淋の森うらばなし…理恵ちゃんは見た!・6
ああ、なんという話なのでしょう。
この室見理恵、男運が悪いと言うよりは「ない」部類だったなんて。
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困った話とかそういう次元ではありませんよ。
しかし、思い当たれば確かに、閃くものがあります。
そう…わたくし室見、女の敵は女とばかりの振る舞いをしておった女官長時代。
そして、痴女宮の男と言えばほぼ、罪人ばかり。
私の上半身では誠心誠意、労働環境を整えてあげる部類のお付き合いをすべき方々ですが、個人的には下半身のお突き合いにあまり気が向かない部類の方々ばかりだったのです…。
で、国土局長になったかと思えば、仕事で接触する男性、これまた片端から技術系。
ダンジョンに出会いを求めることの是非を問うよりも明瞭明白に、男女の仲より製品なり製造物なり提供技術に対する安全性や性能面での責任感を追求する部類の方々ばかりなのです。
まぁ、これも仕方ないかも知れません。
製造物の瑕疵が見つかったが最後、責任追及が始まって、担当者や責任者であったとされた場合は下手するとそこで人生が詰むのが、公共輸送機関に関わる宿命。
真剣に、真剣にあの人たちは真面目に振る舞うしかないのです。
そりゃ、昔は仮眠所や宿直室に一升瓶がゴロゴロしてたよなぁとかうちの父である室見幸蔵、しみじみと申しておりましたが、台車や車体台枠のヒビが発見されただけでも大騒ぎなのです。
しかし、それも仕方のないこと。
そもそも欠陥があるものを納品すること自体がダメというのは、およそ鉄道だけでなく、人が工業製品を作り出した時から…いえ、職人という製造職が誕生した古くからの基本常識でしょう。
ですが、ごく一部…イタリアにかつて存在した会社で、現在は通称:この木何の木社のイタリア支社となっておりますが、この会社以外はまぁ、まとも…昨今はドイツの会社が割とダメダメかな…ともかく、割と大真面目に仕事に対して向き合う部類の方々とばかり、仕事をさせて頂いておったのです。
そんな私が、偽女種の生態実態を知って女官に扱いを指導してもよいものなのか。
(理想の偽女種を説かないなら、大丈夫ではないでしょうか。そもそも、女官というのは男への理解力を高めるための幾つもの手段を持っていたはずです)
こう、言い切るのは中米行政局長のフランシスカさん。
メキシコのTV局のお天気お姉さんからそのキャリアをスタートさせて、ニュースキャスターや、あわや麻薬組織の首領の愛人とか色々あって、痴女皇国世界のチンボテ製鉄所を管轄するチンボテ支部長やら何やらを経験した後、生まれ故郷のメキシコと同じ場所となる中米の長として君臨するに至った御仁…いえ、中米地区を襲った地震やハリケーン災害の後の大混乱に乗じてメキシコを乗っ取った痴女皇国の戦略の一環とはいえ、なんとメキシコ暫定政府の大統領にまで昇り詰めておしまいになった方です。
そして、様々なタイプの男や女の扱いにも慣れておいで。
中東や東欧のベテランかつ、うるさがたの支部幹部の皆様からの受けもよく、南洋行政局のオリューレさんの対極にある人…とんとん拍子に出世しちゃった部類なのです。
しかし、仕事が出来るか出来ないかというと、出来る方ですね。
(あたしの乱暴ルギーニをお貸ししても無傷で戻してくれる。これだけでもオリューレさんの上、なのです…)
(ダンケ号なら何とか一人で動かせるようになりました!)
(それで当たり前なんです!)
ええ、時速300キロ以上出せる車を普通に扱える程度には、車にも慣れておいで。
聞けば、メキシコもアメリカ同様にクルマ社会。
そして、それなりの家柄に生まれて収入や職業もそれなりだったフランシスカさん、アメリカ製の高級大型四駆やミニバンに何かを引っ張らせるような運転をすることはもちろん、テスココ湖に浮かせた三河監獄社の高級クルーザーの操縦までおできに。
しかも、南米行政局…淫化帝国におられた当時から、この室見とも顔馴染みではありました。
ご本人曰く「メヒコの民であれば、受けた恨みや屈辱ばかりでなく、恩も忘れてはならないのです…」だそうですが、面倒見が良い部類なのは、部下の方々の評判からもわかります。
何せ、麻薬組織に囲い込まれかけた当時の下っ端少年たち、よほどのタマ以外は基本的に救い出されてフランシスカさんの配下になってますけど、悪口を聞いた覚えはないのです。
せいぜい、姑的な行動をされて困っているディアネさんとビエルネくんの、実質夫婦くらいですかね。
(あの二人が私の気に障ることや注意せざるを得ない事ばかりやらかすからなのです!)
(あの就寝中の夜這いなんか、お義母様の虐待の代表行為です!)
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メキシコ合衆国の内部、特に罰姦聖母教会に絡む話はともかく。
フランシスカさんは、こうも言われます。
「セニョーラは男と突き合わなくとも良い立場、後継も残されているのですから、あとはご自身の人生を生きればよろしいのではないでしょうか」
つまり、無理からに男や偽女種と付き合う必要もない、とまで言い切られるのです。
私としてはいささか、寂しい話ではありますが。
ですが、痴女皇国の警務局に勤務する幹部騎士たちも、類似のことを私に言うのです。
男あしらいはそれをする部署や人間がいるのだから、と。
文教局扱いの少年たちや、聖母教会で管理していることが圧倒的な偽女種にしても然り。
何も専門外のことに、無用な口出しをしなくても良いならば、それに越したことはない、とも。
これは、海の男たちを扱う海事部や、警務局扱いではありますけど実際には海事部の下部組織になっている紺碧騎士団の団員からも言われております。
そして、その手のことを言われている場面では、この室見の下半身のあたりに、彼女たちの頭が存在する状態なのです…。
ええ、国土局長として、部下となる人物の寿命延長措置を行なっている最中の世間話なのです。
または、ダリアに代わって、同様の任務を警務局の幹部騎士と繰り広げておる時の話なのです。
つまり、割と色々と本音がだだ漏れする場面。
ですから、彼女たちの忠告はある意味では正しいのでしょう。
しかし、今後は犬飼葉子さんという方の育成に少しばかり、関わらなくてはなりません。
(イヌカイは自分を貶めた者ばかりではなく、教団幹部やその子女が献金や…精気に該当する不可視の福利を呪術めいた行為で吸い上げて私腹を肥やしておることにも恨みを覚えておるとか…)
です。
実態を知ってしまった犬飼さんの恨みは深く果てしないと言っても良いくらいに、怨念と憎悪が成長しているのです。
(良いじゃないですか。メヒコのカルテルだって、それが良いか悪いかは別として過酷な報復をしておったのです。それに比べれば、命を取らぬだけでもましな処置でしょう…橋の上から吊られたり、首を狩られ飾られないだけでも人道的な処置に思えます…)
そう、犬飼さんに申し渡されている厳守事項が存在するのです…「殺すな」という、たった一言、が。
(まぁ、いざとなりましたら、我がメヒコ陸軍の特殊部隊をお貸ししますよ…)
ええ、フランシスカさんも物騒な事には慣れておられます。
その標的が、神戸の山の手に豪邸を構えていたり、はたまたタワマンどころか高級分譲や、あるいは都内の大邸宅に住む立場であっても、痴女種にとって拉致すること自体は、全然、困難な仕事ではないのです…。
そして、フランシスカさん自体が、そういう行為で潜入して破壊工作や諜報活動を行う黒薔薇騎士団の団員資格を貰っている、まさにそうした工作を自ら行ったり、あるいは陣頭指揮が可能なお立場。
(まぁ、日本の警察や自衛軍が後で騒がないようにさえして頂けますと、私一人でもそれなりの成果、出して差し上げますね…もっとも、アルテローゼ局長辺りは大いに乗り気で荒事に協力なさると思いますが…)
ええ、乳上も今や東京には詳しい上に、その手の対外作戦や正規戦のための赤薔薇騎士団の一員です。
ですから、犬飼さんの昏い願望や怨念を成就する吉報…と言って良いのでしょうか…は、遠からず近からず、私にも聞こえて来ることでしょう。
そして同時に、日本の治安を疑問視する声も少なからず上がるかも…いえ、その声は大きく広がることはないかも知れません。
何せ、日本の報道や言論分野にも…痴女皇国の息は浸透しているのです、こうしている間にも。
今や、ニチアサ枠のビューティーツインズで、他局が放送している類似の競合番組をいじった内容が流れても、大手制作会社が訴訟だ謝罪だと大騒ぎすることはない、と断言できる状況らしいのです。
(だって、両方の会社とも、今やリーゼ姉が社主みたいなもんだしね…在京TV局の株だって、高木まりあ社長のテンプレス・メディアホールディングスが各社20%から40%以上は株を買われてるし…)
(まぁ、おかげで痴女皇国に関するほうどうについてはもちろん、あたくしたちの足をひっぱるげいのうプロダクションのたぐいはもはや存在しないもおなじですわよ…なにせ、うすい本を売るかいじょうでさえ、民営化したうえでリーゼ姉の会社に保有させておりますし…リーゼ姉に逆らえば、どこの会場だろうとそくばいかいは開催させてもらえませんし、まさみさんのサークルの敵になったかたは何をうることもできないはずですわ…)
ええ、雅美さんが何かあるごとに口にしている「民主主義が痴女皇国世界の…そして人間社会の制度の終着点じゃない」という件ですが。
意外に早く、連邦世界の日本がそうなってしまうかも知れませんね…。




