-穴と雪と氷の国-嫁入り皇帝ものがたり・9
「なじぇにオンス単位でなく、グラム単位…」
「ヤードポンド法は滅ぶべき、だそうです…」
ええ。
私たちの目の前にあるのは、地下の造幣工場区画から持ってこられた金貨、1千枚ずつ。
このセイント金貨、本来ならサイズがいくつかあるそうですが、今回鋳造されたのは日本の天皇陛下在位記念金貨と同寸となる最大の30g金貨としても、その重さは30キログラム。
ビロードが張られた運搬・保管用枠の中に納められたそれから1枚を取って我々に見せるヤエル所長。
なんとその金貨、それぞれの種類がありまして。
で、既に用意周到にヴォイキッツァ総主教の横顔と、そしてゾフィー様の横顔が刻まれています。
そして裏面には東方聖母教会の関与で発行された証の、八端十字架と…なんか、痴女皇国の紋章である例の◯と棒の組み合わせの卑猥な記号が背景になってますよ…。
「このセイント金貨は相場で価値が変動しますが、30g金貨ですと、最低でも10万南洋ルピーの価値が保証されます」
つまり、聖母記念銀行に持ち込めば、最低でも聖環口座に10万ルピー分の入金が保証されるそうです。
そう、女官の業務報償金初任分で言うと、10人分。
裏面のお◯こマークにさえ目をやらなければ、その黄金の輝きは人を魅了することでしょう。
で、最低価値を1枚10万SOKR…南洋ルピーとしても、台車に積まれた運搬・保管箱の総数からすれば100枚入りの保管箱が10箱ずつですよ。
この時代の4億円分って結構、いい金額では。
更には、このセイント金貨は金の純度が高いこともあって、今の相場だとこの10倍の価値が出ると市場で判断される可能性すらあるそうです。
で、私たちがキプロス島にある、このキッコス造幣工場に持ち込んだ金塊ですが、順次、東方聖母教会が依頼したヴォイキッツァ全地総主教戴冠記念金貨、そしてエカテリーナ2世陛下洗礼記念金貨に鋳造されます。
ただ、問題はその金貨の行き場。
この金貨、その名称や意匠からして、東方聖母教会のために用いられるのが明白です。
そして、この金貨を鋳造した理由、北方帝国への更なる一手のためであるのは明白ですね。
すなわち、お仕事してくれない女皇帝の代わり、用意させて頂きましたという事を今から行うと。
では、どんな事を行うのか。
「そらもう、エリザベータさんには驚きの話でしょうな…青天の霹靂、ちゅうやつで」
「うふふふふふ、あの母親の顔を見るのが今から待ち遠しくて…」
ダリア母様と同様、悪い顔になっているのはヴォイキッツァ総主教。
では、どのような悪い事をするのか。
その前にですね…このキッコスの現状、結構頭痛のする状況なのを皆様にお教えしようかと。
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「東方聖母教会と罰姦の違いですが、聖母絵画…聖画を一般の家庭にも普及させ、聖母信仰を促していることがその一つに挙げられます」
と、教会の礼拝堂の外廊下などに飾られた聖画を我々に見せているのは、他ならぬオクタヴィア枢機卿と、ビヴィアーナ司祭。
あんたら罰姦の人やろ、と思うのですが。
しかし、なんとオクタヴィア枢機卿も、ビヴィアーナ司祭も東方聖母教会仕様の尼僧服姿なのです。
オクタヴィア枢機卿に至っては、ヴォイキッツァ総主教と同じ服装ですよっ。
「これこそがこのキッコスの頭痛問題なのです…東方聖母教会でありながら、罰姦の金貨もここで作ってるとか、あるいは地中海の管轄、罰姦と東方で入り乱れている件がありましてね…」
そう、このキッコス聖母教会、完全な東方聖母教会様式なんですけど、運営は罰姦の人が主体でやっておられるんです。
ですから、ビヴィアーナ司祭はもちろん、オクタヴィア枢機卿も東方聖母教会の尼僧課程を履修しておられる立場。
つまり尼僧は罰姦所属ですけど、やっとる事は東方流儀。
で、礼拝堂もですね。
飾られておる例の聖母像は東方聖母…つまり、ジーナおばさまのあれです。
股間のアレも含めて完全再現された、あの問題の等身大全裸聖像がどん、と祭壇中央に置かれています。
で。
ご自身の全裸聖像を、ものすごく嫌そうな目で見ておられるのは他ならぬジーナおばさま。
青とピンクの派手なぴっちぴち服でご登場です。
しかも、ベラ子陛下までもが同行。
「なぁベラ子、こういうのはやっぱり、せめてコンスタンチノープルでやったる方がええんちゃうか…」
「かーさま。いきなり呼びつけられてドゥブルヴェで弾道飛行に付き合わされたあたしも同意見ですけどね」
ええ、このお二人、戦闘機で痴女島から飛んで来られたんですよ。
しかも、南独支部長のフローレシェーネ様が「二度と乗りたくない」と言ってる、ドゥブルヴェっていう変態的な外観で、スピードだけはめっちゃくちゃに速いあれで…。
で、ジーナおばさまとベラ子陛下が呼びつけられた理由ですが。
聖母服なる、ギリシャ神話の女神様めいた布をお二人がまとわれます。
それはもう、嫌そうに。
(なんか股間に何も着ないのはな…)
(しかも、聖母姿ですからあれを出しておく必要があるのです、アレを!)
ええ、もう皆まで言わんでくださいという状態なのです。
しかし、儀式は始まったのです。
まずはヴォイキッツァ総主教から、ジーナおばさまへ。
そしてオクタヴィア枢機卿からは、ベラ子陛下へ。
それぞれの流派の聖典が渡され、ここ開けてとページが開かれます。
ええと、何かカンペらしい紙、挟まってるのが見えましたけど、気にしない方向にしましょう。
「えー、こほん。この度はこのキッコス聖母教会の所在するキプロスの地に、神話神種族の導きによって参りましたが、そのこころは神種族より聖母への神託を授けるため、だそうです」
ものっすごく棒読みで何かを読み上げているのがバレバレなジーナおばさま。
で、進み出たのはアフロディーネ女官長。
その装い、桃薔薇騎士団服…女官長公式装備です。
で、聖母像の前に立たれますが…ええ、この制服も露出度は低いのですけど、お尻はTバック状で完全に剥き出しになりますよ。
そして、ペルセポネーゼ団長も、元来の神話神種族に近い姿ということで、黒薔薇騎士団の制服を最大限度まで露出を上げられた、後宮用装備になっておられます。
更には、普段の金髪ではなく、黒髪に。
(もともと黒薔薇が後宮を宿舎にされた理由て、ベラ子の慰安目的らしいからな…)
(間違ってませんけどね…)
つまり、この場に同席している面子で、お尻を出していないのはアオザイ姿の田野瀬部長とヤエル所長だけなのです…。
しかし、私も含めて、そんな破廉恥な姿である事に疑問を抱く暇もなく、儀式は進みます。
「では、神種族の使者として東方聖母様に神託を。まずは私アフロディーテより、神種族合議の上の神託を授けさせて頂きます。まずはここな東方聖母教会総主教たるヴォイキッツァを、東方聖母を信ずる奉仕者の頂きにせよ。すなわち、ヴォイキッツァ様を全地総主教と任ずるべし。この神託、お受け下さいますか」
と、ジーナ様に申されます。
「ヴォイキッツァ総主教、この神託をお受けなさいますか」
で、ジーナおばさまはヴォイキッツァ様に尋ねます。
「聖母様と神種族使者様のお申し付けのままに…」
と、ひざまずいて神託を受ける意思を示される、ヴォイキッツァ様。
「では、聖母像の前へ。洗礼をお受けください…」
ええ、この洗礼の儀式、もうお分かりでしょうが、詳細は申せないのです。
どこから水が浴びせられるかとか。
ただ、お水は単なる普通の水…キプロスワインの元になる葡萄の育成にも使われているという湧水だそうです。
で、洗礼の後で、ジーナおばさまからは聖典、そしてオクタヴィア枢機卿が捧げる聖帯や錫杖、同じくジーナおばさまからヴォイキッツァ全地総主教に渡されます。
で、この様子。
モスクワやサンクトペテルブルグ含め、各地の聖母教会や支部拠点には中継されています。
それと、この後の儀式が更に驚愕だったのです。
ゾフィー様は、実はこの時点ではまだ、正式な東方聖母教会所属者ではありませんでした。
という訳で、黒が基調の罰姦・女性枢機卿尼僧服に瞬間更衣したオクタヴィア枢機卿。
「この度は教皇チェーザレ・ボルジアに代わりまして私、オクタヴィア・ディ・メディチがゾフィー・アウグステ司祭に関する神託を罰姦聖母マリアヴェッラ様がお受けになる際の見届け人として、同席させて頂きます。では、神種族使者様」
「では我が同族アフロディーテに続き、ペルセポネより神種族の神託をば。罰姦聖母マリアヴェッラせんせ…いえマリアヴェッラ様、ここなゾフィー・アウグステ司祭を東方聖母ジーナ・イワノブナ・タカギの管轄に移し、北方の政事の長と成すことが好ましきとの神託、お届けさせて頂きます次第」
(これこれこれペルセちゃん…)
(ほほほ、アドリブっちゅうもの…)
ああ、ペルセポネーゼ団長とアフロディーネ女官長、ベラ子陛下直々の教え子のようなお立場でしたね…。
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で。
この神託に驚いたのが、今の時点では北方皇帝たるエリザヴェータ1世陛下。
泡を食って心話をよこしておいでになりますが、シェヘラザード様と乳上が対応頂いておるようです。
「それはつまり、ゾフィー・アウグステ司祭を北方の地へと送り、痴女皇国の北方帝国支部長に就けよとのお言葉でしょうか」
と、罰姦聖典を開いて何かの記述を探すふりをされるベラ子陛下。
「左様。聞けばツァリーツァ・エカテリーナを以前にも名乗った者がおる様子。従って、ここなゾフィーなる者については、二代目エカチェリーナを意味する北方語の即位名を授けるのが善き事かと」
「ジーナ母様、ゾフィー司祭の東方移管についてはいかがいたしましょう」
「神託のままに」
と、棒読み全開で受け答えなさる聖母母娘。
聖母に母娘があるのかと思いますが、これはベラ子陛下が、ジーナおばさまの娘さんである以上は仕方がないのです。
「では、ゾフィー・アウグステ司祭、この神託、お受けなさいますか」
今度は、ベラ子陛下がゾフィー様に聞かれます。
「聖母様と神種族使者様のお申し付けのままに…」
で、この答えを聞かれた後ですけどね。
このキッコス聖母教会、東方聖母教会です。
つまり、聖母像は先ほども申しました通りで、ジーナおばさまの東方聖母像。
で、ゾフィー様が罰姦の司祭のままだとまずい、ということで神託をいじった模様。
そして、聖母像の前に跪くゾフィー様の頭に、おごそかに降り注ぐ聖水(ただの水)。
ええ、霧に近いくらい、優しい噴射です。
そして、聖母像の後ろで電動ポンプのかすかな音がしたり、聖水噴射装置の操作役のジリオーラ司祭が黒い頭巾を被って何かをしているのを全員、見て見ぬふり。
(頭隠して尻隠してないのもどうか思うけどな…)
(罰姦でも慈母寺でも黒子役は完全な黒子じゃないのです…)
ええ、ジリオーラ司祭も尼僧服なので、お尻剥き出しです。
しかも罰姦と共通にされてんですよね…下着がヒモ同然の、助平尼僧服…。
まぁともかく、洗礼が終わったので名前を授ける事になるそうです。
これは、東方聖母たるジーナおばさまがゾフィー様に聖環を近づけて、宣言する役目に。
「只今をもちまして、ゾフィー・アウグステ・フレデリケ司祭は北方帝国皇帝エカチェリーナ・アレクセエヴナ2世を名乗ること、そして宣誓の証として、この東方聖典を授かることとします」
で、聖水を浴びた頭をビヴィアーナ司祭の差し出す聖布で拭いた後、ゾフィー様はジーナおばさまから聖典を受け取り、宣誓なさいます。
「私、ゾフィー・アウグステ・フレデリケはこれより北方皇帝エカテリーナ2世を名乗りますとともに、痴女皇国北方帝国支部長に任じられましたこと、そして東方聖母教会の管轄に入り洗礼を受けたことを宣言させて頂きます…」
Екатерина II Алексеевна(Sophie Auguste Friederike) エカテリーナ2世 Ten Thousand Suction. 一万卒 Red Rosy knights. 赤薔薇騎士団 Глава отделения Северной Империи(Russian Empire Branch head manager) Imperial of Temptress. 北方帝国支部長 император Российской империи. 北方帝国皇帝




