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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど


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ああ無情にもパリは燃えているか -Il ordonna impitoyablement l'incendie de Paris.- 7

白く輝かんばかりの刃物を手に取り、小躍りせんばかりに喜ぶムッシュ・シェフ・カレーム。


その前に並べられたのは、大小さまざまな長さや幅の、包丁。


「三河監獄国経由で関と越前の刀工に作らせた、一本もの…世界にこれ1つの代物ですよ」


ムッッシュ・シェフ・中井義文が指し示す刀身。


峰に刻まれたMarie-Antoine Carêmeの銘は、これがカレーム氏に贈られたことを何より雄弁に物語っています。


「砥石はこいつを使ってください…元来は荒研ぎ、中研ぎ、仕上げと使う度に必要な代物ですが、ちょっと面白い鉄を使ってますので、月に1度くらいで済むはずですよ…」


ええ、実はこの、比丘尼国の刀工に打たせたというのは真っ赤な嘘…でもありませんね。


タネを明かせば、この包丁、リュネ世界の刀工が移住した先の比丘尼国で打った調理剣、そのものなのです。


そしてリュネ世界の戦士の剣同様、ある程度の刃こぼれであれば、自ら刃を修復して切れ味を維持するのだそうです。


(鉄をベースにした一種の生体金属でね。持ち手を選ぶ代わりに切れ味の維持だけでもとんでもないことに思えるだろ?)


で、早速にも冷蔵してあった生魚を捌き、中井氏とサシミにして試食しておられます。


「どうだいナカイ、このハラマスだと脂っ気がきついから薄切りにして、軽く酢で〆てオリーブオイルと塩または、いっそウスクチショウユを使う方が身の味が引き立つと思うんだが」


「うーん、師匠、包丁の刃に浮いた脂の浮き具合からすると旬が近いでしょう。僕なら炙ってタタキ…皮と表面に焦げ目をつけて香ばしくする調理法にする方が、脂が適度に散っていいと思うのですよ」


で、実際にハラマスを炙り、捌いてみせるムッシュ・ナカイ。


「このサシミという調理法も一見すると僕には狂っているとしか思えないが、マリネやカルパッチョを考えると試す価値はあるだろう。料理とは食材への挑戦だ、だから狂っているというのは、料理人にすれば褒め言葉だぜ」


ええ、この二人、全力で意気投合しておるようです。


そして、同時に贈られた鉄鍋や銅鍋など、鍋類を見てもはぁはぁしておられますし、何より一刻も早くそれを使いたいとうずうずしている姿は、失礼ですけどサカりを見せた雄犬のごとく。


しかし、その童児のように輝く目と、的確な包丁捌きは尋常の者ではない。


周りで見ておる者は、この実習厨房の備わる建物…フランス料理アカデミーの成功を確信したことでしょう。


(実は連邦世界のカレーム氏、当時のキッチンの構造や燃料…木炭や石炭を使用する関係で健康を害していてね、48歳で早逝する運命だったんだけどね…)


ええ、カレーム氏が小躍りしている理由は他にもあったのです。


中井氏を弟子…いえ、料理の同志として認め、料理アカデミーの創立に尽力頂くことを条件に、聖母教会での治療を受けることとなったのです…。


そして単に疾病や老化を治癒されただけでなく、鋭敏な神経と強靭な肉体を手に入れたカレーム氏は、ムッシュ・中井と痴女皇国に深く感謝し、その貢献を誓う立場となったのですよ…。


で、もともとは職人気質のカレーム氏です。


学校や料理人の組合の運営ができるのか。


そこで、招かれたのがスイス出身の料理人で、料理人ギルドの設立を斯界で訴えていたというムッシュ・ジョゼフ・ファーブル。


この人物をアカデミーの支配人として、カレーム氏や中井氏の他、当時のフランス料理界で名を馳せていた何人かの料理人を客員教授に招くことでアカデミーの運用が開始されたのです。


で、この料理アカデミーの建物。


場所は、サン・ラザール駅の南側の辺りとなるそうです。


(連邦世界のパリとは結構あれこれが違ってるから注意な)


とは、マリアリーゼ陛下のお話です。


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サン=ドニ   モンマルトル地区

地区

←ブローニュ

    ⬜︎⬜︎→サンラザール駅・北東駅

        ヴァンセンヌ→

ベルサイユ ティルリー宮

  ⬜︎⬜︎  ⬜︎ ⬜︎ バスティーユ→

  ⬜︎エリゼ宮 ルーブル宮

=====セーヌ川======

  ⬜︎廃兵院


----------------------------------------------


ただ、廃兵院の東側を学校街にする話もありますので、パリ市内の大学や高校に併せて、そっちに移すかも知れないともお伺いしております。


で。


サン=ドニ村。


ここは元々、パリで使うもろもろや、軍隊向けの武器などを作る工場のあった村でした。


しかし、そのためか環境は悪く、住めば人は病人となって早死にするとまで言われておったそうです。


そして、そんな場所で働く職人相手の娼婦も、早死に覚悟で金を稼ぐ奴ばかりと言われたのです。


しかし、痴女皇国の技術はこの、サン=ドニを一変させたのです。


(このサン=ドニに、オペラ座の対極となる比較的大衆向けや、富裕第三身分向けの演芸酒場を出して客を集めようと思うんだよね。でさ、このサン=ドニに料理を出す店も集めたいってのがあたしの目論みだよ。つまり、下町を作るのさ)

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