南洋残酷ものがたり〜缶詰王女奮戦記〜・2
ふぐぅっ。
(それ、聖院第二公用語話者かジャポネは絶対に言うよな…激烈とか激しいという艦名なんだが…)
で、その…フランシ以外にはそんな勇猛な名前に思えなさげなフグー号なる、空に浮かぶ巨船ですが。
一体全体こんなもの、何のために。
それに、この軍艦フグー号とやらの所属、フランス王国ではなく共和国海軍、とコープシェフ・ジョスリンが申された件も少しばかり、気になるところではあります。
「今から少し、楽しいことをしようと思ってな。ま、とりあえずは乗艦しよう」
で、私は地面すれすれにまで降りて来た板に、てくにかる号とかいう南洋行政局に与えられたピックアップトラックなる南洋行政局のくるま、載せます。
更にはディードも、同じてくにかる号…潰され号とか丈夫号という言われ方もするそうですが…を載せてしまいます。
潰され1号車 潰され2号車
まるは●(じょすりん) でぃーど●(りんど)
あまん りもにえ
で、今回の潰され号、機関砲なる連続発射可能な大砲というか鉄砲を荷台に取り付けています。
もう、これだけで現地に行って何をするのかわかりそうなものですが、コープシェフ・ジョスリンはさらにとんでもないものを持って来させていました。
「リンド。お前にはこれの後ろに入ってもらうかもわからん。今から私が乗り込むから手順を履修しろ」
なんですか、このごっつい大きな人形みたいなもの。
その上の部分が大きく開いていて、そこに人が入るのはコープシェフが実際に実演してみたことで理解できました。
そして、乗り込む際にはこれに乗るための専用の服を着ておく方が良いようなのも。
「これは…そうだな、人間が乗り込んだらその動きを模倣するゴーレムのようなもの、と言えばプランセスには理解できるかな」
と、今度は同じ人形の穴の前の方に体を潜り込ませるコープシェフ。
その着ている服、人形と同じで暗い青色のような感じのまだら模様で、手の指先から足のつま先までの全身を覆ってしまうようです。
更には頭には変な兜のようなかぶりものまで。
(ほれ、こんな感じでコクピットハッチを閉めて立ち上がると…)
ええ、やたらめったらゴツゴツしていますけど、人の形をしているようなしていないような。
どうも何かのからくりも動いているらしく、背中の背嚢めいた部分からやたら低い音もしています。
そして、この人形が立ち上がれるだけの高さがあるのですね、この船の船倉。
見れば、鳥のようなもの…痴女皇国が人を乗せて空を飛べる何がしかを持っているのは知っていましたので、恐らくそうした目的で使うだろう鳥型のからくりも、その船倉の奥の方に幾つもいるのが見えます。
で、再びそのからくり人形がしゃがみ込むような動作をすると、再びふた部分が開いてコープシェフ・ジョスリンが出て来ます。
「こいつはTAPPS06…通称をアルルカンと言ってな、フランス陸軍と海兵隊や宇宙軍に連邦宙兵隊でも採用例のある…そうだな、人間よりははるかに大きいんだが、一種の甲冑だ。このゴーレムの中に乗り込んだ私が手足を動かすと、その動きを真似すると思ってくれ。それと、今の状態では信じられんだろうが、こいつはある程度の速さで空も飛ぶんだ。今回の作戦では否応なくその姿を見てもらう事になるだろう」
見れば、その…フランス語でハーレキィンと名付けられた人形も、いくつか立ってますね。
「で、プランセス他、諸君に紹介しておこう。escadron volant…通称遊撃騎兵隊隊長のリヴィエラ・ポワカール嬢と副隊長のヴェロニク・ポワカール嬢だ。通常は連邦世界でのフランス共和国内の作戦に従事しているが、今回は痴女皇国世界の見学目的もあって当作戦に参加頂く事になった」
ええ、コープシェフと同じような服を来た二人のフランセフラウが。
同じご一家の方のようですが、まるで血がつながっているようには思えません。
「ボンジュール、マダム エ マドモアゼ…ご婦人方。マドモアゼル・ディードリアーネはヴァンセンヌでお会いしたでしょうかね」
「ハジメマシテ、プランセス・マルハレータ…私たちについては可能ならば、後でどこの誰かをお教えするか…コマンダン・ジョスリーヌがお教え下さいますわ」
むむっ。
どうも、いわゆるエライサンの視察の臭いがします。
いえ、オランダ王族でもある私が言えたこっちゃないのですがね。
で、とりあえずはこの船、出航前にあることをするそうです。
船橋部にお邪魔すると、そこの窓から見えるのは広々と広がる甲板と、南洋島の東の方角の高い山々…その先に茸島や、今回の作戦標的の一つであるマドゥラ島もあるはずです。
で、その明け方の光景の中、コープシェフが船長らしき人に何かをフランス語で伝えると。
この船の船首部左右から、閃光とも言える炎が上がり、白煙とともに何かが上昇していきます。
その数は、ふたつ。
(プランセス、教えておこう。あれはエマニエル国土局建設部長から届けられたものでな、駄洒落菌を含有した鬼細胞を詰めたタンクをいくつも積んでいる。モノ自体は痴女皇国世界のパリ、わけてもオルリー宮殿とヴェルサイユ宮殿上空で恫喝の火の玉を見せつけたものや、はたまたポルトガルだのバスクだのに偽女種病を撒き散らしたもの、まさにそれだ)
えええっ、と思いかけましたが、駄洒落菌と聞いて、私はある悪だくみに思い至りました。
ええ。いうこと聞かない悪い子にはおしおきを。
いうこと聞かないマドゥラ族にも、お尻ぺんぺんすべきですね。
(ま、そういう事だな。ふふふ…聡いプランセスに教えておくと、あのSSBM-20ドラメという大砲の弾は、今回だとマドゥラ島からスラバヤにかけての地域の朝方、皆が野良仕事だなんだと動き出した時に時ならぬにわか雨を降らすだろう)
ま、もちろん…ただの雨じゃありませんよね。
(もちろん、聖母や慈母の教えに背く者に懲罰を与えるための雨だ。今回の雨はだな、女たちには赤子だろうが老婆だろうが、美しく育ったか、あるいは美しく若返らせる素晴らしい効き目をもたらすだろう)
(とても素敵な善行ですね)
(ふふふ、女たちにはな。だが、男も美しく若い女になるとなったら、果たしてどうか。しかも男だと兵士が主な生業の連中だ。自分たちを戦士として見てくれるか。そして、当たり前だが見た目の器量こそ絶品だが体は普通の女の股間に、逸物なんざ生えてるかね?)
(ま、私たち痴女種か、さもなくば偽女種でなきゃ期待はできませんね)
(そういう事だ。むろん、救済策はある。まず、この雨が効くのはマドゥラ語を話し、そして慈母寺への参拝実績が一定以下…即ち、尼僧の世話になった経験がないか極めて少ない連中だ。そしてマドゥラ語を忘れ聖院第二公用語かジャワ語を喋ると誓うか…さもなくばジボカンノンを崇めて尼の世話になるか…そう、女に変わった理由がジボカンノン・ブッダの仏罰だと我々がこの後で教えて差し上げるわけだよ)
(くくく…コープシェフもお人が悪い…つまり、南洋王国の標準の言葉をしゃべることをちかうか、さもなくば我々に忠誠をちかうのかで男にもどれるようになっているのでしょう?)
(それと、マドゥラ島はマドゥラ族の自治にある程度は任せた方がいいとは思わないかな、プランセス)
(そうですね、島に押し込んでしまいさえすれば、あとは彼らの人生。そして、田畑にしづらい島でも、わたしたちには何かの代わりを教えることができるでしょう。わたしたちが米をあげる代わりの交換品を作ってもらえるならばそれで取引は成立するでしょうね)
(で、己の罪を悔やむかジボカンノンを信じない不信心を詫びる心があれば、まぁ男には戻れるだろ。ついでに若返るか年頃の男に育つかすれば、労働力は増えてお得にもなる…だが)
(祈るだけじゃダメなこと、仕掛けましたね?)
(そうだな、戦闘の知識があって逆らう気が特に強い者…つまり、昔の南洋王国に兵士として取り立てられた経験者については女のままで据え置きだ。この手合いは恐らく何十人かは出てくると思うから、まぁ十人くらいは女のままでいてもらって、とりあえず南洋慈母寺の尼僧かジョクジャ宮殿の女官養成の流れに乗せてから「代官としてのベンキョウをすればマドゥラに帰れるぞ」として差し上げればいいだろう。ついでにCoqが生えるから女になったことを嘆かなくとも良くなるだろう)
ええ、なんたる悪徳。
無理やりに女にしてしまう上に、こちらに従わないならば女のまま。
つまり…ジャワ人なり他の人種に種をつけてもらわないと、子供は残せないのです…。
または、恭順を願い祈るか、ジャワ人の言葉を話すように心がけないと男には戻れないのですから。
こんな事されたら、どんな国でも降伏するか…もしかするとエンゲルスマンが言うような騎士の誇りとやらでもあれば、最後の一人になるまで戦って死ぬかも知れませんけど。
そう。
まさに、こちらからは誰一人、直接に切ったり刺したり大砲や鉄砲で撃ち殺す事なく、いくさに勝ったも同然の状態にできたのですから。
ええ…スラバヤの方角から、次々に驚愕と悲嘆、そして怒りの感情が流れて来ましたから。
元から女だった連中はその時は喜んでいたようですが、自分の亭主や息子が女になったのを知って驚くやら嘆くやら泣き叫ぶやら。
ええ…我が妹のウィレミーナ、祖国に帰還しようとした際に拒まれた場合は、これと似たような手口で我が父母から国民の赤子に至るまでをいくさが出来なくするも同然の仕打ちにしてしまうそうです。
そして、動き出した船の中で、私は橙騎士団長正装となったディードの後ろに控えるエライサン役を演じるよう指導されます。
むろん、私も南洋王国王妃冠つきの宮殿騎士団長典礼装備。
(マドゥラの民よ、我は南洋王国…そして南洋慈母寺騎士団を率いているディードリアーネだ。この度、慈母観世音菩薩の教えと慈悲に背きジャワ人を害し仏徳を拒むお前たちに仏罰が下ったとの報を聞き、スラバヤの港を目指している最中だ)
(貴様たちに下された仏罰は、マドゥラの民は我が慈悲を拒む故、マドゥラの民ではなくなるよう病を与えることであるとの託宣があった。即ち、マドゥラの言葉を話すのみならず、南洋王国のスカルノ王と…ここにおわすマルハレータ王妃のお二人を新しき南洋の王家にあらずと思うものは、余さず若い女にされたのだ)
(これが何を示すかはすぐわかるだろう。もはやお前たちはジャワ人なり茸島人なりの男を頼らねば、自らの子孫を残せぬ身と成り果てたのだ)
(だが…我らはあまりに無慈悲なこの仕打ちに許しを願い出た結果、そなたらが掟を守るならば元々の男は男に戻れるというお告げを頂いたのだ)
と、さりげなくもここで対象…マドゥラ人への慈悲と同情を示す言い回しに切り替える、ディード。
(そなたらが守り従うかは別だが、我らとて如何な理由があれど、かかる厳しき仕打ちを黙って見るには忍びん。そこで、ここな王妃様が慈母観世音に赦しを祈ったところ…王妃様)
で、私はそこでディードと交代してかめらとやらの前に座ります。
(マドゥラの民よ、そなたたちの苦難を和らげるか、あるいは消すためのお務めを慈母観世音菩薩様はお求めであると申しておられます。今からそれを順に告げて参りますので、よくお聞きなさい…)
(まず、第一の条件はマドゥラの島の水。この、おなごになる病ですが、そなたたちが愛する故郷であるマドゥラ島の水を飲み続ける事で和らぐとのお告げを受けました)
これ、まんざら嘘じゃありません。
急に年寄りになって焼け死ぬ、偽女種のあの死に方が嫌ならマドゥラ島に撒いた駄洒落菌混じりの鬼細胞を含む地下水の水を飲む方が良いのです。
(ですが、慈母観世音に背く心は許し難いとの厳しいお言葉も頂きました。従って、そならたらがマドゥラ言葉ではなくジャワの言葉を使うか、マドゥラに我らが築く慈母寺に足繁く参じて慈母観世音像を拝めば罪を更に一等減じ、男に戻る者も出で現れようとの仰せです)
で、ディードと私のこの広域心話に対する反応。
まぁ半分以上は、「ふざけんな」でした。
しかし、ディードとコープシェフは、マドゥラ人の傾向からして、最低半分は黙って従うような生易しいタマではないと予想していたのです。
そこで、スラバヤ一帯からマドゥラ島にかけてのあちこちで、空中に留まる鳥のからくりを介して映される衝撃の映像を披露。
それは、亀地獄島で焼け死ぬ偽女種の姿でした。
ですが、Pikは処理をして見えなくしてあり、傍目には若い女が倒れたと思ったら自ら焼け始めて死ぬ凄惨な映像でしかありません。
(これが…そなたらの故郷たるマドゥラ島の水を飲まなかった者の末路です…疑うならば、スラバヤに住むマドゥラたちよ、スラバヤの水を飲み続けなさい…私が言う事が嘘かどうか、己の身を以て知るに三日とはかからないでしょう…)
で、これをいつものマルハちゃん節(バイナームの変更は半ば諦めました)で言うと。
「てめぇらがあたしの言う事信じなきゃ信じないでいいんだよ。黙ってくたばりたきゃそのままスラバヤで暮らせ。ただ、三日とは生きていられないから、後の家や財産や田畑はそっくり慈母寺に寄付された形にして頂いてやんよ」
まぁもちろん、こんな本音ぼろぼろこぼした言い方、いくらなんでも聞かせる気はありません。
アニサじゃあるまいし。
(こら待て。あたし何か言ったか、このあばずれ白豚)
(あたしがディードの後ろでとりつくろって神妙にしてた姿見てバカ笑いしてたでしょ、この土人…ただ、次はあんたの番だから身だしなみはきちんとしとくのよ…)
(うう、あんたがあたしの影武者とか身代わりしてよ…白くてもいいから…)
(黒薔薇騎士団入りしたら変身変装能力もらえるよ。ほら頑張って、大人の体固定にしてもらったんだし…)
全く、なんだってこの私が、アニサなんぞを慰めなきゃならんのか。
しかし、別の機会にお話することがあるかも知れませんが、私がアニサを心底不要って思ってあれこれしたら厳しく罰せられるのと同様、アニサはアニサで私と完全な仲違いはダメって言われてんですよ。
ええ、私とアニサは互いをいらねぇって言えないんです。
そしてね、今のでわかると思いますが、最近では私が折れるよりアニサが折れることが多くなってます。
これはアニサの心境の変化っちゅうやつでしょうか。
で、他の女官役の尼僧にお色直しめいたお化粧だの諸々をしてもらい、見違えるようになった助平服の女、いやもとい大僧正正装のアニサはボロブドゥールの本院屋上の慈母観音像を背景にして立つ姿を投影画面とやらが映ってるところに披露します。
うん、いい感じに「どう見てもこいつがこの中じゃいちばん偉い」って誰もが思ってくれそうな姿になってますね。
(マドゥラの民よ、此度の仏罰が骨身に染みた者のために、申し訳ないがそなたらの故郷たるマドゥラ島の要所要所、既に慈母観世音をお祀りする慈母寺を用意させて頂きました)
で、かめらはマドゥラ島の中のいくつかの集落のはずれに、こつぜんと現れた慈母寺と、その建物を前にする尼僧や尼騎士数名の姿を映します。
ええ、お前らが腹いせに慈母寺を攻めようとしてもお見通し、準備万端に返り討ちの用意をしてるでという意味もあります、尼僧騎士が写っている理由。
(男に戻りたき者は遅滞なく慈母寺を目指すのです…尼僧に嘆きを伝え、赦しを乞えば取り計らえと、このアニサが尼僧たちには指示を与えております…救いを求めるならば急ぐのです…)
で、スラバヤ近郊とマドゥラ島の地図が表示され、その地図の上に赤い点滅がいくつも光りはじめます。
で、この三文芝居めいた一面もある一連の懲罰儀式。
実は、マドゥラの連中は聖環装着を拒否しているやつも少なくないのです。
そして、1南洋ルピー=1マドゥラとした独自のお金を作ることすらやってます。
で、こいつらに聖環つけさせるためにも「こうすればいいのでは?」と出された案を採用した一面もあるんですよ。
そう…マドゥラ人にとっては、こどもを残せる道を選ぶか、てめぇらで自分の国めいたもんを作ろうとする動きを続けようとするかの二択なんです。
まぁ、マドゥラ人には悪いのですが、南洋王国の一地方に生まれて勢力を拡大してきたこと、ここに来て運が悪かったねとしか言いようがありませんね、私の本音じゃ。
ただ、南洋王朝がマドゥラ人を重用して取り立ててたいきさつとか考えると、私の中じゃちょっと面白いこととして別の形で継続してあげてもいいっかなーとか思ってるんですよ。
形にするには、もうちょっと考えさせて欲しいんですけどね。
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で、スラバヤの港に入港したフグー号。
改めて見ると大きすぎます。
ただ、メフラウやコープシェフいわく、全く同じ寸法のテンプレスとテンプレス2世というものが痴女皇国にいて、それがスラバヤに寄れるように作られた岸壁があるのだそうです。
そして、フグー号からはさっき見せられた鎧人形…アルルカンが何機も飛び立っていきます。
このアルルカンは「まだ男のままで残っている」マドゥラ人がいないかを探しに行ったそうです。
そう…赤子ひとりに至るまで、マドゥラ人の男は一旦は「この世からいなくなる」のです…。
さらには、フランス共和国なる国…王様がいなくなったらしいのはわかるのですけど、そのフランシの国にも痴女種が手を伸ばしていて、このフグー号に乗っている兵士はもちろん、船長や乗組員のほとんどが痴女種なんだそうですね。
で、このフグー号、アルルカン以外にも兵隊を送り込む手段を持っているらしくて、濃い紺色まだらの飛行機とやらが痴女種の兵隊を何人も乗せては飛び立って行きます。
ええ、真剣に真っ剣に痴女皇国に逆らわんでよかったと私は思いました。
と同時に、これだけの兵隊と武器を思うままに使役しているコープシェフ・ジョスリンに許された権力の大きさにも思い至ります。
(なるほど、そこに目がいくのか…プランセス、統治者の血は争えないと言うべきかな)
(この兵隊さんたちへの階級ごとの給金とか、やはり考えてしまいますねぇ。あとこの船を建造する費用とか)
ええ、土人どもに比べて私に利があるのは、この軍艦と、載っている兵器は決して魔術や魔法使いとか悪魔の部類じゃなくて…悪魔に近い堕天使ってのが痴女皇国にいるのは知ってますけど…あくまでも人が作り使っている部類だと一応は理解できていることでしょう。
なんとなれば、決して安くはないだろう、これらの建造製造に必要なお金や維持費用に考えが向くのは、私が国をひきいる立場になったら「これがあると絶対にいろいろはかどる」と思ったからなのです。
ええ、こいつが使えるなら…ま、スパーニェが抑えてる領土くらい、すぐに私のものにできるでしょうね。
(まぁ、どんな富豪といえどこれだけの兵力を維持するには金が足りんよ。国という仕掛けは絶対に必要だ)
(ですよねぇ…しかし…当初のサボりにならずに本当に申し訳ありません…)
(いやいや、DGSE…私の祖国で、まさにこういう海外出動を生業とする兵士にとっちゃ、いい訓練の場でもあったんだ。私にしても、たまには現代戦まがいを指揮していないと頭が鈍るんでね)
なるほど。
このコープシェフ、職業軍人という言葉がぴったりくるのです。
その考えとか行動って、たとえば今やってるようなマドゥラを占領してマドゥラ人を支配しろとかいう命令を受けたところから始まる人なのですね。
で、私であればマドゥラを別の植民地総督に任せるか、さもなくばマドゥラ人の根絶やしを図るか。
要はマドゥラ人とマドゥラ島から税金や収入がどれだけ得られるかを考えていたと思います。
「さて、この後どうするかだが…」
「私に考えがあるにはあるんですよ。今、女になったマドゥラ人で、反抗心が一番高いやつから十人くらいは集めたいなって言ってたでしょう。そいつら、それだけ反逆したがっていたということは、おそらく全員が兵士身分じゃないかなと」
「なるほど、代官ならばかえって任された土地やら自分の溜め込んだ財産やらにこだわるから、新しい領主に媚びへつらおうとしそうなものだな」
「つまり、うまくすれば南洋王国の騎士を産ませる仕掛けに使えると思うのです」
「なるほど、なるほど。これまた王女様らしいお考えだ。つくづく我が共和国があの童貞野郎に革命なんぞを許したことや、王は王で貴族の権力を完全に削げなかったなどなど、フランスの過去の過失を残念に思う一瞬だな」
「なるほど…フランキレイク王は王座を追われたのですね。うちの国なんかどうなんでしょ」
「オランダは王制を維持してはいる。ただ…多くの王制国家がそうであったように、王は象徴となり、その下の議会とその長が国政の舵取りをするようになったのだ」
「はぁ…」
「イメージが湧かないようだな。我がフランス共和国は、今度大統領選挙を行うが、この大統領という制度は、いわば民選の王を選ぶ儀式なのだよ。王は血統ではなく、その政治方針構想を国民に通知して王の候補となることを告げ、選挙に望むのだ」
「民衆が王を選ぶのですか」
「で、選ばれた現在の王…実は私の上司のミシェル・ポワカール閣下がそうなんだけどな、王は議会や首相を従えて4年間、フランスを統治する。そして国民の評判が良ければ、もう4年延長されるのだ。つまり王たる期間は8年の制限があると思ってくれ」
「興味があるなら、聖院学院の通信講座受講をお勧めするわ。あと、マルハレータ王女の勤労・学習意欲が認められればブカレストの歴史差異研究室へのアクセス、承認したげるわよ」
「おや、マダム・マサミ」
ええっ…いつの間に。
そこには、紫薔薇騎士団制服を着たヤパン女性が。
「ジョスリンに呼ばれてね。あたしは転送許可、割と簡単に降りるから。えーと、面識はないかな。痴女皇国内務局長兼情報部長の田中雅美です。プランセス・マルハレータ…よろしくね」
と、握手される黄色い肌の女…いえ女性です。
ええ、メフラウ・オリューレの陰の支援者の一人で、痴女皇国の首相とも言うべき要職者のはず。
これまた、今の私では逆立ちしても勝てそうにない人です。
「でも、役立つアイデアは出してくれるよね。だから、頑張っているお姫様を助けに来ました。そうね…マドゥラの今後の扱いについてだけど、いくつかの案は出せるわよ」
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まるは「えらいひとがきました」
カエル女「偉い人が来たというが、実はリヴィエラ嬢とヴェロニク嬢はだな(ごにょごにょ)」
まるは「えええええ」
まさみ「まぁまぁ、で」
じょすりん「マサミ=サンが来るところ、ショタノニオイアリ」
まさみ「ふふふふふっ、青臭い少年の臭いは隠せないのよっ」
まるは「しかし、マドゥラ人は全員、女に…」
まさみ「何もマドゥラに全てを求める必要はないと思うわよ。むしろ自給自足させちゃダメなの…植民地方式だとね…」
じょすりん「今のマサミ=サンの顔はものすごく悪人です、読者諸賢」
まさみ「でね、ヒントをあげましょう。マドゥラ人は実はジャワ人の近似種族です。つまり、マルハちゃんの分類基準では土人になるのよね」
じょすりん「まぁ実際にはあの辺はポリネシアンやハワイアンなど太平洋由来の民族も含めて、色々いてるんだけどな…プランセスは単純に肌の色や顔の造作、そして髪と瞳の色で土人と判定してるのは間違いない」
まさみ「なおマルハちゃんは悪役令嬢系の白人そのものって感じね。マリーより更にお嬢様してるわよ」
じょすりん「最近、プロフェスールは今までよりも更にアメリカンカウガールのような感じに」
まさみ「あの辺の王家の出だから意外に蛮族ライクなのよね…マリーもブリュントレーネも…」
まりー「ジョスリンにだけは蛮族といわれとうないですわ」
ぶりゅこ「同じく。あと名前」
まさみ「まぁまぁ。ところでマルハちゃん、妹さんは今どこに」
まるは「実は腹ボテ状態でケルンにいるそうです。で、面倒を見て頂いているのがメーテヒルデ様」
まさみ「さてヒント。痴女宮ショタ食い三羽烏とか、ショタ愛好会の名前が出たらクレーニャってまず高確率でその回に出てるわよね」
まりー「マドモアゼルは少年求めてあちこちうろついている噂も」
ぶりゅこ「すなわち、欧州のどの国にどういう美少年がいるか熟知している可能性」
じょすりん「歩く少年データベースという気も」
まさみ「さて問題です。フランダースの犬って、どこの国の話かしら」
じょすりん「通路」
まりー「ぎりぎり通路ですわね」
ぶりゅこ「オランダ語影響地域のようですが、フラマン…通路ですよねぇ、あそこ」
まるは「うちの領土にしたい気満々なんですけど」
まさみ「まぁともかく、あの辺の子供も他の欧州同様に、決して豊かなお家の子ばかりじゃないってことね」(人さらいの目)
じょすりん「マサミ=サンが監獄国の強制労働者を物色する顔になっています」
まりー「監獄国の若い子でもいいんでは…ああ、あそこはヤポン主体ですわねぇ」
ぶりゅこ「農業国では意外と孤児はいないと言えばいないのですよね、やはり戦乱や没落で生じるものかと」
じょすりん(皆普通に通路通路言ってますが、小官としてはベルギーの正式国名を誰も言わない件について…)
まるは「コープシェフ…あんな国は通路で十分です!(にやり)」
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2023.7.27追記
まるは「と言う訳で、次回はR18の闇堕ちマリア枠になるそうです…」
https://novel18.syosetu.com/n0112gz/217




