学校のまりあさん…マリアンヌのとりかえばや物語・4
残酷にも、申し渡される採択。
「皆さんは私を攫わせようとしていました。ですから、私がお世話になったこの方々は逆に皆さんを攫ったのです。皆さんが私に対してしようとした事、逆に皆さんに対してなされただけではないかと思うのですが…」
ええ、それで何か文句あんのと言わんばかりの態度を示すのは、私マリアンヌのダチの姉たる吉田朔実さん。
「もちろん、企んでおられたのは攫うだけじゃありませんよね」
まぁ、そうでしょう。
男ばかりでダンケ号を用意して攫うならば、その後は本当にハ○エースでダンケダンケな展開だけで済めば御の字、まかり間違えば山に埋めるとか…それも青木ヶ原の樹海とか大台ヶ原辺りまで行ってやりかねませんね、こいつらの知り合いであれば。
でなければ、あの安井金刀比羅宮関係者様が祟るわけがありません。
あそこの皆様が人の恨みや憎悪を大変に喜ぶ性質をお持ちなのは、関係者のうち1名…つまり阿波内侍さんが私とスザンヌの乳母役だから、余計にことさら詳しく知るハメになっております。
(悪人悪党の断末魔もそれはそれで良いものなのでございますよ。ええ、ええ、彼らは大変に生き意地が汚のぅございますから、それはそれはもう事切れる間際までもっと生きて悪事に耽りたい等々云々)
(聖子様、先立って室見様に絡んで来よったおのこ、あれの断末魔など至上至高でございましたる…)
(まりあんぬ殿…すざんぬ殿…うちのおなごどもに餌を与えるのは有り難いが、ちょっと物件を選んではくれぬか…こやつらと来たひには、特に女が絡むと情念が悪い方に行くのでな…)と、顕仁様…崇徳上皇陛下から密かにお願いがくるくらいには親しいお付き合いをさせて頂いているとお考え頂ければ。
そして、私のダチの吉田遼子や、その姉の朔実さんの通学時に今までこいつらが手を出せなかった理由…ええ。
もののけ族の方々含めて、警備がついていたからです。
さすがに校内で公然と活動されるとまずいという訳で影響範囲は校外に留めて頂きましたが、それでも効果は歴然。
(まりあんぬ様やすざんぬ様はどうやら、悪しき気のものどもを引き寄せるご運がおありの様子。おかげさまで色々と助かる者もおりますので、何卒お祓いなどいたされませぬように…)
(スザンヌ、あたしらは化け物や祟り神の皆様の食事集めのための釣り餌…)
(だとしても、一体ぜんたいどこの誰があたくしとマリアンヌを害する事が出来ますのやら。それでもののけや悪神の皆様から感謝と崇拝を頂けるならば、それはそれで重畳でしてはございませんこと?)
(なんかこう、釈然とせんものが…)
で、こやつらは実質反社の知り合いの男たちを使って更なる嫌がらせを検討する段階に入っていたようで。
それとその学校、反社とまでは申しませんが、それに近い勢力の資金が流れている可能性が指摘されていました。
ええ、子女の学歴ロンダリングのため。
「宗教団体や医療団体…病院や薬局チェーンにシノギの手を伸ばしてるのは掴んでたけど、学校までとはねぇ」
「で、諸々が明るみに出るのはもちろん、生徒流出を阻止するためにも傘下の子女に色々と仕掛けさせていたという事ですか…」
こつ、と靴の音がします。
「失礼。智秋課長と奥様の護衛ですよ…」
後ろのお二人はまだしも、その不気味な姿を知らない人々が一瞬後ずさりするほどの妖気と陰気。
ええ、魔人状態の加藤刑事…いえ、旧・日本陸軍の加藤大尉とご紹介すべきでしょうか。
ただ、その陰気に対抗できる人物、こちら側におります…ええ、田中雅美・痴女皇国内務局長。
「ま、その学校について学校法人取り消しもあり得るでしょうけど、それよりも経営母体が変わる方が都合の良いこともあるかも知れませんわね、加藤さんに智秋課長様」
「マリアリーゼ陛下は英国の学校に打診しておられるようで…で、この子達ですか、日本人としての情報が喪失していると報告頂いたのは」
加藤さんの背後の青年…言わずと知れた通称・若様こと宮内庁・特務渉外課長様は、無言で加藤さんに頷きます。
「どれどれ…ふむ。確かに警察の照会には引っ掛かりませんな。護法、急急如意令」
で。加藤さんが呪符らしき札を空中に投げると、鬼の子のような何かに変化します。
そしてその鬼の子は何と、まだ拘束されている女の口をこじ開けると自らその中へ…。
他の全員が、その禍々しい儀式めいた光景に目を奪われています。
(あれは後で鬼細胞となりますから皆さんには無害ですよ、皆さんにはね…)と、こっそり教えて下さいますけどね。
で、その女は自分がどこの誰で何をしたか企んでいたか、ペラペラと喋る喋る。
他の全員がまた、その異様かつ的確な技に唖然とします。
「智秋課長…そして奥方様…ここが日本国ならば、未成年者の未遂犯ですし、日本国外であれば日本人としてとりあえず保護すべきかと思いますがね」
ええ、加藤さんの軍服にコートという、およそ熱帯に現れる姿に思えない装い。そしてその口調と態度は、全くそのつもりがない事を全身で表しておられます。
そして、この悪役令嬢というには品性よろしくない連中が黙っている件。
今の呪術が真剣に危ないと思っているからですね。
(何このきしょいおっさん…不気味にもほどがあるよ…)
(しかもこいつらの仲間みたいじゃん…)
(汗一つかいてないし…)
「お前たちに一応言っておこうか。私は人間のふりをしている何かだと思ってくれ。だから元来は君たちのようなただの人間の女…それも、何の価値もない女がこの先生きようが死のうが全くもって関心はないのだよ…いや、君たちはこれから日本という国から捨てられてしまうのだから、日本を恨み、呪ってくれるならば誠に重畳。ぜひ一つ、怨念の限りを尽くしてくれ」
と、こいつらの方を向いて、肩をすくめ手を広げて申される加藤さんですが…ええ、加藤さんも通常人類の思考、読めますよ。
そして、こいつらに対して、君たちは日本から捨てられるぞとはっきり申されました。
すなわち、この6名の女子高生は確実に、日本どころか連邦世界に一生戻れない存在にされても構わない、加藤さんはそう申しておられます。
「ええと、つまり、若様も奥様も…加藤さんがなさる事をお止めになられないと」
「つまりこの子らは連邦世界の日本国民やないから、あとはわたしらが好きにしてよい。こうですかいな…」
田中局長とダリア団長の問いかけに、黙って頷くお二人。
(加藤さん、本当に呪ったらどうするんですか…)
(これは更なる恨みの連鎖を招くのでは…)
(マリアンヌさん、スザンヌさん…吉村美咲さんの件を思い出して下さい…あれ、祟り神になりましたか?)ニヤリと笑う加藤さん。
(え)
(つつつつまり、加藤様はこの6名、仮にここでわたくしたちを呪いながら死んだとしても)
(普通の人間相手ならいざ知らず…そうですな、マドゥラの方々ならまだしも、痴女宮本宮に絡んでいる方々…特にマリアンヌさんやスザンヌさん相手に祟ろうなど、この小物の上にも小物な女子風情には絶対に無理ですよ)
(もしかして、阿波内侍さんの絡みで…)
(惜しいですな。ええ、御二方は特に…崇徳上皇陛下の御加護を得ておられますから、他の祟りを為す部類が手を出せないのです。例えばこの私ですらも顕仁陛下に一言入れなければ無理ですね…もっとも、祟る必要もありませんが。はっはっはっ)
(加藤さんに呪われるのはちょっとご勘弁を)
(田中さんも大丈夫です。そちらの中にネメシス、いるでしょう。あれがいると縄張り争いになりまして…)と、この方には珍しくも少し困った顔をなさる加藤さん。
(カトウヤスノ…もごもががぁっ)
(加藤さんのお名前バラしは禁止事項ですっ)
(い、いやカトウ…もうちょい惨劇にならないのか。私は血が見れるならばもっと助かるんだが)
(それは田中雅美さんにお願いして下さい。私は本当ならば1人や2人で足りないのですから…お互いに我慢も必要ですよ?)
ああ、恐るべきは化け物の皆様方。
「ね…ペナンガランのように恨みを抱えて死ぬと大変でしょ?」
しかし、マドゥラの素直な少年少女を教え諭す存在がここに。
「はーいせんせー」
「まぁ、わるものとつきあうと自分もわるくなるよな」
「うちらはわるものをやめる決心したやつにくわせる米は作ってっけど、わるものにくわす米はここにはないよ」
「まぁ、あんたたち…うちのおやじ達なら海になげこんでるよ」
「さかな号のいちばんうしろになわでしばりつけてひっぱってもらってもいいんじゃないか?」
(な、何という素朴かつ単純明快な反応…)
(いや田中さん、日本でも昔の農家の子らはだいたいこれでしたよ…)
(加藤さん、年齢がバレ…)
(今更です。少なくとも晴明と戦ったくらいは言っておきませんと)
「まぁ、あたいらのチャロックで大人にしてあげたんだから感謝くらいは欲しいとこだね」
…そう、このマドゥラの少年少女、慈母寺に勤務したり関わっていますから、間違っても童貞や処女ではありません。
それどころか、夜這いの風習すら残るのです、このスメネプの町では…。
「でさぁ、残りの4人。謝る気になったかな」
「何なら昔のマドゥラのやり方でもあたいはいいぜ」
「まぁまぁ、さて、皆さんに身分を与える方法ですが、謝ってもらう以外にもあります。そうですね…新しいチャロックでは、チャロックに屈した女はボロブドゥールという所にあるお寺に行かされます。わたしのいる慈母寺の更に上位の寺になるんですけどな…レオノール先生、あれ、見せた方がこの子らにはええのでは…」
「アンジャニ、あれは刺激が強すぎる代物ですわよ…」
「まぁまぁ、この子たちにここでの身分を与えるための必須作業でしょう。内務局長名で許可します」
という訳で、既にチャロックを使った体罰が終わった二人は昏倒させられていますが、残る四人の為にボロブドゥール寺院の中での出来事が「上映」されます。
「まぁ、わたくしたちはグァンタナモやカバーニャ監獄を知っておりますしねぇ」
「いやー、これはアトス以上の壮観、アトスの倍あるよ、この種付けレーンの数…」
(リキ!ヘンドリ!あんたらこれは広言すんなよ…)
(女か偽女種にされてボロブドゥール送りになりたくねぇだろ…な?)
(まぁまぁ、アンジャニもジタも、こいつらの口の堅さは知ってるでしょうが…えろほんの隠し場所で…)
(そ、それを言われると…)
ああ…マルハレータさんの話に出てたあれか…。
https://novel18.syosetu.com/n0112gz/219/
そう、このスメネプにおけるエロ本の回し読みネットワーク、大人にバレたら怒られる以前に「大人に盗まれる」ので、少年少女たちは鉄の掟を作って隠し場所を隠し通しているようなのです。
(大人なんだから買えよって…)
(1回、百姓村の慈母寺のあそこじゃなくてもう少し雨に濡れなさそうな場所にしたんだよな…)
(で、ある時になくなってるのに気付いて、住職さんに探してもらったら、よりによってカイサクのおっさんが持ち帰ってたんだよ…)
(あれはさすがにみんなあぜんとしたよな…)
(えええええ、カイサクさんとはあのカイサクさんですよね…)
https://ncode.syosetu.com/n6615gx/155/
(レオノールせんせぇ、おとこはいくつになってもすけべぇなのですね…)
(えっとその、カイサクさんとはどういう人なのかしら。悪い予感がするわ)
(学舎の…というより、持ち回りでこの港町慈母寺と百姓村の慈母寺の用人をしている方なんですよ。もうお年もお年だからと…田中局長、それが何か…)
(もしかしてそのカイサクって用人の人、ご兄弟がいらっしゃいません?)
(おられましたよ。シュウサクという人物で、去年に死亡しました…)
(たださぁ、死に方があんまりすぎて、事情知ってるやつ以外には伏せてるんですよね…)
(うん、あれはあんまり村や町の外には出さないようにって…)
ええ、雅美さんが死にそうな顔をしています。
(あの…レオノールさん…それ以上いいから…それとインドネシアだったら姓はないと思うけど、イトウ三兄弟とか勘弁してね…)
(何かあるんですか…確かに田中局長に隠し事はできませんし、シュウサクの死亡原因をお知りになったとは存じますが…)
(あたしの勘が正しいなら、そのカイサクさんと弟のトウサクさん、多分両方とも本性は鬼畜変態よ…)
(確かに住職さんが沐浴してる隙に、その住職さんの脱いだ助平下帯くんかくんかしながら池に近づいて犯そうとして、深みにハマって溺れて死んだっていうものすごい死に方だったんですけど、シュウサク…)
(わぁああああ!アンジャニ!言ってる!死因言っちゃってるよ!)
(こらああああ、いくら週3慈母寺のカイサクさんのお兄さんらしい人だって言っても…)
(いやー、あっしさぁ、今だから言うけど、カイサクとトウサクの夜這いが怖くて慈母寺志願したようなもんなのよね…尼僧になれば確実にあいつらといえどもあっしには勝てないからさぁ…ほら、あっし、学舎通ってる段階で既に尼僧見習いで股間にコカン持たされてたっしょ)
な、なるほど…確かにそのカイサクとトウサクに該当する人物、就寝中でしたけど意識やら何やら漁ると、実際の生活や行動はともかく、その欲望や願望はかなり強烈でした。
一言で言うと学校のエロ用務員親父…ええ、えろげとかいう伝説の助平ゲームに出てくるしかないような人物ですね…。
で、何ですか。
その好色変態鬼畜三兄弟の弟二人はまだ、生き残ってると。
しかも二人とも交代で慈母寺の要員…。
ええ、このマリアンヌに閃くものがありました。
(ねぇねぇ、この人たちが朔実さんに謝ってくれないなら、そのカイサクさんとトウサクさんだっけ?そのお二人ここに呼んで、この人たちを好きにしてもらったらどうかな?)
瞬間、ここにいるマドゥラ組の全員が「そりゃいい考えだ!」という賛同の意を示したのです。
ですが、言い換えればそのカイサク、そしてトウサクの二人がそれなりに危険なエロ男として認識されているようなのです…。
(まぁ慈母寺が出来てなかったら一晩に数名は夜這いしてるよな、あのおっさん三兄弟だったら…)
(ねぇねぇ雅美さん、初代様にでも頼んで、そのくんかくんかのシュウサクさん、何とかして一時的に蘇らせることはできないかな)
(そうですわね、そんなくんかくんかしてる変態なら、この先輩たちのような根性悪は大好物のはず…)
(やめた方がいいって言いたいけど、こいつら相手にシュウサクがどうするか見たい気もするよな、リキ…)
(ヘンドリ、あの女をえものにしか見ていないトウサクの目を見たことがあるか…あのおっさんは本当に村のきらわれものだったんだぞ…だけどそんだけたまってるならって、あの三兄弟を持ち回りでお寺の用人にしちゃったんだよな…)
なんかすごいエロ親父が生きていたんですね。
ちなみに、そんなことしてたらチャロックにならなかったのでしょうか。
(何度かなってるんですけど、あの三兄弟おっさんたち、わりと強いんですよ…)
(そういえばマドゥラは女体化作戦の対象でしたわね…)
スザンヌが言う通り、確かに、あの時にマドゥラにいたなら一旦、若い女になったはずなのです。
(運良くというか、運悪くというか…ちょうどあの時にシュウサク三兄弟、スラバヤ行きの牛売りの船に乗って牛を売る手伝いをしてたんですよ…そんな嫌われ者だからって牛飼いの家の下働きのくちでしのいだりしてたんですわ…)
(確かに当時は子供鉄道もなかったし、牛を売るならえんえんと牛を曳いてマドゥラの西の端のカマルまで行って船に乗せるか、いっそスメネプからスラバヤまで船で行く方が面倒ありませんでしたね…)
(で、マドゥラにもどったものの、種付け男にもえらんでもらえず…うん、おっさんたち、あれを根に持ってるとおもう)
「ふむ。そのシュウサクとやら、亡骸をどうしたのですかな」
眼光鋭く尋ねる人物。
「スメネプの墓地に埋められてから、かなり経っているはずです」
アンジャニさんが即答なさいます。
すると…その人物、すなわち加藤さんは立ち上がります。
「よろしい。私も興味が湧いたのでね。そうですな…他に村の嫌われ者とされる人物がいれば、その人物を使って一時的に蘇らせる事も可能だ…で、そこの女子高校生4名。そのチャロックとかいう短刀の痴女皇国仕様を使った懲罰よりも、もっと厄介な何かをけしかけられるらしいぞ。私が準備をするまでが返答を許された時間と思いたまえ」




