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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど


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-穴と雪と氷の国-嫁入り皇帝ものがたり・6

リシュリュー船橋の正面に見える青い星、地球。


ええ、我々が乗るフランス海軍…そしてフランス航空宇宙軍所属のコンテナ船兼用航空宇宙母艦リシュリュー号、地球の衛星軌道上に浮かんでおるのです。


「な、なななななななななな」


「こここここここここはどこですかわたくしたちは一体っ」


「えーとそのあのその」


ええ、我々痴女皇国側の添乗者一同、座席にベルトで縛られた状態でなかったら、絶対に大変な事になってたと思うのです。


そう、無重力状態を生まれて初めて経験する方々が、なんじゃこれ状態になっておられるのです。


まぁともかく。


宇宙空間未経験者の皆さん、生殖に。


いえ、静粛に。


(っていうかジニアも未経験では)


(理恵母様。あたくしがどこの誰と誰の娘やと。痴女種女官の経験と知識共有はもちろん、伝承を受けてますでしょうが…)


ええそうです、他ならぬこの高木ジニアリーネとて、実は実際に宇宙から地球の光景をちゃんと見るの、初めてなのです。


しかし、他の未経験者と違うて、私にはダリアかーさまと理恵かーさまの知識と経験、ナマで直に受け継いでおるんですよ?


(ジニア…なんか生で何かを受け継いだかのように言うのは…)


(誰に似たのよ…)


それに私、茸島でベラ子陛下とかオリューレさんとかと日常的に過ごして来た事もある女でっせ。


まぁともかく、宇宙空間に浮かぶ地球。


高度が低いせいか、どどんっと丸い球のような状態を遠景で見るわけではありませんけど、それでも暇やな山脈じゃなくてヒマラヤとか、その先に続く誤尾(ごび)砂漠とか企魔姦(たくらまかん)砂漠とか色々見えます。


あ、理恵母様。こんな名前にしたのは誰なのでしょうか。


私も口にするのはもちろん、頭に思い浮かべることすら本当は嫌なのですが。


(語呂合わせのひどさは毎度のまりりと、たのの仕業として)


(雅美さんの名前が抜けてるわよ…あと、りええも国土局長なんだから地名の制定に噛んでるでしょ…)


(たの。あんたも文教局長時代に命名とか仕事してたらわかると思うけどさ、まりりと雅美さんの出して来た命名申請に付議書つけて出しても蹴られる事、多かったの知ってるよね…)


(ええ、理恵パイセンの元・同級生の田野瀬麻里子がその辺を知らないわけはないのです。たのきちも悪いってのはあたしも同意しておきましょう)


(それ以前にベラちゃん。あんたは痴女皇国の皇帝として、この変な命名に物申す意志はないの…?中東行政支局から頼まれたメッカの整備さぁ、元来のメッカじゃなくてリヤドの位置でやってくれとかザムザムの泉もちゃんと作ってとか、挙句辺りをラクダ用の牧草地にするからって人工湖作るとかはまだいいとしてさ)

https://novel18.syosetu.com/n5728gy/272/


ああ、理恵母様のお話、中東行政支局の幹部の一員として私も知っております。


一言で申し上げますと、中東地域とか中央アジアの辺からコンスタンチノープルに出るだけでも大変なのです。


ですから、アラビア半島の中央部に中東行政支局と東方聖母教会の拠点作ってくれまへんやろかという請願、来ておるのです。


言うなれば、日本でいう、どこそこ県とかどこそこ市の役所の出張所。


あれですよ、あれを要望されとるのです。


そこで、単に行政窓口を設けるだけでなくて、淫化同様に一生に一度はって感じの巡礼旅行を皆様にさせてあげようという風習の流行を作り出す話となりましてですね。


で、連邦世界のメッカを参考とした巡礼都市、あの砂漠も砂漠な砂漠半島の文字通りど真ん中に作ってぇなというお願いをしとるのです、シェヘラザード行政支局長とかが。


そして、せっかく作るならと、巡礼の目標目的を死者の鎮魂とか生まれ変わりを祈念するための墓所都市としようって試みですとか、その墓所を鎮護するために八端十字騎士団の騎士を常駐させようとか、あげく八端十字騎士団の本拠地をそこにしようとか、それ自体はまぁ納得のいくお話だと思いますよ。


内容によっては、あ、それいい思いつきだってのもありますし。


ただ、ですねぇ。


メッカって、アラビア語で神殿って意味がある言葉なんですよね。


ですので、滅姦(めっか)とか変な都市名、いくら都市一個まるごと霊園とかカタコンベみたいな感じにしようとかいう場所にするって話だったとしても、死滅する前に姦淫を決めて死ぬ、やらなきゃ死ぬに死にきれないような怨念が残りそうな町名はやめといた方がいい気がするのです。


(それ以前に、それこそ連邦世界のイスラム圏出身者には絶対に聞かせられなくなるぞ、ジニア…なにせ預言者を風刺した漫画を表紙にしただけで、その風刺新聞の出版社が襲撃されたんだ…悪魔の詩事件ってのもあるけど、これはマリアリーゼ陛下の方がお詳しいだろう…英国も関わっているからな…)


(ジョスリーヌさん…その小説を日本語に翻訳した大学助教授の先生が勤務してる学校で刺し殺された件も言っとかないと…)


(まぁ、本件で文句を言って来た際に、逆にあの宗教に関わる者たちに何かを仕掛けるとっかかりにもなりますね…)


こほん。


物騒な話はさておき。


とにかく、私たちはひっくり返ったり地球に鼻先を向けながら移動するという、宇宙空間独特の状態で衛星軌道上を飛翔するリシュリューから、シベリアの大地や他の地球のあちこちを見下ろす機会に恵まれたのです。


まだ残雪残るシベリアの大地の雄大さに皆が目と心を奪われます。


特に、これから「領土」としてここを開拓する必要のある方とか、どうやら宗教の布教範囲にされそうな方とか、あるいは鉄道だの道路をこしらえる担当になる方とか、目が真剣です。


何が採れるのか、あるいは地面に埋まってる資源はあるのか等々云々かんぬん。


「人は住んでおるにはおるようで…」


「しかし、暮らし向きは厳しい模様…」


「連邦世界のロシアでも、この辺は下手したら電気も来てないとか普通にあるみたいなんですよね…」


ええ、そりゃ雄大な自然も残るわというくらいに厳しい居住環境がそこにあるのを無慈悲に告げる理恵母様とジョスリーヌさん他、シベリアの事情を知っている方々の暴露話に他の皆が絶句する事に。


そして今から、大気圏に再度突入して、今回の目的地である中央アジアの湖を目指すことに。


「ま、見ていてくれ。離脱時と比べれば、よりはっきりと防壁の効果がわかると思うから」


実は、どう見ても音速はもちろん、車より速く飛ぶことすらまずそうに思えるリシュリュー号です。


なにせ、見た目は端に寄せられた船橋や、展開されている時の軍用船!といった雰囲気に満ち満ちたアンテナの部類以外はコンテナ運搬船そのもの。


こんなもんが空中に浮いてるだけでも、はっきり言って変な光景だと思うのです。


しかしそれが、大気圏離脱時には音速を超えるどころか第一宇宙速度というのですか、えらい速さを出していたのです。


(正解は、ムッシュ・ウガジンのイケジリオオハシのアパルトマンあるだろ、あそこに置かれているバッテ(ばっと)だ。あのヤキュウ・バットが特殊な状態となって握った者を防衛する際の不可視障壁がヒントになったのだよ。いわば、テンプレス級初めての痴女皇国世界由来のファンタシー系装備ってやつさ)


ふむふむ。


確かにあのバット、ふだんは宇賀神雪子さんの実家に置かれていますけど、何かことがあれば痴女皇国世界に持ち込まれて使われてるのも存じております。


なにを隠そう、北方帝国作戦の時も使われたのです。


凍結したネヴァ川の氷を叩き割って退路を塞ぐ時とか。


もっとも、アルトさんがやりかけて止められ、うちのダリア母様が軽くばっこんと振った程度ですけど、それでもネヴァ川の凍結した氷が当たり一面に飛び散ってえらいことになりましたから、威力は知っております。


(ジニア。あんたもウクライナの黒土帯で使ってあわや、あそこの麦畑の土を吹き飛ばしかけたやろ…)


(加減がわからなかったんですよ…なんですかあの変態バット…)


まぁともかく、そのバットの技術を使ったっていう何かですけどね。


リシュリューの船橋から見ておりますと、ほんの微妙に、かすかにまわりの空気と違うトンネル状の空間が存在するのです。


そして、顕著なのは雲に潜る時。


まさに、リシュリュー号が通過する部分だけ、雲に穴が空いているのです。


(この障壁空間内はほぼ、真空に近い。それゆえに出航前にリシュリュー各部の機密を確認させたのだ。SFアニメシオンでありがちな、赤熱した電離大気に包まれる危険な大気圏突入のリスケ(リスク)もなく、安全に上昇降下できるって寸法だよ)


(たださぁ…神種族由来のワザなんで精気食うからね…普段は常用しないでよ…基本は対消滅機関使って転送かけてね…)


(マリアリーゼ陛下が今、正に言われたが、この航路確保障壁の欠点は精気を消費する点にあるのだよ。今回はコンスタンチノープル市民や、中東行政局他に対する示威行動を兼ねていたので承認をもらえたがね)


まぁ、あのバット自体がそもそも、とっても危険なものだというのはわかりますので、何かあった時にしか使わないというのは正解でしょう。


「それと…だ。今回赴くテレホリ湖だが、その立地上、ポル=バジン島は永久凍土が隆起して湖面上に突き出ているのだ。すなわち、ユーラシア大陸とインド亜大陸が衝突した際に大きく隆起して海抜二千三百メートルの高さに湖が押し上げられた際の隆起変動で島が形成され、更には気候変動によって島の基底部の永久凍土層が維持されたと言われている」


ふむふむ。


「で、テレホリ湖自体はさほど深くはないのだ…はっきりと言えば、このリシュリューを浮かべる水深40メートルの深さの湖底を、ポル=バジン島付近はおろかテレホリ湖に求めるのも微妙なのだ…浮かべられなくはないが、今度は艦の水上航行時に使う熱交換装置の排熱で、湖水を熱してしまうことになるからな…」


あ、永久凍土がどうのこうの。


「そうだ。リシュリューは他のテンプレス級同様に多重空間外燃式対消滅動力炉の稼働で航行機関を運転することはもちろん、船内設備を稼働させる電力をまかなっているのだ。その動力炉の排熱は注意深く別空間に廃棄されているが、一部は艦内に蓄積するのだ…で、排熱のためには水上船舶のように浮かばせておいて、周囲の水を使うのが一番効率がいいんだよ」


それで痴女宮に来たテンプレス級でも聖院湖に浮かばせたり、聖院湖の専用埠頭に繋いで浮かばせていたのですね。


「まぁ、浮かべておくのが一番無難な船ではあるのだがな…で、今回はテレホリ湖と周辺の凍土層への悪影響を防ぐためにポル=バジン島へはコンスタンチノープルで乗り込みに使った人荷用アサンスール(エレベーター)を使用して必要な人員だけを送り込む事にする。なにせ、島の周辺だけは沈下防止と特殊工事のために凍土ではなくなっているが、テレホリ湖とその周囲全てにその工事を進めるのは憚られたと聞いているからな…」


で、何が目的地に存在するのか。


その、ポル=バジンなる島の遠景望遠映像を見た我々は絶句する事に。

挿絵(By みてみん)


これは夏の光景ですが、今は春先な上に、標高2,000メートルを超える山中に存在する湖の島ですから、まだ雪に覆われています。

挿絵(By みてみん)



なんでこんな高地かつ、人も通わぬ場所にこんなもんがあるのという疑問、皆が抱きます。


どう見ても人の作った大きな建物らしきの基礎部分だけ、その島のほぼ全部を占める形で残っているのです。


いえ、後から作られたと思しき、瓦屋根の建物がぽつんと存在します。


「ジニア。このポル=バジン島の()()は連邦世界だと西暦770年頃に建造された建築物だってのが調査でわかってるのよ…昔の太陽の異常活動が樹木の年輪に記録されているのを名古屋大学の研究員の方が発見されてね、で、その三宅イベントが発生した痕跡を建物の木の部分から探す事でおおよその建築年次を推し量る方法があるの…」

https://x.com/725578cc/status/1786938794861793562


「従来の放射性炭素の年代測定よりは迅速で正確らしくてね。更には、マニ教というペルシャ…痴女皇国世界では猫絨毯国で信仰されていた宗教の施設だったらしい事も発見されている。いわば、東洋のアトスやメテオラというべき場所だったようだな」


なるほど、それでこんな辺鄙な場所に建てたのですね。


メテオラとアトスをよく知る私には納得です。へへへ…。


「ま、本当に連邦世界のアトスのような禁欲的な場所かどうかは不明だが、こんな秘境だからこそ、この地に何かを隠すことを思いついた人物がいる訳でな…今からお見せするものは、単なる資源ではなく、ゾフィー殿が北方帝国を掌握した暁には、ヴォイキッツァ殿と協調してお使い頂きたいものなのだ…その配給を受けるためにも、リシュリューが必要なのだよ…」


一体全体、何があるのでしょうか。


そして島の端っこに浮かんだリシュリューから伸ばされたエレベーターシャフトによって降り立つ私たち。


「この辺りは既に痴女皇国の先遣隊によって開発され警備されている。ま、この建屋以外にはそうは見えないだろうが…」


で、ジョスリーヌさんがどこかに心話で連絡した後、聖環でその建物の扉を開錠なさったようです。


一緒に降り立った軍人さんたちが、頑丈そうな扉をがらがらと開けますと、そこには大型のエレベーターが。


「ま、隠しているものがものだ。ここから先は大変に厳重でね。何度かに分けて、台車運搬組を下ろすことになるだろう。いささか大変だが、このためもあって部隊を引き連れて来たのだ」


え。


見れば、黒薔薇騎士団員の方数名と、アオザイ服の方、数名…。


田野瀬部長までいらっしゃいますよ。


「ううう、ここを開けるならと転送で送り込まれたのよ…」


「まぁ、ここはたのの管轄だしね…」


「そうだな…見ての通り、この施設は痴女皇国財務局が管理している…実際には警務局の直轄警備施設でもあるがね。さ、行こう」


で、50人は人が乗れそうな大型エレベーターで降りた先…と言っても、かなり深い場所のようです。


おまけに途中でエレベーター、何度か停まってますよ。


「階層ごとに空調や電気系統が変わるのでね。ま、到着した先はもっと驚くことになるぞ」


その言葉に嘘はありませんでした。


このエレベーター、箱に乗り込んだ先の壁も扉になっております。


そっちの扉が開いた向こうを見て、息を呑む我々。


「ここは痴女種でないと恐らく、数分と耐えられないだろう。あえて気温を下げているんだよ」


ええ、氷点下に近いのです、この部屋の気温。


素掘りの地下洞窟に、何かを吹き付けただけのような部屋。


その先には、またまた頑丈そうな…本宮地下24階の墓所の祭壇横手にある、懲罰具倉庫とその先のお部屋に繋がっている扉に似たものが見えます。


ここの扉はどうやら、ジョスリーヌさんと田野瀬部長が一緒に何かをしないと開かないようですね。


がっこんがっこんと、重々しく開く扉。


その先の空気が…これ、懲罰具倉庫と類似じゃないですか、ここの空気…。


つまり、痴女種…それもかなりの上位痴女種でないと防げない、神種族由来の呪いの瘴気が漂っているのです。


「ジニアちゃん…単に寒いだけじゃ防寒服や気密服で防げるからね…あえてこの前室や附室、懲罰具倉庫と同じ仕様にしてるのよ…」


「ふふふ、で、その先にあるものも似ているんだよ。マダム田野瀬、案内をお願いします」


「ううううう、ジョスリーヌさん…私はあの暴力皇帝に囲われているだけですよ…」


「理解しております。ま、パスタ女被害者友の会常任相談役をお任せしている立場の方ですしね…とりあえず扉を開けてしまいましょう」


(たのきちとカエル女をそこに閉じ込めますよ…)


(お言葉ですが陛下。この財務局資源保管分室、管理者はデルフィリーゼ財務局長です。パスタ女が皇帝であろうとも扉の開閉権限はやすやすと貰えないはず…皆にも言っておこうか。この部屋の扉の解錠、全て財務局長の承認を要するからな…仮にアルト閣下やベラ子陛下はもちろん、マリアリーゼ陛下ですらも単独来訪だと鍵は開けて貰えないのだ)


(まぁ、あたしなら中に転送で入れるけどさ…そもそも、そっちに行くなら本宮の地下金庫室で用事が足るじゃんか、あたしの場合…)


(そうですな。ここはそもそも、極東開発のための資金や資源を保管するための分室…つまり、この中ではゾフィー殿…あなたのものになる訳じゃないんだが、あなたに使用権が渡されるものが眠っているんだよ。さ、見てみたまえ…」


ええ、懲罰具倉庫同様の附室なる部屋をくぐって、更にその先に設けられた扉の中にあるもの。


そこには、本宮の地下金庫室を見学した経験のある私はまだしも、ゾフィー様たち「お初組」には驚愕の光景となる状況が待ち受けていたのです。


そうです。


広い通路の両脇に並ぶ棚には、銀色のインゴットが整然と並んでいます。


「マダム田野瀬、ちょっと手に取らせて頂いていいかな」


と、棚の一つに近づくジョスリーヌさん。


「はい…例の呪いがかかっていますから注意してくださいね…」


「ま、小官にとって金は必要であって欲しいものではないのですよ。とりあえずこれだな…」


で、ジョスリーヌさんが手に取られたものは、銀とは少し違う銀色の輝きのインゴット。


痴女皇国の恥ずかしい紋章…丸と棒の組み合わせはともかく、ドクロの絵と文字が鋳込まれています。


Platinum 99.99 10kgとか書かれてますけど。


「こっちはパラジウム、この光沢のないものはロジウムだな。ま、プラチナ族の白金ばかりがこの棚には保管されているんだが、これには今回は用事がないんだ…あ、これは触らないように頼みますよ。触ると金目のものを忌避し、人の欲望が消失してしまう呪いに侵されますのでね」


ええ、本宮地下金庫室のインゴットの大半にもかかっている呪いですね。


「それにパラジウムもロジウムも、ちょっとばかりデリカ(デリケート)な金属でね…」


見れば、ジョスリーヌ団長、いつの間にか白手袋、しておられますね。


(パラジウムは酸に弱いのでね…同族のプラチナとは真逆なのだよ)


(ただ、水素吸蔵合金としての性能が凄いのと…プラチナとロジウムとパラジウム、車の排気ガスをきれいにするための三元触媒に使われるの…触媒ってわかるわよね)


(ええと理恵母様、雅美さんのお墓に触るとおかしくなったり、助平になるあれですか)


(そうそう。さすがは私の娘ね)


(理恵ちゃん…娘さんにどんな教育してんのよ…母娘で呼び出すわよ…)


(雅美母様。私もペルセポネも暇じゃないんですから、室見さんちと家族喧嘩する場合は母様だけで)


(そうですよ。私なんか呪いの金塊運搬指揮役で呼ばれてるんですからね!)


ええ、実は黒薔薇騎士の一団の中に、なんとペルセポネーゼ団長までもが呼ばれているのです。


「Je suis désolé. La sauce soja de Noda sera livrée ultérieurement en fûts.(謝礼の醤油、後で野田から樽で届けさせるから…)」


「Μου τελειώνουν συχνά η σάλτσα σόγιας και το miso...(お味噌とお醤油、切らすことも多いんで助かります…)」


(昨今はうちの娘たちに賄賂を贈るのが流行ってるわけ…?)


まぁ、痴女宮の田中局長の嘆きはともかくですね。


「とりあえず100トンもあれば足りるか。全地総主教就任記念金貨と銀貨だろ、それから新皇帝の総主教就任記念貨幣用だな…」


え。


「あの、ジョスリーヌ団長…それは…」


「ああ、言い忘れたな。今から積み出す金と銀はシベリア…特にコルィマ金山の埋蔵分を回収したものだ。で、優先使用権は北方帝国支部に帰属するが、あくまでも北方ルーブルではなく同価値のセイント貨幣として鋳造するための原料に使うと理解して欲しい。つまり、北方帝国ではなく、東方聖母教会の人事刷新を祝う記念貨幣として使われる事に留意して欲しいのだ…」



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