南洋残酷ものがたり〜缶詰王女奮戦記〜・9
「ううううう、新型蟹光線の副作用中和用たぁ言え…」
ええ、アジスチプト飛行場で、スコールの雨に濡れている黒い大きなからくり鳥。
それがスケアクロウと呼ばれていて、子供たちの遠足とやらから痴女皇国の軍事作戦まで、さまざまな用途に使われているのを私は知っていました。
しかし、まともに乗るのはこれが初めてのはずなのです。
で、このからくり鳥は特殊な上にも特殊な代物で、なんと夜空に浮かぶ月にすら行ったことがあるとか。
一体、どういう代物なのでしょうか。
とりあえずここから乗れと言われた鼻先から少し後ろの扉への短い階段を上がります。
で、入って右側にあるごつい扉を抜けた先の広い場所でちょっと待っててくれとマリアリーゼ陛下に言われます。
「よし、じゃ、試験装着だ…聖環の着替え画面を出して皇族専用指定・Kのタブを出してくれ」
言われるがままに操作しますと…ええ、自分が着たところは見せたくもない衣装の選択画面が出ます。
そして、マリアリーゼ陛下に言われるがままに、その画像そのものを指で押しますと。
今まで着ていた王妃兼橙騎士団宮殿用の服から、それに衣装が変わります。
ええ、正面に用意された姿見に、それを着た恥ずかしい私の姿…。
Krab、つまり蟹を模したというのは頭にかぶった大袈裟な帽子や、両手のはさみ状の装飾からもわかりますよ。
しかし、このゆる蟹衣装なる赤い服、これが諸国にも恐れられた痴女皇国の支配力を示す恐怖の衣装であるとは思いもよりませんでした。
で、マリアリーゼ陛下が、北欧でのいけにえ村作戦当時にこれを着て北欧の女神の生き残りと戦った姿や、更にはこの地球なる丸い大地から離れた別の場所で、この蟹衣装を着た際の試験戦闘なる映像を拝見することに。
「プランセス…本当に、この衣装を着たマリアリーゼ陛下が連邦世界に来るとな、足止め用としてアルルカンが付き添うのだ…むろん、陛下を守るためではなく、暴走した時のせめてもの足止め用なのだ…その理由、この動画を見ればわかるだろう…」
ひきつった顔のコープシェフ・ジョスリーヌ。
その顔がなぜ恐怖に歪んでいるのか、映像でわかりました。
かなり大きな山、その蟹の目から射たれた一対の青い光線で貫かれた後に、大爆発を起こして跡形残さず吹き飛んでいましたから。
「これ射った時の蟹光線、大気圏内モードで対地出力5%だったかな。とにかく制限をかけまくって射撃したんだよ。それでこれだからな…いいか、モード選択時になにもしないと、この蟹光線通常発射が選ばれて大変なことになるのがわかるだろ…」
(それでマリアリーゼ、あたくしとマルハレータのきょうどう作業を強く言うのですね…)
そうですね…確かに、実際にマリアリーゼ陛下が着用した際の恐るべき速さや、その蟹の両目から出る光が尋常でない威力があるのは理解しました。
ただ、これほど恐ろしいものならば、もっと人が恐れ敬う姿にしておく方が畏敬の対象になるのでは…。
「いや、最初はこれ着て相手がナメくさってくれりゃいいなってだけで作ったんだよ…それと原型は、あたし専用の懲罰服なんだ…だからあたしの能力を規制するのが元来の用途なんだけどさ、作っててさ、あ、これ反転させたらあたし用の強化服完成するじゃんって思いついたのが運の尽きなんだよね…」
コープシェフですら尋常ならぬ敬意を払うマリアリーゼ陛下ですが、こうして見るとただのどんくさいヤパンの少女にしか見えません。
が…コープシェフに言わせると、これすら一種の擬態であり、陛下の強力な諸々の能力で不必要に人々を恐れさせないための配慮であるそうなのです。
なるほど…それで道化師めいた服にしたのですか…。
聖院学院本校の児童に追いかけ回され、らいだーきっくとやらを食らう映像も拝見しましたが、この服の真の性能を知ってしまうと、なんたる身の程知らずで命知らずな行為に思えてしまうのですが。
「だからカニバサミで仕返しするようにしたんだよ…ほら、ここ握るとハサミが開閉するだろ」
…まぁ、とりあえず、本来の機能を本番で発揮すればいいのです。
ちなみに元戦士1号。
感想を。
(動いている姿を見なければ、王妃…貴殿が少女の姿で我々に向かい合った時以上の侮辱行為に思った。だが今は、威厳なぞないどころか敵を挑発しかねないその喜劇めいた姿が逆に恐怖の悪神にしか思えぬ。王妃がこれを着て我らの前に現れたなら、それは我らを滅する決意を秘めたとしか、もはや今の俺には思えん…出来れば南洋ではこれを着て下さるな…)
まぁ、私自身もそう思いますので、とりあえず速やかに脱がせて頂きます。
この衣装、頭のかぶりものが結構大きいので、このからくりの前の方の部屋に入れないらしいのですよ、このままだと…。
でまぁ、スケアクロウというこの鳥、普通に飛ばすだけでも2人の御者を要するそうですが。
「なんであたしまでもがぁあああああああ」
「やかましいティアラちゃんを見殺しにしたって言っとくぞっ」
「ねぇさんのいじわるぅうううううううう」
ええ、心底嫌そうにしているベラ子陛下の声が。
「あたしが機長やってやりゃいいんだけどよ、ゆる蟹衣装の発射管制はあたしがした方が絶対にいいから、この配置は仕方ねぇんだよ…で、ジョスリンは今回、左舷の火器管制任務を担当してもらうから」
「小官がこのコンソールの操作をしないことを祈りますよ」
「んだな。で、FEはエマ助分体、ナビは…」
「なんであたしがここに!」
「うっせぇ、もはやそこはりええの定位置みたいなもんだろ!」
「ここはたのの定位置なんじゃ…」
ええ、室見理恵・国土局長がなぜかそこに。
更には右側、室見局長の後ろには。
「あのなマリ公。なんでうちがここやねん。ベラ子が嫌がっとるんならうちが機長席、行こか?」
「ベラ子の飛行時間稼ぎもあるだろ…それよりかーさんは右舷火器管制、つまり中和用超光速粒子銃の発射の場合に備えて欲しいんだよ…」
「全くしゃあないな…はいベラ子、チェックリスト読み上げや。マリ公、手っ伝うたり」
ええ…なぜか初代聖母様までがお越しに。
こんなめんどくさいものなのですか、このからくり鳥を飛ばすのは。
(欧州に置いているアトランティックIIという飛行機はもう少し楽なんだがな…)
(あれはジョスリン専用みてーなもんだから…)
「はいはいとりあえず全員シートベルト締めてなー」で、初代聖母様が操縦室なるこの部屋の後ろ側の椅子に座る私や元戦士1号2号3号の腰帯を確認に来られます。
「これはこちらから指示があるまで絶対外すな。ええなっ」
「は、はいっ」その剣幕と形相に思わず引く我々です。
「ベラ子。出発方位270。V2到達後、ギアアップして左旋回方位180に達してから単葉モードシフト。主翼モード切り替え後は右旋回方位280高度300でCAS435ノットまで加速上昇してステディ。理恵ちゃん、経由地バンドンでチレゴンを目的地に入力、VNAVとLNAV座標、ベラ子に送ったって」
「ベラ子了解」
「室見了解」
「ほんまはジャワ島南海岸沿いに飛ばすんが正解なんやけど…マリ公に無理言うて鉄扇公女能力で積乱雲吹き飛ばしてもろたから飛ばしやすいはずやぞっ」
「ううううううう」
「ドアクローズ確認。ドアモード・フライト。機内気密確認、グリーン。タキシー、レディ」
「パーキングブレーキ、リリース。タキシー・スタート。ランウェイ27、スタンディング・テイクオフ、デパーチャ」
「風向0、風速5m、視程よし。IT013、テイクオフクリアランス、デリバリー」
「IT013、テイクオフ」
瞬間、このからくり鳥の頭上後ろから響いていた音が一層甲高くなります。
そして、前の方の窓から見えていた景色がかなり早い速度で動き出します。
「V1、ローテーション、V2、ギアアップ、ウィングモードトランスファ、オート、進路ワンエイトゼロ」
「ウィングモード・シングルトランスファ」
“Main wing single mode transfar complete.”
何かが動いた音がしました。
(そうか…プランセスはスケアクロウ、初めてだったか。この飛行機は地上や低空飛行時には左右の重なった翼を持つ状態なんだが、高いところを安定して飛ばす際には1枚の長い羽根に変化させる動作が推奨されているんだ)
で、コープシェフの側のかめらとやらを動かして、その羽根の状態を見せて下さいます。
なるほど…飛び上がる前とは全く、遠くからの見た目が変わるのですね…。
そして、私と元騎士1号の前にある小さい画面に、ベラ子陛下の座る位置から見ているらしき光景が映されます。
なるほど、ボロブドゥールを右下方に見ながらジャカルタやバンドンの方角を目指すのですね…。
(こっちから飛んでるの見えたよ。気ぃつけて行っといで)
と、ボロブドゥールの屋上か最上階にいるらしいアニサからも心話が届きます。
(あたしとベテハリはノヴゴロドへの赴任時に乗ったことあんのよ、それ。あの時は小さかったカルノもいたけど、保育器って箱に入れてもらったのかな、今回は高く上がらないから変な服着せられてないでしょ?)
(ああそうか、あの時アニサちゃんとベテハリくんはまだ与圧服があった方がいい状態だったな)
聞けば、世界で一番高い山の三倍以上の高さに上がるそうですね、そのロシアの街まで行くような長距離の飛行の場合…。
今でも大概、上に上がっている気がしますが。
(マリ公、ベラ子、理恵ちゃん、ジョスリン。ティアラちゃんの聖環反応をそっちのマップに送る。やっぱり岬の近辺を目指してるみたいやな)
(チレゴンの町中には騎士を配置しています。騒がれると困るか、日中は戦闘力が下がるようですね…)
(暴れるようならジャカルタから増援を送る予定)
(よし、ベラ子。チレゴン到着時に高度500まで降下。ジョスリンは左右対地兵装射程内到達時に光学攻撃。狙いは外すように)
(炙り出すのかよ…)
(マリ公はマルハレータちゃんの付き添いがいるやろ。バンドン上空通過までにうちとコパイ席交代。後部カーゴドア開放の必要があれば連絡するように。上空からスマトラごと射線範囲に入れる占位操作が必要になるやろ?)
(よっしゃ、それで行こう。エマ子、ティアラちゃんの衛星追尾頼むぜ)
(へいへい。まぁしかし、身体能力のリミットを解除できたんですかね。かなり高速で移動してますよ…)
(マリ公、平均巡航速度の2倍程度やったら万卒でも出せるんかな)
(うん。この速度じゃリミッターは解除されてねぇな…)
(それと土地勘がないかも分からんな。ジョスリン、追跡は誰に頼んでるん?)
(滑空翼併用でワルトヒルディーネ、地上からはシュバルツェーネとリモニエディーネ、アマンディーネです。全員、茸島緊急出動行程5分未満)
(よし。もしも追跡不可の場合はこちらで引き継ぐか…地上移動だけやったらぎりぎりスケアクロウでも追いかけられるやろ)
(今の時点で、スケアクロウの超光速粒子銃射撃も可能でしょうけど…)
(だめ。ベラ子…これはあのクヤンかペ○ングか何かだけじゃなしに、須磨虎とウィレミちゃんを標的にする必要があるんだぞ…それと元・マドゥラ戦士の3人さん。あんたらに頼みたいことがある。須磨虎島の一番東側の方にバカウという村があるんだけど、そこの近辺で妖怪を待ち構えて欲しいんだ。迎撃は二の次で見つけたら心話で警告して欲しい。できるかい?)
(ふむ…本当は戦って名を上げたいが、かの化け物は人が素直に退治ることは困難そうだな…)
(一応、塩があいつに効くのはわかったから、襲われそうになったらぶっかける用の塩も渡しておくよ)
(承知した)
で…この3人の元戦士を連れて来た真の理由ですが…実は…本人たちには教えてないんですよね…。
ええ、言えば絶対に怒りますから。
そんな訳で、マリアリーゼ陛下が持たせた塩の袋を携帯して山刀で武装した3人、須磨虎のそのバカウという村の付近に転送されてしまいます。
「で、マリ公…あの子らと化け物をどない引き合わす気や」
「そりゃもう上空から追い立て射撃よ。最悪はこっちが強制的に須磨虎…それもあの3人と鉢合わせする場所に転送してやってもいいくらいだぜ」
えええっ。
ですが、この作戦…かのクヤンのみならず、ついでに須磨虎の住民も対象にすることで正直を言えば半ば手付かずだった南洋行政局による須磨虎統治に一歩を踏み出す目的があるのですよね…。
(あんまゆうこときかない連中ですからねぇ。そのふくさようとやらがなければ、須磨虎の対岸の虎魔王国もなでておきたいくらいですわねぇ)
(とりあえず副作用が出ても、今の須磨虎の人口じゃ充分にこっちで対処できるでしょ。よし、かーさん…そろそろ交代する?)
(よっしゃ、アイハブ)
(へいへいユーハブ)
で、マリアリーゼ陛下に付き添われた私は、このからくり鳥の後ろ側の部屋に再度移動します。
そして、再度…くだんの恐るべき蟹衣装に着替えます。
その時、がたこん、と頭の上の方で音がしたのですが、この部屋の中で何かが動いた様子はありません。
あ、この部屋にあるのは例のコープシェフが持ち込んだ青い装甲車だけですよ。
(コンフォーマルポッド…左右の羽根の付け根にある鉄砲を使用可能にしたんだ。今頃ティアラちゃんを乗っ取ったクヤンの周りに、わざと狙いを外して色々撃ち込んでるだろ)
(あほ。高速レールガンとか実被害が出るもんぼんぼん撃ち込めるかい。レーザーか重粒子銃を極限にまで出力絞って撃ってもろとるわ)
(まぁその辺はジョスリンなら流れ弾で被害を出さない程度にやってくれるだろ。あとはできれば自力で須磨虎まで渡るなら体力を消耗してくれるんだけどなぁ)
(なまじティアラちゃんが強い部類なのがこの際災いするわのー。マリ公、あんたからティアラちゃんと妖怪の心理状況とかモニタできるか)
(へいへい、何なら強制転送してやっかな…よし、飛んだぞ…堕天使さん、一応送り込んだ3人を目指すように誘導頼む)
(承知)
マリアリーゼ陛下が見ている光景を私にも見せて頂きましたが、日暮れも迫っているにもかかわらず、熱い熱いと日の光に苦しみながら猛速度で海を渡るティアラ…いえクヤンの姿が。
(ちょうどここのすぐそばに、例の蔵が立つおやまがあるのですよねぇ。ふんかさせてみましょうか)
(初代様…あそこは噴いたら最後、大被害になるから死火山のままで…)
そうですね、クヤンが真っ直ぐに飛んで行く方向から見て左側の海上に、大きな山があります。
(蔵が立つ山…連邦世界じゃ何度も世界に被害を与えるくらいの大噴火をやらかしたクラカタウ山だよ。その噴煙のせいで地球の気温が何度か下がって麦やら米が取れなくなる被害をもたらしたんだよ…こっちじゃ初代様が聖院作った段階で噴かないようにしてくれたから原型を保ってるけどな)
こうして見ると、とても立派な山ですね。まぁ…うちの国…球根詐欺国は本当に高い山がありませんからねぇ、なおさら立派に見えるのでしょう。
で、マリア様経由で見てもほうほうのていで砂浜に降り立つクヤン。
「おのれ、おのれテルナリーゼ…むっ、あれはマドゥラの戦士。ちょうどよい…我が腹を満たしてくれん」
え。
ティアラから分離した悪霊クヤン、一気に隠れていたはずの元戦士たちに襲い掛かろうとしますが。
その瞬間、元戦士1号が塩をぶっかけます。
「ぎゃあああああ!」再び、聞いた者を錯乱させる絶叫がクヤンから発せられます。
「ええい面倒だ、このおなごの身体は惜しいが、マドゥラの者ならば何とか代わりにもなろう!」
そして、ティアラから完全に離れると、他の二人の塩攻撃をかいくぐって…なんと、元戦士1号を乗っ取ってしまいましたよ…。
「かーさん、今だ!後部カーゴドア開放!初代様!改良型蟹光線2号、発射準備願います!」
がこん。
目の前の薄暗い部屋の先…縄で縛られ床に固定された装甲車の向こうの部分が開き、外の光景が見えます。
かなり低空まで降りたのでしょう。
海ののはるか先には倒れたティアラ…茶色砂糖にはならなかったようです…と、腰を抜かした2号3号、そして今にも2号3号に襲い掛かろうとする1号、いえクヤンの姿が。
(マルハちゃん!蟹光線砲、よよぎモード確認!視覚内の蟹光線砲の照準レティクル…輪っかの周りが青から赤表示に切り替わったら通常じゃなくてよよぎモードに正常変更されてるからな…)
(マリア様、赤です!)
(初代様、前に出て来てください…発射の掛け声とポーズは教えた通りのあれですからね、あれ叫んだら自動発射されますからね…)
(ほほほ、りょうかいですわっ。マルハ、行きますわよ!)
(へいっ)
私は、左右の手で頭の上から生えた蟹の目玉の根元をつかみます。
そして、その目の先を適当にティアラの方に合わせると…。
(いまですわよマルハ!)
「かにビィイイイイイイイイイイイイイイイイイム!」
ええ、これが発射の合図だそうです。
瞬間。
たきじいいいいいいいいいい!と言う人名のような発射音と共に赤い光が、凄まじい勢いでその蟹の目玉から放たれます。
その光は、まさに今、食われようとしていた2号3号はもとより、クヤンに取り憑かれた1号を貫きます。
更に、勝手にティアラを炙るように…それどころか、その砂浜から遥か彼方の須磨虎島の長大な森と山を余さず、その赤い光が貫いていきます。
しかし、何かが壊れたり焼けたり崩れる様子はありません。
そして、これだけのことをしているのに私にも反動はないのです…。
(よし。ついでにマルハちゃんの依頼通りにウィレミちゃんを狙う。精密照準制御はあたしがやるから、さっきの掛け声もう一回)
「はい…かにビィーーーーーーーーム!」
ええ、今度は短く、一発だけ。
ただ…その光は地面に吸い込まれるように消えていきましたが…。
その1秒後、ケルン大聖堂の方向から文句の心話が来ます。
ええ、我が不肖の腐れ妹たるウィレミーナからです。
(マルハレータ姉様!なんですかこれ!しんぶん○旗とかいう聖院第二公用語で書かれた瓦版があたくしの前にぃいいいっ!)
(ウィレミーナちゃん…それ、今、こっちで妖怪退治に使った新型蟹光線の流れ弾だ。そのしんぶん赤○をちゃんと読まないと寿命が百日縮むから、とりあえずちゃんと読んどいてくれ…特に主張とコラムは絶対に読むんだ…)
(え…私は何を…ここはどこ? っていうかなんか缶詰を作る義務感に駆られるんだけど…マルハ!あんたか!あたしになんか変な幻覚を見せてんの!荒れた海に翻弄される船で缶詰作りを強制されてる気分なんだけど!)
(なんだこれは…逆らおうにも恐ろしい監督男の幻影が…ひぃいいいいい!)
(こんな荒れた海で蟹漁など狂っている!この男たちは正気なのか!)
(ぎゃあああああ、寒さで手がかじかんで動かぬ!海に、海に落ちる!)
あの…マリア様、あいつら、どうなったのですか…あとウィレミも…。
(マリアリーゼ…これがその、改良型かに光線の副作用とやらですの…?)
(そうですよ。通常の蟹光線だとタキオン粒子が物質中を通過する青い光を放つんですけど、この改良型蟹光線…通称よよぎモードだと赤い光なんです…で、その赤色に相応しい強制労働の幻覚と政治団体並びに共産主義思想への服従を強要される心理操作を喰らうんですよ…)
(おいマリ公…それ、アカに染めるゆうことか…それで蟹工船の幻覚を見るんか…)
(ああ、蟹缶を作らされる幻覚を見るんだ…だからマルハちゃんがゆる蟹服を着る必要性があるんだよ…)
(お前…こんなアホくさい理由であの子に蟹衣装着せるとか罰ゲームやろ…)
(仕方ねぇだろ…この改良型蟹光線の強力な服従能力で悪霊まで従わせる目的は達成したようだし、いいんじゃねぇかな…おいクヤンとかいうの、あんたはこの宿主の元戦士の女性が死ぬまで離れられんし、元戦士さんもろとも、この蟹衣装を着た当人…マルハちゃんと初代様に服従を強制されるんだよ…ああ、元戦士2号さんも3号さんも同様だ…)
(な、なんだそれは!そんなもん承知できるかっ!…なんだこの幻覚は!痛いっ!痛い!わかった!働くから許してくれぇっ!)
(ああ…監督に殴られている幻覚を見たな…そうだ、反抗したら、蟹工船に乗せられ強制労働させられる幻覚を見るんだ…)
(マリア様とか申される方…私の目の前に紙が!読めぬ文字が書かれた紙が!)
(それも反抗懲罰の一つだ…その政治団体の機関紙が強制的に脳内に配達されるんだよ…恐○新聞のようにな…ただ、○怖新聞と違うのは「ちゃんと読まないと寿命が百日ずつ削られる」んだ。あれと真逆なんだよ…)
(なあ…ほんまこれ、そこの政党から怒られそうな懲罰服従光線やんけ…被害というか副作用がえげつないってサン=ジェルマンのおっさんが言うとったん、これのことか…)
(あのーマリアリーゼ陛下、私の今月の業務報償金、強制的に1割カットされてるみたいなのですが…)
(ティアラちゃん…それも、よよぎモードの蟹光線の作用だ…マルハちゃんに逆らう限り、その政治団体への参加費として収入の1割が強制的に召し上げられるんだ…)
(嫌な副作用やな…)
(マリア…これ、副作用がきびしすぎますわよ…撃ったほうも何かこう、わかものを勧誘して基地やぐんたいはんたいのデモにさんかしたり、する必要もないのにいえでしたわかい女の子をかんきんいえ保護しようという気になるのですけど…)
(私は自分の国の生業が賤しく思えて来ました…資本主義とやらが敵に思えます…)
(マリ公。今すぐ中和せぇ。これ…副作用がアカんすぎるやろ!)
(ねーさん…これ、絶対に封印すべきですよ…びっくり!!君の国も真っ赤っ赤になってしまいますよ…)
(強力なア○への服従洗脳効果を期待したんだけど…)
(こんなもん、もみじまんじゅう県の毒電波マイスター以外に耐えられるわけあれへんやろが…封印じゃ封印!駄洒落菌より更に危険やないか!)
(エマ子、ちなみにお前、副作用は)
(ないと言い切れないのが恐ろしいとこですわ…これ、下手したらMIDIにも効く可能性が)
(初代様にも悪影響、出たくらいだよな…)
えっとですね皆さん。
肝心の私への気配りも頂きたいのですが。
そもそも、なぜ私が缶詰王女とか言われるかの由来を知ってしまったからには、荒れ狂う冬のベーリング海で某国の警備船に怯えながら蟹を獲るばかりか、その蟹を船内で缶詰に加工するような船に乗り込む幻覚など遠慮したいことこの上もありません。
船の中で缶詰を作るのは、あろうことならばワルヴィス相手だけでお願いしたいのです。
ええ、カリブでやってるあれですよ、あれ。
あとティアラとウィレミと元兵士1号2号3号の中和はちょっと待ってくださいね。
ええ。上手くすれば私を絶対君主として崇め敬わせ服従させる良い機会。
私には豪邸はありませんが、少なくともその政治団体の以前の長の自宅豪邸とやらより確実に巨大な宮殿があります。
そして、ウィレミーナを従えて球根詐欺国を手中に収めるならば、確実にその団体本部ビルを上回る規模の宮殿4つと、更には党員を遥かに超える国民…南洋王国と球根詐欺国の双方を合わせれば絶対に勝てるでしょう…を抱える立場。
しかも、蟹の缶詰を作らせたり横断幕を持って無益な爺、いえ示威行動や座り込みを強要させるだけではなく、南洋王国と球根詐欺国のそれぞれを支える産業の数々に従事させることができるのです。
ふふふふふ、連邦世界では宗教は麻薬とか言うそうですが、思想も麻薬毒薬と言えるでしょう。
そしてこのマルハレータが槌と鎌を携えて世界を革命するのです!
https://twitter.com/725578cc/status/1686695619581333506?s=20
少女たる私なら、革命を起こす資格はあると思うのです!
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マリア「中和するしかないな…」
べらこ「あの作品のファンの人に怒られる気もします」
まるは「あんなもん使うからです…しかし、あの支配力は魅力」
さんじぇるみ「言い忘れた。内ゲバ起こす副作用もあるぞ」
まるは「えええええ!」
マリア「ア◯に内ゲバはつきもの…よくわかんだね…」
じーな「◯カの習性はまだあるで。大学や山荘に立てこもるとか、変なヘルメットかぶって棒や火炎瓶で暴れ倒すとかな」
りええ「列車に落書きとかストやったらマジであたし怒るからね」
マリア「独特の文字を使うとか、腹腹時計の製造を試みるとかな」
じーな「富士山麓で王蟲が鳴くとか」
マリア「かーさんそれ別の危険団体」
えまこ「まぁ、この兵器は封印確定ですわな…」
マリア「副作用が強烈なんだけど、効果はあるんだよ…」
べらこ「通常の3倍の速度で思想汚染されるのですね…」
マリア「変態仮面やロリコンになる副作用はねぇぞ…」
まるは「革命のために缶詰を作らせたくなるのです…」
うぃれみ「姉様、離宮は差し上げますからなにとぞ姉様の奴隷だけは!」
てぃあら「あんた…これ解除しないとあたしマジ怒りするよ…ベラ子陛下、私がマルハの奴隷でいいのですか」
べらこ「いいわけないです。ねーさん、解除しないとあたしが蟹服を着ますよ」
マリア「おめーのサイズに合わないだろう…え?」
えまこ「特例です。ねーさんが中和措置を取らないならベラ子かーさまに蟹服をお渡しして中和してもらいます」
マリア「やめろ…ベラ子が使うと今度は血の掟を広める…」
じょすりん「パスタ女にマフィアの思想を広めさせるのも危険ですね」
べらこ「あたしは平和を愛する女なのです…」
マリア「ピンフを愛する麻雀三姉妹とかやめてくれよ」
べらこ「麻雀で戦いますし、雀卓も破壊しませんよ。ただ…背中が煤けた打ち方をしてハイレート東風戦でハコにしまくる御無礼を働きそうですが」
マリア「このシリーズが共◯主義作品になるのか、はたまた倍プッシュで顎が尖る博打作品になるのか、それとも百合百合しい少女革命路線を突き進むのか…」
くやん(というかわしをなんとかする話じゃないのか…)
てるこ(もはやクヤンをどうこうするより困った事が起きておるのです…命があるだけマシと思いなさいっ)
くやん(ひいいいいい)
まるは(とりあえずあと1回は私の話として続くそうです…)




