責められたくない子供達と責めて欲しい聖女の悩み・後編
みなさん。
他山の石って言葉、知ってますか。
あたし、恥ずかしながら、ワーズワース卿に教えてもらいました。
…何でNBの首相で英国人でアングロサクソンなお方が日本語?と思われるでしょう。
あたしが実質結婚式前夜に卿に呼ばれて色々話をされた事、覚えてはりますか。
あの後、卿は離れにおる言うてはったでしょ。
あの離れって、実は平家の日本家屋なんです。
というのも、NBは惑星まるっと1個が領土です。日の沈まぬ国です。
元々の大英帝国も世界中に領土があったので「うちの国は領土のどこかで太陽が照っているくらい広範な領地がある。どや!(ドヤ顔)」とやってたのは知ってますが、NBの場合、そんなん言わんでも黙ってどっかで太陽が照ってます。
って事はですよ。逆に言うと、英国本国よりはるかに多彩な気象の土地を開拓して行かなきゃならないわけですよね。
そして、ニューイングランドと名付けられた首都所在州は日本に近い気候の土地らしいんです。
雨は本国より降るし、夏は暑く冬はまぁまぁ寒い。そんな土地なので湿度も高めで、英国式の洋館を建てて暮らすと湿気に悩まされるそうです。エアコンをガンガン使えば問題は解決しますが、そうまでして無理に本国の伝統にこだわりすぎるのもいかがなものか。
そこでワーズワース卿、とある英領生まれの人物を思い出しました。
その名はラフカディオ・ハーン。後に日本国籍を得て小泉八雲と名乗る、怪談小説の作家です。
八雲が松江居住時代に住んでいた旧宅は連邦歴129年の今もなお保存されていますが、地球に来たついでだからとこっそり訪れて大喜びしていました。
というのも、ワーズワース卿は大学時代、東洋史学と本国史の比較研究にかなりの時間を費やしていて、日本を訪れて紀行文を残したイザベラ・バードはもとより、日本に帰化した小泉八雲の私生活に非常な興味を抱いていたのだとか。
そして、八雲研究が高じて当時の彼のような和式住居で和洋混合な生活をする事で、なぜ八雲は日本にハマったのかを論文にまとめようとしたそうです…。
ええ、おっさんの離れが日本式住居な理由、もうわかりますね。
省エネルギーかつタタミライフ。
特定気候下では阿片以上の麻薬たる和風生活の魅力には抗えなかった趣味人ヘンリー・ワーズワースは八雲研究を口実に趣味に走りました。
初期建築費用のイニシャルコストが高いのにはこの際目をつぶり、祖父からはお前は時折変な事に金を遣うと嫌味を言われながらも、本式の英国的生活よりほーらこんなにコストダウンできましたと言う資料を出して周囲を納得させて庭の鯉に餌をやり、四季の変化を庭から眺め風流に生きる喜びを我がものとしたのです。
更に、英国で教鞭を取った事もあるトレヴェニアンという作家が書いた「シブミ」という小説で、日本人と「ロシア人」の混血の男性がバスク地方に建てた日本家屋でアジア系の愛人と暮らすシーンにも影響を受けたと教えてくれました。
…えーっとね、NB大教会っていうのがニューイングランドにあるんですが、そこの大司教に「重婚を容認しないと俺、仏教に鞍替えするぞ」とか言い出してすったもんだと当時のNB政界を紛糾させたのもワーズワース卿でして、日本人のお妾さんを囲うのも夢だったらしいです。
まぁ、流石に日本人のお妾さんは英国貴族にはちょっと問題ありまくるだろと思いましたが、彼の日本趣味を理解する幼馴染の同級生がお手付きになりましてね、英国風というか豪奢な貴族生活を好む嫁さんとは疎遠になりがちだったらしいんですわ。
うん、父親の日本趣味の間接的被害者が、うちの旦那です。
そんな訳で、ブリに近い魚の切り身の照り焼きを頂きながら、NB産日本米で出来たというお冷の生酒をご馳走になりつつ教えてもろたのがさっきの他山の石です。
卿曰く、確かに我々は長年築き上げてきた伝統をむげに捨てるわけには行かないが、フランス人のような柔軟性も多少は必要ではないか。土地に合った生活習慣を導入して環境に順応し、何でもかんでもな本国至上主義という、かつての本国でやってた植民地政策の轍を踏むのかなどと説かれまして。
話のデカさ重さにあたしみてーなアホがついていけるわけないでしょ光線を目から出していると、なんか傾奇者漫画のヒロインみたいな金髪和服メイドさん姿のお妾さん、アグネス・オコーネルさんという方だそうですが、そのアグネスさんを呼んで書斎のアルバムを取りに行かせて、この離れを日本人の大工さん二人とあーでもないこーでもないとやりながら建てている若き時代のワーズワース卿の勇姿を拝見させて頂きました。
うん、大工さんとお茶を飲みながら設計図を眺めて上半身裸で赤ペン入れてる姿とか、嫁候補と妾候補が生温かく趣味に生きる人々を見守る姿とか色々映ってました。
正直、ワーズワース卿自体は「どこのあたしの体の祖国の某ハゲで目つきの悪い大統領や」というくらいにめっちゃ筋肉な方なので、クリスはそこそこ母親似だったんでしょう。
おかーさん割とちっさい人だってのは、例のいけないクリス君コレクションとか、母が残した衣類からも察することが出来ましたし。
で、他民族との迂闊な融和は、かつての本国のイスラム難民受け入れ政策の破綻などの例を出して失敗に終わるとしながらも、アングロサクソン側で柔軟な考えを持ち、受け入れるべき人々の生活習慣を徐々に取り入れて時間をかければ決して不可能ではないと言われます。
「今を思えば亡き妻には悪い事をしたとは思うのだが、どうしてもローズマリーとの結婚を断れない理由もあってね」
「政略結婚というやつですか」庭にしつらえた鹿威しのかっぽーんという音が時折響きます。
「うむ。当時の私が、後々に政界に出る事を考えるとローズマリーとの結婚は避けて通れなかったのだ。アグネスの存在を認めさせるだけでも、本当に骨が折れたよ」そのアグネスさんが、おつまみとして持ってきてくれたカレイの中落ちの唐揚げをぱりぽり齧りながら話を聞くあたくし。
縁側に椅子を持ち出して2人で飲んでます。
つか、あたしらがNBに来る度になんだかんだと引っ張り出されて酒を飲んでるんですが、そんなにあたくし、愚痴聞き役として好適なんでしょうか。
なんか海辺の木で樽を作ったという10年もののウィスキーを出されてますが、ちょっと塩味っぽい辛口です。ヴィネガー振ったカレイをぽりぽりしながら水割りで頂いてます。
「ローズマリーは…積極的な後輩でしたのよ。遺影をご覧になれば分かると思いますが、小柄なせいか派手好きで知られた子でして…」アグネスさんが複雑な表情を浮かべます。ああ、この人がワーズワース卿の嫁さんだったらとあたしゃ思いましたよ真剣に。
絶対この人の方がワーズワース卿にお似合いだわ。そりゃ卿も手放さんわ。
まぁ、そうなってたらクリスは生まれず、あたしも独身か、さもなきゃ適当な男とくっついて地味な人生やってたかも知れませんが、とりあえず、この二人は本当にこの場にしっくり馴染んでいます。
「いやー、正直なところ、本人同士の思いってのは尊重したいところですねぇ。あたしもクリスの前にはそりゃもう、色々ありましたんで。特に母親が絡む話とか話とか話とか」ええ、政略結婚の話、あたしにもあったんですよ。同業他社の社長の息子とか、下手したら社長さんと結婚させようなんての。
それもかなり歳の離れたのもありましてね。
あたしが割とすんなり親父の話に乗っかって宙兵隊行きを承諾したのも、その辺の不穏な気配があったからでして。
でまぁ、この時は不妊傾向のある話をしにワーズワース邸に行ってまして、他にも色々と深刻な話を聞きーの喋りーのしてたんですが、その後で聖院地球行きという事態が起きましてね。
一応はクレーゼさんの渾身の頼みがNBに届き、更に連邦の船がやらかした事態という事で連邦を巻き込んであーだこーだとなった結果なんですけどね。
ちょっと誰かの描いた絵図の可能性もあるとあたしゃ思ってます。
なんといっても、ものごっつい特殊な方法ですけど、結果として娘と呼べる存在がこの世に生まれた訳ですから。
更に、これは…うん、おそらく、クレーゼさんもマリアも判ってる可能性があるんですがね、聖院の方々の特殊能力の大部分の源は、M-IKLA20「エオン」と同じところから来ていますね。たぶん。
で、とりあえず…世継ぎになるかどうかはわかりませんが、娘というべき存在ができましたとNBに報告して足を運んだ時の事です。
孫の顔を見せに行くに加えて、実はクリスに嫁がもう一人増えましたんやけどと説明に行った訳ですが、ここで衝撃の話が。
アグネスさんがバギー押してたんですよ。つまり乳母車ですわ。ええ、いつ孕んだかはともかく、誰の子種やなどとは聞くも野暮というものです。
そう、クリスにしてみれば腹違いの弟爆誕です。
もう、あたし、見た瞬間にあっちゃあーと顔面真っ青になりましたね。いや、我々はワーズワース卿の孫を作る気でしたが、お世継ぎを無理に作ろうとは思ってなかったんですよ。
ほれほれ、いかに正妻(当時)の息子とは言えど、どっちかというと線の細いクリスが父の跡を継いでNB政界に無理に行かんでもええんちゃいますのんと、酒の席であたし喋ってた事あったんですよ。クリス自身も、自分に政治家が務まるかは疑問に思ってますし。
いかに開拓途上とはいえ、NB国民人口も今や数億を数え、それなりに大国の体裁を整えとるわけですから。その六億なり八億なりの舵取りの責任やいかに。
…ただ、産まれたら産まれたで教えてーやお義父さんとも言いたくなったわけで。
こりゃーちょっと父子の雰囲気悪くなるかなーと、あたしが内心怯えていたんですが。そこにクレーゼさんとマリアが来ましてね。
で、痴女は例えNBでも痴女スタイルでしょう。庭の芝生全焼さすわけにいかんし、更にマリアも専用の金のカゴの中です。ただ、アグネスさんは事の顛末をワーズワース卿経由で聞いてたそうで、これが話に聞く性女いや聖女かと、裸族なクレーゼ母娘をしげしげと。
クレーゼさんも、これが話に聞く実質のワーズワース第二夫人かと、大正浪漫系和服冥土風味ガイジンをしげしげと。
そこからは話が早かったです。呆然と固まるわしとクリスを横目に、マリアリーゼ・ワーズワース・アクエリアスとフレデリック・オコーネル・ワーズワースの品評会開催と相成りましてな。
なんか知らんうちにマリアの子種の提供話にまで進んでましてん。マリアが孕む時の種くれやとまで。
この瞬間に、聖院地球にワーズワース家の分家筋誕生確定ですわ。
下手したらワーズワース伯爵やのうてワーズワース大公になりかねん話です。
今でも充分に国王名乗ってもええレベルなのに、星もう一個ぶん領土おかわりみたいな状況です。
マリアはクリスの種で生まれとりますから本家筋ですが、まぁ聖院の「上級神官以上は結婚まかりならず。夫帯は許さず」という掟がありますので、公式的にはクレーゼさんもマリアもワーズワース夫人になれんのですが。
そう。あたしゃ聖院の事をエロ尼寺とかいうてますが、吸うわヤるわが日常なのと女ばかりなのを除けば、実はかなり格式ある女修道院でしてね、聖院。
なんか話を聞いてますと、こっちのアトス山とかメテオラ修道院レベルの厳しさで知られてるみたいなんですわ。ただ、宗教的な高みを目指すのではなく女子力と科学人文知識を高めて世に還俗するのが基本らしいです。
ほれほれ。前にクレーゼさんが「入れ替わりがある」言うてましたやん。この入れ替わりが正に下級女官の還俗なんだそうです。
ただ、上級女官になると完全出家になります。
例えばアルトくんこと、あたしの忠実なる牝豚アルトリーネさん。
この子は生まれついての上級女官ではなく、騎士修行の過程で上級の資質に開花して「男とヤると相手を燃やしてしまう」階段を昇ってしまった部類です。
で、聖院に入るととりあえずは、仏教でいう得度式みたいな事をして俗名…特に姓を捨てます。最近はどうも名前のバリエーションが枯渇気味という事で、とりあえず入りたての女官は姓を捨てるだけでいこうと命名規則簡略化というカイゼンの真っ最中だとか。ただし末尾ゼ、末尾ネ、末尾レは上級女官と被る可能性があるので女官名を別途名乗らされるのだそうな。
まぁ、前に言った「裸に近いほどエロい、いや偉い」一目瞭然の規則と、上級特有の周囲に渦巻く熱気で否応なく階級がわかるシステムになってるから名前の必要性はあんまないと思うんですけど、流石に金衣銀衣と同じ名前にすると「女官に間違われてえらい目に遭う」という事で俗界でも金衣銀衣上級女官と同一名はなるべく避ける風潮だとか。
と、そういう事情を、テンプレスに乗り込んだ菅野くんに説明していきます。
ほれ、例の銀衣お世継ぎ話です。
なんで聖院では婚姻禁止かというと、各国から距離置いてるからです。
こっちからは不戦不侵不介、ただし還俗女官の女児を女官候補によこすのはOKとやってるのも、聖院と血縁関係を結んだ国と提携するのは特定国への介入になるからです。
じゃあ、あたしとクレーゼさんどないなんのという事ですが、姉の謀反鎮圧に加えて卵子提供という事で、わしら夫婦と実質婚やし、その上NBは完全に別世界なので、聖院と血縁になったところで聖院地球界に関係ないやろと。
実際には姉妹関係がギスギスしていた聖院内の問題が解決した上に、金衣から上級女官まで「男の代用品としてまこと上玉である」認定を頂いた女を逃すまじと反対者は罪人環がついた約一名以外の全員一致でね、クリスとわしは関係者扱いされてましてね。
「で何か。騎士団長の後継ぎを作らにゃならんから俺に協力しろと」
「そうそう。金衣の場合、身分地位が低い者への救貧事業みたいな意味があるから、なるべく平民に該当する者から選ぶのが一般的らしいねんけどね。銀衣は流石に文武に優れた者に打診するらしいねんわ。まぁ、誰もおらんなら罪人頭が栄誉に預かるらしいけどな。罪人頭もなるべく武勇の誉れ高い罪人から選ぶし」
「過去にどんな奴が選ばれてるんだ?あっちの世界って、そもそもあんまり戦争起きねーんだろ?」
(まず諸国からの推薦ですわ。例えば国で行った試合で一番強かったり、竜討伐で武功を遂げたり等々、それなりの実力があるとみなされた者が送られて参りますの)で、心話でクレーゼさんに助っ人要請。
(下駄を履かせて推薦なんてのもあるんじゃないのか?その…銀衣ってのか、騎士団長と一夜過ごすだけで勲章ものの名誉なんだろ?箔をつけるためだけに来たハリボテを来させる…あ!)
(うふふ。菅野様、わたくしども聖院女官には一切の嘘ごまかしは出来ませんわよ。さらに、銀衣とつがう事を求める者は銀衣騎士と試合をして頂きますの)
(しかし、話を聞いてたらだ、おたくらの騎士団長が世界最強なんだろ?そいつらに勝つのはかぐや姫の結婚条件並みに無理難題じゃないか?)
(ああ、勝てずとも力量を示せばよいのですわ。そりゃ銀衣に打ちかかれば並大抵の騎士武士は数瞬で打ち倒されますわよ。しかしどのように知力を尽くし鍛錬の成果を見せるかで、意気やよしと判定を出して武勇を褒め称えるのが流れですの。要は銀衣が気に入るような戦いの様を見せればよいのです)
(…待ってくれ、それじゃ俺もあの鬼のように強いのと戦うのかよ?あんたら八路軍だろうが国民党だろうが米帝だろうが潰走させまくってたの、俺が見てたの知ってるだろ?いくら国民党軍が匪賊と変わらんにしても尋常じゃないぞ、あいつ…赤露の戦車、一瞬で剣だけで鉄屑にしたぞ鉄屑に)
(それはもう一騎十万とまで言われた銀衣ですから、あの不肖の姉…強さだけは認めます。ですが菅野様につきましてはその一人で十万の兵に値するとされた姉が頭を下げているのです。既に姉は菅野様の武勇を認めて軍門に下っておりましてよ?帝国では正々堂々戦った敗軍の兵にも礼を尽くしませんの?)
(ぬぅ…確かに、白旗掲げて降参されたようなもんか…)
(姉様の見た目なら心配あそばされなくとも。菅野様と同い年に合わさせますわ。わたくしどもが若返るとか成長を早められますのはご存知でしょ?)
(クレーゼ…様だっけか。逆に婚姻とかはならんのか?そりゃまあ一晩だけの方が気楽だけどよ、ありゃほんまもんの堅物だろ?誰かが常になんかしてやらんと思い詰めて、またなんかやると思うぞありゃ)
(まことによくご明察ですわね。…しかし、確かにわたくしどもには不婚不姻の掟がございますので、菅野様の願いでもこればかりは、と言いたいところですが、方便はございます。要はわたくしとクリス様やお義姉様との関係ですわ。聖院に献策献案の成果著しい食客、これですわよ。つまり菅野様が姉様の側に控える軍師なり何なりの立場であれば、じょうしがぶかとおふぃすらぶして忠誠と士気を高めているとして押し通せましてよ?)
いらん現代知識に毒されている金衣はともかく、公式的にはあたしらは聖院賓客の立場であり、男の娘一歩手前とはいえ、だ。男人禁制の場所も多い聖院内をクリスが割と自由にうろつける理由もこれです。
(全く。最初はちょっと夜這いしていい思いしたらいいだけとか言われたが、話を聞きゃあ夜這いで済む相手じゃないだろこれ)
(それはまあ…ほほほー。あたくしのお夜食と同じと思ってちょっとおつまみする感覚でもよろしうございますわよ)
(なぁ、俺やっぱり色街だかに行っていいか?)
(仕方ありませんわね。では代わりにあたくしを孕ませて頂くとしましょうかしら?)
(もっと悪いんじゃねぇかバカヤロー!)
(ほほほほほ、あたくしがお嫌ならアレーゼおねーさま以外の選択肢はございませんわよ?何ならマリアに捕縛させましてよ)
(そーゆー訳だからあきらめい。今回あんたに選択肢はない。ま、成し遂げた暁には下級女官のハーレムを体験させてやっても良いが。ひひひ)
(やめてくれ、あれこそ南洋の鮫の巣じゃねぇか)
そうなのです。
男子禁制は禁制として、男の娘パンツ姿の可憐なクリスの尊いクリス君に注がれる熱い視線が壮絶なんですよ。
捕食される恐怖があるから、クリスが歩く時は必ず誰かが付き添う必要があるのです。
そしてミイラ取りがミイラになる危険すらあるから、護衛の騎士が誰と誰かまで指定されてるのですよ。
もっとも自制が効いてるアルトリーネやクライファーネですら、やはりクリス君にちょちょっと触ったり、内緒でこしょこしょして忠誠誓ってるのは聞いとりますが、あの子らも大変だから職務に支障のない範囲で好奇心は満たしておあげなさいとわたくし。
後でナニしたか吐かせて調教ネタにするけどなっ。
(クレーゼさーん、うちの社員に注意終わった?
)
(ええ、メルトリューレに来てもらいましたし、あらかた済みましてよ?)
「はい、じゃ菅野くんに説明します。とりあえずやる事は聖院地球の偵察飛行です。と言っても、毎度毎度同様に指定したところを飛んで回るだけでよろしい。今回は聖院分院所在地の周辺大国の軍事行動のきざしを調べていきますので、練兵場の鍛錬状況だとか、港の軍船の数や動きを撮影してきます。雲やら隠し砦やらであんまり全容が伺えない場所ね。撮影してほしい地域や地点にはバンシーが誘導してくれます」
「つまり、俺がやるのは一人百式司偵か」
「そんな感じ。あと、TARポッド…自動偵察装置を地上に打ち込みます。これは噴進誘導弾テリブル號の代わりに積みますので、機体は非武装に近くなりますが、まず聖院関係者以外は高度2万や3万を飛ぶバンシーに手は出せないでしょう」
「まぁ、呪術祈祷でもせにゃ無理な話よな。しかし、聖院を敵に回して勝てる連中っているのかよ」
(これは内緒や。確かに、あの世界には聖院に勝てる奴はおらん。しかしやな、聖院には勝てなくても民衆はどないや)
(何だよそれ)
(国民党とかやらかしたやろ、焦土戦術。要はいくさや略奪が起きるのは聖院の存在ありきやとして、民衆の聖院信仰を揺るがせたいわけよ。更には中小国の畑や水源に嫌がらせされてみ?ただでも食料備蓄技術がまだまだ未熟やのに、中小国の農地に塩撒いて回るだけで下手したら国が滅ぶで国)
(あーあーあー、なるほどな。軍隊には勝てないから嫌がらせと遅滞戦術に走ろうってハラか。地道に続けりゃ根負け…するか?)
(問題は聖院も人の子なんよね。使命投げ捨ててやーめたーって放り出した金衣とか銀衣、過去にいた?)
(ありえませんわお義姉様。…実際には責務を放棄した上級女官はおりましたが、聖院を離れて一日で燃え尽きました)
(へえ、あそこを離れたら祟られるんかい?)
(まー、当たらず、されど遠からずですわ。女官の献上する精気を切らすと、わたくしどもは自らの熱気を封じられなくなりますの。直吸いで代用は出来ますけど、直接だとどうも…言うなれば女官は精気の濾し網や蒸留器とお考え下さいまし。更に言いますと彼女たちを遠さないものが砂糖きびの絞り汁で、所定の流れで来たものは精糖でございます。ただ、衆生でも勇者や賢者とされる方々は上質な糖が取れると)
つまり、あたしや菅野くんの精気というのは…
(ええ。アレーゼのいう匹夫万人とか値十万。極上ですわ)
メルトリューレ「正直、精気の味って人の肩書きじゃないんです。豪商や大地主程度なら町人や農夫の方と変わら…いえ、清廉な暮らしの方の方が美味しかったりしますの。ですからクレーゼ様も色街より田舎に行く方が」
オリューレ「却下」
メル子「なんでよ。質や味については事実でしょ?」
オリュ子「吸われた翌日に、その方が普通に仕事できると?」
メル子「…ま、まあ確かに、金衣様がお一人や二人で満足なさいませんわよね」
オリュ子「メルトリューレはもう少し思慮が欲しいと金衣様に言われてましたわよ。ダメなメルトリューレ、略してダメル子と。あたくしのオリュ子は嫌ですが、メル子とかダメル子ってしっくり来ますわね」
メル子「むっきー。オリュ子に言われたらものすごくむかつきますわ!!!111!!!」
次回「バッキャロー」特定製造業を中傷する意図は、ない。
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2021.5.8追記
アルトリーネ「はい皆様、あんぽんぽんな女官二人は置いときましてですねぇ」
クレーニャ「アルトリーネ様とあたくしが主に出てくるR18版のお話が出てるそうですよ」
アルトくん「…それは良いのですが、あたくしはアルトくんで定着…ですか」
クレーニャ「アルトリーネ様…わたくしはクレ5*6にされそうな気がします…」
アルトくん「ちなみにメル子はあちらでもダメル子らしいですわよ?」
メル子「あのー、何ですか?このお話、あたくし達文官女官に厳しくありません?」
アルトくん「うっさい。武官は武官で上司がアレ…いや上司はアレーゼ様よ?いいの?」
オリュ子「かと言ってクレーゼ様でも困ると思います」
クレーニャ「とりあえず、成人の方はぜひご覧になってくださいまし!」
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