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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど


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213/296

聖院食堂よもやまばなし- 夏場の人気料理編 -

どうもみなさん、運転手のジーナです。

https://novel18.syosetu.com/n5728gy/296/


間違えました。


いえ、間違いました。


うちには、言いたいことが山のようにあったのです。


ですが、とりあえず映画も撮れたようですし、あとは内務局広報部出版課映像管理チームのお仕事。


ぶっちゃけ宇賀神雪子ちゃん…ゆっきーが主体となるお仕事です。


しかし、その実際は、東京都は青山の関東メディアサービス敷地内にある二階建てプレハブの1階を占めている高木企画社内で編集作業をしておるようなのです。


なんでそこか。


高木企画の社員連中がおるのが、そこだからです。


しかし、この時代、若干の人口減少があったとはいえど、相変わらず大都会のど真ん中である青山。


緑多い街並み、しかも丘の上とは言えど暑いのなんの。


そんな訳で、痴女皇国世界で久しぶりにスケアクロウの操縦桿を握ったついでと申しますか、東京都千代田区1丁目1番1号の「神聖不犯にして万世一系の兼業農家の家長夫妻」並びに、痴女皇国と日本の実質的な大使役である若様こと千秋敬(ちあきたかし)・宮内()管理部車馬課・特務課長夫婦とお会いして、近況報告とか諸々を済ませておったのです、うち。


で、本当の公式訪問であれば絶対に宮殿に案内される立場だったりします、今のうち…ですが、そんな大袈裟な話にはしとうないのです。


で、うちらは敬くんの高校生時代からの知り合いですし、マリ公の同級生でもあった人物です。


そして、うちらの特殊事情を知っておる故に、話のわかる人物かつ、昔は江戸城だった場所にお住まいの、おかみ様の直系子孫の一族の重臣だった家系のお子様であるとして国から選ばれた若者です。


その、敬くんに「映画の話はあまりしとうない、撮影にも立ち会ったけど無修正なのは間違いない、控えめに言って欧米のエロビデヲレベル」ということ、マリ公を通じて伝えてもらいます。


で、今や警視庁の加藤刑事と皇宮警察の八十川刑事くらいしか乗ってないんじゃないかとも言われている、銀色の菌の覆面パトカーで羽田空港からその、旧・江戸城の中へ直行。


それも、宮殿ではなく吹上御所の方ですよ。


いわば、私邸扱いの場所。


で、スペインやらアルゼンチンの開発状況ですとか、映画の話を手際よく終わらせて、ほなさいならと逃げ出すように帰ろうとしましたところ、お食事でもとか言われたのです。


いや、そういうの堅苦しいからうちは早く逃げようとしたんやがな!


しかし、まだまだ聞かれたいことは色々おありなようです。


で、うちが逃げようとしていた理由、ほんまのところをご説明させて頂きます。


「実はその映画の撮影で、高木企画の制作部担当の宇賀神…栃木メディアの宇賀神取締役の娘さんですけど、飯おごれだの、こき使われた代償を要求しとるんですわ…で、しゃあないから宇賀神取締役がよう通うてたいう、青山の中華にでも連れて行ってご機嫌取ろうかと思ってましてんわ…」


うちが関西弁丸出しで喋ってることで、今のご一家との親密度をご理解頂きたいのですが、これは非公式の場だからこそ出せるうちの地でもあります。


(あのさぁかーさん、そこ、去年の冬に閉めたぞ…それにゆっきーに冷やし中華でも食わせるかとか思ってたんなら、いっそ聖院食堂来てもらったらどうよ。白マリー、あんたのとこ、今、中華フェアやってたろ?)


(何よ…痴女宮の女官食堂と連携企画じゃない…黒マリの方で面倒見たげてよっ)


で、娘どもの醜い押し付け合いが始まりそうなので。


(ええとですねマリアさんたち、今回はですね、僕は今吹上御所で面会中のジーナさんをご案内している立場なんですけど、旦那様と奥様が、どうせならそちらの食堂を一度見せて頂くことはできないものかと。むろん、その中華フェアとやらの試食もご希望です)


でぇ。


顔に、滝のような汗をかいてぶっ飛んで来た娘ども。


一応、失礼のないようにと普通のスーツ着てきた程度には理性は残ってました。


「いいいいやその、大膳課の主厨の方に悪い話ですし」


「そそそそそそそそそそうですよ、そちらのお食事の方が絶対に舌に合われると思いますしっ」


ちなみに、こいつらが転送で皇居内に来る時、直前でも敬くんまたは奥様か、当の「ご夫妻」に話をすれば不問となっております。


逆に言えば、マリアたちが緊急でぶっ飛んでくるような事態も想定しておるということですが、それはともかく。


「マリアさん、時間操作したり、高速消化って技術を使えたりしましたよね」


ええ、この、敬くんのセリフに、顔面蒼白になる娘ども。


つまり、ご夫妻の聖院食堂の利用、避けて通れない話になりました…。


--


で、向こうの昼前。


スケジュール的には、罪人連中のお仕事が午前中に終わりますから、その少し前に女官の利用ピークタイムが設定されています。


なぜならば、今は聖院でも本宮女官神事室…つまり、アレをするお部屋を使って、罪人の慰安をやってるからです。


で、お昼の一番暑い時間帯を避けて勤務スケジュールを組まれている罪人たちが退勤して食事を済ませたあと、本宮を利用する流れが主流ですので、女官たちはそれまでに朝食を済ませて各個室へと向かう必要があるからなのです。


で、逆に、刑務担当の女官や警務系統の騎士女官などは、この時間帯を避けて食堂を利用します。


ちなみにこの流れ、痴女宮でも同じですよ。


で、ご夫妻には、その人の流れを見学頂いた後で…聖院では地下鉄を建設していませんが、その代わりに精気駆動の大型電動バスを何台も活用して罪人工場区画と罪人寮の間の通勤輸送をさばいています…実際に、ご飯を召し上がって頂くことに。


そして、この食堂利用の本来の目的である、通称ゆっきーこと、宇賀神雪子ちゃんとその父母である邦彦さん桔梗さんのご夫婦と、出勤していた高木企画の社員連中の昼飯として、この聖院食堂で実際に食べてもらおうと。


で、普段は本体が痴女宮女官食堂とか、離宮の食堂に配達されるお弁当を主食にしているゆっきーは慣れたもんですけど、他は慣れてません…あ、慣れてるというか、覚えておられる方が数名、おられましたね。


まず、「奥様」お二人。敬くんの奥様は、実はこの兼業農家ご夫妻の娘さん…つまり、結婚前は殿下と呼ばれていた部類のお嬢様です。


しかし、普通は臣籍降下するはずが、なんでか皇居内に新築された宮内省社宅に住む立場。


そして、まだ敬くんと結婚していない時代に、お母様とお二人で痴女宮を訪れたりしているのです。


で、敬くん自身も聖院の見学に何度も来ていますし、痴女宮への訪問履歴もあります。


ただ…ですねぇ、ここの食堂、罪人用でも女官用でも、あるウザい掟に縛らせるための仕掛けが存在するのです。


それは「私語禁止」。


そして、それを何がなんでも守らせるのと、門前町の茶店の出店扱いになっている、女官寮二階の喫茶室や、門前町の茶店それ自体を利用させる狙いもあってですね、喫飯時間が決まってるんですよ。


どうなってるかと言いますと、空いた席にお盆を乗せた瞬間からカウントスタートが始まります。


そして、その席の前の数字が15:00から00:00になると、その数字の色が緑から赤に変わり、けたたましい警報が鳴り始めます。


で、何をトロトロ食べているのかということになりましてね。


罪人食堂なら刑務担当の騎士女官が飛んで来るのは当然として、女官食堂だと、鬼のように怖い青薔薇騎士団女官管理室所属の教育女官が来て、聖環の個人情報を控えられてしまうのです。


そして勤務終了後、女官管理室に呼び出し、喰らうんですよ…ちなみに聖院だと、女官管理室長は…聖院世界の方のオリューレさんです。


つまり、かなり怖い部類。


しかし、本日のお客様方は食堂の視察。


ですので、その掟へ縛るための装置の稼働を一時的に止めてあるテーブルに皆様をご案内することになりました。


で、これも痴女宮の食堂と同じですけど、罪人食堂は基本的に定食のみを出します。


健康管理をしている上に、罪人の仕事であれば「絶対にお腹が空くレベル」の労働を何がなんでもやらせているからです。


従って、定食かつ、ご飯大盛りがデフォルト。


くだんの時間縛りの関係がありますから、お代わりしてる余裕はないので、窓口注文時の指定が死生を分けるというのは罪人の皆さんの談話ですけどね。


そして、急いで食事をするのはこれから仕事という女官や、はたまた罪人だけではありません。


仕事を終わった罪人も、鬼の勢いで食事を済ませて本宮の客用下足処…風俗店で言うところの受付に急ぐのです…。


「刑務所の食堂というものと同じとは聞かされておりましたが…」


「女官食堂はもう少し大人しいんですよ…ほほほ」


ええ、白マリこと、聖院の方のマリアが汗をかきながら案内しています。


ちなみに、痴女皇国のマリアがついているので、聖院の幹部連中は逆に通常通り仕事しといて、これはあくまでも非公式の訪問であるから大袈裟にするなと厳命しております。おりますが。


「せやけど痴女皇国うち、やはり最低でもうちくらいは顔を出しておかんと失礼に当たるんとちゃうんかい」


ええ、聖院のうち…高木ジーナが顔を出しよりました。


しかし、こいつが今来ても、聖院のトップの母親という以上の意味はないのです。


なぜならば聖院側でお付き合いすべきは、そっちの世界と連動している日本の皇族の皆様であって、今ここにおられる痴女皇国世界と直接繋がってる方の日本のとっても神聖不犯な兼業農家経営のご一家ではないのですっ。


それにな、聖院うち。


あんたとうちが並ぶと、事情を知らん人にはうちが2人に増えただけに思われるんじゃいっ。


という訳で、聖院マリアとくっつけて案内役をさせておきます。


ちなみに、聖院のうち以上に出て来られたら困るのが、クリス。


なぜならばワーズワース家…つまりはNBと日本の提携話になってしまった場合、こっちのクリスでは話が通じないからです。


言い換えれば、痴女皇国側のクリスもファインテックというNBの基幹事業を占める半生体ナノマシン技術で生み出した諸々に関わるメーカーの経営者でありますし、聖院側の同名企業よりも、もっとずっぷりと深々と、痴女皇国世界に食い込んでおります。


何せ、例のとんでもない肥料のチ○ポネックスや原料となる駄洒落菌培養・変質改良プラントはもちろん、聖院でも使っている瞬間更衣機能の影の主役である半生体繊維素材再生産・縫製配送プラントは痴女皇国世界の茸島に大規模な工場があって、そこで動いているからなのですよ。


このプラント類、駄洒落菌を扱うので、NB側の駄洒落菌対策…つまり痴女種による完全支配が達成されるまでは、絶対にNBに建設や移築が不可能なのです。


で、現状では聖院の分の処理も、かなりのところを痴女皇国側のファインテック茸島支社工場で委託を受けている次第。


(聖院の分の経理くらいいい加減、そっちで見てくれという強い思いがあるんだけど)


(こっちのデルフィリーゼおばさまが面倒がってんのよっ)


うるさいっ、おのれら…。


で、本来ならスケジュールを分や秒で管理されている部類のこのご夫妻が、なぜに聖院視察を希望なさったか。


一つは、ある程度の時間操作ができるからです、マリ公たち。


たとえば、この聖院食堂で今から試食をなさり、更には臨時バスでも仕立てて門前町を巡ってから、痴女皇国世界と連動している方の時間軸の連邦世界の日本…元来の聖院と繋がってる日本からすると5〜6年後の時間軸です…にお帰り頂いたとしましょうか。


帰着した吹上御所では、1秒も経過していないということが可能だからです。


ええ、行方不明を騒がれる前にお帰りになれば、おkなのです。


この方法で奥様と娘さん…つまり、今の千秋課長夫人は何度か、息抜きをなさっておられます、痴女皇国世界で。


これ、逆に聖院世界側の時間軸の日本から、痴女皇国世界にお越しになっても出来るといえば出来るんですよね…迎え入れるうちらは、たまったもんじゃありませんけど。


んでまぁ、中華フェアとやら真っ最中の聖院側女官食堂ですが、痴女宮女官寮同様、女官寮の1階が食堂です。


聖院湖開闢記念大堤(→の先に精油施設や聖院空港)→酷道2号線

修学寮 聖 院 女官寮 罪人寮 工場○ 工場● 聖院空港 

修学宮 本 宮 女官寮 罪人寮 工場○ 工場● 03

淋の森 参 道 運動場 運動場 工場○ 工場●

旅館街 参 道 倉庫街 倉庫街 倉庫街 倉庫街

旅館街 参 道 荷捌場 荷捌場 荷捌場 荷捌場 27

旅館街 参 道 聖院港 聖院港 聖院港 聖院港

門前町 参 道 (↑痴女宮向け一般船舶用)

市場街 聖院港(←痴女皇国関係艦専用)

市場街 聖院港(←痴女皇国関係艦専用)

倉庫街


(聖院学院聖院本宮校修学寮・修学宮ってことになってるのよね、聖院(こっち)だと)


(学長、こっちのエロスさんに押し付けんのそろそろやめにしてくんね?財務同様さぁ…)


(人材育成を手伝うならいいわよっ)


で、マリ公どもがぐちぐち言ってる修学寮。


ここにも食堂がありますが、場所が違うのです。


具体的には、20階に存在します。


そして、誕生日会だの何かあった場合のお祝いとか入学・卒業記念のパーティー会場でもあるのです。


ここの調理は罪人食堂や女官食堂とメンツが共通しており、痴女宮では厚労局調理部本宮調食課という部署が管理しています。


で、痴女皇国(うち)だと中井義文くんが見事更生を果たして海賊共和国の海賊女王他のお気に入りになった挙句、痴女皇国の料理顧問として調理学校をカリブ海のナッソーに開くまでになりました。


この、中井くんの連邦世界での悪いお付き合いの友人や後輩・部下たちの中で同じく更生に成功した面子で、吉田(きちだ)くんというのがおります。


通称は、きっちー。


ただし、キティちゃんな蔑称ではなく、本人は人当たりの良い元・キャバクラ黒服系で、実は大阪出身かつ、フグ調理講習も受けていた部類だったりします。


つまり、板前経験あり。


この、きっちーが、同じくバーテンや水商売仲間だった能代くんやら、マサキチこと正木くんの引っ張り込みに大きく関与してくれていたのですが…吉田(きちだ)くんは現在、なんとこの調食課長なのです。


で、調理指導に聖院食堂にも派遣されて、時々はこっちに来ている立場。


ただ…聖院では、その食堂を一括して管理しとらんかったのです。


具体的には、罪人食堂は罪人の中で面子を選抜してました。


そして女官食堂と、修学宮調理場は女官と…罪人食堂で働いている罪人から、更に腕の良い者を引っ張り上げる形で運営していたのです。


ですが、痴女皇国ほどではないにせよ、運営近代化の必要に迫られている聖院。


そこで、調理の道に手を挙げた聖院罪人を痴女皇国の食堂に送り込み、調理のイロハを学ばせてから聖院に戻すなんてこともやって急場を凌いでおったりするのです。


ええ…マリ公同士の方針の違いもあるんで仕方ないのですが、ぶっちゃけ痴女皇国世界の方が単なる機械化文明化だけでなく、こうしたソフト面での効率化やシステム化、そして工業化が進んでいたりするんです。


具体的には、この中華フェアで使ってる鶏ガラスープ。


これ、比丘尼国の品川にある屠畜工場の側で作ってるって言ったら、みなさん信じられますか。


ええ、屠畜は元来、聖院なら聖院、痴女宮なら痴女宮でやってたんです。


そして、生き物の命の尊さを教えるために、聖院学院初等科生の見学や作業補助もさせていたのです。


牛なら牛の命を奪うこと自体は、女官なら一瞬で済みます。


それも、流血はおろか、苦しませずに。


ですが、痴女宮の場合、今や罪人や女官の数の増減はありますけど、常時各1万人近い数の成人男女がこの聖院本宮と同一構造の建物4棟の中で暮らしておるのです。


その食事を効率的に調理できなければ、大変なことになります。


で、屠畜から少し間を空けたほうがお肉は美味しいのと、ホルモン…つまり牛の内臓の需要が比丘尼国では増えておりまして、あっちにいてる虎の虎次郎くん一家の餌に内臓も欲しいということもありまして、精肉工程の大部分は比丘尼国に委託してるんですよ。


むろん、罪人工場でも皮革加工やら牛豚ニワトリの骨からスープを取ったり、あるいはそうした後の残骸の肥料化もありますから完全に屠畜作業をゼロにはしてませんけど、冷凍船倉やコンテナを導入した痴女皇国世界では、アルゼンチンチンや流刑地大陸、そして北米からの牛は比丘尼国の品川畜産工場、または大坂の木津川畜業処理場で大規模処理していたりするのです。


(この畜産処理にかかる偽女種さんたちの慰安や慰労でさ、比丘尼国の釜ヶ崎に偽女種寮を作ったり、新世界開いて発展場やヲカマバー作ったり、天王寺公園や茶臼山公園で女性が偽女種を買ったり以下略)


(連邦世界の昔の大阪と似た状況を作るな…)


ええ、大阪市南部を腐った町にしつつある、ウチの黒マリの方のマリ公の悪行はともかく。


そして、中華の素も、痴女宮では自製しとるのです。


何せ、痴女島または聖院島とその近所、香辛料の産地です。


それに、淫化(いんか)女裂振珍(めきしこしこ)痴里(ちり)などの唐辛子の名産地を押さえております。


ですので、麻婆豆腐の素も、痴女宮の前の罪人工場街で生産しとるのです。


で、こうした食品系のベースとなる味付けも、実は厚労局調理部のお役目。


とはいえ、吉田くんだけでは中華までは…となりまして、彼らの先輩で、昔はストリップ劇場のマイクパフォーマーとして名を馳せた通称;ハゲさんが呼ばれました。


このハゲさん、若い頃は中華の料理人として台湾系広東系四川系の料理屋を渡り歩いていた過去があるそうで、今でも時折中華鍋…北京鍋の柄を握る立場。


チャーハンをなかなか出さない半島系のあそこのようなことはなく。


そして、中国系やベトナム系の女官である阮香蘭(ぐえん・ほんらん)…制限つき黒薔薇騎士のホンランちゃんや、地下の悦吏子(えりこ)ちゃん…エレンファーネ副施設部長などの監修の元で、中華タイベトナムマレーシアインドネシアといった、アジアの味を提供できる体制を整えていったのです。


なんせこの痴女宮も聖院本宮も、その位置は赤道帯。


ボルネオ同様に年間降水量4,000mm平均、場所によっては局地的に8,000mmとか狂った数字が記録される場所です。


熱帯なら暑い地方向けの料理を出すほうが喜ばれるというもの。


それと、年間平均気温25度から30度、湿度7〜80%という、これまた狂った値を記録する場所です。


何が言いたいのか。


腐りやすいのです、食べ物。


以前、この辺の住民がお肉を焼いて美味しそうに調理していたのを、途中の工程から北九州のかしわ飯よろしく、フレーク状にしてしまい、更にはちまきの中に詰めてしまう動画が話題になったことがありますが、要は加熱したらすぐ食べるか、さもなくば水分を徹底して抜いたり、あるいは空気に触れさせないようにする以外に保存は困難なのです。


で、以前もこの食堂では日本のようにお米を炊かずに、ザルに入れて茹でるインディカ種の調理でご飯を提供しているお話が出ましたけどね、これだって、普通のご飯だと腐敗しやすいから、注文が来たら茹でるという方法で食材の無駄をなるべく省こうとした結果なのですよ。


で、昔は冷房を聖院湖に貯めたお水での建物水冷に頼っていた聖院本宮です。


その中で提供される料理も、かなり苦労していたようなのです。


ですが、マリ公どもが散々にやらかしてくれたせいで、木炭はまだしもIHヒーターとかガスコンロとか色々持ち込みやがりました。


その中には、冷蔵庫も入っていたのです…うちが冷蔵庫を素で渡そうか渡すまいか、めっちゃ悩んでいた最初の頃の悩んでる時間、返せやと言いたくなるくらいに、うちの娘どもはあっさりと連邦世界の調理器具や設備を持ち込みくさりよったのです。


(痴女宮も聖院本宮も大幅に女官の数、増やしただろ…もはや従来の聖院の設備じゃ間に合わなかったんだよ…ちなみにエマ子もこれに噛んでるからな。ほら、痴女宮前に出して増築したり、罪人寮や女官寮を本宮と同じ建物に新築改築した時あるじゃん…あん時に食堂の設備とか、購買のPOSシステムとかがさっと入れたんだよな…)


(聖院の改築時にも同じことしたもんね…)


で、そうした苦労の果てに、女官や罪人に食べさせてるのがこれというわけで…普通の中華食堂で出るような麻婆豆腐定食…土鍋麻婆と、炒飯、そしてサラダの小皿と杏仁豆腐のガラス器が載ったトレイを手にするうちです。


ですが、このお豆腐一つでも、大変な苦労があったのです。


理恵ちゃん…室見理恵・国土局長はこの件で今でも折りに触れて恨み節を述べます。

https://ncode.syosetu.com/n6615gx/126/


痴女皇国関係者は、味噌汁や豆腐はもちろん、醤油を使う際にあたしの顔を思い浮かべて感謝の意を示せとまで言いよるのです。


尻出国こと、南米ブラジルに該当する地域に大規模な豆畑を開発したのみならず、北海道の原野を切り開き、豆畑に芋畑に玉ねぎ畑を作らされた恨み、理恵ちゃん本人に聞けばいくらでも出てきますが、聞くのが面倒なので聞かないでおきます。


あと、うちの尻にな、体で聞かそうとするの、やめてな理恵ちゃん、ほんま。


それをやるならば、直接に開発や開拓を支持した通商局のクレーゼさんとか、あるいは責任者である皇帝のベラ子が相手となるべきなのです。


または、100歩譲っても皇帝室秘書課長の伊藤瞳さんに愚痴るべき。


うちはそう、思うねんけどな…。


とりあえず。


ネギから玉ねぎから、豚肉から痴女皇国世界で内製したこの、土鍋麻婆豆腐。


といっても、作り方は簡単です。


必要量を取り分けられ計量された挽肉入りカップと、カットされたネギや細切れの玉ねぎを所定量、熱して油を引いた北京鍋にぶっ込んで炒めます。


そこに袋入りの麻婆の素を入れて、更に加熱する料理人。


で、土鍋に入れた鶏がらスープの中ではお豆腐が加熱されております。


そこへ、中華鍋担当が、北京鍋の中から熱した挽肉と、麻婆の素を注いでいくのです。


で、土鍋担当は素早く蓋を閉めて弱火で火力を調整。


よし、と思う頃合いで複数の土鍋たちを火口から外して、お盆に並べて行くのです。


そしてお盆を持った注文者は、更にレーンを進むと担当窓口から炒飯、サラダなどを順番に受け取り、最後に水入りコップを貰って席に向かうのです。


「工場や軍の食堂と全く同じです…」


「しかし、この土鍋というのは興味深いですね…確かに転べば大変なことになりますでしょうけど…」


「その辺、ここで食事しているのは運動神経なども強化された女官ですからね…」


で、問題の麻婆豆腐。


これ、実は大阪発祥の、上品な薄皮餃子と土鍋麻婆を売りにしていた中華料理チェーンの提供品を参考にしたそうなのです。


そして、添付の蟹炒飯も、同じく、そこの名物。


この蟹は、ベーリング海で採集した蟹缶が使われていますが、そのベーリング海というのは、連邦世界のアメリカやロシア領内ではありません。


痴女皇国世界の、ベーリング海です。


蟹服とかいう強化服を自分用に作り、浴びた者を共産思想に染めてしまう蟹光線なる兵器を装備しただけではなく、なんと本物の蟹工船までも就航させよったのです、蟹座の生まれ…それも7月7日が公式の誕生日である、うちの娘ども。


「でも、この蟹炒飯は本場の味という印象ですわね」


「雰囲気はともかく、ご飯は美味しいんですよ、痴女宮も聖院も…」


いえ、わざとまずく出せと指示しかけていたのです。


なぜならば、ですね。


この味に味を占めた、やんごとないお方々が息抜きに聖院や痴女宮の訪問を希望なさるたびに、迎え入れるうちらの神経がすり減るどころか、轟音を立ててグラインダーで削られるような幻覚を受けるのです!


それにですね。


特に痴女宮。


昨今、本宮の個室があるのに、わっざわざ淋の森に行く需要もある上に、服装はこの聖院女官でもお尻剥き出しが基本で大概な見た目なのに、更にその上を行く痴女宮界隈、やんごとないお方々の目に入れたくはないのです!

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ごしゅじん「それを拝見したいからこそ」


おくさま「陛下…夫に同じく」


わかづま「ロイヤルストレートフレッシュの薄い本の資料のためにもぜひ」→結婚後も腐敗絵師継続中


じーな「やめてくらはいおねがいします」


白マリ「ともかく、食堂ですけど…いかがでした?」


ごしゅじん「昭和帝同様、私は頂くものは頂く主義です。しかし、お代わりと申しかけたのは事実」


おくさま「夫に同じく」


わかづま「つまり、父母も気に入ったということですわ」


じーな「ええええええ…お願いですから本宮の貴賓食堂で辛抱してくださいよ…」


おくさま「ジーナ閣下。お言葉ですが、あそこの料理自体は洗練されたものですが、私たちは調理の程度こそあれど、似た格式の料理を頂戴する立場なのです…それも、頻繁に…」


ごしゅじん「つまり、国事だの外賓歓待だのといったもてなしが私と妻には当然の如く差し出されてしまう暮らしであるのは、ジーナ閣下はもちろん、マリアリーゼ陛下にもよくお分かりかと。私も妻も…気さくな食事はかえって貴重な機会なのですよ…」


おくさま「それに、何かあれば国民の皆様がお召し上がりのものと同じものを頂戴する立場ですし、外国の方々の庶民料理にも口を慣らしてはおきたいのです…」


じーな「うう、理想がお高いのはわかるんですけど…せめてお召し上がりになる場所だけでも!」


白マリ「痴女宮かーさん、諦めなさいよ…これは両陛下のお忍びを望まれる申し出なのよ…」


黒マリ「だからこそ聖院で引き受けて欲しいんだよ…うちの国は不謹慎国家すぎるんだよ、今も…」


ごしゅじん「まぁ、深く吸い込むとかいう邦題の一般映画がありましたしね」


おくさま「チャタレイ夫人の原書を手になさって「大したことないね」と言い切られた当代の帝も」


じーな(いや、今度のタンゴの映画も絶対、連邦世界で封切ると同時に上映禁止な内容ばっかりなんですよ…)



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