南洋残酷ものがたり〜缶詰王女奮戦記〜・8
えええええっ、ちょっと待って下さいよ。
あのティアラなら絶対に「マルハレータのバカが人を出し抜くためのスターンスペイレンをやりやがったに違いない」と早とちりするに決まってるじゃないですか!
ほら来た。
「まるはぁあああああああんたぁあああああああああああせっかくあたしが塩をあげたのにいったいぜんたいなにをしてんのよぉおおおおおおおおこのばかたれぇええええええええええええっ!」
ええ、見事な跳躍です。
早とちりしてるのを除けば。
街道を素直に走らずに対魔畑と湖、そして王宮の低い塀と植え込みの上すら飛び越える壮絶な跳躍の後、体を丸めてくるくる回りながら落ちてくる勢いを殺し、見事に「今まさにコープシェフとディードが案内しようとしている薄汚い布をまとった人物」の前にすたっ、と綺麗に着地。
そりゃ、騎士能力は…黒薔薇リミッターを外して貰えば話は別ですが、同格ならあちらが上でしょう。
早とちりしてるのを除けば。
(くどいわよ!)
(まぁお待ちなさいな…コープシェフ・ジョスリンもいるのに普通にしてる時点で悟りなさいよ…とりあえずこのクヤンには謁見の間に入ってもらうから…)
で、緊張の一瞬。
こっちよと謁見の間の開かれた大扉の前に招かれているクヤン。
頭巾のように布を頭からかぶっているのでよく分かりませんが、明らかにその扉の先の床には何もないはずなのに、最初の一歩を踏み出そうとはしません。
(む…塩がまかれているのに気付いたようですわね…みな、よくみておくのですよ…)
(ぼろで顔を隠してるつもりですけど、めっちゃ嫌がってますよ、初代様)
(あたりですわね。ジョスリン、ディード…捕捉のよういを。ティアラ…説明ぶそくでもうしわけないのですが、このテルナリーゼのしじで、そのクヤンが足を下ろそうとした先の床には少し、あなたがマルハレータにわたしたおしお、まいておりましてよ…)
(なるほど…それで嫌がっているのですね…つまり、この謁見はクヤンとかいうこいつを誘い出すワナだったのですか…)
(そそ。マルハレータの中にはいま、わたくしがおりますから何かしようとしてもむだなのですけどね。念のためにこのクヤンがあたくしの知るクヤンなのか、ちょっとためしたかったんですの)
ふむ…なるほど、どうも初代様は何か因縁をお持ちか、はたまたお知りである様子。
しかし、その当人たる初代様は私の中。
そしてクヤンは、初代様が私に隠れているのを感知できないようですね。
「恐れ入ります…王宮の清掃にけちをつけるつもり、このクヤンには全くございませぬが、そこの床にごみが落ちておる様子…私が足を踏み入れますると、汚れをこの間に入れるやも」
と言って、どこかから取り出したほうきとちり取りでそこを掃き始めようとすらしますが。
「お待ちなさい、クヤンとやら。そのごみ、よもやこれではありませんか?」私は、隠し持っていた袋…昨日の晩、ティアラに押し付けられ、そしてその中身の一部をさっき床に撒いたばかりの袋を取り出します。
(いまですわよっ)
(へいっ初代様っ)
ええ。黒薔薇リミッター、初代様が開放して下さってました。
で、常人ならば目にも止まらぬ…ほぼ一瞬で、そのクヤンめがけてぶっかけられる袋の中の塩。
むろん、ぶっかけたのは私です。
瞬間、凄まじい声をそのクヤンなる者が上げます。
ええ、マンドラゴラとかいう毒草を引き抜いたが最後、発せられる悲鳴がこうなのでしょうか。
その、ある意味では殺人音波とも言える音響に離宮の女官や騎士たちが耳を塞ぎます。
ずるりん。
ぼろを吹き飛ばして現れたのは、何と…。
青白い女の顔と…そして首から下に連なる不気味な赤黒い内臓。
仮にこのお話が商業化とやらの賞賛に預かったとしても、絶対にこいつの姿はまともな挿絵に描かれないだろうと断言できる奇怪かつ不快極まりない姿です。
その気色悪さにもほどがある姿に、この場にいた全員が一瞬だけ固まります。
更には日光も苦手とするのか、苦しげにのたうち回り…ちょっと待ってティアラ逃げて!
一歩遅し。
私が抜いて投げつけた剣はもちろん、コープシェフの抜き撃ちやディードのはりせんムチすら躱して、何とティアラの身体を乗っ取ってしまいます。
で、私を攻撃しようとするクヤン、いやもといティアラの体がそこで止まります。
ええ、初代様に前に出てもらい…つまり、私の身体を乗っ取って頂きました。
そして、ギョッとしたティアラの顔から発せられる言葉。
「ぬ…おのれはテルナリーゼ!ようもこの場で会うたが千年目…」
(やーっぱりクヤン、いえいえパラシックでしたかしらね。ほほほほほ、黙ってこのまま野に潜み世を忍んで消え去るかと思っておったのですけどねぇ。人に隠れて生き延びるわざが効く輩がいまだ、この南洋に生き残っておったとは…)
「う、うぬぬ…だがしかし、この娘はなかなか活きがよい故に、わしの新しい身体としてもろうていこう!いずれは貴様ら全て打ち滅ぼしてくれる!その時に至るまでに首を洗って待っておるがよい!」
言うなり、背中からこうもりのような羽根を出して空中に舞い上がります。
しかし、今は朝日が出てしばらくした状態。
あんぎゃああとかぎええええとか、おぼえとけテルナリーゼとか聞くに耐えない悲鳴と罵詈雑言を発しながら、あっという間にどこかへ消え失せてしまいました。
(初代様…ティアラ、乗っ取られてしまいましたよ!)
(待つのだプランセス…ここまではショダイサマの筋書き通りだ…私やディードが、あの距離で外すと思うか?)
ええっ。
しかし、考えてみればその通り。
コープシェフの射撃、ある時に見せて頂きましたがアルト閣下の妹君であるナディアフィール海事部長の抜刀よりも早いのですね…。
(同格ならダリアやアルトとたちうちできますわよ、ジョスリンは…)
え…。
(でなきゃマリアリーゼが買っていたり、マリアヴェッラと口げんかできませんわ…この子はたんに強いだけではなくて、戦った数がじんじょうではないのです…)
ぬぬぬ…しかし、それではかえって、ティアラが乗っ取られてしまうのを見過ごしたことに…。
(まぁまぁ。あのクヤンは須磨虎でもあばれておりまして、パラシックというのはそのときにあれが暴威をふるっておった際に名乗っていたなまえなのですよ)
ふむ。須磨虎島ですか。
(即ち、クヤン…パラシックが目指すところははっきりとわかっております。あれは日の光に弱いだけではなく、かつて支配した民の血肉を求めておるのです…)
聞けば、須磨虎の地形は聖院島…痴女島に似ており、初代様が聖院を開いた際の候補地でもあったとか。
(北の方におっきな湖がありますでしょ。そこの中の島を吹き飛ばしたらちょーーーーーーど聖院湖みたいなのができたのですがね…先に住んでおった者がおりましてね…)
https://twitter.com/725578cc/status/1686260146698350592?s=20
ああ…迷惑おばちゃんだとベラ子陛下が言っていた理由、これなのですね。
カステラでもつまむ感覚で山をどけるとか吹き飛ばしそうな方だというの、よく分かりますので。
(マルハレータ。実際に聖院湖を作る際には山一つ吹き飛ばしておるのですよ、母…)
(なんかその時に作ったのが聖院山だとはお伺いしたことがあります)
(で、須磨虎にはそこの島に住む、男族と…少し離れて住んでいた女族がおったとお思いなさいな)
(男か女しかいなかったのでしょうか)
(まぁ、それではふえませんからね…で、男族というのは父親がおうちの長となります。そして逆に、女族では母親がおうちで一番えらいとされたのです…で、男族と女族でかつて争った際に、犯され殺された女の悪霊がおりました)
(その悪霊は祟りをもたらし、この南洋の各地に似たような者たちを増やしたのです。その中には悪霊を退ける魔術の研究をするはずが、自分が不老不死の体や富豪となることを求めたせいで悪霊の類友に成り下がった者もおったのですよ…クヤンやパラシックは正にそうした魔術師の成れの果てなのです)
(このへんはいんどねしあのゆうれいやようかいでんせつと少しちがうでと天の声めが申しておりますので、聖院や痴女皇国の世界ではこうだったのねという程度に思ってくださいまし。で、娘が申すとおり、欲にふけった黒い魔術師は悪霊に憑かれて自らも悪霊と化したのです。すなわち、こやつらは人にとり憑けるのですよ…)
で、床に崩れ落ちたクヤンの身体ですが、ぼろぼろと粉のようになって崩れて行きます。
(アミノ酸結晶に変質していってるな…初代様、可能ならその粉、回収できますかね)
(ばっちくてやなんですけど…)
(仕方ないですねぇっ)
で、手元に掃除機とやらが転送されてきました。
(マルハちゃんに配慮してフィリップス製品だ。本国より若干電圧が低いが動くはずだ…)
はぁ。
まぁ、これはこれで便利は便利です。
ちょっとコツはいりましたが、いきなり粉を全部吸おうとせずに山の端を崩すように徐々に吸わせて詰まらせないようにというマリアリーゼ陛下の助言に従い、赤信号が出るまで吸い上げます。
残りは適当に捨てといても良いらしいので、清掃担当の女官を呼んで片付けさせるとしましょう。
しかし、ティアラはどうしましょう。
いくらティアラとは言え、あのティアラとは言え。
更にはうっかり者のうっかりティアラとは言え。
(それ…後でティアラが聞いたらものすごく怒るとは思うけど…)
(あれだけ早とちりが壮絶なのはうっかりティアラでいいと思うのですメフラウ。主食も三色団子のみで…)
(その話は若者に通じないと思うわ…)
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でまぁ、初代様の見立てでは、ティアラは日中、日の光を避けて密林を移動して南洋島の北の端にまで達したところで夜を待って須磨虎へ渡るであろうと予想しておられる模様。
空を飛べるのはさっきの一連の行動ではっきりしています。
そして、なるべく早く救出した方が良いことは良いらしいです。
なぜならば、普通の人間であれば仮にクヤンが乗っ取り先を変えて憑依から離れた状態となれば、先ほどまでのクヤンの身体同様に、茶色い砂糖のようなものに変わってしまうとか。
痴女種身体のティアラならば、完全に乗っ取られるわけでもなさそうですけど…。
(完全に死んでるわけじゃないな…アミノ酸結晶体はガス交換反応を返してる。つまり、この精糖前の粗糖みたいな結晶はまだ死んではいないんだよ。原初生物のような極めて原始的な生命反応は返すんだ。だけど…知的生命体としての再生は…死人を甦らせるのと変わりはないな)
とは、茸島に送られて早速分析にかけられている先ほどの光る茶色い硝子の砂のようなものを見ていると覚しきマリアリーゼ陛下の弁です。
(どうも一部の結晶生命体…それも炭素系生物に対する攻撃本能を備えた特殊生物と同じような方法で記憶や生命力を抜き取っているみたいだな。つまり、あのクヤンってのは一種の寄生生物だ)
ふむふむ。
(連邦世界での怨霊や悪霊の行動と大体似たようなことができるけど、基本はガス状の生命体で、その密度を変えて人体の周囲に漂う。で、外部から人体を乗っ取って体内に浸透するんだわ。これが、ディードたちが発見できなかった理由だろうな)
(普通のにんげんにみせかけて動けるのですね)
(そゆこと。だから分析の生体反応では人間の男だって出てたろ。この憑依元の人体は恐らく男性だな)
(ふーむ。おそらくはあたくしがそういうものをしばき回しておった際に逃げたいっぴき、ですかしらねぇ)
(可能ならサンプルを捕獲したいですね。どのみち、ティアラちゃんも保護しなきゃならないし…そうだ、あれが使えるな…)
(なんかええもんでもありますの、マリアリーゼ)
(ええ。マルハちゃんの聖環の着せ替え画面に使用許可を送っておきました。あと、りええの分はその代償に使用禁止っと)
(ごらぁあああああああ、あたしにこそあれを使わせんかいっ)
(こら。須磨虎まで悪霊退治に来るならいいぜ)
(えええええ、あの盆踊りの時の気色悪いあれの親類なんでしょ…)
(仕方ねぇだろ…インドネシアの妖怪って片端からあれの類似品だぞ…そのスンデル・ボロンなんて胴体に穴が開いてんだぞ…)
(何なのよそのクリーチャーばかり…ゆっきー…ちょっと池尻大橋のマンションからほーむらんばっと取って来てくんない?)
(須磨虎ごと消し飛ばす気かよ…りええ…第一、今、その悪霊はティアラちゃんを乗っ取ってるんだぞ…)
(あたしが使うくらいじゃそこまでの危険物になる気はしないんだけど…)
(忘れたのか。あのゴールデンバットは相対した敵の強さに応じて勝手に打撃力を変更するんだぞ…俺のドリルで天地を貫くような強いやつが現れたら、それに応じて打撃力や打球の威力が勝手に変わるんだよあれ…)
(それはよいのですがマリアリーゼ、ティアラのからだのいどころ、おいかけておりますの?)
(ええ。進路上にある村や町には慈母協会の尼僧が騎士装備で待機済み。ついでに在庫の塩を用意しといてくれとディード経由で連絡してもらってます。村の入り口に塩を撒いておけば寄り付かないでしょう。野良仕事をしている昼前までは騎士に追跡してもらえば、捕食される事は防げるはずです)
なんで塩が効くのでしょうね。
(そうだね…海水よりも濃い塩水に長時間人体が浸かると、水が抜けて死んでしまうのと似た理屈だな。…あいつらを寄生相手から引き剥がす効果があるようだ)
(そうそう。りくつはいまだによくわかっておりませんが、しおをいやがりますの。で、もいっこ。男族も女族も山の中に住んでおりますし、もっというとジョクジャカルタ、うみに面しておりませんわよね)
ですね。陸地も陸地、くるまだと二十分近く走らないと海を眺められませんから。
(ですから、南洋から須磨虎までは必ず空を飛ぶ必要がありますのよ…それも日の落ちた後に。そして、なるべくうみぞいではない村を探して飛ぶなり走るなりしなくてはなりません)
(ふむ…ジョクジャカルタからチレゴンまで直線距離で600km未満。ティアラちゃん本来の脚力なら、推奨巡航速度で3時間かからないか…あとはクヤンが腹減ったとか言い出して寄り道したり、日の光を避けるために回り道をするかですね…)
つまり、この段階で私たちには2つ、ティアラとその体を乗っ取ったクヤンに対しての優位点がありますね。
1つは、まず両方の島の間の海を越える場所が推測されること。
2つめは、飛び立つであろう時間も推測できること。
日没直後に、両方の島の間の海が一番短いところを見張れば。
更に、日没前に南洋島側で潜んでいる場所を発見できれば大当たりでしょう。
(なるほど、日の出ている間に弱っているところを捕まえるわけか…その案でいくか)
(で、マリアリーゼ陛下…もうひとつ、私に案があります…ごーにょごにょ)
私の囁く上奏を聞かれたマリアリーゼ陛下や初代様に二代目様、そしてコープシェフとディードは。
(確かに、それは必要かもな…よし、マルハちゃん…都合してくれ。チレゴンまでの足もそこまでの間に準備しよう)
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で、アジスチプト飛行場に来た私。
装甲車を運転して来たコープシェフと…そして元戦士1号2号3号なる罪人女官。
この罪人女官、実はなんと…かつて、マドゥラ族最強戦士だった元・男なのです。
https://novel18.syosetu.com/n0112gz/217/
で、この元戦士で最強から数えて1号2号3号という上位3名は私たちとの手合わせに敗北して男の身に戻ることができず、あえなく我々の捕虜というかマドゥラ族からの献上品扱いで引き取った経緯があります。
そしてボロブドゥールで一定数の騎士候補女官を産ませた後は懲罰偽女種への道を歩ませようか悩んだのですが、身体劣化を急速に起こさないように慎重に管理する事で、優秀な騎士女官を産ませる苗床兼、私とアニサとディード用の侍従女官として使役することが提案されました。
言うなれば、今後の南洋王国における幹部騎士勤務女官の標準仕様とでもいうべき存在を産む者として期待されたのです。
ですが、猥褻極まりない上等な身体はまだしも、その脳の中は頑固で融通の効かないマドゥラ戦士のまま。
(まぁ、その方が産ませた女官候補には南洋王国や慈母寺への忠誠心が期待できるのですけどね…)
ただ、黒薔薇の強制服従機能を使っているとはいえど、無理からに色々とさせているのも可哀想な気もします。
(ふふふふふ、これがうまくいったら一気にマルハちゃんたちに忠実な存在に変わるか知れねぇぜ…)
(期待しております)
そう…今回の作戦では、こいつらと…あわよくば密林に阻まれ、南洋慈母寺の進出どころか原住民ですらなかなか内陸部へと開拓を進められない須磨虎の問題を一気に解決できるかも知れないもの、マリアリーゼ陛下によって持ち込まれて運用するそうなのです。
ただ、ですねぇ…あの懲罰服1号よりも更に、ある意味では恥ずかしくも痛い姿を我慢しなくてはならないのがはっきりしています。
そして、この特殊装備を運用するためには、マリアリーゼ陛下の本体が相変わらずNBに行きっぱなしなのを考えますと、私の体を初代様がお使いになるのが一番確実らしいのです。
(ですから、絶対にあたしが指定した装備をですね、指定したモード以外で使わないでくださいよ…間違えたら最後、須磨虎どころか射線上に来るはずの天竺亜大陸もろとも吹き飛ばしかねないんですからね…)
(わかっておりますわよ…しかし、他のてはございませんの?)
(ふふふふふ、今回のこれは駄洒落菌抜きで原住民をキャンと言わせられるかどうか、お手軽侵略支配兵器の実験なんですよ…成功すれば、駄洒落菌を撒くよりも更に楽に中間龍皇国やシベリア東部の制圧が期待できるんです…一瞬にしてね…)
マリアリーゼ陛下の不気味な笑みが気になりますが、それ以上に気になるのはその新兵器とやらを搭載した服が、とても…私から見ても、そんな物騒なものには一切思えない点にあるのです。
ええ、聖環の制服洗濯いえ選択画面で、それの外観を見ることができましたから。
(取り外し可能なインナーは再生工程に回せるけど、中自体は揮発型消毒洗浄液の高温高圧噴霧だな…とにかく密閉型だから汗の匂いがひどいんだよ、長時間着てると…って洗濯や手入れ方法じゃなくて、それの兵装選択画面の出し方選び方をよく学習しておいてくれ)
はぁ、これが現時点で、ほーむらんばっと、そしてアイヌの宝剣と並ぶ痴女皇国三種の神器であると…。
(厳密に言えばアイヌの宝剣はその都度キツネの神様から借りてくる必要があって、うちらの常備武器じゃないんだ。更にMIDIはいつもは2つに分離している上にあたしとベラ子かエマ助誰か二人の起動承認が必要だからすぐ使えないし、ほーむらんばっとは連邦世界の池尻大橋常備品だ。よって、これが一応は我が痴女皇国三種の神器の中じゃ一番使いやすい装備になっちまうんだよな…)
(たしかにマリアリーゼ、このふくをあなたが着ている時のあれを知らぬものには単なる道化ですものねぇ…あたくしだって、いけにえ村さくせんの時のあなたを見てなければ怒ってましたわね)
(まぁ、逆にこれ、何もしなくてもあれなんで、通常モードで蟹光線を使うだけでも七代目様白金衣着用での鬼汗国侵攻阻止にともなう某半島消失くらいは楽にできるんですよ…だからこの蟹衣装で暴れるのだけは絶対に絶対に絶対にやめてくださいね…)
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べらこ「おばちゃんに変なもの与えて…ねーさん、地球ごとその悪霊を吹き飛ばされても知りませんよ…」
マリア「いや、今回は兵装モード選択画面さえ間違わなきゃその心配はない。ないんだけどさ…」
べらこ「なんか副作用でもあるんですか」
マリア「鋭いなベラ子…共同開発担当のエマ助とサン=ジェルマン先生、そして航宙艦だがア・バオ・ア・クゥ先生に現時点で予想される副作用の解説を頂こう…」
えまこ「なんでうちが…ええとまず、MIDIシリーズ共通装備の超光速粒子銃の1バージョンです、今回の搭載兵器」
さんじぇるみ「でマリアリーゼ、これさぁ…対人照射でうちの社員に試験照射したんだよ…結果だけ言うぞ。1時間で無効化中和措置を取らざるを得なかった。そして、その社員には地球帰省1ヶ月と特別有給を承認して納得してもらった。つまり、僕でもなだめるのにそれだけ苦労したんだからな…」
マリア「だから人体実験なら痴女皇国の女官を貸すって言ったじゃん…」
あばおあくう「中和または解除手段の同時開発は本当に必要だったのである。更に言及すると脳構造を有する有機型知性体のみならず人工知能などの無機知性体にすら発症する危険性が実測されている」
マリア「そんなに効果あんのかよ…」
あばおあくう「MIDIまたはM-IKLAには無効だが通常型無機知性…一般には機械知性と呼ばれる存在にすら有効である」
マリア「パワーダウン版処置も研究すべきだな…」
さんじぇるみ「それ以前に何でこんなアホなもんを作ったんだよ…」
マリア「だから駄洒落菌抜きで同等効果を得られないかってさ…」
えまこ「着想自体はわかるんですわ。駄洒落菌散布、結構めんどくさい上に、現時点では対象が呼吸可能な大気に接触してる必要性がありますからな」
マリア「ちなみにこれ…今回実装した新兵装だと遮蔽物は無効。どう隠れようが超光速粒子が透過する環境ならぜぇええええええええったいに汚染されるんだよな」
えまこ「言うてましたね。またしても宇宙最強はあたしやて」
マリア「だって照らすだけであたしらのしもべになるんだぜ?」
さんじぇるみ「あとさぁ、一応言っとくぞ。これ、マルハレータ・ヴァン・オラニエが着ないとそれ…使えないんじゃないか?仕様的に」
マリア「なんでよ…ああああああ!(仕様書やら設計書やらプログラムコードリストを見てある事に気付く)」
べらこ「はっはーん、あたし現代日本国語の点数ちょっと某大学合格ラインぎりぎりっぽいんですけど、なんとなくわかりましたよ」
まるは「つまり、それを今後使う時、私…あれを着るんですか?お願いですからあの姿だけは…南洋王国はまだしも球根詐欺国、特に父母はともかくウィレミーナにだけは見せないでください!あの女は絶対に爆笑します!」
べらこ「ちなみにマルハちゃん、ウィレミちゃんとの仲は…」
まるは「中原龍皇国人と同じです、親兄弟財布別勘定にしとく方が無難。あの避暑宮殿のヘット・ローの所有権を巡って今から既に火花飛ばしてる件でお分かりの通り、金が絡むと揉めます」
マリア「ああ、それなら簡単だよ。ついでに照準ターゲット、ウィレミちゃんにも設定しといてやる。で、ウィレミちゃんの分だけは作動リミット…つまり制限時間を設定っと(鼻歌交じりで接続した設定コンソールをいじっている)」
まるは「なるほど、それで効き目が切れるまでに姉の姉たるや姉たらんことをウィレミの身体に総括すればいいのですね」
マリア「その別荘宮殿の地下に埋めるまでやりすぎないようにな」
さんじぇるみ「あとさぁ、予想副作用の1つにこんなもの出てるぞ。美人を憎むようになるって」
まるは「えええええ」
さんじぇるみ「それだけじゃない、お金…革命の資金を得るためには銀行強盗だって必要だからと平気でやるようになるらしい」
まるは「なんなんですかその新兵器とやら…」
さんじぇるみ「それだけならいいんだけどさ、若者をその道に勧誘するのが習い性になるとかさぁ…なぁマリアリーゼ、これ…今回の使用にとどめるか、有期限モードで射つ方が君たちのためになるんじゃないか?今から開発やり直しだと間に合わないだろ…」
マリア「せっかく頑張って光線照射での書き換え内容をプログラミングしたのに!あたしの時間返せぇええええっ」
べらこ(ええ、かなりひっどい兵器なんですよ…これ使った直接の死人は絶対に出ないのはあたしも保証できますけどね、駄洒落菌使う方が絶対にいいですって…)
マリア(相手の本体がガス状生命体だからこの方がいいんだって…)
まるは(という訳で私は一体、何をやらされるのか…次回で明らかになります…)




