がんばれペアーズ・おねショタ布教軍創設ものがたり・9
うぬ。
何たる事なのか。
人によろしくないお薬、痴女皇国にここまで蔓延させて良いものか。
しかし…マルハレータ陛下は申されます。
それを言うならば砂糖に胡椒にその他香辛料。
あれも習慣性が強烈であり、ああいうものを抜きにして作った料理、今更口にできるのかと。
(そもそも、駄洒落菌も依存性を人に与える危険な代物ですけどな…そういう人にヤバいもんを操る菌…目に見えない小さな生き物やと言うのは今や、ワイらにもわかっとる話なので…)
まぁ、その手の物質については痴女皇国開国時から…いえ、それ以前からマリアリーゼ陛下の手によって研究開発が進められていた上に、聖父様の経営する会社の専門分野でもあり、その会社なる商会組織のお金もうけに強く影響していると聞けば、やめやめちょっとやめとは言い出し辛いものがあります。
それに、聖父様とマリアリーゼ陛下、その…人の頭の中で起きておることについては専門家であるらしく、我が祖国たるリュネの世界での魔法多用に伴う魔毒の蔓延、これに対する策や苗床の制御などなど、こうした禁断の研究とも言えることごとくを否定するのも宜しからぬ話でしょう。
何より、あの不忠不貞のパイローテ、あれに対する痛快な懲罰と、チャスカに羽根を与える難題の双方を一挙解決してしまった御技を考えますだに、この方々は悪人だからと簡単に殺すような事はしないと言われる言葉に嘘はないとも思えるのです。
そして、パイローテへの懲罰が契機となって、淫化とリュネ人族あるいは魔族との混血神官への翼を与える試み、一挙に進んだのは快挙と申せるでしょう。
ただ…嬰児または、母親の胎の中におる間に、苗床に浸かってもらう必要はありますが…。
それと、マルハレータ陛下。
この痴女皇国世界で初めて、実用試験型のエロ本自動販売機の試験設置場所を提供するのみならず、その運用や販売に多大な貢献を成し遂げたとされる方ですが、抜擢の理由が…。
(マルハちゃんがもうけたお金で芸術基金というものが設けられています。そして、そのお金は芸術分野を教えている欧州の大学にも投資されていますよ。彼女は自分が恋愛に疎いぶん、文芸や絵画、歌劇などの創作分野に投資することで庶民に娯楽を与えると同時に、文章や絵画や音楽を理解する事の重要性を訴えようとしているのです。つまり…字を扱い言葉を覚えさせるのと、その先を目指させようとしているのですよ)
と、ベラ子陛下から注釈が入ります。
(言うなれば聖母教会や痴女皇国の女官の正当性を側面から支援しとるようなもんなんですわ…ワイらの制服も、この時代はおろか、はるかに時が進んだ未来ですら眉をしかめられる、誠にもってえげつない服ですやろ。せやけど、この服は女官の活動を支えるために必要な機能が入っとるちゅう話ですから、はいさよかと別の服を着る訳にもいきまへんやろな)
実際、私の場合はリュネの剣聖戦士服を元にしたもので、太陽神インティの象徴たる金色の装飾が入った白地の上下と長靴と手袋の組み合わせが普段の装いです。
ただ、これにしても「有明の女王になる気ですかイリヤさん」だの「誰がどう見ても羽根付きのデカパイエロフ、しかもエロ衣装のコスプレにしか見えん」だの…まぁ即ち、ろくな評価が返ってこない代物ですから、仮にこんなもんを着て、マルハレータ様が見せて下さったニホンのザギンなる街でもうろつこうものなら、絶対確実に一歩里刻も歩かないうちに衛兵の類を呼ばれてしまうでしょうね…。
(イリヤさんの場合、特に聖剣ですんか、剣持ち歩きはるでしょ。それ、ニホンでは許可を受けた典礼儀式か、さもなくばアリアケでもわんへすとか言う、ナガモノオッケーのこすぷれ祭りでないとあかんらしいです)
つまり、聖剣…凶器を携行しているだけでも取り締まりの対象になってしまうようですね。
しかしね、これ…連邦世界では私が剣聖である必要を求められないかも知れませんけどね、基本、私の手の届く範囲に存在しようとする厄介ものなんですよねぇ…。
(まぁまぁ、じゅうとうほう違反の物件はまだしも、ワイらのお尻剥き出し衣装、法律違反でなくともれんぽう世界やと間違いなく顰蹙ものの目で見る国が多いらしいですねんわ…ただ、対策もありますやろ、ベラ子陛下)
(イタリアでは日本ほどには奇異の目で見られませんが、ただし男には口説かれたり、はたまたお前はいくらだと売春の金額を聞かれます。あと、流入難民などのならず者が強姦しようと狙って来ますね)
(そういう命が惜しくない挑戦者の末路はともかく、痴女皇国の制服、確かに現状ではれんぽう世界に着ていけば顰蹙を買うのは間違いおまへん。これ…アムステルダムでついつい、瞬間着替え機能で橙騎士団の装備に着替えてならず者をしばいたワイが体験した事ですからな…)
確かに、ベラ子陛下はもちろん、マルハレータ陛下にそういうことをするのは命知らずとは言えるでしょう。
(武官でもないワイですら、向こうの一般人が何人来ようが基本的には雑魚ですさかい…)
いえ、仮に私がそういう行為に及ばれた相手であったとしても、そういう不埒な輩、充分に命知らずとは思えます。
(しかし、痴女種の怖さが浸透すれば逆に恐怖の象徴にされますやろ。指一本触れずにドレインした上で転送依頼すれば、まぁ大麻売春国でワイがやらかしたみたいに一瞬で怖れをなしてもらえますわ。ふほほ)
確かにそうなのですよねぇ、マルハレータ様は自信満々に申されますけど、実際に悪漢が懐中の武器を意識した瞬間に、私なら私にその存在と、使用の意思が伝わります。
即ち、不意討ちや騙し討ち用の暗器であっても、使おうと企んだ瞬間、我々にはその存在と隠し場所が判明してしまうのですよね…。
(ただ、マルハちゃんが言うように、基本的に痴女服ですから本心はともかく、連邦世界の基準では眉を潜められます。このような服を公然と着るのはコスプレが許された場所や、ディスコテーカのような、男と女が出会いを求めてあられもない格好で踊る場所以外では売春婦と見られるのです…)
で、実際に連邦世界の街道で客を引く売春婦らしき画像とか、拝見しますと…。
https://x.com/725578cc/status/1725500788485902393?s=20
ええ、確かに私のみならず、痴女皇国の女官は全て売春婦として見られてもおかしくないでしょう、この服ならば…。
(確かにあたしたちは売春が国是の国の人間ですからね、むしろそう見られるのが本来のあるべき姿なのですけどね)
(まぁまぁ陛下、向こう…れんぽう世界の価値基準がそれやったとしても、ここは痴女皇国世界ですやんか。ほな、それをこの時代から既にこれが正しい女の服であるとしてしまえば良いのですがな)
とんでもなく過激な発言に思えますが、実のところはこのイリヤ、今のマルハレータ様の発言には頷くところ大ではあるのです。
と申しますのも、リュネの戦士の服装は全裸に近いものでした。
男は「300人のスパルタ兵に魔族を足止めさせてみせました」という格好らしいです、ベラ子陛下いわく。
そして、女…わけても剣士や戦士は、そのスパルタ兵とやらに胸当てがついた程度の、皆様が申されるところのびきにあーまー状態。
少なくとも、尻の大半は剥き出しです。
これは、魔族どもの主力である兵隊魔族の攻撃能力に原因があります。
痴女皇国の世界でもあるような甲冑やら、かつてリュネにも存在しましたが、兵隊魔族は口から炎熱の光線を放って、我々リュネ側の兵や戦士を鎧ごと焼こうとするのです。
で、くだんの炎熱線の威力ですが、たとえ金属の鎧を直撃せずとも、至近をかすめるだけで鎧は猛烈な熱に晒され、そして鎧の中の生身も焼けてしまうのです。
更には、魔法で炎熱線を防いでも、今度は兵隊魔族の強力な腕力脚力で、鎧をひしゃぎの砕きの、はたまた爪で鎧の内側の生身ごとえぐって来られるのです。
その威力、魔法の不可視盾を出せない一般兵士では確実に死ぬか倒されると断言できます。
要は、甲冑など役に立たないくらい、兵隊魔族からして強大な強さで立ちはだかってくるのです。
で、そんな連中と対峙する我々はどうしていたのか。
剣と盾を持つ以外は、身体の一部を被覆する程度の軽量かつ簡易な装備で魔族と相対したのです。
ただ、我々のいたリュネ世界では魔法が使えます。
で、先ほど申しました防御盾を出す魔術の他に、兵隊魔族の感知範囲や攻撃範囲の外から倒す技が存在します。
これ、私の聖剣が正に兵隊魔族の攻撃が届くはるか先から倒すようなことが可能なのですが…例えば、兵隊魔族がいると思しき場所めがけて大雑把に狙いをつけても、数歩里…最大10きろめーとるくらいでしょうか。とにかく、目では普通に見えない距離からでも魔族を狙い撃ちできたのです、聖剣なら聖剣が放つ、高速の火箭や火球で。
勢い、互いの力が互角であれば、魔法で威力を補完した得物を携えた我々の方が、素手素肌の兵隊魔族より有利となるのです。
(確かに兵隊魔族でも炎熱を吐き出しますが、あれ、欠点があったのですよね。口から炎熱を吐くまでの一瞬の間、体の動きが止まるのです。それに、連中はあまり長大な火線を吐き出せませんので、射程外から有効な攻撃を仕掛ければ容易に撃破できるのです。一撃で倒せれば、ですが…)
レヴェンネが申す通りで、正直申し上げますと兵隊魔族、「これから火ぃ、吐くで」というのが丸わかりの行動しか取れなかったようなのです。
確かにその動きは尋常でなく速いのですが、兵隊魔族たち、炎熱攻撃以外でも…有効な打撃や噛みつき攻撃などを放つ直前、ある種の虫たちのように、一瞬のタメがあるのです。
どうも、武芸を極めた人間のように、攻撃→防御→攻撃の挙動に、流れるような連続した動きが出来ないというか…苦手みたいだったのですよね、兵隊魔族。
ですから、その挙動を知っていれば、鍛錬を重ねた者ならば次の攻撃や挙動がある程度は読めてしまうのです。
(あのな。兵隊魔族だけどな、痴女皇国世界で言うと蜂や蟻ってのがいるだろ。あれに近い生物が基礎らしいんだよ…だから、昆虫というのか、虫のような動きをしてしまうんだよ)
(カイゼンする気はなかったのですか。正直、その方が対峙する我々は楽が出来たのですが)
(完全にお前たちの格闘のような動きをさせることも出来たが、それをすると苗床に負担がかかるのでな…高度な能力を持った兵隊魔族を産ませると、あまり多くを一度に産み出せないのだよ。それに、そんなものを大量に撒いてみろ、お前たちが絶滅するほど減ってしまえば、私たちも巡り巡って困ってしまうし、それにお前たちだって困っただろ…)
(まぁ…そっちを根こそぎ焼きに行くか、さもなくば我々が大敗北してましたね…)
(だろ?)
(しかしロッテ。あなたは流石に幹部魔族だから動き自体は流麗なのですが、体が鈍っているのが丸わかりですよ)
(お前だって人の事言えた義理じゃないだろ…最近、ちゃんと武芸鍛錬しているのか? 後でちょっと腹をつねらせろ…)
(そんな事せんでも、あなたの聖環の生体でーたとやらで体脂肪率なる数値を見てみれば済むこと。ほら、やはり太っている…!)
(お前、個人情報だろうが!)
なんでそんなハイカラな文言、知っているのですかと言うのは後でお話しするとしまして、微妙にふくよかロッテになったアスタロッテには言い返しておきます。
(忘れたのですかアスタロッテ…私は痴女皇国、そして淫化ではあなたの上司なのですよ、一応は。ですので部下の健康診断の結果を拝見可能なのです!)
(ふん、苗床で身体調整をすれば済む話だろうが!)
(そういうのが堕落の元なのです。毎日素振り100回の義務、復活させますよ?)
うぬぬぬと唸るロッテですが、実はさっき、こやつが申し上げた個人情報とかいう単語。
これ、元来の私たちリュネ世界にはない語彙です。
というかプライバシーとかいった単語…皆様が申されるような「外来語」であり、その意味するところの個人の権利や義務やら何やらといった概念も込みで私たちが理解しないと使えない言葉です。
それを、ロッテはさらっと口にしております。
これ、痴女皇国の知識伝授技術の成果もありますけど、ロッテ自体が上級魔族としてかなりの能力がある事の証明でもあるのですよね。
ええ、思い出して頂ければ幸甚なのですが、魔族は魔族でリュネ人族や西方三国の人々の動向はもちろんのこと、我々の文明文化程度をある程度把握していたのです。
そうですよ…認めたくはないのですが、この女、確かに長寿延命の措置に預かる程度には優秀有能だったようなのです…。
(私だってお前のような暴力女がリュネ最強の剣聖に選ばれたことを不幸に思ってたんだけどな…強いのは分かるとしても、何でお前なのか他に剣聖候補はいないのかと正直、リュネ王宮に強訴に行きたかったんだが)
(強いから選ばれたのです。あの聖剣の選択、おいそれと簡単にねじ曲げられないのはあなたも知ってるでしょう…)
でまぁ、我々の醜い言い合いは毎度の光景としても、なぜにロッテがこちらの事情に詳しいのか。
(ほれ、苗床。なるべくであればお前たちを食うのではなく、苗床に放り込むからだ。あれが取り込んだ者の知識や覚えごとを蓄えておるのはお前も知るところになっただろ?)
ええ、捕虜…と言うか餌として連れ去られたリュネ人族から得た知識も多いようです。
あと、昔の…普通に子作りをしておった時期、魔族も人族の側に密偵を放っておったようですね。
(人族が我らに生贄を差し出して交易めいた事をしておった記録、あるにはあってな…かなり昔の代…エイモンが生まれるはるか前の話だが…)
とまぁ、そういった交流の機会で情報や知識を吸い上げられるだけの能力、ロッテにはあったと思って頂ければ。
そんなロッテですから、この淫化帝国、ひいては痴女皇国世界に対する理解も早かったのでしょう。
つまり、この女は環境適応性というのですか、異なる世界でも生きていける能力が高いと申し上げるべきか。
(お前も全力で馴染んでる件)
(マサミさんから参考書として腐ったほも本とか借りてるの、バラしますよ)
(異文化に対する理解のためだ!)
まぁ、元来は高慢なロッテがこうも痴女皇国世界の諸々を理解しようと躍起になっているのも、実のところはこの淫化の地に我々が根付くしかない、という後がない状況もあるのです。
(どうもリュネ世界…あの人が作った大地と海を模した世界、どうやら滅亡の危機に瀕した古代の人どもが作り上げたようでな…我ら赤肌族も、厳しい環境で生き延びるために人どもに手を入れた結果、生まれたものらしいのだけどな…)
これは、現在もリュネ世界に対する痴女皇国側の研究が鋭意進められている結果、判明したいくつかの事実の一つのようです。
言うなれば私たち、リュネの人族の全員ではありませんが羽根がある件も、それに該当するようですね。
とりあえず魔族も含めて、我々の能力はこの淫化でも有用であり、毒を弱めたとは申せど魔毒苔を繁殖させてでも居場所を作って頂けたこと、裏を返せば私たちの力を活用したほうが痴女皇国にはお得だからでしょう。
ええ…マルハレータ陛下のみならず、マリアリーゼ陛下が正にそうなのですが、痴女皇国の方々は基本、損得で物事を判断なさる傾向が強いように思えます。
掟で決まっているからと単純に規制せず、利益があって害が僅少または克服可能なら、掟を改廃する程度の柔軟さはあると。
(ただ、そちらの能力を痴女種に移植するかどうかはちょっと研究の余地がありますね。淫化の事情あればこそ、鎖国状態で過ごしてもらえる目処が立ったわけですし…)
(この痴女皇国世界全てに魔毒苔を撒けば、それはそれで問題になる気もします。それは理解しております)
(ええ、誰でも彼でも押しかけて来る危険がありますから)
ベラ子陛下の言われる懸念というのは、正に「新しい少年の狩り場」を見つけたと、女官の皆様が理由をつけてお越しになる可能性のことです。
ですから、淫化の領土にいくつか発見され、現在は淫化支部の人間のみが利用できる温泉。
これを痴女皇国の保養所化して、他地区の女官にも利用させて欲しいという要望も、現状では待ったがかかっております。
(それ以前にまず、南米行政支局の中の交通網がまだ未整備であると申しておるのですけど…)
(本当に少年に目がありませんね…皆様…)
ええ、ええ。
この淫化でも、男は隙あらば少年に変えてしまおうとする傾向が出ております。
だから俗界の男にまで手を出して欲しくはないのですよ。
あそこはまだ、迂闊にいじりたくはないのです。
ゆくゆくは開発のための人口増加や移民殖民も考えには入っておりますが、下手をすれば俗界は聖母教会を別途置いて統治すべきかという話も出ておりますからねぇ…。
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さて、この夜間視察の数日後。
転送ではない別の方法で人が来るという連絡、中米行政支局から入ります。
「ええと、資材はクスコ分校の初等部向け什器備品など。これは男子生徒の受け入れ用ですね。あと、ダンケ号とエロフ号が各10台ずつに…」
と、オリューレ様とヒルダさん、そして淫化側からは行政神殿を担当する丞相のクイリョル、そして上級神官数名とで送付品目録を点検しております。
で、えろふ号って何やねん。
私への嫌味かとも思いましたが、聞けばニホンの有名な荷車で、異世界とやらで活躍した事もあるそうですね。
「あと、人事異動でクスコ分校開設準備要員が送られて来るとあります。これ、チャスカ陛下またはイリヤ様にお目通りを頂きたいという先方の要望があるのですけど」
この件があって、私、行政神殿に来ておるのですよ。
「クスコ空港に11時にお越し頂きたいとの連絡です。搬入部隊は既に痴女島聖院空港とグァンタナモを出発していて、クスコ空港付近で合流してこちらにお越しになるそうです」
という訳で、クスコ空港…長い広い道をこしらえた場所に赴きます。
"Il s'agit du porte-avions de la Marine nationale Fougueux.Je voudrais l'autorisation d'atterrir."
ふむ。
東の方から、こちらを目指してくる大きな影。
前にリュネ世界に来たリシュリューとかいう船の同型船のようです。
が…その船に寄り添うように、何やら黒い影が。
ちょっとうるさ目の音を立てていますし、お船同様に赤や白や緑の光を点灯あるいは点滅させていますが。
(滑走路左脇のPAPI…進入角表示灯に注意しろ。ワンハンドレッド)
(ら、らじゃー…えいてぃ、ふぃふてぃ、とぅえんてぃ…てん…たっちだうん)
(よし、プロペラ角度リバース)
ぶわぁああああああん、と翼の左右に二つずつついた回転羽根が回る音が明らかに変わりました。
ええ、飛行機とかいうものが、クスコ空港の広い通りに降りたのです。
そして、脇道を示す標識や光に沿って、私のいる広場の中に入って来ます。
(あそこにセイント・イリヤとマダム・オリューレがいるな。あの前に停止するんだ。慌てなくていいぞ)
(は、はいコープシェフ…)
そして、オレンジ色の胴衣を羽織って光る棒を持った者の誘導で、私とオリューレ様の前に停止するその飛行機。
(大尉、すまないが主機冷却と停止を頼む。私はプランセスと出迎えの方々に挨拶をせにゃならん立場のようでな…それとマダム、こちらに来てくれ。ああ、腰のベルトはもう外していい)
この飛行機、どなたかを運んで来られたようですね。
恐らく、降りて来るのはその、学校を開く準備のお手伝いに来られた方なのでしょう。
飛行機の先に近い胴体の一部がなんと下側に開き、階段になっています。
「セイント・イリヤ、マダム・オリューレ…お久しぶり。弟子を連れて来たよ」
ええ、ジョスリーヌ様です。
「いやいやすんまへん、ひこうきの練習にちょうどええ距離を飛ぶからと…しかしほんまここ、山深いから風の向きが読めん読めん」と、頭をかきかき現れる大柄な娘さん。
マルハレータ様であることは明らかです。ですが…乗って来られた、もう一人の方を紹介頂きます。
「ええと、メフラウは面識あるけど、ハイレスとは直接には初めてでっしゃろ。この度キュラソーのオトロバンダ修道院を離れて、このクスコで聖院学院分校の男子部開設準備委員をやってもらう人物…レオノールですわ。レオノール、メフラウはご存知やろけど、この羽根の生えてはるエロフのお姉さんが剣聖で淫化の太陽神の化身として崇められとるハイレス・イリヤや。今の淫化の女帝というてええ立場のお方やから粗相のないようにな」




