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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど


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206/296

-穴と雪と氷の国-嫁入り皇帝ものがたり・11.2

さて、ここで私、フランシスカはある事を思いつきましたので、前方はるかに繋がれた()()()()()のマリアリーゼ陛下に申し出てみます。


それに、確か次の停車駅のニジニ・ノヴゴロドまで2時間未満、そしてカザンまでは3時間ほどかかると…。

https://x.com/725578cc/status/1790775629916279029


(実は連邦世界でのモスクワ・カザン高速鉄道のルートに近いところを走ってるんですよ)

https://x.com/725578cc/status/1790778734569750646


で、何を思い付いたのか。


それは、車内探検。


申し上げましたとおり、このれっしゃには終点まで行く者だけでなく、途中で降りて行く赴任者も乗っております。


いえ、その方が多かったのでは。


で、彼ら彼女ら入植者や赴任者にとっては、下手をすればこれが人生で最後の大旅行になるかも知れません。


その激励を兼ねて、車内を巡ってみようかと思ったのです。


でまぁ、大人数で回るのも何かと思いましたのですが、結局はトクダ様やコウダユウも一緒に来ることに。


で、室見様とマリアリーゼ陛下の分体…分け身が案内役兼、護衛となって同行頂けるそうです。


まずは貴賓寝台車とかいう私たちの乗る車の前にある一等車を。


ここには、転封貴族を中心とした赴任者が乗っています。


その一室に、ソフィアとシンゾウがおりますが…。


(とりあえず邪魔したらまずいふいんきだぜ…)


(抜き足差し足忍び足で…)


ええ、後で寄った方が良さげな雰囲気です、その部屋。


でまぁ、他の者が使っておる部屋を拝見しますと。


「まぁ、そもそもこのようなもので旅をするなど初めてですから…」


「従者は2等や3等に乗せざるを得ませんでして…」


と、子供二人と一緒に乗っておる役人の地位にある貴族から話を聞きます。


「お前はまだ若いから家を長男に任せて行ってこいとか言われまして…」


まぁ、お気の毒にとしか。


とりあえずはエカテリンブルグへの赴任を言われているようです。


(この移民ってどうしてんの)


(差し当たってはモスクワ聖母教会主教庁経由で募ったのです。で、今、モスクワをはじめ北方領内の行政、モスクワ主教庁の所轄にどんどんと担当を変えておるせいで、余り者が出ておりまして…)


と、マリアリーゼ陛下に、こちらの実情をお教えしておきます。


(確か、木材事業に従事する人が結構多かったんじゃないですか)


(ええ、室見様…例の代替石炭製造事業、あれのせいで木こり村に人を大量に必要としますので…)


(まぁ、直接に木を切ってもらうわけじゃないからね、あれ、淫化尼僧尊(いんかあまぞん)方式で行くんでしょ?)


(はい、マリアリーゼ陛下…既に林業村では、この鉄道に載せて運ぶ木の切り出しを始めております)


そう…このシベリア鉄道建設が承認された背景には、この地から更に東に広がる広大な森林の木材を得ることも視野に入っておるからなのです。


そして、切り出された木はこのシベリア鉄道沿線の街に設けられた製材工場で木材に加工されるだけではなく、燃える石の炭を生成する材料にされるのです。


(このボストーク号が通る高速線の更に北側…キーロフを経由する迂回線も同時期に作ってるのはこれもあるんですよ…製材村や製炭工場町、あちこちに作っていってますから…)


まぁ、私は言うなればお飾り皇帝。


多少は実務に疎くても良いとは言われてますし…ううううう。


それに、北方帝国独自でこんな大事業を進めていては何十年何百年と経過したことか。


(その辺は慌てずにやってくれたらいいよ。ソ連やロシアにしても、シベリア鉄道を軸にあちこちに線路や道路、そして飛行機が使えるようになってからは空港を作って開拓して行ったし、今も未開拓の土地がいくらでもあるんだよ、連邦世界のシベリア…)


(開拓するにもコストの方が高くつく自然環境だってのもあるけどね…エカテリーナさん、とにかく何をするにも時間がかかるのが、このシベリアの大地の開発が滞った理由でもあります…中央の指示や指令がすぐ届かなかったり、あるいは農奴の酷使などといった行為が中央に届かないとかですね)


ああ、これ、言われましたね。


農奴制度は撤廃して欲しいと。


ただ、その代わりに機械化や…そして低汚染型農業魔族・林業魔族の投入によって生産高を上げる代替策を導入するとも。


つまり、淫化尼僧尊(いんかあまぞん)明日輝(あすてか)魔屋(まや)に続く、苗床と魔族運用型の開拓第三弾になると聞かされております。


この方式の農園や木こり仕事になると、人はあまり体力を使うことがなくなるそうです。


しかし…一方で、苗床に()()を補給するという必要性が発生します。


ええ…モスクワ主教座他で斡旋しているシベリア移住、若いか「若返り処置を受けることに合意するか」が条件になるのです…。


(苗床の餌、人体そのものじゃなくするためにはアレでアレする必要があるからさ…)


(こればかりは未成年の方にはお察しな話になるんですよね…)


ええ、私も今や、苗床と聞いただけで何をどう必要とするかは瞬時に理解する部類。


むしろ、苗床の稼働に必要な若い男女をどう、調達して配置するかという考えに及んでしまうのです。


(そのためにも従来、農奴であった者たちの聖母教会荘園雇用を進めております…)


ええ、農奴たち、今までとは全く違う()()に従事する必要があります。


そしてそれ、()()()()()()()()ことだと思うんですけど…。


(そのための耐寒品種改良型チ◯ポルチーニの繁殖を勧めてるんだよね…ロシア人ってキノコ狩り大好きだし)


あ、キノコ狩りという言葉だけで変な想像をしないように。


北方民の食生活も影響しておりますけど、なにせ冬になると食べるものが少なくなるこの北方の地。


食べられるならばキノコでもと、住民はキノコ狩りに勤しむ傾向があるのです。


(聖環で毒キノコ判定、瞬時に出せるようにさせられたもんな…)


(茸島の住民とか、比丘尼国の北の方の人たち以上にキノコへの執着がすごいのよね…)


ええ、煮るわ焼くわと。


そして、ラプーフとかいうフキや…そして蕎麦も食べるのですよね…。


(シベリア方面、モスクワとかなり違うアジア系の食生活も入ってるからね…)


(なんか家畜を越冬させるのが手間だから食べてしまうとか聞いたわね…)


暖房付きの牛舎豚舎鶏舎、モスクワ周辺に作られましたね。


(あれがこの越冬風習への暫定対策なんだよ…小さい村だと家畜に冬を越させるにも大変だからさ…)


または、放牧系の家畜ならば鬼汗国の連中よろしく、比較的温暖な南へ移動するとか。


そして、北方独自の暖房手段を内蔵した家屋の存在も知ることになりました。


痴女皇国によって改築される前のモスクワやサンクトペテルブルグの宮殿、特に冬用とされた宮殿の要所には必ずこれがあったのです。

https://x.com/725578cc/status/1790801455466864953

https://x.com/725578cc/status/1790804134918242497


ええ、ペチカと呼ばれる、割りに大掛かりな暖炉です。


この暖炉、通常の暖炉のようにただ、薪をくべるのではなく細かく割った薪を一気に燃やすのです。


そして、その際に予め煙突部を温めておいたり、あるいは炎や煙の通り道に設けられた蓋の開け閉めに手順がいるとかで、迂闊に薪をくべないで欲しいと侍従達に厳しく言われたのを覚えております。


(一酸化炭素中毒になるんだよな、不完全燃焼させると…)


(手順を間違えると炭焼き小屋の炭になるわね、確かにこれなら…木炭ガスが出るわよ…)


で、この不完全燃焼とかいう現象を利用したのが、木を炭に変える炭焼き窯だそうですね。


(そそ。で、発生したガスはまだ燃やせるから、淫化(いんか)のチンボテがまさにそうなんだけど炭焼き工場に必ずセントラルヒーティング施設を併設してるんだよ…淫化だと風呂沸かしたり調理用の蒸気発生に使ってるけどね)


で、この応用で、客車という我々が乗っている箱の隅にも炭を焚く暖房器と、湯沸かし釜が存在します。


そう、これまた北方の地ではよく見る、サモワールなる湯沸かし器の大掛かりなもの。


これで熱い茶を飲む他、庶民の冬場の緊急の保存食などにと、昨今は広まっておるらしい即席麺なる代物で使う湯をここで汲めると。


(この世界にカップラーメンとかカップ焼きそば持ち込むか、まりり…)


(しゃあねぇだろ…スチロール容器に近い可燃容器の開発だけでも大変だったんだぞ…それに廃用器も燃やせるんだから…)


そう、この列車、食堂があるんですけど、お高いようなのです。


そして、食堂は二つ存在します。


展寝|供奉|1|1|食|2|2|2|2|2|食売|3|3|3|3|3|3|荷|機


(いわば昔の日本の和食堂車みたいなのと、きちんとした食堂車の2つを連結しています。で、1等と2等の間…今から通る方がその、まともな方です…)


で、厨房の脇の細い道を通り、白い布がかかった食卓に向かう座席について食事をしておる者達からの挨拶を受けつつ前へ進みます。


「ここからが2等室ですね」


見せて頂くと、窓の両脇に進行方向と直角に寝る寝台兼・昼間の座席が並んだ個室が。


座席の上には棚のように配された上段の寝台があり、1つの部屋で4人が過ごせると。


「窓の前のテーブルに置かれたガラスの茶器、2等までのサービス品です」


この茶葉は1日1回、入れ替えて支給されるそうです。


それ以上は有料になると。


(このための紅茶を運び込む需要でさ、ロバーツの兄貴とティーチがウハウハしてるんだよな…)


(美男公のトルコ石商会を経由させたのはベラちゃんだって聞いたけど…)


(汚職のように言うなよ…鯖挟国でもトルコ紅茶作らせてんだし、一部はオデッサ経由で北方にも運ばれてんだぜ…そっちは中東と東欧行政局の所轄なんだからさ…)


で、2等の客達からも礼を受けながら先へと進みますと、今度は窓に向けて座る丸椅子が並ぶ簡易な食堂が現れます。


「ここではさっきの即席麺に似た汁麺や、ボルシチ…それにペリメニというのですか、水餃子スープに饅頭(ピロシキ)類といった軽食を提供させています。そして、2等と3等客向けの購買品を売っている売店を併設していますよ」


そう…2等では無料だった紅茶や、更には保存の利く軽食やパン、菓子類を売っておるのです。


あと、手拭きだの歯磨きだのといった日用品も、少しばかり。


(沿線の駅の売店で手に入るものについては案内させてますよ)


で、そこを抜けた3等車。

https://x.com/725578cc/status/1790817265807671690


これこそがある意味では頭痛もの。


「覚悟はしてください…昔のシベリア鉄道、まんまです…」


ええ、室見局長の警告、決して誇張や脅しではないと知りました。


ただ…噂に聞く奴隷船やガレー船よりはましではなかろうか。


これが、3等車に足を踏み入れた私の第一印象です。


しかし…これ、昼間はかなり辛いと思ったのですよ、上の段に割り当てられた者も、下段の本来の主も…。


(社交性がないと厳しいよな、これ)


(または上の寝台に上がって寝転がっておくか…)


そそ、室見様にお聞きしましたが、3等の仕切り役たる車掌、その受け持ち車両においては王のごとき存在であり、客を指導する権力を与えているそうです。


(これ、中国やインドやロシアの3等車と同じですよ。要は車内で不埒な振る舞いをしたり、騒ぎ過ぎたり暴れたら即刻降ろせます。ですので、3等の車掌は必ず、痴女種の女性なのです…)


室見様によると、乗客への接客訓練のためにも本宮女官寮勤務経験者かつ、連邦世界のイカホ保養所などを利用して奉仕の概念や警務の訓練を受けた者たち、最初は指導役として乗務係に配していくそうです。


(スペインや比丘尼国でも意外に苦労したんですよね、乗務員訓練…)


で、最終手段が…。


(緑文字社と掛け合って、客室係や車掌業務のための人材派遣会社に出資して、うちの人間送り込むことだったんだよな…)


(テンプレス・レイルウェイズの子会社の人間を教育してもらうためにね…流石に向こうの会社の女の人、全員痴女種にする訳にはいかないしさ…)


そして驚くべき話も。


(国土局運輸部の客室乗務員資格者は全員、聖隷騎士団所属なのです…この扱い、痴女皇国世界ではまだまだサービス業や接客業といった考えが一般的ではないため、聖母教会の奉仕員であるという考え方をさせる方がまだ、飲み込みが早いんですよ…)


(それと初期の給仕や従業員にあったチップの考えな。これが悪い方に行くと賄賂を出さないと仕事しないとか、客に賄賂を要求するようになるんだよね…)


(ソ連やロシア時代のシベリア鉄道、真剣にそれよ…特に共産革命以降はね…)


更には、切符や旅券、通行手形の部類を改めたり預かる際に難癖をつけたり、禁制品を車内に持ち込んだとかして難癖をつけて金品をせしめる者…列車の乗員も一種の役人であった時期があるそうです…が現れると、乗客の信用は著しく下がるとも。


(日本の列車が3等級だった時代の列車ボーイなんてチップだけでとんでもない報酬になってね…一等専属のようなエリートボーイさんだと、下手な駅長さんより貰えてたらしいのよ…こんな薄給は受け取れないとか、本来のお給料を拒否する人まで出る始末でさ…)


何たるめちゃくちゃな状態なのでしょうか。


しかし、そこまで奉仕する仕事を極めた職人であるのも、私には納得がゆく話。


ええ、祖国では貴族の家に生まれましたので、侍従や侍女たちが相応に訓練や教育を受けておったのは存じています。


そして、彼ら彼女らの独特の世界があるということも。


ただ…そこを読める室見様も、痴女皇国にお越しの当初は今のようなお仕事ではなく、最初は女官長代行から始められたとか。


つまり、女官たちを使役して売春や痴女宮内の諸業務に就かせるお役目の経験者。


(痴女宮上層階の皇族居室も女官…それも上級女官の担当でしたからね。あそこの担当のあるじめいた人が、今の南洋行政局のオリューレ局長ですよ。あの人は女官管理室長出身です)


まぁ、正直を言えば、私も本宮の女官業務…それも幹部業務を経験してから北方へ赴任した方が良かったのかも知れません。


しかし、それでは別の誰かが北方帝国に行っていた可能性が高いと申される、室見様。


(ま、運も実力のうちです。せっかく、本来なら行政局を置いてもおかしくない面積の国、まるっと任されたんですから、ゆくゆくは格上げに挑戦された方が良いとは思いますよ)


しかし、この広大な国をこの先、どういう風にまとめれば良いものやら。


確かに、この3等車の乗客、元々は農奴であった者達が少なくありません。


いえ、むしろ新天地を求める思いは希望というよりは切望に近いものがあるでしょう。


南米行政局のコイリュル皇妃が唱える「人の幸せある地に」という願い、果たしてこの北方の地で実現できるものでしょうか。


(そりゃ普通の人間なら無理。連邦世界のロシアがそれをくっきりはっきり証明してんだよ。しかし…だ。あたしら痴女種の能力を使えば、従来の奴隷のような存在から人を一段二段と引き上げることができるんだよね。…ああ、エカテリーナさんもさ、淫化の事例をもう一度見直してみてもいいんじゃないかな…)

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