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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど


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鬼さん江戸へ来る Visite d'Ogre à Tokyo・4

ともかくも、我々は早速にも再び、ボロブドゥール神殿寺院に向かう…え?


ジョクジャ王宮見学ツアー、やるのですか…。


何やら大変に悪い予感もしますが、マサミ=サンが是非見たいらしいのです。


「実はジョクジャ宮殿の内外装にはかなり意見を出させて貰った立場なのよ…今の状況も見たいし」


で、昼間ですから、さすがのジョクジャ宮殿と言えど目をひそめるほどの無茶な行為を繰り広げてはいないだろうと、オリューレ局長からも連絡が入ります。


(逆に雅美さんならガン見しそうだけどね…)


(否定はできないわね…)


更には、明日はジョクジャ宮殿の朝礼の儀式の日のため、今晩から明日にかけては即成栽培プラントも空いているので、ボロブドゥール側に連絡すれば、臨時に罪人女性を用意しての試験生産も可能であると。


で、本当ならば鬼の大幹部がボロブドゥールに常駐してもらうか、そのプラントと同等の物を比丘尼国内に設置するのが一番良いであろうことは、このジョスリーヌ・メルランにも分かる話ではあります。


しかし、鬼の常駐は困難でしょう…。


なぜならば強力な鬼の原種については繁殖制限規定が存在します。


(その代わりに、私もこないだ大江に戻って受けましたが、マリア様の提供技術を併用して寿命を伸ばす方法ですね、これで対応しようとなりまして)


ですので、純血種の血統自体は保たれていますが、かと言って比丘尼国から遥か南方の…連邦世界では日本とインドネシアはジャワ島との地理的距離同等の関係にある南洋島に、これだけのために幹部の鬼が常駐できるものか。


そして、(つが)い巫女なる方が同行しておられる件ですが、比丘尼国内、特にキョウトフに該当する地域では純血鬼種はとても性欲が旺盛になるのだそうです。


その上、痴女種と違って、妊娠制限機能はないと…。


悦吏(えり)ちゃん以外、中田氏禁止やねん…)ええ、何か日本人の姓を会話に混ぜたような心話が聞こえた気がしますが、敢えて無視しましょう。


つまり、仮に鬼の幹部によってモイティ(ハーフ)を作る必要がある場合、都度来て頂くか、比丘尼国で通常通りに生産頂く方が無難であろうと。


それと、このプラント。


スティックス・ドライブ同等の事をやっているだけに仕方ないとは思いますが、大変に電力を消費するそうです。


で、オラトリオと呼ばれる太陽光発電装置の受電施設または、幹線送電網の近辺にあるのが好ましいと。


アトス、そして小規模ですがコンスタンチノープルの施設の電力は、鯖挟国中央部の砂漠地帯に存在するアンテナからの受送電を受けているだの、グァンタナモの分はユカタン半島の魔屋文明の何がしかを再利用して海底送電で密かに受電しているだの、結構裏で電気を使用している痴女皇国世界の実態を聞かされることになりました。


そして、赤道地帯に存在する南洋王国はボロブドゥールのプラントですが…何と、ジャワ海を通る海底直流送電によって痴女島からプラント稼働用電力を給電されているそうです。


(で、比丘尼国にあのプラントを置くとしましょう。核融合発電か対消滅発電の地上モジュールを置くか、さもなくば丹後半島にオラトリオの受電アンテナを設置するか…あの半島一帯に人が住めなくなりますよ…)


ええ、オラトリオから照射されるのは、トランスミッションモードと言われる送電出力発生状態ですら、電子ビームとすら言える大出力の集束マイクロ波。


戦闘機や艦船の索敵・照準用レーダーや大型レーダーサイトのアンテナ至近に立つような危険があるのは間違いないでしょう。


しかもあまり連続させると大気に穴を開けっぱなしにするのに近い環境弊害がありますので、1日のうちの受電時間を敢えて限っている代物。


ですので、今回のミコ生産委託については、南洋行政局並びに慈母寺所属の種付け担当者を鬼細胞対応にした場合に余裕を持って生産可能な出仕一等または権禰宜級三等、等級は三級…まぁ、そこらの村からちょっとした町の神社までに対応したミコ=サンを量産するのが目標であるとマサミ=サンから聞かされます。


「と同時に、慈母宗に対応した尼僧女官の互換型巫女さんを生産するためでもあるわけだから、痴女皇国の女官分類で言うと千人卒ただし管轄地域によるドレイン数リミットあり、寿命設定ありとなるわね」


そして、今回のミコサン生産に伴って、比丘尼国でも神社の格式を改めてミコの人事をわかりやすく的確に進める組織づくりを考えようとなったと、マサミ=サンはおっしゃいます。


「でね、比丘尼国では連邦世界の江戸時代同様、お寺で戸籍を管理していました。これは、お葬式を出したり墓地を管理する必要性プラス、職業特権めいた収入を用意してあげるためでもあったのだけど…」


つまり、葬儀料金や墓地代金だけでなく、住民からは戸籍管理料を徴収していたようです。


ですが、過日の吉原への苦情が響いているところに、近代政府への転換時には必ず「宗教団体に住民の戸籍を管理させている事へのツッコミ」が入るという指摘があったことから、百年二百年先の比丘尼国政府樹立への準備作業として、通常のオテラはあくまでも葬儀儀式の挙行と墓地提供、そして私設学校の運営団体であるとする方向に進むそうです。


では、戸籍をどこで管理することになるのか。


それは、慈母寺または神社併設(という建前)の慈母堂なる、慈母宗尼僧が勤務する新規の仏教系宗教施設に戸籍管理を移行して行くそうです。


これに慌てたのが既存の各仏教宗派の総本山が存在する大型の寺院。


「ただ、智泉院事件で捕縛された僧侶たちがね、供述で吉原にケチを付けたでしょ。あれがものっっっっっすごくおかみ様の逆鱗に触れた…ことにしてるのよ…」


そう、連邦世界のヨシワラと違うのが、痴女皇国世界のヨシワラはヨシワラ・ジンジャからミコサンを派遣して働かせている点です。


つまり、ヨシワラはジンジャ=オカミサマ直営も同じ。


そのヨシワラの存在に疑念を抱く話をするオテラは何様だ、という反論が即座に返っています。


そして、智泉院なる件のオテラ、取り壊しを待たずにカミサマの怒りの落雷で吹き飛んだそうですね。


(おかみ様の口利きで雷神による落雷演出をお願いしたけど、実際にはオラトリオ・ラウダ、マドリガーレ、バッラータのウェポンモード照射1秒未満で跡形もなく吹き飛ばしたのは内緒で内緒で)


(…どれか1台だけでも充分にあの程度の寺、焼き払えるんですけどな、演出で何発か撃ち込んでおけと言われましたし、中山法華寺にも脅し入れてくれと頼まれましたんで出力とビーム径、おもっきし絞って何発か着弾さしてますけどな。被害ほぼゼロになるように森か空き地()ろて)


(まぁ、幕府とつきあいがあって今回のこせきの件でもんくいわんよう根回ししてくれとったぞうじょうじとかんえいじと、それからよしわらの件でつきあいのあるせんそうじはともかく、この件でもんくゆうた寺、まさみとおまつがかたはしからりすとにしてくれたから、そこぜんぶかみなり落としたったけどな)


(実際には建物を外すようにして頂きましたけど、次は…わかってるやろな…という演出で。ほほほっ)


(ええ、それはもう慌てふためいてましたわねぇ…日枝神社にも遣いやら住職自らの謝罪来訪、ひきも切りませんでしたから)


「で、バクフも、例のオミヨの実家のオテラのやらかしで激怒、という筋書きですか」


「加えて江戸他、人別帳改の件に文句を言うた寺には片端から大雨が降り()()()()が落ちておる件、幕府にも話が行っておりまして、だめ押しにかるーく地面が揺れた後で、朝廷からのおかみ様お怒りであるとの一文が送られましては、そりゃあもう祟りに恐れおののく有様ですわね」


「小官の方にまで、これはおかみ様の怒りかという照会、来ましたからねぇ」


(なんで朕と将門殿にそう言う話をしてくれなんだのですか!)


(おまえらにまかしたら、おどしやなしにほんまもんのたたりにするのんわかっとるからたのまれへんのや!)


「そそ。で、虎次郎くんの一件と、そしてこの祟り演出の件でさ、最終的に柴又帝釈天の仲介で、中山法華(なかやまほっけ)寺には予定とはちょっと違った仏像が寄進されました」


モノスゲェワルイカオのマサミ=サンですが。


「そう、慈母観世音菩薩像。そして、実質的にお寺から戸籍管理業務を剥奪していくよ、という際に当たって、絶対にお寺は収入源たる戸籍登録費用の穴埋めを言い出すだろうとマリアちゃんもおかみ様も家光さんおまつさんも読んでいました」


そうです…それを言い出した際の布石として、そしてオテラへの新たな収入源の提示例として、中山法華寺には慈母観音像寄贈と併せて、慈母堂が設置されたのです…。


(あと増上寺と…寛永寺と浅草寺には江戸風俗案内所、ぶっちゃけ吉原と品川への誘導目的の慈母堂を置かせて頂いてね)


そして、慈母堂は合法的な僧侶、または一般参詣者向けの売春施設であるとされました。


更には、慈母堂での尼僧は本職の他、アルバイトとして近郷近在の女性を雇用するとも。


ええ、このホッケ・オテラは他のオテラが収入を得られないと文句を言って来た際の模範例…キャ・モデレ(モデルケース)としてバクフの実質的な干渉を受けざるを得ない立場に追い込まれていたのです。


むろん、心改め奥女中としての精勤を誓ったにも関わらず、当代のショウグンをアイビキに誘いエド城の(てんしゅかく)を燃やしてしまい、ショウグンもろとも死亡したオミヨには心中(スイシーデ)の可能性も指摘される話となり、改めてオミヨの実家たる智泉院(チセンイン)という小さなオテラを監督する立場だったホッケ・オテラの責任が蒸し返されたのです。


そして…。


「そりゃこの時代の幕府はかなり強い権限持ってるしね。何より、宗教的反乱の側面もあった島原の乱を例に挙げてさ、幕府に逆らうとどうなるか分かるよな?お前らの寺だけじゃなくて智泉院なんて跡形なく吹き飛んだろ?それに江戸の地面も揺れたの知ってるだろ?おかみ様が本気で怒る前に俺が何とかする必要あるだろ?と、その乱の鎮圧軍司令官を務めた老中が住職呼びつけて話をするなら、ねぇ…ふふふ」


(なるほど、確かにおかみ様が「謀り事を案ずるなら田中様に」と申される訳でございますな…)


(報酬は偽女種12号(のぶつな)様と、稚児陰間との絡みの見学で…)


コラコラコラコラ…。


(無論、動画撮影はよろしくお願いよ…)


(インム動画風に仕上げれば売り上げも…)


まぁ、タノキチ=サンが怒りそうな話はナイショにしておくのが無難でしょう。


「で、戸籍登録業務を継続して委託して欲しいならば慈母堂置かせろってやるわけよ…神社というかおかみ様の筋からは…」


で、慈母宗のアマサンが常駐するということは…ええ、数日もかからずに、そのオテラは制圧されるということです。


更には、慈母堂を併設すれば神社でも戸籍管理や聖環貸与が可能となるよう、社寺管理律令なる法令を発布。


オテラの暴走に手を焼いていた風にしたバクフも、元々オカミサマが神社を管理していたんだし、オテラも朝廷に任せてバクフは軍事と警察組織の監督を主業務にしてスリムな政治をしようとなりました。


これ、即成栽培してもまだ若い…というかギリギリで性行為可能な肉体年齢への成長処理をしたジェネラール・イエツナの若さも響いていました。


というのもニッコウのタヌキさんを祀っていたオテラというか特殊なジンジャ、ここは公式だとビクニ国のジンジャとは認めない方向で…何せ、正式なジンジャにするとミコサンを置いて売春をしてもらう必要がありますから…建設されていたのですが、若くしてジェネラールの地位についたムッシュ・イエミツの権威を高めるためこのトウショウグウを拡大改築した際の費用がかなり高額になった上に、最終的には造船中の火災で国産を諦めてスペインに発注されたアタカマルという船の建造費用もあって、バクフの貯蓄資金がかなり減っていたのです。


(諸説あるけど連邦世界でのタヌキさんは倹約癖もあって一千万両を遺したそうです。で、秀忠さんは完全にそっくりそのままではないでしょうが、秀忠さん時代の幕府直轄地の農業や金山銀山などから得られる収入もありましたから、ほぼそれくらいは家光さんに引き継がれたそうです。しかし、家光さんがこうした散財に加えて上洛の度に百万両は使っていたらしいので、家綱さんに引き継がれたのは五百万両から六百万両とも言われています)


(俺、親父からそこまで貰ってませんでしたよ…)


(金山銀山、痴女皇国(うち)が抑えたからね…ただ、それでも五百万両くらいは絶対、タヌキさんの幕府開闢(かいびゃく)時点ではあったはずなのよ…)


(ええええっ)


(家光さん…いえ偽女種11号(とくだしげみつ)さん…これ、痴女皇国で保管管理してないともっと困った事になってたの…で、家綱さんの死亡時に、その五百万両、いくら残ってたと思う?)


(せめて半分は絶対に残ったはずですよ…)


(百万両、切ってたのよ…)


(何に使ったんですか…)


(まず、明暦の大火と言われる大火事が起きて、江戸城の本丸にも大被害が出ました。その際の復興費に百万両以上使った他、長崎の出島でやっていた海外貿易のせいで金銀が流出してね…後、幕府の勘定奉行と呼ばれる財政担当者に正直、才覚があって大物な人があまりいなかったのも理由なの。ほら、不正や変な支出があっても、家光さんなら家光さんに申し出て怒られたらどうしようって思うでしょ。だから怪しい支出があっても隠し通したり知らんぷりしたのよ…)


(それで、俺の時に大奥に勘定女中を置いて支出に目を光らせ始めたわけですか…)


(言っとくけど朝廷からはちゃんと幕府運営手数料とか行政委託料、毎年の分をきっちり振り込ませてるからね…)


(安宅丸にしても俺の御座船を作って派手に祝おうぜとか言い出した大老がいるはずなんですよね…いつの間にあんなもん造る話になったのか…)


(幕府独自の貿易船が欲しいって言ってたって記録に残ってるわよ…まぁ、鉄道開通や安宅丸の件は投資の必要な事業だからうるさく言われてないと思うわよ。幕府としても船員教育をしたい、海事学校を作りたいとか言うちゃんとした理由があれば、朝廷もあたしたちも融資はちゃんとしてあげますし、造船担当の国や企業とも交渉を代行したげたでしょ?)


(まぁ、俺が花押を押した話になってんですよねぇ…うううううっ)


ところが、そのツカイスギな政治的決定をしたショウグン・イエミツは先にも申しました通りエド城の火災によってアイジン・オミヨと共に焼け死んでいます。


(ぜってー俺が逃げたってみんな思ってる予感)


(だから表舞台に出ないようにして下され!徳田新之助殿はどらまの中の存在なのです!)


で、その責任をジェネラール・イエミツ時代の家臣に押し付けようとしても、後を継いだギャルソン・イエツナはまだ少年。


その政治決定能力は、家臣達が補助しないと絶対に期待できない状態です。


「ほほほほほ、事実を知る連中は信綱さんとか井伊直孝さんは言うなれば被害者だってわかってるから本人たちを処罰するのはまずいと思ってるし、家綱さんのリーダーシップ抜きで大老や老中が緊縮財政を訴えるにはまだ徳川政権、安定してる時期じゃないっちゃないのよねぇ」


で、ここでアタカマルの建造資金について。


イザベル陛下は「一括前払いアリヤトヤッシター!」と言っておられましたが。


「んなもん痴女皇国が融資したに決まってるでしょ。それに吉原造営費や江戸市街地造成だの、超大物として幹線鉄道網敷設費用肩代わり、こんな巨額の借用証書を突き付けたら、そりゃ誰でも黙るわよ」


(でまぁ、最悪の場合のチャプター11というかデフォルトの逃げ道は用意してんのよね…幕府財政破綻しましたすんませんお尻持って下さいって朝廷に押し付けて明治政府樹立って方向に行かせたい訳よ…で、自己破産じゃないけど債務免責決定を痴女皇国罪務局から取り付けるにあたって、その前に幕府や朝廷の資金運用体制を調べさせてもらうわよって筋書きのために、痴女皇国の日本行政支局長としておまつさんを任命したのよ…)


(南欧支部にもそれして欲しいのですがぁっ)


(スペイン王室解体と引き換えにされるから言わない方がいいわよ、イザベルさん…)


(ううううう)


まぁ、スペインの女王陛下の嘆きはともかく、言うなればオカミ様とマリア様、そしてマサミ=サンや我々黒薔薇・紫薔薇騎士団の描いた筋書きのデキレースの絵図の通りに、ビクニ国の政治体制は移行しつつあると。


そして、この体制移行で重要な役目を果たすのがミコサンまたはアマサンであると。


「でね、連邦世界の日本だと、かつての神社はその所属政府または自治体から開設の許可を得たという名目で開かれました。と言っても明治政府以降の大日本帝国政府の方針で、国家神道という宗教的な結びつきを推進したこともあり、神社に敬意を払うような認定の仕方をしたのよ」


まぁ、カトリックの教会と似たようなものですね。


パレ・ロワイアルも本当はストラスブール大聖堂の司教の為に建設された宮殿だそうですし、そもそも領主や王は神の祝福を得てその地位に就いているという演出がありますから。


「で、幣帛(へいはく)という奉納用の布の反物…巻物をどこが神社に贈るかで、その神社が国営か地方運営かを識別する官称をつけるようになりました。官幣大社とかいうのがそれね。その下に郷社や村社などの地方自治体から幣帛を奉納された神社が入ります」


(ただ、比丘尼国ではじんじゃは全てわし…大江山朝廷のしもべやからな)


「そうなのよねぇ、お寺のお坊さんに紫の衣を与える権限は京都御所にあるんだけど、神主さんを任命する権限は大江山が持ってるのが比丘尼国の体制なのよねぇ」


で、マサミ=サンの考えでは、単純に痴女種のドレイン数値と同じで、そこのジンジャの管理戸籍数…それも人数で格式を与えよう、ただし大きいジンジャは小さいジンジャを束ねる…我が共和国で申しますと、市町村(コミューン)が属する小規模郡(カントン)大規模郡(アロンディスマン)のように上位の組織として扱うようにしようと。


そして最小限度の単位は百社から始めるとも。


具体的には百社・千社・万社・十万社・百万社・千万社という区分けで神社を分類していくそうです。


「例えば…そうね、吉原神社だと普通は近くの住民だけが管轄になってしまうから五百社くらいか、せいぜい千社だけど、あそこの来客から吸ってる分を考えると精気吸引人口、百万は余裕で行くわよね。けれど、それは定住者の人数じゃない上に、言うなればよその神社の管理区域に住んでる住人の精気まで頂いた数字になってしまうでしょう」


「確かに、不公平になりますよね、あそこと五反田の氷川神社とか品川神社は…」


そう、売春地帯に勤務するミコが居住する神社は、住民の人口数と精気吸引人数の格差が著しい訳です。


「ただ、そういう場所の夜鷹(よたか)や遊女の管理は最寄り神社でやるから、戸籍管理神社はその管轄地域の世帯数または居住人口を基準にして巫女さんの配属数を決めても支障はないでしょう」


なるほど、戸籍に掲載された精気の吸引人数で配置人員数を決めていくのですか。


ただ、それにしてもそれなりの人数を要するのでは…。


「精気吸引自体は併設した慈母堂の慈母観音像がバラージドレインの要領で行うから、担当エリア内…アンテナ設定範囲の性行為があれば自動的に吸い上げられるわよ。だからむしろ、その神社が戸籍管理を担当する人口を正確に割り出した上で、戸籍係の事務員に該当する巫女さんの人数を割り振ることを第一義に考えるべきなのよね」


即ち、痴女宮の女官のように「吸う必要のある部署に配属するために吸えるキャパシティを拡大する」形態の格付けではなく、吸える可能性が生じている戸籍登録者を対象としてジンジャの格式や、ミコの階級を整理していくと。


「そして、痴女種女官の場合は千人卒からあれが生えて出世のスタートラインに立つでしょう」


ええ、千人卒(正規雇用女官)→万卒(村長町長級)→十万卒(市長級)→百万卒(県知事級)→千万卒(国家閣僚・大臣級)と昇格していきますね。


「この考えを神社に適用することで巫女の配属数や、その神社の責任者…宮司役の巫女の所要階級を定義しようということね」


で、ヨシワラ神社の場合ですと、教育施設も境内に存在することを鑑みて、配属ミコは長の地位に就く者は最低十万卒で推奨百万卒、端数を管理するための部下のミコは10名を超すことになるだろうと。


一方、シンオオクボのジュウール(ギャンブラー)猟師(シャサール)にゴリヤクのあるオイナリサマだと、現状では連邦世界のシンジュクともども、後に大都会になるとは思えないほどの未開発の森林や原野が周囲の光景ですから、現時点ではミコサンは千人卒、そして制限をかけたアレを生やしたミコサン2〜3人で足りる計算になるそうです。


(実際には、お寺同様に下男役の偽女種を雇用する事になるけどね…今は用人として、近隣農家の次男とかをアレを餌にして来て貰ってる神社多数の模様)


などと、内情調査に余念がなさそうなマサミ=サンから教わります。


(そりゃカイゼンに必要な情報は収集するわよ…こっちには紫薔薇騎士団の他、前から三河監獄国との提携事業で警備騎士や刑務・矯正担当騎士の研修名目で監獄国に行かせてる訳だし、地元の神社と連携して仕事することもあるからね、ある程度は自然に情報は集まってたのよ)


で、その情報収集に余念のないマサミ=サンですが。


普通ならゲートを使って移動するはずの転送、エマニエル部長かマリア様に連絡を取ったらしく、いきなりジョクジャ宮殿正面の正門前に移動。


そこで待っていた局長と橙騎士団長のディードリアーネの二人の付き添いで、宮殿内をまっすぐ進んで王居に到達する形で王宮内を見学して行くそうです。


つまり、マサミ=サンは前庭を通って正面から堂々と入って行く見学コースを所望されたそうです。


で、この宮殿の構造は何度か闇堕ちマリアやアルト閣下の方のR18枠で語られていますが、連邦世界のジョクジャ王宮宮殿とは大きく異なる点がいくつか存在すると。


---------ジョクジャ宮殿略図------------


↑ジョクジャカルタ駅 

←ボロブドゥール  アジスチプト→       

ーーーーーーーー|   |ーーーーーーーー

| ーーーーーーー正 門ーーーーーーー |

| |               | |

| |               | |

| |               | |

| |   広       場   | |

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| |               | |

| ーーーーーーー|  |ーーーーーーー |

| ーーーーーーー|  |ーーーーーーー |

| |               | |

| | ーーーーー   ーーーーー | |

| | |           | | |

| | |    宮殿正殿   | | |

| | |  (吹き抜け構造) | | |

| | ーーーーー   ーーーーー | |

| | |  行政執務政庁舎  | | |

| | |  警備警務庁舎他  | | |

| | ーーーーー   ーーーーー | |

| | |  女官舎・餐庁他  | | |

| | |  各種施設建物群  | | |

| | ーーーーー   ーーーーー | |

| | |   王居・後宮   | | |

| | ーーーーー   ーーーーー | |

| | | 警務隊舎・馬匹舎他 | | |

| | ーーーーー   ーーーーー | |

ーーーーーーーー|裏 門|ーーーーーーー|


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「小さな丘を利用して、花離宮…王居と後宮の構造を作っています。これは、庁舎から後ろを覗かせないようにするためでもあります」


それと、この宮殿の特徴として、オリューレ局長とカルノ王が公式の行動で歩く通路はおよそ階段というものを廃した構造になっており、そのためにも広い敷地面積を必要としたと聞かされます。


「例外は王居最上階の王室…つまり子供部屋めいた場所ね。ここはウィレミがいた頃はマルハとウィレミとカルノが()()部屋でしたけど、元来は国王が窓から下のプールで沐浴したり水遊びをしている側室役を眺めて見染める目的で作っています。つまり、王居の二階から上への階段やエレベーターが存在するわよ」


そして、女官舎の建物の中の通路から先を進むと、屋根付きの二階建て回廊のどちらかに進めば直接、オリューレ局長とカルノ王が使う合同執務室のある王居二階に達するそうです。


一方、王居一階の待合室に通されることを許可された謁見希望者は回廊一階の通路を進んで王居に案内されるそうで。


(まぁほとんどの場合は国王に面会することなく行政庁舎で諸々が進んでしまうのですけどね)


(むしろ、接待や非公式訪問だと地下駐車場からエレベーターで1階の謁見候補室に上げてしまうこともありますよ)


何にせよ、南国特有の強い日差しを考慮したのか、壁や柱は基本、白色。


そして一般女官の寮や食堂が存在する庁舎の中を通過すると、正面にその回廊通路と、下に降りる坂道への分岐が現れます。


ただ…回廊二階へ繋がる道、存在しないのですが。


つまり、我々の目の前十メートルほど先に、その二階部通路の先端が見えており、痴女種能力で跳躍でもしないと到達できない状態。


で、ディードがどこかへ合図すると、回廊通路一階へ繋がる部分の坂道が持ち上がり、二階通路に接続される道が構成されます。


これは、カルノ王は南洋王国の象徴であり、祭事祝事でもなければ王居から公式には出て来ない立場であるのを謁見希望者や宮殿居住者に無言でわからせる仕掛けだそうです…。


何と、もったいをつけた構造なのか。


(痴女種の私たちと一般人類の延長にいるカルノを一緒にしちゃダメよ…説明して行きますが、この王宮の全てはカルノのために作られていると言って過言ではありません)


そう言えば、この宮殿の設計、オリューレ局長が大きく関わっており、連邦世界に残るジョクジャ宮殿やタマン・サリの見学まで希望して見に行った上で国土局とで仕様を決めたとか言われていましたね…。


「実はあたしも同行して使用決定資料のために観光、いえ撮影しまくり。日程取れなくてバリ島に足伸ばせなかったのは残念だったけど、イスラム様式の原型宮殿のモチーフは活かせたと思うわよ」


なるほど、正殿などは例のエロ彫刻が多数存在するボロブドゥールに似た意匠も存在しましたが、奥へ向かうにつれて大人しく優しい絵画やレリーフに変わって行ったり、植木鉢や花が増えて行くなど、ある種の法則性を感じさせるのも局長の趣味というか、ラブラブと噂のカルノ王のために意匠を尽くした意図なのでしょう。


この通路も、一階部分からだとあまり気付きませんが、両側をヤシの木と…痴女皇国の熱帯地域ではお馴染みになった絶林檎、そして効果淫の並木となっていますね…。


あと、植木鉢の花がチ◯ポピーと呼称されるケシの花なのですが、これは誰がやらせたのかある程度想像つきます…。


で、再び元の坂道に戻った先にあるその一階部の通路を進んでおりますが、椰子と絶林檎と効果淫の並木に阻まれ西側の湖はよく見えませんが…なんか湖岸にやたらと特定植物、多く目立っていませんか。


(医療用、いえ衣料用の麻畑ですよ。単に槍大麻しか手に入らないから植えているだけです)


このわざと女官寮から離した構造の理由、女官寮地下の食堂や調理施設…精肉設備を含むそれの臭気や万一の火災にも配慮した結果だとか。


「謁見の間から先に見せます。で、カルノは我々の到着に合わせて、マルハが連れて来ますよ」


痴女宮本宮と離宮との間の橋もそうですが、こういうところに凝る傾向はありますね。


そして回廊の先に存在する王居の正面扉、木製で左右に開くそれが、守衛騎士によって左右に開かれます。


で、その先の廊下の左右にある部屋が謁見候補室…待合室なのでしょう。


更に正面にもそれなりに荘厳さを感じる扉があり、そこにも騎士が待機しています。


その扉を開くと、そこには小さめの謁見室が。


で、正面の玉座の後ろ左右に申し訳程度のカーテンが下がっている以外は、吹き抜け。


この謁見室を使用する際には玉座の後方の収納ガラス壁を開けて風通しを良くするそうです。


そして、その吹き抜け空間の先に広がるのは、くだんの花宮殿の中心となる大きなプールと、それを囲むように作られた選抜女官騎士と偽女種たちのための寮舎。


見ておりますと、水浴び水遊び…ええ、()()()()()も含めて、プールを楽しむ百人卒未満の女官や千人卒以上の騎士女官、そして偽女種下男らしき姿が何名か。


聞けば、この宮殿の女官も騎士もなるべく昼間の勤務を避けるようにシフトが組まれており、朝の「例の行事」が終わってプールを清掃した後は、比較的長時間の自由時間が組まれており、プールでの水浴び水遊びはむしろ推奨行為なのだそうです。


このプール自体も水の入れ替えが頻繁に起きるよう、常時流れていて…その水源は何と、王居二階のカルノ王とオリューレ局長の執務室床からも水が流れ込むのだとか…。


「玉座の後ろ、日陰になってるでしょ。あそこに坂道が設けられていて、カルノと私や、ここに戻っている時はベテハリにアニサにディード、そしてマルハが直接プールに降りられるのよ…水はその坂道を伝ってプールに流れ込んでるの…」


つまり、このすぐ上の二人の執務室は常時、床に水が流れている状態。


そんな環境で、果たして執務が出来るのでしょうか。


「紙の決済書類の類など、普通の仕事で使うものは一切ありませんよ。その執務室で私やカルノが行っているのは、上奏に対する承認か否決だけなのよ…」


何かこう、大変に貴族的な発想で作られたと言うべきでしょうか。


更には、私の過去の()()であったり、はたまた工作対象でもあったイスラム系王族や富豪。


イザベル陛下の統治区域にも敢えて造られ残されているグラナダのアルハンブラ宮殿や、イスラム系アーリア文明の象徴たるタージ・マハル。そしてトプカプ宮殿…痴女皇国でも鯖挟皇帝が居住する新宮殿(イェニ・サライ)として存在しますが、後宮(ハレム)が設けられる文化に見られる富の集積をここでも見る思いがしました。


某・パパは大佐をしていた人物…パスタ女の国の女好きで有名だった首相と大変に仲の良かった独裁者も後宮めいた女性守衛隊を創設していたそうですけど、あの宗教の影響域の王侯貴族は本当にこういうもの…そして独特の豪勢かつ大規模な建築物を好みますね…。


で、ちょっとパスタ女に聞いてみましょう。


(ベラ子陛下。規模的には痴女宮離宮と後宮の方が大きいとは思いますが、こんな贅沢な作りを南洋行政局に許したのは誰でしょうか。勢を尽くし王や皇帝を住ませる場としてはここの方が何かこう、魅力を感じるのですが)


(うまいこと言って比丘尼国駐在から逃げようとしても無駄です。話をタマン・サリに戻すと、あの宮殿の基本設計は確かに国土局ですが、その造形や意匠にはオリューレさんの意向が強く強く入っています。そして、その願望や要望をある程度形にしようとインドネシアまでオリューレさんを伴って取材に行った雅美さんもまた、こう言う建築に関しては変態的に凝る人だと言えるでしょう。つまりあたしは全くノントカーレ(ノータッチ)なのですぅっ)


(いやその、この水が流れる宮殿というのは大変に面白く魅力的に思えたのですが)


(つーかジョスリン、聖院時代の本宮がまさにそれだったのですよ? あたしがちゃんと経験する前にエマ助が大規模に作り替えてドライフロア化を果たしたのですが、現在でも石が剥き出しの床や壁、そして各階の間の吹き抜け中間階構造がその名残なのです。それに、痴女宮だけじゃなくて横の罪人寮や女官寮・聖院学院の各宮の外壁、水、流してるでしょ。あれは本宮だけの時代に女官種が発する熱を冷却していた機構そのものなのですよ…)


あー…それがあったのですか。


なんでやめたのでしょうか。


「あれをするとね、床が水浸しになるし通風や導水のための構造上、そのままだと外部から虫とか入りやすくなるのよ。あれは女官種の熱気があって初めて、衛生的な建物として機能するのよ…下級女官の居住区画ですら、ジョスリンにわかりやすい単位で言うと摂氏50度から70度が通常だったの…」


…確かに、オリューレ局長は女官種時代からの生え抜きですから、その当時の聖院の実態を正に目の当たりにしているだけでなく、その中の諸々を管理する立場だった方でしたね…。


「あの時代の痴女宮、それはそれで大変だったのですよ…罪人を動員しての水垢除去ですとか、私の担当でしたけどねじ式の水汲み装置…スクリューポンプという方がわかりやすいでしょうが、それに水圧式の昇降機や大型洗濯機に荷物船を聖院湖に引き揚げる台車装置などなど、水流を利用した大型設備の諸々が設けられていましたが、その保守は本当に大変だったんですよね…」


ふむふむ。古代文明の結晶が炸裂したかのようなその当時の聖院、ある意味ではその特徴を無くして改築してしまうには惜しいとも思えますが…。


(中で暮らしている女官には大変だったんですよ…寝具の取り替えとか色々と…あの時代の私とクレーゼ様に話をつけますから、体験してみる? …あ、マイレーネ様が女官長の時代だからね…)


えー、あの世紀末覇者が女官管理室を仕切っておられたのですか…。


「そりゃあもう、部屋の掃除に至るまでそれはそれは厳しい点検が入ってねぇ…」と、昔を懐かしむかのごとき声がまた、一つ。


「お久しぶりですね、プラウファーネさん。オリューレ局長に成り代わりまして、スカルノ朝南洋王国国王、スカルノ一世陛下を紹介させて頂きます」

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