鬼さん江戸へ来る Visite d'Ogre à Tokyo・2
は、はぁ…。
いきなり申し出られる話に絶句する、私、ジョスリーヌ・メルラン。
で、オカミサマの話を補完して説明しましょう。
アルト閣下の方のR18枠とやらで、マダム・オマツも訪問したボロブドゥール寺院。
南洋慈母宗総本山本院たるこのオテラ、実はとんでもない「人間再生産施設」だったのが改めて浮き彫りになった訳ですが、ビクニ国に戻ったマダムがですね。
「じょすりぬ様が男児を孕めなかったのはともかく、家綱がじょすりぬ様をそれはもう、大層気に入りまして…じょすりぬ様の側室入りを希望してございます…」
まぁ…私を見た時点でギャルソン・イエツナの目が輝いていましたから…それに、私との触れ合いが人の心の機微に触れたのでしょうか、イエツナ君は私にまた会えるよねを繰り返して聞いて来たのです…。
「あれ、顕仁も気に入りよってな…あの情念のつよさや呪う恨む気質はぜひ、そばに置いときたいとかいうとんねん…わしとしてもほしいこやねんけど、うちのくにのいらんことしい御三家もあれ来させとかいうとんねや…」
(崇徳上皇・菅原道真公・平将門公の祟り神とりおでございますわ…)
「でまぁ、小官が欲しいけどタタリガミは黙らせたいと」
「簡単でございますよ。神功様…大巫女様のご出陣をお許しになれば」
あっさり言われる茨木童子氏…ムッシュ・プラウファーネですが。
「なあ茨木。あれだすのん、おまえやったらわかるやろけどな、あると出せいうんとおなじやぞ…せめてらいこうにしといてくれへんか…」
「それ以前に、大江からなるべくは出さぬ方が良いかと。まぁかくも申す私も正直、江戸見物に出たくはあったんですけど…」
(鬼だけでなく大江に住んでおる者が結界の外に出るのはあまり勧められないんですよ。こんな感じで人様が困ることも結構ありましてねぇ…)と、内心のお困りな事情も心話で教えて頂けます。
「とりあえずは、おまえらがあれしても迷惑にならんれっしゃ、なんとかしたってくれゆうて、りえとまりやにたのんどくわ…」
(おかみ様、これがジーナさんの依頼なら私は怒りましたけど、プラウファーネさんが絡んでいるなら話は全く別です。出雲號などの担当車掌区は…京都までは米子か…米子鉄道奉行所と鉄道省京都総局へは私の名前で鬼族への配慮を求めようと思いますが、おかみ様の名前を貸して頂けるならもうちょっと効き目のある文章、作れますよ)
ええ、マダム・ムロミがいるはずの方向を向いてプラウファーネサンが拝んでおられます。
おしなべて痴女宮の女官は鬼族の事情を知ってからは、ことさらに配慮をするようになっていますから…。
(私や姉が人様に可愛がられる姿になれるのもそちら様のおかげでもあるのですよ…私どもは堕天使の方同様、ある程度は人間の受け止め方で外観が変わる性質もありますのでね…)
(理恵はん、今度うちが居酒屋罪人おごるから日取りの連絡頼みますわ。出席者は悦吏ちゃんと痴女宮地下の設備部員で)
(まぁ、あんまりつよういわんといたってくれ…確かにねてる時にあれやったらめいわくやとはわしも思う。特に婢女みたいなんがどういうふうに、ひとのめいわくになるかは想像つくからな…できたもんみしてからにしてくれよ、りえ…)
(合点承知ですっ)
(あと外道、飲みかいはわしもさんかやぞ)
(おかみ様は自腹でたのんまっせ…外交経費の領収証通すん、割と大変なんですねんで…)
(げどうのかおでたのきちになんとか通せんのか…)
(そのメンツなら設備管理部の部内対策費枠になりますから、おかみ様が飲まれた分だけ別会計にして領収証出してもらう必要あるんですよ…比丘尼国のお金使うなら財務局はうるさく言いませんけど…)
(まぁ、財務のあれがきびしいのはしっとるからな…)
鬼やカミサマが経費の処理に苦心する点、部署によっては無茶な使途の経費承認を乱発している某共和国の部署に聞かせてやりたい気もします。
(フランスが無茶というより、田野瀬麻里子さんがいると必然的に日本の罪務省の精査レベルになんのよ…内務の領収証、何回ハネられたか!)
(裏金で処理出来るんだから私に文句言わないでくださいっ。何のために闇バイト見過ごしてんですかっ)
(あたしを不正蓄財の達人のように言うなっ)
(マサミ=サン…エロチューブから今月分のヘンタイ動画のウリアゲの明細来てませんでした?ジョクジャ宮殿の内部撮影分、局長に無理言って出してもらいましたので謝礼を早く出したいのですが)
(マルハちゃんのロリモードが好評だったからイロつけられるわよ。明日にはジョスリンの口座に…)
(あたし犯罪組織に勤務した記憶ないんだけど…)
(学校や孤児院建設してまで未成年売春推進した奴が今更何を言ってやがる…)
まぁ、コルシカの組織を使って効果淫を売りさばいている件は共和国も噛んでいますから、マドモアゼル・タノキチには内緒で。
(で、確かに鬼さんの生態は傍迷惑極まりない話なんだけど、りええが言う通りでちゃんとした事情があるだけに頭痛いよな…旺盛な鬼の精気を頻繁に抜く必要あるんだよ…ジョスリーヌさん、痴女宮と違って、比丘尼国だと大江に近きゃ近いほど鬼さんはその本来の力が強まる性質があるって思っといて。プラウファーネさんの血色が良い時は注意信号なんだわ…)
そうです。この方々はベラ子陛下レベルで、アレをしないと生命を脅かされる立場。
そして、番巫女たる方がなぜ随伴しているのか。
「これが正に、巫女つくりのためなんですよ…」
そうですね…。
「じょすりんは知らんと思うけどな、うちの大江山の大神宮。あそこのまわりにすんどるひゃくしょう、あいつら住ましとるのは、みこになるおんなのこを産ますためでもあるんや…」
「あの界隈の女性は鬼や天女とのあいのこを産む事を義務付けられておるのですよ。で、その代わりにそちらで使われているチン○ネックスを天然で使用されたかの如き豊作豊漁を得ているのです」
「まぁ、ゆうたらあのかいわいは大神宮の荘園っちゅうやつや」
「しかし、それにしても普通に孕んで生ませる訳ですから、鬼や天女との合いの子の成長が早いと申しましても、数年はかかるのですよ…で、よそから来たお子を大神宮で修行させて慣れさせているんですけど、これとて、さばける人数に限りがございましてね…」
「さらには、わしのいえやったり、めし作らしとるばしょやねんけど、あそこも使わなしゃあないなぁと」
「つまり、私どもで言う伊勢神宮、それも内宮どころか外宮すら、巫女の方の修行にお使いであると…」
ああ、もう使ってんのねという顔で頭を抱えているマサミ=サン。
「せやねん。りえには無理いうてもうたけど、このえどからいせにいく汽車、はやばやとつくってもろたんは巫女のしゅぎょうをはやめたいからでもあるんや…伊勢に行ったらおんなをかうのが流行りにしてくれたやろ」
「ええ、おかげ横丁を色街として整備するお話でしたね…」
と、日本の事情に詳しいマサミ=サンのおかげで話も早いオカミサマ。
「しかし、それでもたらん…たらんのや…」
「八百歳まで生きれるのにダメなんですか」
「あれな、じっさいには鬼や天女の血がまざってないときついねん…鈴鹿やったら鈴鹿、茨木やったら茨木の人外の気を染ませて染めてまわんと、人とそんなに変わらんのや…」
で、ハッピャクビクニ伝説とやら、マサミ=サンにお聞きします。
(連邦世界の八百比丘尼伝説とはかなり違うわよ…天橋立近辺にいた美人のお姉さんを見て、手ごめにしようと思った地元の有力者で人外さんがいたと思って…)
(ああ、しちややな…あいつはおんなずきも女好きやねん…)
(で、舞鶴地方の首領と言われて辺りを牛耳っていたこの人外さんはね、まず、天女の羽衣を盗ませて、その美女を天女に変えようとしました)
(なんでそんな事を)
(天女族も昔は人を食べてたのよ…鬼さんの女性組が外観スリムになって空飛べると思って…でまぁ、時は至って精気だけでよくなったんだけど、それにしても精気はいるでしょ?つまり、天女の羽衣に長時間触れたら天女族化して、助平になるのよ…)
あああああ!
な、なるほど…その姑息かつ遠大な構想には呆れる他、ありません。
いわば、人外のバケモノが美女を得るために自分の類似種族へと転換させることを目論んだのですね。
言うなれば、美女と野獣のジャポン版。
しかし、その野獣に該当する御仁、美形になれるのでしょうか。
(みなまでゆうな…かねとけんりょくがだいすきなおっさんやぞ…にんぎょぞくのやくざやねん…)
何ですかそのジャポンの劇画に出そうなアクヤク・ナリキンまんまの人物…と言っていいんでしょうか。
(みためはにんげんのおっさんやな。もくぞうモルタルのにかいだての城をまいづるの街につくってすんでるんや…)
(まぁ、そのマイヅル・ヴィレのドンなる人物、マドモアゼルをフィー…フェアリィにするのは失敗したのですね)
(しょうじきものでな。うちにはこんなくんしょうみたいなりっぱな羽衣はいらんて返したらしいわ)
何ですか…その身分不相応な叙勲をされて、酒浸りになりそうな展開。
(ちなみに言っとくけどアル中でもないし冬場は雪かきしてないわよ)
(そもそもあの辺、加悦の山奥や大江でも積もるには積もりますけど、人の背丈ほどまでには深く積もりませんからねぇ)
(更にいうと色黒のメスガキで感度三千倍なのに最近は全年齢への進出著しい大麻忍でもないわよ)
(エンケラドゥスかタイタンの雪に埋まりそうな話ですね。しかし、その首領が女好きなら、それしきで諦めないのでは)
(でな、つぎにまいづるのおっさんが思いついたのは、自分のほんらいのなかまや。ごめんねごめんねいうて、自分らの家来のさかな、つかまえて料理されとるとこにわざわざ出かけてくうては冥福をとむらっとる一族の姫さんがおってな)
はぁ。
同族を食うのですか。
(そして、しゅびよく、ねえちゃん行きつけのめしやから家来の肉をぬすませて、行商人にばけた手下に売りに行かしてつかませようとした)
何でそんなに面倒な事ばかりを思いつくのでしょうか。
(そこまで涙ぐましい事をしなくとも、他に良い手は思いつかなかったのですか…)
(むりやりいわすより、おんなの方から進んであしもとにひざまずかすのがこのみらしいんや…あきたら器量のええやつは三三四国の新地の飲みやとかさくらがわの助平おどりの館とか、なかす…あわぶろ国、しっとるやろ…あたりにうりとばすぞいうておどかして、おじひをくれ言うてなかすんがさいこうらしいねん)
何かこう、鬼族の分類の方が良い気がしますが。
「鬼族との縁組は都合をつけてお断りしております。あのような回りくどい手口、鬼でもやりません」
きっぱり申されるプラウファーネ・サン。
「で、そのお肉…お召し上がりに?」
「醤きらしとったらしいわ。で、塩つけてかじったらまずいいうて一口だけではいたんや」
(ヒシオってのは醤油のご先祖様よ、ジョスリン…)
(確かにオサシミや焼き物にショウユなしは辛いですね…)
「しかし、その程度を口にしたくらいでは、首領の奴隷になるほどの身体汚染は困難だったとお見受けしますが」
「しかも、じゅみょうだけはのびたんや…」
「で、その美人の女性、大変にお困りになって大江の大神宮にお越しになりましてね。なにせ年を取りませんから男どもも気味悪がって、嫁にしてくれないと」
「んで、しかたあらへんいうことで、まずは大江で鬼の子らになれてもうてな、あまのはしだての近所に寺作ったるからそこで尼さんやってくれやとたのんだわけや」
「なるほど。そしてミコサンを産んで貰う役目に」
「ただ、1年に12人が限界なのです。そして巫女は…寿命、あるんですよ…」
(なもんでプラント自体の使用許可は出してる。ただ、南洋行政局の増員計画で使うものだから、その合間を縫って使用してもらうことになる。それと今回、オリューレとの連携は絶対に必要となるから、日枝神社のゲートはジョクジャ宮殿とボロブドゥールに限って関係者であればフリーパスにした。ただ、ゲート通過時に警告が出たら駄洒落菌改良種の悪影響が出てる可能性があるから、抗体を服用して地下から出てくるように)
つまり、マリアリーゼ陛下の勅命でもある訳ですね、ミコサンを増員する計画。
(エルフの巫女さんは間に合ってるっていうか、このお話にエルフは今のところ出る予定ないからね)
(ネトゲしてヒッキーになられても困るからな)
(エロフを出せば需要はありそうですが。特に地黒)
(トラックならいるぞ。一応監獄社以外の会社の製品も買ってるから。キャン◯ターはマジックなミラー号だけだが)
まぁ、エルフのコスプレがしたいとか言い出す必要すらないでしょう。
そもそも我々痴女皇国の制服自体がエロフと大差はないのですから…耳伸ばしたらエエノデスカ、殿方。
まぁそれはともかく。
ミコサンを養成するにあたり、ジンジャの知識は最低、必要ではあるでしょう。
実は私ジョスリーヌ・メルランも、聖母教会修道尼研修、一応は受けさせられました。
更には、本宮の黒薔薇騎士団長資格者ですから南洋島や茸島での活動もある立場…実際に活動していますし…という事で、ペルセポネーゼ嬢と交代で慈母寺での実習もやらされましたよ…。
ちなみに小さな慈母寺なら住職・副住職・下男(姦官)2名でやりくりしているところも少なくないそうです。
こうした小さなオテラの場合、村民女性や男性のアルバイトにボランティア活動が欠かせません。
聖母教会ではそうした小さな教会を支援するための聖隷少女団改め聖隷騎士団がいますが、慈母宗ではまだそうした組織がないため、橙騎士団のうちマルハの管轄の宮殿騎士団…少女教育班でもあります…を派遣することが多いようです。
(人はおるけど人材おらん。求む南洋島勤務者)
(茸島の神学部、神学部だから仕方ないんだけど、卒業生はぜーんぶ欧州に持って行かれるのよね…)
(アンヌマリーはストラスブール戻しとしても、ジャンヌはこちらにくれって頼んでいるのですよ…私の年齢で孫がおる上に即成栽培で見た目はアンヌマリーと変わりませんからね…)
(痴女島に近いんだからと言われては辛い、辛いのです団長…)
(ワルトを貰う手続きをするにやぶさかではないが…)
(亀地獄島の面倒見ろとか絶対に嫌ですよ…)
(団長命令を発動するには忍びない。それともワルト、ペルセポネーゼ団長が誰を行かせるかで頭を抱えていた案件があるんだが、貴官はカランバカかアトスを望むのかね)
(絶対に嫌がらせで人事を決められている気が)
(実際に行ったら大喜びで囚人を虐待していると聞いたのだが)
で、私が馬鹿話をしている理由。
やると決まったら、それ専門の部署か人間が動くからです。
あとは、現地へ担当者を案内して…。
(ちょっとお待ちなのですこのカエル女わぁっ)
何ですかパスタ女、いえベラ子陛下。
(まず、比丘尼国朝廷神社庁が要求する巫女の数から始まるでしょうがぁっ。そこからプラントの空き時間と睨めっこしながら、処理可能な人数を割り出すのです…そして数値達成可能な期間を算定するのですよこのカエル女ぁっ)
(それを小官がやる理由が見つかりませんっ)
(ジョスリン。南洋行政局に人はおれど人材おらずの嘆きを聞かなかったのですかっ。あそこは現地採用女官も多くてですね、定型業務をこなすのはまだしも、業務計画を立案して実行できる人材はまだまだ少ないのですよ?ワルトヒルディーネさんの南洋王国派遣も、言うなれば事務方としての作業すら必要になるであろうことを見越しての承認なのですぅっ)
あのですね。確か今、南洋王国全体で人口はざっと300万人でしたか。あれまさか全部ジョクジャカルタの王宮で仕切ってるとか…。
(そのまさかよ。事務員くれくれコール状態なの…だからね、巫女種の生産ついでに、うちの女官もね)
ええ、この話、タダでオリューレ局長が受けるつもりはないと想像していましたが、まさか南洋行政局の女官まで生産するんですか?
(そっちは聖院学院送りにすると、少なくとも南洋王国に戻せるまでに半年から数年はかかるでしょ?)
そうです…未だに痴女宮の女官、相変わらず新人をガンガン受け入れては半年くらいで送り出しているのです…。
ただ、この成人女官は聖院学院生徒とは分けて考えられています。
そして、成人女官は痴女宮本宮業務の習得習熟を優先されており、それまで本宮女官だった人物を支部に派遣するための補充要員として教育を受ける立場なのです…。
そして、それが間に合わない場合に、ワルトがぶつくさ言っていたり、あるいは正に今南洋慈母宗の本院に派遣されているアマンディーネやリモニエディーネ同様、黒薔薇騎士が送り込まれて穴埋めをしている状態でもあるのです。
ここに、マリアリーゼ陛下自らが鬼細胞付与型痴女種…即ち、比丘尼国巫女種の互換痴女種の生産を命じた理由が判明しました。
この生産工程で生まれてくる女官候補は、比丘尼国と痴女皇国の共通タイプとなっても良い種別…鬼細胞汚染に対応した痴女種として、製造される事になるのです…。
で、プラウファーネ=サンが呼ばれている理由…。
マサミ=サンが断言しました。
マエダトウシロウとかいう短刀を手に持ちながら言われたのは。
「母体女官への懐妊処理は鬼細胞付与型女官が行う必要があります。今までの痴女皇国での鬼細胞付与事例は鬼上陸迎撃作戦当時に外道丸ちゃんの血液を投与されたマリー、そして痴女種化の際に障害克服の必要性から同じく外道丸ちゃんの血液細胞を与えられたたのちゃんが該当しますが、今回は外道ちゃんの実弟のプラウファーネさんの鬼細胞を投与して、比丘尼国対応仕様にする必要があります。この初期投与を受けるメンバーには黒薔薇騎士団長資格者のジョスリンも入ってもらいます」




