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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど


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222/296

ああ無情にもパリは燃えているか -Il ordonna impitoyablement l'incendie de Paris.- 9

サン=ドニ大聖堂の地下納骨堂。


真新しい二つの墓碑が並んでおりますが、左の1つには上に、青いアイリスの花が置かれております。


そして今…白い百合の花が、向かって右側の、より真新しい墓碑の上に置かれたのです。


これ、R18版でもお話しした通りでして、聖母教会で説かれております不殺の原則に反する可能性がありますので、本当ならば非推奨行為です。


しかし…短期間のうちに両親を亡くした悲しみを辛抱している遺児たちのためを思って、この献花は許可されました。


(で…ジョセフ君とシャルル君に真相は話すの?)


(少なくともある程度の年数経過が必要でしょうね…)


(まぁ、ほんとうのことを知ればふたりは怒るかもしれませんわね…)


そして、我が愚母悪母であるイザベル・ド・バロイスまたはエリザベート・デ・ヴァロワ。


さすがに、幼くして残された子たちのためにも、フランス王国を乗っ取るが如き強引な策略は控えて、テレーズ王女と17世となるジョセフ王太子、そしてルイ18世ことシャルル王太子(ドーファン)を立てたのです。


(こっちの歴史じゃ18世になるルイ・スタニスラス・グザヴィエは王位を継承しないんだよね…)


で、なぜ17世と18世を同時に名乗らせたのか。


幼い王兄と王弟、ふたりの王をふたりの王女が支える形で、世の同情を買う。


そしてヴァロワ家直系の我が母が後見となって、フランスの名目治安を安定化させる意味合いがあったのです。


で、R18版をお読みになれない方へ。

https://novel18.syosetu.com/n0112gz/360/


実のところ、テレーズやソフィー、そしてジョセフとシャルルの実母…すなわち、アントワネット様は、存命なのです。


では、このサン=ドニの事実上はフランス王家専用とでもいうべき墓所に埋葬されたのは、誰なのか。


(パパン…ルイ16世陛下は本当に、お亡くなりになりました…)


(しかしテレーズおねえさま。パパンはとくしゅなひつぎに入っておって、もしも生き返る技術がかいはつされたばあいにはよみがえるとも)


ええ、淫化皇帝アヤ・マンコ陛下や、あるいはジャポネのサムライであるケイジロウ・マエダ様並びに従者一行と同じ扱いとされたのです。


ですが…彼女たちの実母は、ある意味では身を隠してでも人生をやり直すことを希望したのです。


そして、ルイ16世存命時代からの公認愛人であったハンス・アクスル・フォン・フェルセン伯爵と、その妹で貴族未亡人のソフィ・パイパー夫人の3名は、痴女皇国の手引きで北米に新しく出来たフランスと英国の流れ者が主体の国家である金田国に逃れたのです。


ですが、その見た目は3名とも若返った上に、以前の面影は敢えて無くされた状態。


恐らくは経緯と現状を知るテレーズ…そして痴女皇国でも関係者以外には、元王妃殿下や伯爵、あるいは伯爵夫人とすぐに判別することは容易ではないでしょう。


そして、アントワネット様やフェルゼン様兄妹に用意された新しい人生とは、金田北部奥地の林業村の管理。


しかも、労働人口のほとんどを出稼ぎ者や痴女皇国と金田・アメリカ合()国政府などが手配した者たちに頼る…いわば、冬場の定住者がほぼ、存在しない特殊な村なのです。


ですので、万が一にもアントワネット様やフェルセン様兄妹が、そうであると第三者には察せられぬように、二重三重の防諜が図られました。


しかし、実子である4名のお子様方には応える話でしょう。


という訳で、内容と方針を変えて我らイスパニア・ヴァロワ家3姉妹は引き続きフランスに駐留することになったのです。


ただ…お住まい、変えました。


「ふははははははははははっ」


「フラメンシア!あんた何でよりによってグラン・アパルトマンを私の部屋に振るのよ!」


「へぇーっへっへっへっ、フランス王国の公式後継者指名を預かったからには、あんたがこのベルサイユのあるじ…主にはふさわしい場所に住んでもろたまでよっ」


「ソフィー!代わってお願い…」


「ねーさま。ねーさまは王妃か女王、どちらかとなられるおたちば。すなわち、もんどうむようでいちばんえらいお部屋にいくべきです。しかし、パパンのおつかいだったお部屋は、おとこむき。となれば、フラメンシアさまのきめたおへやわりが一番よいとあたくしにもおもえるのです…」


と、けんもほろろに妹に断られる有様なのです。


(なんで後の世のフランスの首班がエリゼ宮に住んだか、なんとなくわかるわ…でかすぎんのよ、ベルサイユ…)


(ぶっ壊すか縮小してもいいのよ…と思ったけど、それやるとヴェロニクさんやジョスリーヌ団長が血相変えると思うわね…)


ええ、オリエンテ宮殿に馴染んだ私でも、その倍からの長さのヴェルサイユはでかすぎるのです。


(それにさ、オリエンテは行政宮殿でもあるから、役人や騎士たちも使う部屋の存在を考えると、王室として使ってるお部屋はもっと少ないのよね…)


(イザベル母様がサルスエラに住むこと前提に、オリエンテの王室区画は最小限にしちゃったからね…)


そういう事情もあって、あの長く広い上に全てをフランス王室のために割り振ったかのようなヴェルサイユ、私たちにしても使い勝手が甚だしく悪いのですよっ。


しかも、作り替えるかぶっ壊すかしようとするには反対者多数。


で、私フラメンシアはどないしたのか。


小トレアノンをもらいました。


ええやん。


これくらい小さい方がええわ、わし。


(フラメンシア…あたしたちに男世帯の大トレアノン、押し付けるわけ…?)


なんなら他の宮殿、つこてもろてもいいですよ。


しかし、私のヴェルサイユ快適化計画、またしても暗雲が立ち込めたのです。


なぜか。


それは、夜の騒音。


移築されたヴェルサイユでは、愛の神殿が小トレアノン宮のすぐそばに作られたのです。


そして、愛の洞窟も、どういうわけかその近所にっ。


で、ヴェルサイユ本体の鏡の間でやっとる夜会。


あれ、色仕掛けのためでもあるのですよ。


そしてですね、宮殿内のトイレは大幅に増設したり水洗化したために悪臭はなくなりましたけどね。


今度は、参加者のための愛の語らいの場をどこにすんのよって話も出たのです。


そして、あの超絶にだだっ広い庭園の半分どころか三分の一くらいにまで縮小された後庭が新築され、トレアノン宮もその新庭園の中に存在します。


ええそうです、今度は夜に寝たら周囲の「下半身で愛の会話を続ける」声や音に悩まされるはめになったのですよ…。


ほんま、ベルサイユの周りを埋め尽くすらぶほを作ってもええから、なんとかしたいのです!


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ふらめ「ちなみに地下室は却下されました」


よしふみ「この時代のフランス、調理室は地下にあることが多かったんです。で、ベルサイユもその例に漏れずでして…」


マリア「つまり宮殿の地下は倉庫だキッチンだとか色々あるんだよ。それに、近代設備を納めたりトイレの水洗化を図るためにも、地下に機械室やら受水槽やら汚水槽を設ける必要もあってね…地下にアレ部屋を作りづらいんだよ…」


ふらめ(ちなみに愛の洞窟ですけどね、やはり秘密のアレ部屋作るっちゅうよりは、ベルサイユの悪臭を嫌ってあんな洞窟作った可能性があるんですよね…)


マリア「やっぱり生活のためのインフラ整備と動線配置ってさ、建物作るのに重要だと痛感するよ…欧州の城や宮殿を見てると…」

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