南洋残酷ものがたり〜缶詰王女奮戦記〜・6
で、これこれこういう事を悪霊役が言ったという話を帰りの車内でディードたちに申しますと。
「ふむ…クヤンですか…マルハレータ閣下、この南洋界隈の悪霊伝説の一つなのですけど…」
と、中僧正のカーティカは紙…クヤンから私に、密かに渡された紙そのものを改めています。
元々はバタヴィアの旧・南洋王国王邸詰めの上級女官だったカーティカ、例の政変時にジョクジャカルタに逃れて来たのですが、正直なところ…。
(彼女は我々の密偵だったのよ。その豊富な知識と上品な所作で王と王妃に近い場所での勤めに取り立てられるように計らっていてね…)
で、その正体は聖院時代からの古株女官で、なんとマドゥラの出身だったと。
(実は私は以前、修学宮担当でしてね。ですから私の事を知っている女官は年数の割には少ないはず。南洋管内だとオリューレ局長くらいでしょうね、かろうじて知っているのは…)
(ああ、マルハ…カーティカはマドゥラ兵士の家族の遺児よ。虎魔王国の傭兵だった父親が泰拳仏象国との小競り合いで死亡。そして、母子で須磨虎から南洋と流れてジョクジャカルタに辿り着き、母は病に倒れたが幼な子だったカーティカは聖院の預かりとなった経緯があるのよ。ちなみに私の同期よ)
えええっ。
メフラウの同期ですか…。
(で、マリア様が痴女皇国を建国した際にも残っていたのだけど、色々あって千人卒になった上で南洋島に派遣されていたのよ…)
(マドゥラ人だから潜り込ませやすかったって…)
どうも、当時からマドゥラ人は出稼ぎ民として南洋の島々では知られていたようです。
ただ、風習や言語の違いがある上に性格が農耕向きではないため、就ける職は限られていたとも。
まぁ、カーティカの出自はともかく、そのクヤンと名乗る者はいにしえの南洋に伝わる悪霊伝説を知っている立場であろうと推測されるそうです。
そして、聖院島を知り、心話や読心に慣れているだけでも只者ではないだろうと。
「クヤンとはカリマンタンの伝説に出てくる悪霊で、悪しき魔術を極めて富と美と不老不死を得ようとするあまりに、ペナンガランの仲間になったとされます。即ち、人の生き血をすすり肉を食らうとされたのです」
ええ…なんか嫌な悪霊ですね。
「その姿もペナンガランと酷似しています。ですが、魔術によって胴体に臓物と首を収め、人のふりも出来ると伝わっているのです。その者がクヤンを名乗った理由は恐らく、クヤンが魔術をよくするという伝承を知るものに印象付けようとしているのでしょう」
なるほど…普通ならそんな怪しい輩、話を聞く気もしませんが、医療や科学の知識に薄い者であればころりと騙されてしまいそうな気も。
本当なら、こんな申し出は速攻で蹴った上で、即刻にこのクヤンなる者の調査をディードなり誰かに依頼すべきだったのでしょう。
もしくは、緊急でベラ子陛下またはマリアリーゼ陛下に連絡を取り、この私…マルハレータ自らの黒薔薇能力解放を依頼するか。
しかし、南洋王国の風習…いんちきめいた魔術やら何やらはもはや廃れる傾向にあり、娯楽としての占いなどにかろうじてその残滓が残っている程度なのを、メフラウやアニサからは教えられておりました。
すなわち、食うに困った呪い師の直訴程度であろうと。
ですが、私はその時、カリマンタンという島の名前に覚えがなかったのです。
まさか、痴女島の古語、そして別名であるとは…。
「ただねぇ…こいつのヤサにいきなり行くべきだと思う?」車を走らせながら聞いてくるディード。
「なーんか、ちょっと臭いますよねぇ」
「まぁ、図の場所からすると下町だしねぇ…臭いはする場所よねぇ」
「それちょっと違う気が」
という訳で、差し当たりその近所まで行ってみて、カーティカとリモニエディーネを使者に出して、真意を探ることに。
で、我々は少しだけ道を外れると、駅の手前の貧民街となっている場所の表に車を停めます。
ここから先は道が狭いので、二人をここで降ろすことになります。
「では、行って参ります」
「もし何かあれば救出の用意をしておいて下さい」
と、祭りの夜というのに薄暗い貧民街の中に入って行く二人。
ここも移住を進めて改築していくべきでしょうかねぇ…などと考えておりますと、ディードが申します。
「まぁ、真面目な請願か何かなら普通は代官のところを訪ねるわよねぇ」
「ディード、これは何かあると思っていますね?」
「そりゃそうよ。私がこの紙切れに気付かなかったもの…」
「逆に認状を出して、王宮に直参させますか」
「何でもかんでも王妃…いえ、恐らく二代目女王に請願すれば通る先例になりかねないから、その辺はカーティカの聞き取り待ちね」
(カーティカです…留守ですよ)
(リモニエディーネ。使者だけで局長代行閣下が同行していないと知って姿を隠した可能性がある。そのクヤンなる者の気配を探れ)
「マルハに接触した時点でそのクヤンの固有個人データ、マルハの聖環が収集しているはず…ちょっと見てみて」
はいはい。
え…パラシックなる者の名前がそこには出ていました。
Palasik パラシック Male Visual. 男性外観 Penduduk Biasa Blok Utara Yogyakarta. ジョクジャカルタ北町居住民 Governor, South ocean administrative bureau. Imperial of Temptress. 南洋行政局
ですが…明らかに、その者は女性だったはず…。
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「ダメですね。そもそもクヤンって名前の住民、聖環持ちにはいません」
「図に書かれた住戸の近隣の住人に聞き込んでみましたが、確かにまじない師は住んでいたが近年は姿を見かけなかったと申しております」
「ディード、確かジョクジャカルタ北町、そもそも聖環持ちでなければ住めないはず。メフラウがジョクジャカルタを実質支配し始めてから、順次聖環を支給して行ったはずですよ。更に未支給者がいないか定期的な巡回をしていたかと」
「ふむ…デルフィリーネ、グロンストラーネ、聞いた?」
(ありえない話よ…あの廃地の黒魔術師ですら存在だけは把握できてたんだしね…)
(了解。グロンストラーネは今刑務部戻りだっけ?)
(ヤー、オーキディアーネと引き継ぎ中)
(あー、編笠民兵国の子か…まだ引き継ぎ途上だよね…)
Orchidiane(Nguyễn Thị Hương Lan 阮香蘭) オーキディアーネ million Suction. 百万卒 Slut Visual. 痴女外観 Black Rosy knights, Imperial of Temptress. 黒薔薇騎士団 Prison department Manager, Imperial of Temptress. 痴女宮警務局刑務部長(部付)
(ペルセポネーゼ団長、ディードリアーネです。ちょっと黒薔薇または紫薔薇による特定人物調査の依頼をして良いですか? 南洋行政局警備本部管区で不審者事案発生。聖環未支給者らしき人物が警備をかいくぐってマルハレータ行政局長代行に請願と委託物を手渡しました)
(了解。黒薔薇資格者3名がいて気付かれない件だけでもディードリアーネ南洋警務局長要請は正しいと思います。今はシュバルツェーネが動かせるか…)
(あの子も欧州分団、ジョスリンと交代して本宮帰投でしたね)
(ネー。そちらへ行かせます。車の側でいいですね)
(お願いします)
うわっ、話早っ。
そして小柄な黒薔薇服の方が、間を置かずに現れます。
(黒薔薇騎士シュバルツェーネです。マルハレータ局長代行、聖環データ並びに本人の視覚情報はこちらに既に来ています。ディード、橙騎士団の千人卒、可能であれば何人かこちらに寄越すのと、可能なら街道沿いに非常線か警戒配置。いける?)
(こちらディード。マルハ、宮殿の待機騎士も何人か引き抜きます。いいわね? 当番の本院騎士は…セランサリーネ、ジョクジャカルタから不審人物が移動する可能性がある。参拝街道の警備拠点の警戒度を上げるのと、可能なら各拠点に臨時増員)
(セランサリーネ了解)
(じゃディード、私は該当居宅の周囲をもう一度洗います。痕跡の見落としがあるかも知れないから)
そのシュバルツェーネという人、あっという間に消えてしまいます。
(ディードリアーネさん、話はこっちにも来ましたわ。念のために偵察機飛ばします。ジョクジャカルタ上空で何かうるさいかも知れませんけどな、苦情出たら説明お願いします…JA0425,JA0334, M-IKLA-21take-off clearance delivery.)
ええ、エマニエル部長からも心話が来ました。どうも、空から探す方法でもクヤンとやらの足取りが追えるかを試すようです。
うーん、何か大ごとになって来た気が…。
そして、普通の人にはあまり気付かれないかも知れませんが、私の耳だと確実に聞き取れる轟音がジョクジャカルタの上空を一旦通過、そして海の近くくらいまで出て反転して来たのでしょう。
青と赤の光を灯した何かが3つ、低空を低速で舐めるようにして接近して来ました。
(TAISP Suface tracking data start recording. Infrared image, clear...)
(Bracelet not wearing tracking data start search, clear...)
(Tachyon radiation exposure...clear...)
(ふふふふふ、うちならこれくらいは楽勝…)
(エマ子、しかし酷道425号や334号はまだしも、カリバーンの超光速粒子スキャニングですら発見できねぇのならちょっと頭を抱えるぜ…以前の幽霊騒ぎの時でもDA42と62のセンサーだけでなく鈴鹿御前さんとおかみ様まで来てもらって探したからな…)
(あれも結局有耶無耶やったんですわなぁ。初代様がベラ子かーさまの中で滝汗どばどばやったんはともかく…)
(わわわわわわたくしはなにもしてませんわよっ)
(しかし初代様、これちょっと洒落にならん話ですよ…)
(まぁあたくしに任せなさい。ちとマリアヴェッラから離れますわよ)
(やったー戻って来なくていいですー帰ってくんなー)
(そんなんだからなかいティアラに嫌われるのですよっ)
(このおばちゃんは、今のあたしに一番応えることを…)
(ちょ、ちょっと初代様何を!)
へ。
なんかものすごく身体が重くなった気が。
(あー狭い狭いっ。マルハレータとやら、おとなになってくださいませんか?)
ほえ。
言われるなり、私の身体がベラ子陛下に近い身長まで伸びてしまいます。
私の大人形態よりも更に大きくされた感じ。
つまり何ですか、私は今…。
(マルハレータ、あなたは今聖院金衣同等以上の状態です。即ち、魔術師問題とやらに決着がつくまではこのテルナリーゼが貴女の身体に同居すると思うように)
はぁ?
(マルハちゃん…そのままの方がティアラちゃんより遥かに強い状況ですよ。何ならそのおばちゃんとずっと)
(マリアヴェッラ…あたくしが窮屈ですわよ!)
(マルハちゃん、そんな訳で悪いが、初代様と当分暮らしてくれ。初代様もベラ子ほど無茶が利く相手じゃないの分かってるでしょうから、お手柔らかに…)
はぇ…。
(でまぁさっそく。その魔術師か何かぞんじあげませんが、書いたものを広げてごらんになって)
え。
(図が…消えてます…魔法でしょうかね…)
(この界隈でまじゅつを使えば、たちどころにあなたがたの聖環がうるさくなるはずですわよ)
(…恐らくそれ、女官能力を使ったら色が消える類のインキで書いてますね、この事からもうちらの能力を知ってる奴が相手って気がします)
どういう事なのでしょうか。
(今、体温が50度なり60度なりにまで上がってる騎士がそこにいて紙に描かれたものを触ったら、そのインキの色が消えるんだよ。確か昔の聖院で女官室内の温度が上がり過ぎなのを警告するための張り紙に使われてたはずだ。原理は消せるボールペンのフリクションインキに近いな)
なるほど…一種の手品、だまし技のようなものですね…。
(あれですか…聖院かんけいしゃのかのうせいもありますわね…ですが、手はあります。マリア、紙とまじっくいんきを。あとにじむと困りますからしんぶんし)
(へいへい…)
で、私の体が勝手に動いて、紙の上に書かれた文字…読めませんっ。
Socii huius familiae chartam hanc ad Yogyakarta Palatium adducere debent.
Teruko Tanaka.
(なんで球根詐欺のくにの王女がらてんごをよめないのか……ああ、若いからですか…)
(大学はまだ早かったのですよ…)
(聖院第一公用語で、このいえの者はこの紙を持ってジョクジャ宮殿に来ること、とかいておいたのですわ)
(それは良いのですが田中照子とは…)
(わたくしのよめやくは内務局長の田中雅美でしてよ…これだけはなんとかならんのですかマリアリーゼ!)
(初代様が雅美さんを孕ませたり、挙句雅美さんに孕まされるからです!)
そんな過去が…ああ、ペルセポネーゼ団長が言ってましたね、日本人扱いされるって…。
Tellnaliese Tanaka. (Nammu) 田中照子 Primitive ocean Goddess, in Sumer. 原初海洋母神 Slut Visual. 痴女外観 Purple Rosy knights, Imperial of Temptress. 紫薔薇騎士団 Secretary Advisor, Imperial family, Interior Bureau. 内務局皇帝室顧問 Goddess of Mercy lineage of holy temple. 金衣皇統 Sumerian Goddess. 原初海洋神族
Masami Tanaka. 田中雅美 Million Suction(Limited Ten million)百万卒(限定億卒) Slut Visual.痴女外観 Purple Rosy knights, Imperial of Temptress. 紫薔薇騎士団 Secretary of the Interior Bureau. 内務局長 Sumerian Goddess of Mercy lineage of holy temple. 原初海洋神族系譜縁者
Persephonē Tanaka (Ereshkigal) 田中ペルセポネーゼ million Suction.(Limited Hundred million Suction)百万卒(限定億卒)Slut Visual 痴女外観 Commendatore, Black Rosy knights, Imperial of Temptress. 黒薔薇騎士団長 Goddess of Mercy lineage of holy temple. 金衣皇統 Greek Goddess. 神話半島神族
(この縁組を通さないとあたしが皇族扱いされないんですよ…初代様も我慢して…)
(まぁしゃあないですわね…。なお、ネメシスですけど…げひゃひゃひゃひゃ!)
Nemesis Tanaka (Νέμεσις) 田中ネメシス body restricted person 身体機能制限者 Greek Goddess. 神話半島神族 Slavery processed holy temple. 聖院隷属処理者
(うるせぇ笑うなっ。ぐぐぐ…このワタシともあろうモノが、田中雅美に憑依したのがこんな辱めと隷属の原因になるとは…あのなぁ田中雅美とナンム、これだとワタシはニホンのビクニコクの神の下位に来てしまうらしいんだが…)
(ほほほほほ、放り出されたくなくば痴女皇国のためにろうどうするのですわよっ。で、ネメシス…ふくしゅうの紙であるそなた、このかんづめちゃんの身体に何か感じなくて?)
(紙扱いとはなんたる屈辱…覚えとけよナンム…で、この缶詰王女が中井ティアラを泣かせたいのはわかるんだが、ふむ…ナンム、あんた、この地の由来のなんかに思いっきり恨まれてないか? またはあんたの子孫…聖院金衣とかいう連中だ)
(そのかのうせいがあるから、わざとおびきだすのですわよ…聖院第一公用語を理解する者ならば、ますますもって出自が怪しいでしょう)
で、私の身体、これまた勝手に動いてそのボロ長屋だか何だかの戸に、紙を貼ったのですが。
(あと、初代様ですか…おそれおおい話ではございますが、なにとぞ缶詰扱いは…)
(やきゅうの球団を買い戻せばゆるしてさしあげますわっ)
(初代様それ連邦世界の日本の話です…)
(まぁ、これでえさは撒けたもどうぜん。あとはさかながかかるのを待つだけですわよっ)
あの、どうでも良いのですが、以前に拝謁させて頂いた二代目様よりも更に強引な気も…。
(おばちゃんはわがままなのです。ティアラちゃんを泣かせたいのなら今は従うのです…)
(そんなぁあああああ)
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そんな訳で翌日です。
(なんですの…マルハレータ、あなた方は朝っぱらからあれを致しておったのですか…)
ええ、ジョクジャ宮殿とボロブドゥール寺院名物の朝の勤行または朝礼です。
未成年の方には間違っても何をどうしているのか書けない見せられない、あの行為です。
(いえいえ、大変にきょうみぶかい話。しかもおかまを焼け死なせるのはなかなか、わたくしのごきげんに染みる話ですわね)
(マルハちゃん…そのおばちゃんはいけにえ大好きなのです…だから怒られたのです…)
困った方だったのですね。
それと、困ったと言えば朝食。
このジョクジャ宮殿の女官舎の朝食ですけどね。
パン派が多いのです。
影響の理由。
メフラウ・私・ディード…。
ええ、パンを食べていた食事の習慣を持つか、痴女宮女官寮食堂経験者が朝パン派なのです。
ところが初代様はお米を所望されます。
しかも、この宮殿では出そうにも出せない日本食とかいうもの。
そこで私は、早速にもボロブドゥールの地下でお休み中のメフラウ・オリューレに恥ずかしながらも助けを求めることにしました。
(メフラウ。日本食とやらの調理経験者の手配や器具、更には食材調達を進めるべきでしょうか)
(あれは麻薬です。あれを出すと喧嘩になりかねないから私は敢えて南洋行政局管内から醤油はまだしも味噌の普及を制限していたというのに…二代目様。白いもんを欲しがる身内が)
(銀シャリを欲しがる母親にはそこらへんのタイ米でも食わせといて良いですわ…母様も無茶、言わんといたげてくださいな…)
(食べる時だけ雅美さんや娘さんたちに憑依してるのは内緒で)
(マリアヴェッラ…ひとの家庭の事情をばらすと泣かしますわよ!)
「まぁ、泣かないでくださいよ…」
で、パンにジャムにジュースに珈琲淫牛乳の食事を終えます。
あ、目玉焼き…これ、聖院学院の校外学習で羽合すなわち布哇に行かれたマリアヴェッラ陛下が現地やその付近に鶏を持ち込んだ際、ついでに流行させたそうですね…。
そしてこれはむかつく話ではありますが、あの憎っくき中井ティアラの父君が製法を伝えた豚の燻製肉の薄切り、あれを下敷きにして焼くと美味いという事で調理法が広まってしまった経緯があります。
そして南洋系の辛い食事の辛味を和らげるとあって、目玉焼き自体は割と出る部類のおかずです。
(王宮でも警務隊舎南側の裏門前の空き地に家畜舎がありますが、そこでも足らないからアジスチプトの近くで鶏と豚を飼っていると説明なさい…)
メフラウ、寝ておく方が。
(マルハ…来たわよ、その魔術師。それと初代様、そのクヤンはパラシックなる偽名も使っておったようですが、これとて須磨虎島に伝わる悪霊化した魔術師の事です。嫌な予感がするのですが…)
(あらオリューレ、あたくしをどこの誰かと。言うならばこの南洋かいわいの悪鬼羅刹のたぐいも出所はこのあたくしでしてよ。ちょっとあなたがたの目を誤魔化せたくらいで何をいい気になっておるのやら…良いでしょうマルハ。謁見を申しつけなさい。このわたくしが見聞して差し上げます)
えええっ。
(ただねぇ…ちょいとだけいたずらしてみましょうか。きのう乗ったくるまの中に、ティアラからもらったおしお、忘れたままでしょ。あれ、取りに行かせなさいな)




