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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど


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-穴と雪と氷の国-嫁入り皇帝ものがたり・7

広大な金庫室に並ぶ棚と、そこに置かれた金銀に目を奪われる皆。


しかし、こうも考えられるのでは。


金銀は希少だからこそ貨幣として流通させる価値がある、と。


つまり、大量の金銀があっても、それを何かしらの品物の代価として受け取る価値観がなくば、ただの重い金属でしかないのではとも。


「そうだな…ジニアの言う通りだ…だからこそ、ここに眠る金銀やら、他の金属資源を全て引き渡すことは控えられるのだ。それは、ゾフィー殿もヴォイキッツァ総主教も承知して頂きたい…」


ええ、経済の基本ですね。


お金があっても、売るものが限られるならば、売り手は値を釣り上げるか、さもなくば取引を拒否するしかないでしょう。


ましてや、飢饉の時のように、売りたくとも売るものがなくなってしまった場合、どんな恐慌が押し寄せることになるのでしょうか。


「それを防ぐための南米の開発であり、流刑地大陸などの農地化なのだよ。これらにマルハレータ殿下が関わっているのは決して偶然ではない。彼女は今や痴女皇国の開発・商業の顧問と言っていい立場だ…今回はまだ、彼女の出番ではないが、ゆくゆくはここの北側の砂漠やシベリアの森林地帯の開拓に関わって来られるだろう」


まぁ、マルハレータ殿下は今や、痴女皇国のあちこちに出かけておられる立場ですから、顔も広い方ですし、あの方が開発に参画なさって頂ければ捗るものもあるでしょう。


それはそれとして。


「今から、金と銀を100トンずつ、ここからリシュリューに移す。ノルマは1人あたり5トンから10トン、大型の輸送用台車も用意したので頑張ってくれ」


ええ。


全員に下される、情け容赦ない申告。


「台車は1トン積みだ。リシュリューのコンテナ用エレベータも展開するから、頑張って地上まで押し上げてくれ…」


そしてもちろん、この面子には私やダリア母様も入っている模様。


「たのこそ運びなさいよ!」


「あかん。りええは運搬役じゃっ」


ええ、田野瀬局長たち、財務局からお越しの方々は、どの金塊や銀塊を持って行くかを指示する立場なのです。


そして、泣きながらダンケ号1台くらいの重さはある台車を押す理恵母様ですが…。


「ジョスリン、流石に理恵さん1人はまずいんで…」


「仕方ありませんな。統括と室見局長は2人1組でいいですよ。他の者も2人1組で行動させておりますしね」


という訳で、私はヴォイキッツァ総主教と2人で1つの台車を動かすことに。


ゾフィー様はペルセポネーゼ団長が行動を共にして下さるようです。


というのもここの金塊、呪われておりますから、なるべくIFFステータス位階の高い者が持つ方が無難なのです。


で、運んで行った台車をリシュリューの格納庫兼貨物甲板に並べたら、今度は空の台車を押して戻って来るという流れに。


…それで、空の台車が大量に積まれてたんですか…。


なにせ、10キログラムのインゴットを10個置くだけでも100キログラム、重い男の人、1人かそれ以上の重さです。


ましてや大型の台車に100個も積めば、それだけで1トンになります。


従って、こういう時のために使うという頑丈な車輪と枠の、ブレーキのついた台車を使うそうです。


そして、誤って金塊を触った人は、ジョスリーヌ団長かペルセポネーゼ団長が即座に治療。


でないと、お金を嫌になるどころか、お金を稼ぐ行為や性欲にまで嫌気が差してしまうそうなのです。


それに、軍人の方々も「ここの金銀は危険」であると認識しておられる上に、金や銀を仮に盗んでも、たちどころに自分の懐があったかくなる世界ではないところからお越しです。


監視以前に、この金銀を失敬するような不遜な考えの方は1人として混ざってはいないようですね。


まぁともかく、2時間かからずに、予定していた量の金銀は持ち出されてリシュリューの船内に納められた模様。


在庫数を点検して、所定数のインゴットが持ち出された事を確認した田野瀬部長、ジョスリーヌ団長と2人して、再びこの地下金庫室の扉を閉めてしまわれます。


「まぁ、ここから金を持って行くだけでも大変やし、その意味ではこんな辺鄙な場所に金庫室をこしらえて正解というべきか…」


お手伝いの一団に、お茶を出すということで、リシュリューの兵員食堂にお邪魔しておりますけど、ダリア母様も時ならぬ重労働に呆れてます。


「まさかここを作った古代王朝の人たちも、金庫を作られるって思ってなかったでしょうね…」


「ま、この後はイルクーツクからウラジオストク方面へと飛行後、折り返してモスクワに向かうとしましょう。ペルセポネーゼ団長、切りのいいところで田野瀬部長たちの転送要請を願いますよ」


「承知しました…しかしキリア・ジョスリーヌ…ストラティーゴス(しょうぐんさま)とはどうなんです」


いきなりのペルセ団長の、突っ込み。


「えええええ、いやその、小官はそもそもキュラシアの母親ですよっ」


(こらぁジョスリン…それより何よりアンヌマリーの父親役っての、忘れておられませんわよね?)


え。


マリー支部長じゃないですか。


(あのねぇジニア…ジョスリーヌ母様の顔、最後に見たのっていつだったかしらって状況なのよ私…ジャンヌマリーはまだ、顔を見てるそうなんだけどさ…)


ええ、私の同期というか一応同僚で、白薔薇三銃士の一員たるアンヌマリーですよ。


この子、父親役がジョスリーヌ団長なんです。


(まぁ事情は聞いておりますから、もしも比丘尼国出向をどうしても避けたいのならば、フランス病作戦に志願なさいまし。それで手を打って差し上げますわっ)


(そーですよ母様。それにフランス共和国政府なら、流石に痴女皇国世界とはいえど自国の絡む話に母様を噛ませようと要請して来るはずですわよっ)


ええ、これが痴女種の思考共有の恐ろしさというものでしょう。


時差とか距離とか、関係ないのです。


それに話を聞いておりますと、これ、ジョスリーヌ団長、逃げられませんよね…。


「ジニア。あんたもやで…」


「ダリア母様、それはどういう事でしょうか。私は中東支部担当の上、八端騎士団の面倒見があるんですけど」


「あ、まだ辞令回ってないんか…理恵さん、これちょっと、ジニアだけやない話でもあるんで、後で船橋か、場所用意してもろて話しましょか…」


で。


とりあえず船橋に全員が押しかけるのも何なので、シベリア地区の視察が必要な理恵母様以外はブリーフィングルームなる戦闘機に乗る人が事前に打ち合わせをするお部屋に行くことに。


で。


「まず、ジニアのいる中東行政局だが、東欧同様に行政支局から行政局に格上げになったろ。これ…行政局への格上げの条件を知っている者は…全員ではないな。よろしい。まず、行政局となるには本宮女官寮過程と同等の女官教育を行える施設と教育要員を有していることが条件となっているのだ」


お詳しいのですね。


「黒薔薇騎士団員は派遣先で女官の従事者研修教官を代任する場合があるからな。ペルセポネ団長もご存知のはずだ」


頷く団長。


「で、元々の行政局制度だが、急速に拡大する痴女皇国の支配地域において必要な人員、全員を本宮に送って教育するには、いくらあの本宮の巨大な女官寮といえど限度があるという話になった。確かに女官寮と罪人寮、そして聖院学院については水冷設備の撤去と居住階増設によって44階建ての状態にすることも可能なのだが、それでも女官を入れるには1万人が限界だ。それに昇降設備や供食設備の増築増設も必要であると見られた結果…」


「まず、南洋島のボロブドゥール寺院と茸島の聖院学院神学部分校を持つ南洋行政局が、女官の独自育成を認められたのです」


これは、元専門家…前・文教局長の田野瀬部長がお答えに。


「そして行政局への格上げ第二弾は南米行政局、つまり淫化帝国がそれに続きました。淫化の場合はリュネの方々を受け入れる関係で高地は魔毒対策が必要となりましたので、逆に淫化採用者を本宮に送って長期に滞在させるのが難しいという事情があり、承認自体はスムーズに行われました…ただし、行政や教育体制の立ち上げのために本宮要員のみならず、南洋行政局からオリューレ局長を招く事態となっています」


ここで、一旦は言葉を切られる田野瀬部長。


「で、行政局への昇格第三弾は南米と隣接する中米行政局です。ただし、ここは特殊事情が存在します…メソアメリカの中心部であるメキシコから、パナマまでの地帯と、既存の海賊共和国管轄地域のカリブ海諸島との文化や文明格差がありすぎたのです」


「で、大陸部を女裂振珍帝国、諸島部を海賊共和国が旧・支部や行政支局の施政管轄範囲を継続しているのでしたな、マダム田野瀬」


「マドモアゼルでお願いしますぅ…まぁともかく、海賊共和国は船員教育をナッソー他、そしてサトウキビやカカオのプランテーション要員をハバナ、尼僧教育をキュラソーといった具合に分散されていますが、地域特情に合致した教育体制を行政局認定前から有しておりました。で、一方の旧・明日輝と魔屋から成る中米大陸地域ですが…」


(現在はメキシコ帝国の首都ティオティワカン、そして明日輝王国首都であるティノチティトランに教育施設を分散配置しております。聖院学院明日輝・魔屋神学部としての認定も頂けましたかと)


あ、連邦世界の()()()()()()()()()()のフランシスカさんですね、これ。


(ヴォイキッツァ総主教、フランシスカです…シェヘラザード支局長からお聞きかと存じますが、この度は大変なことをお願いする羽目になってしまって…)


(いえいえ。当方でも来たるメッカ開山のために、あそこの苗床運用のための初期供給人材を必要としておりましたから。それに、トランスファルマシァ(へんたい)だのトランスヴイースチ(おかま)どもや根性なしの淫売まがいのごとき卑猥な自画像売り女風情、本宮の手を煩わせるまでもありませんわ…)


あ、この話はアルトさん枠で進んでいる件ですね…連邦世界では素人またはセミプロの立場ですけど、結果的に痴女皇国の精気収集の邪魔になりそうなことをやっている方々を対象として()()()()()作業が企画されています。


そして、その際の作戦参考にされるのが、以前にマリアンヌさんのご学友を悩ませた連中の処分の(てんまつ)末だったそうですね…。

https://ncode.syosetu.com/n6615gx/158/


(その件、小官はもちろん、黒薔薇騎士たちも従事するんだよな…)


(人数は少ないとはいえ、濃厚な変態が集まりそうで…)


(ふん、今回の対象者は純粋な売春婦ではなく、自分の猥褻行為の図画(とが)や動画を売っているような連中だ。むしろ社会的地位が高い場合もあるから、入れ替え処理は必須なのだよ…単純に誘拐拉致するわけに行かないので黒薔薇にお呼びがかかったのだ…ベルジョアーネ・クラモアディーネ・アマンディーネ・リモニエディーネ…君たちの箔付け任務でもあると、ペルセポネーゼ団長からは聞かされているだろ?)


(はぁ、確かにそうですが…)


(まぁ、対象の社会的地位を考えると、少々面倒なのは事実だがな…)


そそ、この件はアルトさんのお話の中でシェヘラザード様とフランシスカさんのやりとりで語られるそうです。


ですから、ここではあまり色々話せないのです…助平なだけでなく、黒薔薇騎士団本来の得意分野で皆さんが活動されるそうですから…そう、そこそこの数…それも、いわゆるカタギの世界の方々を拉致するお仕事になるようですので…。


(捕まった者たちがどういう恨み言や文句を言うかは今から既に予想できているからな。あとは、痴女皇国(こちら)の論理がもはや絶対である場所に連れて来られたことを教えて差し上げるだけだよ)


そうなんですよねぇ、フランス共和国の物騒な特殊部隊経験者であるジョスリーヌ団長にとっても、まさに「元々やっておられた汚れ仕事」の範囲なので、団長にしてみれば大得意かつ慣れた作業になるそうで…。


それと、フランシスカさんとは顔馴染みですよ、私。


(セニョリータ・ジニア…格闘教官赴任の時はお世話になったわね…今は中東行政局(トルキーア)だったかしら)


ええ。


中米行政局と…そして()()()()()()()()()開設の際に、白薔薇三銃士としてのお仕事、少しだけしに行ってるのですよ。


ま、この辺の顛末はまた、別の機会にでも。


「ただ、ジニア…中東行政局を行政局として承認し、独自騎士団はもちろんのこと女官育成施設や要員の充実を認めた背景には、当然ながら北方帝国を北方帝国として安定させる作業を含んでいる話だというのは理解しているな?」


ええ。そもそも、このシベリアの南の端といいますか、中央アジアの奥地に隠された施設まで赴いているのも、北方帝国が絡む話だからこそ。


「なればこそ、早期にゾフィー殿を次期・北方帝国皇帝に任じてあの界隈を安定させねばならん。今回持ち出された金銀も喪失幼女(ろすちゃいるど)商会とボルジア商会の手になるセイント硬貨鋳造所に早期に送り込んで貨幣化する必要があるからな…」


この貨幣工場、実は場所、存じてます。


罰姦と湯田屋さんと鯖挟国で領有を巡って揉めた島にあるんです…。

https://x.com/725578cc/status/1787760887748755573


(いや、連邦世界だと銅鉱山が存在するのは知ってるんだが、まさかあそこに作るとはな…連邦世界じゃ、あそこの領有を巡ってトルコとギリシャ、そしてイギリスが絡むややこしい事情を抱えていたんだよ…今は痴女皇国の介入で強硬派を排除した結果、新生キプロス共和国になったんだが…)


ええ、こんなところにあるのです。


というか、色々な思惑の結果、中立地帯めいたここに作るしかなかったらしいそうです…。


ですのでこの島、ちょっとややこしい事になってます、とだけ。


(更にややこしい話があるでしょ…ほら、女官長の…)


(ええ、特にバフォスがアフロの昔に由来がある街だった関係で、あの子の昔の支配地だったんですよね…)


関係者の親族というかお知り合いというか、いらっしゃいましたね…。


そうです、キプロス島、その立地からして神話神種族時代から人がいたそうです…。


それも、古代遺跡が多数残ってるくらいに…。


(大きさで言うと四国の半分。田原刑務所のある渥美半島の三倍はあるからね…)


理恵母様のお話でもわかります通り、結構、大きい島なのです。


「そう…この金銀はゾフィー殿が持参金としてモスクワに持ち込むためのセイント貨幣を鋳造する原料なんだよ。この鋳造作業が終わり次第、ゾフィー殿はモスクワに赴任する事になる…そう、サンクトペテルブルグからの遷都もセットで行われる事業となるんだよ…」

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