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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど


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番外編・吉原よいとこ一度はおいで 2.6

松平(まつだいら)殿、申されたい事は色々あらせられるように思いまするが、まずは客人の紹介をさせて頂きませぬと…」と、お年の割には貫禄たっぷりに申される一条昭良(いちじょうあきよし)様。


(さっきもいうたけどな、あきよしは今の比丘尼国の()()()のほんまのこどもや。つまりはわしのまごひまごの血筋いうわけやな)


(失礼、昭良にございまする。べらこ陛下、皇別摂家とは帝の子が養子に入り後を継いだ公家を指し示す言葉でございまして、この間までは王孫(おうそん)と呼ばれて他の公家とは分けられておりました)


(ようはみかどの血が入ると、わしのこどもやまごとしての縁ができるゆうことやな。あとつぎの権利やら朝廷から出しとるきゅうきん(給金)がかわるらしいけどの)


(実は、朝廷は幕府にも政事(まつりごと)や、将軍位に関する官位官職費を給付する立場なので御座います。このからくり故に、比丘尼国では神社に納税して貰うた後、幕府より武家諸方に給費頂く流れと致して御座います)


これ…各地のお殿様ではなく、神社に納税するというのも、連邦世界の江戸時代と比丘尼国の江戸時代が大きく異なる点の一つですね。


そして、連邦世界の江戸幕府と違って、こちらの徳川家は大江山はもちろん京都の朝廷の人事や財政に大きく口を出せないどころか、行政代行費用を貰っている、いわば朝廷の下請けとして幕府を運営する立場なのだそうです。


(雅美だけどね…享保(きょうほう)の改革、恐らくやらなくていい事になると思うわよ…そもそも江戸幕府がコケたのって黒船来航なんかの外圧も理由なんだけど、米相場経済に起因する各藩の財政破綻や、肝心の幕府財政の困窮も大きな原因だからさ…外国への銀や銅の流出管理のためにも、聖環導入を契機に、一気に信用経済へ移行しちゃえって、たのちゃん(財務脳のたのきち)がね…)


ええ、この聖環を使ったsenza soldi…つまりキャッシュレス化の強引とも言える移行はたのきちこと、文教局長兼痴女皇国財務局顧問たる田野瀬麻里子の仕業です。


このおかげで江戸から西の各都市を中心に順次、この時代の金貨銀貨銅貨他の小銭を財布に入れてじゃらじゃらさせたり、あるいは穴の空いた貨幣を紐に通して持ち運ぶような、江戸時代を象徴する光景はどんどんと消え去って行っています。


が、同時に身元不詳住所不定な人々からは収入や居所を把握されては生活が成り立たない、納税できるほど稼いでないし収入も不安定だなどなど、不満たらたらな苦情が殺到しているらしいのも、先ほどからのお話の中に出ております…。


ま、それはともかく一条様による朝廷内での公家…貴族の地位や天皇家との関わりに関する説明は続いています。


(また、摂家(せっけ)とは藤原氏の血を引く家柄を指し示すものでございまして、今では五摂家とも称されております。紅毛(ぱつきん)の貴族の皆様も血縁や婚姻で家系を図で示さねばならぬほどややこしき事にもなっておるようでございまするが、我らとて似たようなもの)


そして、摂家というのはかつて摂政関白という政務の官位を務めた藤原家に由来する5つのおうちの家系を示す一種の敬称や尊称の部類であるともお教えを頂きます。


(更には我が一条は近衛(このえ)の家に次いでの摂家の位となりまして、京の朝廷の中では九条・鷹司(たかつかさ)・二条の各家が続く序列となってございます…江戸のお城も徳川の血筋や武勲献身によって座る順位が違うとは存じておりますが、我らが朝廷も似たような有様、ややこしき話となりまして恐縮でございます。ま、松平様のお話を聞かれる際のご参考までに)


「おお、そうでございますな一条様、これは失礼つかまつりまして…芳春院様と前田様の御前(おんまえ)にて申し訳なき限り」と、改まって畏まられるお侍さん…松平信綱(まつだいらのぶつな)と名乗られた方です。


つまり、信綱さんは慶次郎さんとおまつさんが誰かを知っておられる立場。


そして…なかなかの美青年ですね。


で、これはR15版では申し上げにくい件ですけどね…このお話では他ならぬ将軍の徳川家光様とですね…ほもっておられる仲です。


この若さでというと失礼かも知れませんが、恐らく30歳前で幕府の幹部職に取り立てられるだけの功績も上げておいでのようです。


(べらこ陛下…家光、いや竹千代(たけちよ)にございます…三十郎(さんじゅうろう)は元々松平の生まれではなく、祖父家康の三河時代からの家臣たる大河内の家に生まれましたが、故あって松平の家に養子として引き取られたのでございます。余が生まれた時からの小姓務めでして、三十郎が数えで九つの時でございましたか、言うなれば幼き頃から互いをよく知る身でありまして)


おや、これは徳川家光さんからの心話ですね。見れば、あたしの聖環の心話中継通話回路が開かれていますが、おかみ様がウィンクしておられますよ…。


(のぶつなはいえみつの子供のころからのつきあいや。それに、おんなあしらいも教えておきたいみたいやからな…)


ふむふむ。家光さんが敢えて自分の幼名を名乗ったり、信綱さんを幼名で言ってるのも、あたしやおかみ様への敬意と…それからショタ趣味めいたもんを考慮してのご様子です。


で、家光さんも実はかなり若いのです。だいたい、大学入りたてくらい。


(おかみ様…家光さんがイケメンだからってそういうえこひいきは良くないんじゃないですか…)


ちなみに、本編にはまだ直接登場する場面は存在しませんけど、お父さんの秀忠さんと違って毛深くありませんし、それに…今風イケメンなのです、家光さんもっ。


ええ、お分かりでしょう。なんでおかみ様が家光さんに肩入れして、京都の朝廷でも重職につく家柄の一条家から当主を引き抜いて江戸詰めにまでしているか。


(できたばかりのばくふがこけたらこまるからにきまってるやないか…)


(いけめんのほもを治して食べたいという下心がだだ漏れですよ…)


まぁ、そんなおかみ様の下心など知らぬげに話を続ける家光さん。


(三十郎は政才あれど徳なき男として、城内では口さがなき者共に風聞を立てられておるようでございますが、それは彼奴が執務にかまけて酒宴や茶会に顔を出す事少なきが故。言うなれば仕事一筋の男なのです…おかみ様や一条殿に無理を申して、前田殿や芳春院殿との宴席に顔を出させたのも、作法としての宴を覚えさせたいがため。芳春院様、そして前田殿、信綱めの振る舞いが非礼に映るところはございましょうが、なにとぞよしなに取り計らいを頂ければ有り難き事に存じまする)


(家光様…公方様のお立場では我らが畏まるべき。更には松平様も老中のお立場であるからには、加賀前田もよしなにさせて頂きとうございます。お気遣い、かたじけなき限りでございまする)


(はっはっはっ、それで吉原に来させたのであるか。まぁ、宴には良き事でござろう。わしも一条様にも披露したいものがありましたのでな。公方様にも後々にご披露させて頂くやも知れませぬが、傾く演し物ではござらぬ故、ご安心を。一条の先代とは京の歌会茶会でも付き合いがござった故、公家衆の扱いは存じて候)


(それどころか父のお忍びの歌会でも見事な句をご披露頂いたと…機会があれば歌御会にもお呼びしたいとは申しておりましたよ)


でね、一条様も実はですね、お若いんですよ…まだ…。


そして、一条様の本当のお父様はもちろん、天皇陛下です。


(歌御会とは、一般の歌会とは違いまして帝が催すものでございます。応仁の乱辺りから永らく絶えておりましたが、徳川殿の征夷大将軍就任を祝いまして世の太平を示すものとして開くのはどうかと公家衆から申しましたところ、快諾を頂きましてな)


つまり、慶次郎さんなら天皇家にも失礼はなさいませんでしょう、それだけの実績はお持ちですよと家光さんに言っておられるのです、一条様。


(慶次郎様はお公家様にも呼ばれておりました身でありますのは私も承知しております。家光様、公方様の恥には間違っても致しませんわ…ご安心下さいませ。それよりも家光様、信綱様にはかなりの恩がおありのご様子、差し支えなければ慶次郎様にもその辺の経緯をお聞かせ頂ければ)


その実績はおまつさんもご存知だったようでして、礼儀作法が必要な場所ではちゃんとお作法を守られますよと援護射撃を入れておられます。


(は。芳春院様はご存知やも知れませぬが、三十郎は余が幼き頃、庭に雀が巣をこしらえた際に雀の子が欲しいとねだったことがございましてな…で、余の為に庭に忍び込みましたところ、父にそれが見つかって簀巻きにされても余の名を明かすことなく、自分が雀を欲しがったがための振る舞いと言い張ってくれた恩もありまして…)


なぁるほど。


ただ、どっちが受けかとかは敢えて聞かない事にしましょう。意識を探ればわかりますけど、これはあたしの心に留めて…。


(ふむふむ、よるの世界はこうでああで…いたいっ!)


ああ、あたしとおかみ様とおまつさん以外にも意識や記憶を探れる人がいたの、忘れてました…ええ、アルトさんも探ろうと思えば信綱さんの記憶をまさぐれますね…。


(そういうスカンダーロ…醜聞(スキャンダル)は言うてはならんのです…)はい、はりせんムチでアルトさんのおけつをつねらせて頂きました。


「ところでべらこ陛下、そちらのお方がお国の将軍様であらせられるとか」と、一条様のセギーレ(フォロー)が入ります。


「ええ、我が姉たる上皇マリアリーゼの相方にして、痴女皇国将軍のアルトリーゼです。おかみ様のみならず前田慶次郎様とおまつ様には顔馴染みの仲ですが、一条様並びに松平様とこうしたお席で顔を合わせるには初めてでありましたかと」


(アルトさん、ご挨拶を…)


(どうもにほんのおさむらいさまのごあいさつはかたくるしいですね…)


(しゃあないのです…我慢して名乗ってください…)


「痴女皇国金衣将軍を拝命致しておりますアルトリーゼと申します。今般は我が痴女皇国二代目皇帝マリアヴェッラ陛下のお供で参りました。おかみ様と前田慶次郎様には今更の事かと存じますが、よろしくお願い申し上げます」


瞬間、皆がのけぞります。


アルトさん、ちゃんと喋れるのかと。


(な、なんというあつかいを…あたくしもいちおうは銀衣騎士のとき、あちこちのえらいおかたをですねぇ…)


ああ、心話ではいつも通りですね。


無理しなくてもいいですからね。


でまぁ、とりあえずはお昼ということで…。


(ちょっと待てベラ子。この時代はまだ一日二食が標準だ。一日三食は元来なら元禄年間…五代目将軍の徳川綱吉の時代に根付くんだ…まぁ、監獄国と江戸開発の労働者の皆様には三食の習慣を広めてもらってるけどな…)


(まぁ、ええやろ。さけとかんたんなおぜんくらいははこばせたるわい。ここのかんじょうもわしもちにさせられたからな…)


ええ、本当ならばこのお座敷で太夫という最上位の花魁…高級売春婦を呼んだ場合は一泊で百万円近いお金がかかるそうですね…その太夫役のおかみ様が払うのもおかしな話ですが、場所を貸してもらっている迷惑料兼・甚内さんと小太郎さんへのあたしたちの案内料を兼ねているそうです。


まぁ…これくらいは出して頂いてもいいくらいの…現時点では一兆円を余裕で超す財政支援、痴女皇国は比丘尼国に対して行なっておりますし、あたしとアルトさんとおかみ様だけでも、よくよく考えてみれば国家元首や閣僚級の地位の立場ですから、それなりの扱いをしないといけないという事もあるでしょう。


その代わりに、おかみ様が公式で来られたり、どなたかを連れて痴女宮にお越しになって貴賓食堂で接待をする場合、やはり食材や料理人報償などの経費だけでも百万円以上のお金は動いていますよ…。


で、この揚屋さんを始めとする大尽通りの遊郭ですけど、セントラルキッチンに近い構造になっているそうです。


具体的には遊郭の建物が裏で繋がっていて、一つの板場で調理したお膳をその列の遊郭のお座敷に運べるようになっているとか…さながら、旅館の配膳のような感じで大量のお客様がお越しになった時にも対応できるように車輪付きの配膳台車までが配置されているようです。


(そのへんはおまえとこのおきぬいうのか、おんせんやどのあるじの子おるやろ、あのこが入れ知恵したようやぞ)


ああ、おキヌちゃん…勅使河原絹枝さんですね。


で、届いたお膳ですけど、焼き魚にお刺身、酢の物、そしてお吸い物と香の物、お酒の徳利とお猪口が乗っかっています。


そして、配膳方のお兄さんがご飯をよそってくれますが…。


「はっはっはっ、(こしき)で蒸した飯なぞ、今時はおかみ様に捧ぐる膳を伊勢の外宮で拵えておる時くらいでしょう。今や京都(みやこ)でも飯は普通に釜で炊いておりますかと」


「一夢庵では普段は玄米じゃな。大将殿から、滋養に良いのは玄米と聞いた上に…これは皆様に驚かれるであろう。姉姫(まりや)様いわく、何と未来の日の本では白米より玄米の方が値がつく事もあるそうなのじゃ」


と、ねーさんから聞いた知識を披露する慶次郎さん。


「脚気を防ぐにも玄米の方がよろしい話だそうですわ。まぁ、町人(まちびと)や百姓の身で白米を食べるもの難しいでしょうから、加賀では玄米を食す方が長寿にも良しとして広めさせております。白米は盆正月、または吉兆の際の馳走としておりますのが町人までの普段の食事でございますわね…」と、おまつさんがあたしとアルトさんに教えて下さいます。


そして、お刺身。


これが実は吉原遊郭の目玉でして、数日前に予約すればなんと、伊勢志摩のおかみ様用の鯛の漁場で獲れた鯛すら出してもらえるそうですよ。お金を払えば、ですが…。


「つまり、お殿様の宴席にもお使い頂ける場所にしようと、おかみ様の助言も頂きました結果、九鬼のお殿様や監獄国の国主様のお力もお借りする事が出来まして…」


そう、伊勢湾岸や渥美半島で獲れた魚すら、水揚げから24時間以内に腐敗させずに江戸に持って来れる手段が確立されているんですよ…。


「べつに、えどの魚がわしのくちにあわんわけやないんや。まりやの話やと、えどに住むもんがじぶんらの庭先でとれたさかなをくうて、よそもんにじまんする方がひょうばんがひろまるやろうとな。あと、いまはえどの町の普請できとるおとこに、ちからのつくもんくわしたれとなっとるやろ、のぶつな」


「は、江戸前の魚はなるべく築地の魚市場の方に回すように差配させております。おかげさまで我らのみならず、町働きの同心にまでも魚を毎食食おうと思えば食えるようになっておりますかと」


「寿司屋なる酢飯の屋台も出ておるようですな」


「はっはっは、江戸住まいの公家でも密かに食いに出る者がおりましてな。あれは流行るでしょうから、座って食えるように致して頂きますると」


「捨丸と骨が今頃はその、散らし寿司とやらを賄いで食うておるはず。備前のままかりを使うたものが匂いはきついのですが、町の飯屋では食あたりに合い難いと出す所もありましたかと」


「味噌と醤油が手に入りやすいのが江戸の周りでは有難い話ですわ。あれのおかげで吸い物や鍋の味にも困りませんので…」


などなど、運ばれたお膳の料理を食べつつも食事情のお話を始める皆様方。


(ほれ、べらこ…おまえのとこのかりぶにおる、てぃあらとかいう娘のちちおやおるやろ。まりやがあれのしりあいのいたまえとか呼んでもろて、いろいろおしえてるみたいやからな)


「ここの夜の膳、本膳料理に似ておるが、一品一品出て来るのであったな」と、慶次郎さんが甚内さんに確認されています」


「は。式三献の作法とは似て異なりますもの。懐石とやらの新しき作法にございます」


「本膳の式三献の際には音曲歌謡など芸を披露するが筋。どれ、一条殿…頼まれておりましたもの、一丁この場で」


と、持って来た包みを開ける慶次郎さん。


ふくさから出て来たのは木箱ですが、更に蓋を開けると楽器の三味線が。


「これは三線(さんしん)とか申すもので、琉球胡弓とは少し違うた奏で方をするそうじゃ」


でぇ、慶次郎さんの格好に今まで触れなかった理由ですけど。


「いや、今年中に那覇の港に赴く用事があってな、琉球(むこう)の芸の一つも出来ねばということで稽古を付けて貰うておる最中なのじゃよ」


そう…沖縄出張の話が出ているそうでして、琉装、すなわち沖縄の伝統的な服装なのですよ…。


しかし、沖縄なんかに何をしに行かれるのでしょうか。


「ほれべらこ、このじだいのりゅうきゅうは中原龍皇国に臣従しとったんや。せやけど、さつまが手ぇだしよっていたばさみになってな。でまぁ、そのあたりでもめとったんやけど、とりあえずは比丘尼国に臣従するゆうことで話をつけにいくための使節を行かそうゆうはなしがでとるんや。のう、のぶつな」


「は。おかみ様の申される通りにございます。幕府の威光を示すためにも武芸に秀でた者を使者に同行させるのはどうかと城中の年寄りどもの話となりまして、前田様であれば()()()明人(みんじん)とやり合うた実績もございますし…」


(というか信綱殿…まず、薩摩にやらせるとろくでもない事になるからと、幕府自ら手を出す事になった経緯があるのを言うておかねば片手落ちじゃろ? そこは幕府や朝廷の恥と思うかも知れぬが、そもそもべらこ様には隠し事は出来ぬ。まりや様のくにの方々と付き合うならば、まず真っ先に覚えておくべきであろうな)


と、おまつさんを介して心話で信綱さんにお説教をする慶次郎さん。


慶次郎さん、こちらから話しかけるか、あるいは心話ができる人物が中継する必要があるんですけど、心話自体はあたしたちと散々に交わしているのでコツを知っておられるんですよね。


で、慶次郎さんの琉球行きは要するに、砂糖を中心とした貿易のための港湾事務所めいたものの開設準備のためらしいのです。


更には、鯖挟国にスペインやイタリア、そして今後は球根詐欺国(おらんだ)に英国といった痴女皇国の関係国家の貿易船が立ち寄る補給港や貿易中継港として那覇港を整備したいという比丘尼国と痴女皇国の意向がありまして、比丘尼国の属国になる代わりに開発支援や財政援助を行う方向で話を進めているとか。


既に貿易船自体は立ち寄ったりしてはおりますけど、中原龍皇国の明王朝で使われていたお船の寄港だけを考えた港では、大型化した痴女皇国仕様の帆船の接岸はまだしも交易には不向きということで、港湾整備もさせて頂きたいというのがこちらの要望だそうです。


「そんなわけで、けいじろうにはおきなわのもんの作法もべんきょうしてもろとるんや。えげれすもふねがよれるようになるとありがたいっちゅうはなし、あの商人の黒ひげのおっさんがいうとったぞ」


うちの初代様同様に御年十万歳は絶対に超えている神様におっさん呼ばわりされているティーチさんは機会があれば慰めておくとして、欧州方面からの対・比丘尼国貿易はロバート&エドワード商会の仕切りでもありますから、英国に話が行くのは仕方がないでしょう。


同時に、黒ひげティーチさんの海賊の師匠というべきバーソロミュー・ロバーツさんは英国陸軍の関係者で元・大臣のクロムウェルさんと親しいため、英国の陸軍派貴族の息のかかった商人にも貿易事業に参画させておく意図もあるようです。


(海軍…ドレイク卿と親しい御用商人ばかりが美味しい思いをしてるんじゃないかってうるせぇんだよ…おめえらもちったぁ東インド方面の商売やってみろってんだ…)


と、ぼやいているのは黒ひげティーチです。


実は罪人頭を退職した後のティーチ、一旦はカリブに移住して北米やアフリカと欧州の貿易事業に精を出しておりましたが、師匠のロバーツさんが罪人奉公期間を満了したのと同時にエドワード商会のアジア方面担当にされてしまったらしく、商会のアジア部門…東インドシナ貿易会社の長に就任しています。


で、その会社の本社事務所は痴女宮本宮の通商局の中にあるんですよ…。


(いや、船の采配については海事部とやるから痴女宮にいる方がやりやすいから別にいいんだけどよ、またインドシナかよって思いは正直、あるわな…)


今度はそのティーチがぼやき節を聞かせようとしておりますけど。


(痴女宮の暮らしには慣れてるんだし、いいじゃないですか…)


(まぁ、そうだけどよ…ところでベラ子陛下、今は比丘尼国だろ? そっちのジェネラルの就任祝いに贈った虎ってどうしてんだよ。あれは餌にするもんがややこしいはずだけどな…)


(ええと、後でおかみ様か幕府の関係者に聞いてみましょう…ちょっと後で連絡します)


「けいじろう、ちょっとややこしいことがおきた。しばまたの帝釈天、あるやろ。あそこの参道にかわらものがみせものごやを開いとるのやけど、そこにかしとるとらがにげたそうや」

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