ああ無情にもパリは燃えているか -Il ordonna impitoyablement l'incendie de Paris.- 10
で。
実のところ、前回でお話ししましたフランス前王妃の失踪劇。
娯楽助平映画「Le cirque de marionnettes…あやつりサーカス」なるタイトルをつけられ上映されたのです。
当然、この出来事は本当なのかという問い合わせがあちこちから来ました。
しかし、この映画からはマドリードに本社を置く「アヌス映画社(Anus Films)」なる会社が撮影したことにされました。
(ゴダールの設立した映画会社名のもじりだってのは内緒で)
(それで社長名がラズロ・コヴァックスになってるのね…)
(確かアヌーシュカって、アンナ・カレーニナさんのアンナのロシア語の相性で、安城◯鳴子さんの相性と全く関係がないのでは…)
マリアリーゼ陛下やベラ子陛下やマサミさんのお話の内容はようわかりませんが、とにもかくにも架空映画として一連のお話は世に出てしもうたのです。
ですが、真相を確かめようにもアメリカ大陸は北の金田国の森の奥深く、北米最強とも言われる巨大な熊や、はたまた痴女種でも百人卒以上でないと一撃昏倒は難しいと言われる巨大な鹿が生息している場所です。
おまけに冬場は雪も深く、痴女種女官の能力なくば到達も困難とまで言われる山の中の林業村。
そりゃそうです、余計な妹がくっついてますけど、恋人同士で過ごしてもらえるように場所、選んだんですから。
それはともかく、この映画社の代表監督のハンス・リュカスなるフランス人。
実は、実在しません。
(これもゴダールの別名なんだよね…)
(ねーさん、まさかゴダールその人の登場はあり得るんですか…それでなくてもバタイユ氏やシトロエン氏がこの時代に現れるだけでも)
(安心しろ、今、コメリカ大陸でエジソンとテスラが争ってて、か◯んちゃんにだけは絶対に◯◯◯を生やすってテスラさんが生やし屋になって言い張ってるから)
(余計に色々ダメじゃないですか!)
で、言い合ってるところ申し訳ないのですが、うちの実父のジョルジュ・バタイユだけでも未成年の皆様には全ての行状をお伝えしたくないほどに、公私全般に亘って爛れとるのですけど。
一言で言うと、元来の奥様ですけど離婚して故・サド男爵に嫁いだ結果、未亡人となったシルヴィア夫人はもちろん、元来はサド侯爵夫人であったルネ夫人に、更にはルネ夫人とアウグスティーナ総統の間の隠し子であるイプルディアをも加えて、くんずほぐれつ。
心話はもちろん、実父の感覚すら迂闊に共有したくはないのです。
ええ、向こうでナニやってるか調べてから繋ぎたいのです、いろいろ。
では、もしもゴダールという頭髪の生え際が気になる頭部の人物が、痴女皇国世界に現れたらどないなるのでしょうか。
はい、マサミさん。
(あまり一般ウケする映画は撮らなかったかも知れないわねぇ…実質的なデビュー作とも言える「勝手にしやがれ」はアウトロー映画が受けた年代の作品で注目を浴びたけど、そのあとはフランス芸術界や思想界が喜びそうな難解かつ抽象的な内容が多かったから…あ、気狂いピエロがあったか…)
ふむふむ。
(ちなみにゴダールの作品はバタイユの著作の影響がないとは言い切れないのよね…「勝手にしやがれ」の主人公はハナっからお尋ね者だったけど「気狂いピエロ」の主人公は悪女にたぶらかされて悪の世界に入っていくのよね…)
その狂ったピエロとやら、全力で、どこかで聞いたようなお話ですね。
で。
その、悪女にたぶらかされて変態と好色の道に入っただけでなく、その道を爆走している不肖の父親ですけどね。
…また、撮るんかい!
ええ、しばいたろかと思いましたが、とりあえずどういうモンなのか、脚本が回って来ましたから、内容は知っています。
というかパリ市内での撮影許可を申請して来られたからには、私の立場上、検討せざるを得ないのです。
しかし、今となっては私よりも、もっと検討せざるを得ない奴がおりますので、遠慮なく仕事をぶん投げます。
「という訳でテレーズ支部長見習い。検討の上ロントモン歌劇団改めイスパニア王立過激団事務所に許可の可否を連絡してください。アヌス映画社の事務所もそこに同居してますから」
「何で私がぁっ」
「いいことテレーズ。あんたが次期フランス女王…つまりパリ支部長になるための試練…そう、これは厳しい試練の一環なのよ?」
「どこが試練なんじゃあっ」
「とりあえず脚本読んでみ…絶対に公共の場や公道でさつえいをする事を許したくなくなる内容、最低1箇所はどっかにねじ込まれてるから」
「フラメンシアが読んでよ!」
ちっちっちっ。
「私は今やフランスじゃあ2番なのよ…南欧行政局パリ支部開設準備室長…つまりパリ支部長であるあんたを後見する立場に一歩後退二歩後退したのよ?」
ええ、そうです。私でも司法警察権、黒薔薇権限で発動できますんやけどな。
それやったらこいつがいつまで経っても楽、しますよってな。
で、一応は私も、脚本、読んどきます。
まず、タイトルは「Le dégueulasse Pierrot(最低ピエロ)」となっとります。
これだけで何か、嫌な予感がするのです。
しかし、我慢して読み進めましたけどね。
(母様。パリ支部担当者として強固に要請します。パリ市内の銃撃戦シーンとか正気ですか)
(そんなもんにいちいち構ってられませんわよっ)
(それはアウグスティーナ閣下のセリフだす。南欧行政局長の地位を譲れる人間が輩出されたのをいいことに名目だけ引退してサルスエラ宮殿でアレ三昧するのみならずパルマのモンレアーレ修道院やイビサ保養所他各所随所から文句が出るようなことやっとるヒマがあったら、こんなシーンを撮影できるもんか検討の材料になってもらいまっせ、バタイユ父様共々…)
ええ、私は黒薔薇権限すら発動して、父母を呼びつけました、パリに。
もちろん、パリ観光させるとか娘として殊勝な親孝行に励むつもりは毛頭ありません。
実は、その映画脚本、冒頭でパリ市内…それもよりによって、モンマルトル丘下の有名高級キャバレー「紅風車」の店の前で銃撃戦とか、あげくサン=ドニまでの間のかーちぇいすシーンとやらが発生する内容だったからです。
で、先日のルイ16世陛下の葬儀でも登場したこの、やたらと屋根が低い変なでっけぇ車。
これの持ち主の悪徳富豪…コルシカの犯罪組織の影のボスが、こいつで紅風車の前に颯爽と現れたところを、主人公率いる強盗団に銃撃されて車ごとカジノの売上金を奪われるとかいう冒頭だからです。
で、実際の紅風車の前でそんなシーンが撮れるのか。
とりあえず私は、この、ビュシアリというくるまそのもののドンガラ、マリアリーゼ陛下経由で撮影用のれぷりかとかいうことで複製してもらったのです。
えんじんがついてないか、さもなくばぶっ壊す前提で、最低限度の移動が可能なえんじんをつけているとかいうものです。
そして、私は黒薔薇能力で父母を拘束しましてね。
んで、完全にドンガラではりぼてな一台の中へ父母をむりやりに押し込むと、そのドンガラをコンコルド広場に押していったのです。
「ええですか父様に母様。よりによって銃撃戦とかかーちぇいすとかいうシーンを市街で撮影すると、こういうことになるのを体験いただきます。その上で、映画脚本の修正をなさるか、はたまたマドリードの街中でのロケに変更なさるかをお伺いしたいって思うのですよ」
ええ、テレーズとソフィーがビビっとるのですが、私の手にはみみみとかみにみにとかいう、きかんじゅうが存在します。
かつてこの近所でルイ16世陛下を狙撃しようとした連中が持っていたミニエー銃のはるか子孫だそうですが、あれなんぞとは比べもんにならんくらい高速で、しかも連発式なのでぱぱぱぱぱぱんっとタマをぶちまけられるのです。
しかも、私の横におるクララ姉様とカタリナ姉様は、FA-ますかきとか、シュタイアンアンAUGとかいう、へんてこな形の銃を渡されとります。
とどめに。
「ええかっフロリカサシアドリナ、あんたらもおんなギャングの役柄やろっ。てっぽうのしーんもあるんやから、その練習やおもて全弾たたきこめ!えんりょはいらんからな!)
ええとですね。
河原くのいち三人衆にも、てっぽう、渡してます。
しかも、ジョスリーヌ団長の持っておられる手持ち銃でFN-57とかいうのがあるのですが、それと同じたまを使うP90という、ピンク色に塗られたくっそ変態的な形のてっぽうを、河原くのいちの三人には握らせとるのです。
ええ、これはあくまでも映画のためのてっぽうの練習、練習なのです。
そして、コンコルド広場でやることで、通りがかった皆様にも楽しんで頂こうという趣向。
ええ、公開処刑にはならんのです。
なぜか。
母様は万卒かつ、吸い取り限定一千万卒の痴女種になってます。
そして父様は父様で、偽女種です。
ジョスリーヌ団長いわく、これだけのてっぽうのたま、それも当たったら普通の人は死ぬたまでも死なないそうですから、練習にはちょうどええでしょう。
ええか。
あんたら。
情けは無用や…むしろ、貴重なてっぽうの練習の時間やから遠慮なく撃ち方を覚えるんやぞ…わかったら撃ち方、はじめ!
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いざべる「こんな子にそだてたおぼえは」
じょるじゅ「こんな子に育ててすらいない予感」
ふらめ「つか父様、私の育児にまともに関わりましたっけ?(青筋ビキビキ)」
マリア「いかに外観だけ複製したドンガラとはいえ、もったいないなぁ…」
じょすりん「しかもCZ-57やP90の専用弾って結構お高いのですよね…」
ふらめ「えいがとはお金が湯水のようにでていくとお聞きしましたがぁっ(ガンギマリ)」




