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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど


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221/296

ああ無情にもパリは燃えているか -Il ordonna impitoyablement l'incendie de Paris.- 8

夜のパリに煌々と光る、赤い風車の看板。


モンマルトルの丘の下に広がる、富裕層向けの地域に開店した高級キャバレー紅風車(むーらんるーじゅ)の開店は、パリ住民にもそれなりの衝撃を与えたようです。


----------------------------------------------

巴里夜遊び略図 ●=高級キャバレー紅風車

        ◎=米風キャバレー狂い馬


    ↑カレー・ロンドン・通路・球根詐欺

サン=ドニ||   モンマルトル地区

地区  ||   ●

 ◎  ||  ====>ストラスブール

    || ||

    ⬜︎⬜︎→サンラザール駅・北東駅

←ブローニュ分館   ヴァンセンヌ娯楽館→


ベルサイユ ティルリー宮

  ⬜︎⬜︎  ⬜︎ ⬜︎ バスティーユ→

  ⬜︎エリゼ宮 ルーブル宮


=====セーヌ川======

  ⬜︎廃兵院

----------------------------------------------


曰く、お貴族様や金持ちの事しか考えてないのか。


そしてパリの住民でも、所得階級によっては断絶めいたものがあったようでして…。


ですが、数日後に開けられたサン・ドニ地区の新しいお店。


このお店は、米大陸のニュー・ヨークなる町で店開きした新しい風潮を取り入れ、比較的遊びやすい大衆店とされました。


そしてこの両店は、狙う客層を見事に分けて開店したのです。


なにせ、サン=ドニ地区の移転とカイゼンは痴女皇国とフランス王国の共同事業とされているのを喧伝しております。


そして、北東駅に降り立った外国人や国内旅客で、富裕な者はモンマルトル方面へ。


大衆向けの宿や飯屋を求めるならばサン=ドニへといわんばかりの街づくりが為されたのです。


例えば、朝からブランデーの一杯もひっかけて仕事に向かう職人や労働者のための立ち飲み酒場。


あるいは、仕事を終えたこれらの第三身分でも低い地位にいるものが利用しやすい価格で、安ワインやビールにステーキやカツレツを出す飯屋。


更には、外国の味を喧伝する中華料理や民兵料理に、英国発の天竺風カレー屋などもその独特の匂いで客を誘うのです。


(これ、英国との合同でやったんだよな…外国の飯を出す地域も作って、週末はロンドンやパリに遊びに来いって感じでさ…)


それと、この時代は珈琲淫(かふぇいん)の方が流行の主流になっておるそうですね。


(海賊共和国上がりの連中がアフリカや南米航路に入ってくれてるからさ、高速輸送帆船を投入しやすいんだよね…不吸(すえず)運河は早くから作ったけど、そこから先の茶の産地で安定供給を図るにはもうちょっと時間がかかるかな)


で、私フラメンシア、マリアリーゼ陛下に連れられてサン=ドニのカフェを訪れておりますが。


今、マリアリーゼ陛下が申された、高速輸送航路なる船の運用。


カティサーク型他、今や旧式となりつつある動力帆船の使い道を模索しておられたところ、快感王(かかお)や珈琲淫などの豆として出荷されるものであれば、袋詰めして送り出しても採算的には割が合うとのお話です。


なにせ、増大する貨物量をさばくために、今や各地の港では動力機械や、クレーンとか申す荷揚げ櫓を使うのが主流。


ついこの間まで帆船がひしめき合っていたというカディスの港も、今や帆なしと言われる動力船ばかりを見かけるようになってきております。


ですので、機械による荷役や荷扱いが難しい帆船ですと、積み下ろしにはどうしても港湾人夫を多数、必要としますので人件費の点では不利になってしまいます。


(それとさ、構造上…たくさん積めないんだよ、貨物…ゆり丸型で運べる量、カティサークだと改装しても10隻は必要になるんだ…)


そら、あかんわ。


船に詳しくない私でも、この数字には絶句するしかありません。


今や量産が続くこの小型貨物船、地中海でもよく見かけますし、貨物も旅客も運べるという事で、バレアレス諸島への航路はもちろん、蒼海島航路にまでもが、この船は就航しております…。


ですが、大規模な港を設けるのが難しい産地であることも多い珈琲淫や快感王の輸送にはまだまだ使えるとの事でして、帆船乗員が多い海賊共和国としても使い勝手が良い船のようです。


で、我がスペインはもちろん、パリでもロンドンでも増えておるカフェあるいはコーヒーハウス。


ここで、球根詐欺発という液体快感王たる効好嬌(ここあ)や黒い珈琲淫(かふぇいん)茶を飲めるのです。


それと、この帆船群は砂糖も運んできます。


ええ…苦い効好嬌や珈琲淫を嗜むためには、必要不可欠と言っても過言ではない、あの白いもの。


あれの処理前の粗糖も積んで来るのです。


更には、料理学校で編み出されたという大衆向けの菓子の普及も、こうしたカフェの利用向上に役立ちました。


いわゆる菓子パンという部類も、モンマルトルの丘下のみならず、サン=ドニのパン屋で売られるようになったのです。


「連邦世界だと奴隷を大量に使役して初めて成し遂げられたことだからねぇ…」と、感慨深げに申されるマリアリーゼ陛下。


「それと、快感王や珈琲淫を提供する事で、売春事業も盛んになりますしね…」


「人聞きが悪いよフラメンシアちゃん…淫化の効果淫と同じで、股間だけじゃなくて全身を元気にするんだよ、あれ…」


そう、労働者にも珈琲淫や快感王を与えるように量産効果とやらを狙っておられる理由がこれです。


労働者向けの料理屋やら安酒場もそうですが、痴女皇国は聖母教会荘園からして「働く者の楽しみ」を与えることに熱心ではあると思えます。


(聖院時代からの伝統だよ。飯がうまくなきゃ働く気も起きないし、綺麗なおねえちゃんにちやほやされてぇだろ、男ならって考えなんだよ…)


「ですよねぇ…しかし、フランス王国側はあまり気付いてはいないようですね、このサン=ドニ地区、本宮の罪人寮や工場のやり口を丸ごと応用しているようなものだということ…」

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