなたと佐伯さんには峯課長に随伴して出向して頂きたい場所があります」と告げられたのです。


ええ、その後にお偉方…私が入信していた宗教団体のお偉方でもあったり、はたまた非常に関係深い政党の党員であったり等々を存じておりましたが、要は、痴女皇国世界への出向です。


で、現地のレクチャーについてはなぜか宮内省が行うと言われたのですが、その前に私は緑の文字の会社の、黄色い電車しか停まらない駅から少し歩いた場所にある「会館」とでも言うべき大きな建物に、当時の上司である峯亜沙子(みねあさこ)課長、そして佐伯潮(さえきうしお)係長と共に所属官庁の公用車で連れて行かれたのです。


いいのでしょうか、これ。


しかも、連れて行かれたのは関係省庁や部門部署ではなく、その教団の重要施設です。


ですが、件の場所で、党幹部や教団幹部から受けた説明は、私の想像を絶するものでした。


ええ、痴女皇国とかいう国がどれほどにとんでもない存在か。


私は、この時に初めて知ったのです。


言い換えれば、そんな代物が存在していて、日本と交流がある。


そして、一般国民からは存在の認知度はともかく、その実態については注意深くぼかされている。


それは、幹部から説明を受けずとも、危険極まりないように思えたのです。


幹部の1人が発した言葉も、それを裏付けるかの如きものでした。


「かような存在が日本の主権を脅かし、皇居にすら出入りしているのは仏敵に等しい。しかしながら、向こうにも泣きどころがあるようだ。つまり…」


「その先は私から。あちらの世界の元々の文明や文化の水準は我々の世界における中世時代そのものであり、少なくとも20世紀後半の状態に引き上げる必要が生じているようだ。私たちに関連する部門に関わる件に限定するだけでも国土開発…特に交通インフラ整備の必要性が生じている、ということだな」


「すでに日本国内の自動車メーカーや鉄道事業者の大手には業務協力に応じたところも少なくないが、おかげで我々の関係者にはその内情や実態が明らかになっている一面があるのだ…峯くん、君がリーダーとなって、かの世界とやらに赴き、向こうの国土局とかいう部署が推進する交通関係の開発事業に協力して欲しいのだが」


「これは、仏の教えとしてだけではなく、日本という国家のためでもある。既にかの集団はフランス本社の企業にも協力関係の契約を締結するに至っており、このままでは純粋な日本技術の採用を継続するどころか、他国に新規の市場を蹂躙させることにもなりかねない」


「君たちの使命は言うまでもなく、最終的には、かの世界の隅々に至るまで仏徳を広めることにあるが、その前段階として、連中の推進する事業とやらに協力しつつも、関連団体や企業の誘引を図り、国交省…ひいては我々の影響力を増大することに注力して欲しい」


つまり要は、まず痴女皇国国土局の建設・建築事業に際して、我が教団の関係者の息のかかった事業者を優先的に紹介して付き合わせろ、と言われたも同然。


今にして思えば、なんて無謀な、としか思えない指令です。


しかし、この教団は前向き前向きと、とにかく前進の指示指令が出たら、特に下っ端は前進するしかない気風なのです。


そして、当時の私であれば、実際に崇拝尊敬しているかはともかくとして、教団大幹部や政党幹部のお歴々の「激励」と「助言」を頂けたことで、少なからずプレッシャーを受けていたのです。


それと…教団財務に伴う債務によって、それなりに懐が寒かった私にしてみれば、出向手当や財務免除のお誘いは、非常に魅力的だったのです…ううううう。


「いぬかいさんはぎゃくに、かいいぬのようにされておったのですね…」


それも、餌を与えてもらえない部類の、ですが。


まぁともかく、私にしてみれば千載一遇の好奇と思えたのも事実なのです、痴女皇国送り。


で、出発の前日でしたか、いよいよ明日は痴女皇国世界へ、という段になった際。


私は連邦軍横田合同基地内のゲストハウスに他の2人と一緒に泊まり、翌日早朝に横田を離陸する飛行機で、痴女皇国世界へ向かう船に送って頂くという流れとなりました。


つまり、日本を離れる最後の晩、私はもはや、通信管制を受けていたのです。


ええ、これから訪れる世界がどういうものか、そして何故に緘口令(かんこうれい)を敷いておく一面があるのかを知らされた私としては、その措置は妥当に思えますが、佐伯係長や峯課長は不満たらたらのご様子。


しかし、翌朝に乗せられた…いえ、載せられたというべきでしょうか…無骨な椅子、そして骨組みかなにかが剥き出しのままの内装で私たちを絶句させた海上自衛軍の輸送機、なぜか三河湾の沖合を航行する空母に着艦したのです。


これは、後に判明したことですが、その空母は貨物船としても機能しておって、ちょうどその時は三河監獄社から痴女皇国に輸出された自動車用の消耗品や部品が主な積荷であったそうなのです。


で、同社の田原工場に隣接する岸壁で貨物を積み込んだ後、痴女皇国世界の車両管理センターに向かうついでに我々を同乗させて向こうの拠点に近い港に送り届ける行程であることを明かされました、乗船後に。


そして、実際の乗船時間は絶対に1時間未満…下手すると30分未満ではなかったでしょうか。


というのも、向こうに行けばメディアウォッチは正確な時間を刻もうにも刻めなくなるということで、現地での受け入れ事務の際に向こう用のメディアウォッチを装着する流れになると言われておった私たち、正確な時間については船内の時計頼りだったのです。


いえ、カレンダーすら連邦世界のそれではなくなるとも。


とにかく、飛行機から降りて船の会議室のような場所に案内され、待っていたかと思えば下船連絡を受けまして…大きなエレベーターで荷物と一緒に下ろされたのは貨物埠頭らしい場所でした。


しかし、今度は飛行機と打って変わって偉い人を乗せるような豪華な内装のフランス製ミニバンに乗せられて連れて行かれたのは、巨大な石造りのビルが4棟、これまた三峡ダムかと見紛う大きさ長さのダムの前に建っているような場所。


それが聖院本宮改め痴女宮という建物であり、痴女皇国の本拠地だという事前知識は教えられていましたが、実際に半裸の男性や、時に全裸に近い女性が何人も立派な正門から出入りしているのを見せられては、改めて「ああ、そういう場所に来てしまったのか」と、またしても絶句するしかありませんでした。


そして出向者向けの受け入れ研修が始まったのですが、まず、女官寮に1人ずつ分散して入寮することや、実際に1週間は()()の業務を体験してもらうことを職場からも言われているので、申し訳ありませんが体験を研修過程に組み入れている旨、勅使河原という女性…そして、その上司で痴女皇国の女官を束ねる厚生労働局という組織の長である、青い髪が特徴的な外国人女性から申し渡されたのです。


「では、勅使河原室長…第二女官管理室長として、とりあえずこの方々を居室に案内なさい。更衣後はアフロディーネ女官長の元へ出頭し、研修を開始すること」


「了解しました、ベルナルディーゼ局長。アフロディーネ女官長…よろしくお願いします」


その時、直接の言葉はかけられませんでしたが、欧州系なのは確実な、桃色の服の金髪女性が同席しておられまして、その方がアフロディーネ女官長…後に、この方はこの方でとんでもない御仁だと知ることになりましたね…。


ええ、その厚労局長とか二代目様とか言われておる方についても、その時はものすごく尊大な人物であると思えたのですが、実際にとんでもない権力者であることが後に、判明したのです…。


ええ、何に対しての二代目なのか、その時は教えて頂けませんでしたが、まさか痴女皇国の原型となった聖院を立ち上げた神様の娘さんだったとは…。


そして、アフロディーネ女官長からは、寮内の管理については勅使河原第二女官管理室長、一般女官の業務や勤怠管理についてはリミルシューネ第一女官管理室長が担当であること。


最初の1週間は3人バラバラの状態で先輩女官と同室となって勤務してもらうことを告げられます。


で…勅使河原さんとアフロディーネさんのお二人が案内役となって、私たちをその女官寮とやらの居住階に連れて来られたのです。


更には、とりあえずとばかりに空き部屋で制服に着替えさせられたのですが、その際に、我々全員に手も触れずに若返りの処置をなさったのが、このアフロディーネ女官長。


ええ、若返った姿を鏡で見て喜んだのも束の間、桃色のお尻剥き出しで恥ずかしいまでの露出度の制服が強制的に、体にまとわりついたのです…。


この制服は体に自動的に合うように半生体素材が変形するからサイズ合わせは必要ないと言われたのですが、ええ…正直言って、BMIがちょっと太めな佐伯係長は激痩せ、逆にあまりふくよかでなかった私、犬飼の体はどこのアイドルとかグラビアモデルかという程度には色々変わったのです。


しかし、似合っているいないはともかく、他の皆様はよりは大人しく見えるものの、微妙に見せたくない場所が見えたり透けている代物を、無理に着せられたのです。


当時20代で、今もぎりっぎりな私はまだしも、佐伯係長や峯係長にはこたえるデザインだった模様。


BBA無理すんなと言われないだろう程度には若くされたのですから、文句は言わない方がいいと思ったのですが、口応えせずに黙っておきます。


で、その場で女官寮の規則やら備品支給品の取り扱い規定だのを教わったのですが、その後で問題になったのが、私たちが持ち込んだキャリーケースの中身。


下着も含めて着替えはほぼ不要、帰国する際のスーツくらいで良いとは聞かされていたのですが、事前に宮内省の担当課長さんからキャリーケース1つ以上の荷物はとりあえず持ち込めないと言われて、ここでも揉めていたのです…いえ、出向者向けの持ち込み許可荷物リストというものが既に存在しておりまして、その内容以外の物は荷物検査で没収または預かりになることも強く申し渡されていたのです。


ただ…ですね、私物を持ち込もうとしたのは、3人とも同じ。


ええ、化粧品や身だしなみ関係のものはまだしも、ちょっと言えないものとか…ただ、これらの物品はキャリーケースごと痴女宮地下の出向者向けトランクルームで預かると言われて、一安心したのは事実です。


しかし、経典やら数珠などの仏具については持ち込み禁止を申し渡されました。


で、実際にあてがわれた自室に置ける私物、ほとんどなくなっていたのです…。


そして、全員がキャリーケースを引っ張って連れて行かれ…いえ、面倒がったアフロディーネ女官長が転送とかいう技術で私たちを一気に地下の奥深い場所へ連行したのです…。

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