番外編・火のある所に煙もくもく
「遷都の話ですが…確かに、私のところにも噂が流れていますね」
こう話すのは、ダリアと室見理恵さんのお子さんである高木ジニアリーネ、通称ジニア。
外観は明確に母親似ですが、黒髪や顔立ちにそこはかとないアジア系の印象も受けます。
で、聖隷少女団…聖院学院神学部所属の幹部女官候補生の慈善実習事業団の職員待遇を得ていますが、ステータス情報の上では幹部候補教育過程、継続中。
Zinnialiene Muromi Takagi 高木ジニアリーネ Hundred thousand Suction (Limited Orge mode.) 十万卒(限定鬼化能力者) Slut Visual. 痴女外観 White Rosy knights, Imperial of Temptress. 白薔薇騎士団 Executive candidate, Holy temple Academy, Imperial of Temptress. 痴女皇国聖院学院幹部候補生
つまり、ジニアの今の地位…メテオラ大修道院で彼女が従事している業務ですが、学僧身分尼僧や修練士尼僧を教育する指導員役、この先もずっと続くわけではありません。
(ティアラのナッソー所属で灸場配属は当分、動きそうにないみたいですけど…あの子、文句言ってません?)
(灸場がそれなりに大きな島の上に、流れ作業で罪人を処理しているとは言っても、労働人口を増やしていますからねぇ…労働者の管理、それも陸地の仕事とあっては海賊共和国の既存人材では対処しきれないでしょう。勢い、茸島開発や農民指導の経験者たるジニアちゃんかアンヌマリーちゃんか、ティアラちゃんの誰かを回さざるを得なかったのです)これはベラ子陛下ですね。
(加えて、海賊共和国の海賊さんたちと組んでのお仕事にもなりますからねぇ)
(いいこと、ジニア…だからと言って心配しているふりをして犯しに来ないよう、陛下にちゃんと釘刺してよねっ)
などと、ティアラとジニアが心話で言い合っているのが流れて来ますが。
で、私こと痴女皇国・南洋行政局長たるこのオリューレ、メテオラ大修道院の職員棟なる施設の修道院長室で「よく冷えたお茶」を頂いております。
厳密に言えば珈琲淫豆の焙煎粉末抽出液、つまりはアイスコーヒーなのですが。
(シェヘラザード様が目をつけられまして、鯖挟国より東で流行らせております)
そして、このコーヒーに添えられたフレッシュとかいう濃縮ミルクや、砂糖がわりのガムシロップ。
これらは全て、痴女島の罪人工場か、他の支部で工業化を推進しているところの生産産品なのです。
で、今頂いている、ジーナ様いわくの冷コーとやら、氷が入っております。
即ち、氷を作る何がしかの設備がこのメテオラに存在するという事ですね。
(もっとも、南洋島でも王宮や寺院はもとより島内の慈母寺ですら、冷蔵庫が密かに…)
(厨房や住職室に出入りしていれば目につきますけどね…)
ええ、ジニアも茸島の慈母宗寺院を知っていますから、殊更に驚きはしません。
が、私の前で同じようにその、濃い色の茶を飲んでいるエステラーネ修道院長曰く。
(そりゃあ私が痴女皇国にお世話になった時には驚きましたよ。本宮研修の際に調理場も見学しておりますし、何より当時は千人卒未満でしたから女官食堂のお世話になるわけでしょう。食事はもちろん、売店の菓子の類に至るまで、どれもこれも生国で売れば値がつくか、つかないか)
え。値段がつかないのでしょうか。
(例えばこのチョコレート。これが快感王だと言うのは別としましても、この地ならこの地で…そうですね、女官寮の売店であれば100南洋ルピーも出せば何個か入ったものが買えることでしょう。しかし、痴女皇国の息のかかった商人や船便を使えない場所で入手を図るとなれば、その価値はおそらく宝石とまでは行かねど、とんでもない値がつきますかと)
つまり、南洋王国が従来、球根詐欺国だのスペインだのに売っていた胡椒や香木、それにゴムとかいうよく伸びる樹脂の類となるのでしょう。
産地からあまりに遠い場所で売るがために貴重品となったり、はたまた製法を簡単に真似できないので高級品となってしまうような。
すなわち…痴女宮本宮勤務者がなかなか還俗したがらない理由の一つは、確実にこの手の代物が手に入らなくなる事を恐れているからなのです。
あそこにいると冷たい飲み物や熱いまま出てくる食事はもちろん、こうした嗜好品や調味料の類が普通に思えますが、故郷に帰ればそうしたものが貴重品であり、挙句エステラーネ嬢が言うように「値段をつけようにもあまりに貴重すぎて値段がつかない」可能性があるものすら存在するでしょう。
「ですが、今後数十年から百年程度をかけて、我々女官の日常に入り込んでいるこうしたことどもを市井に広める計画もあります。その際に重要な役目を果たすのが、現在も生産を続けている少年少女は…未来の農民や労働者、そして市民国民となる人々を作り上げる存在なのです…」
そう、このメテオラでも育成している子供たちは、聖母教会の尖兵として各地に送り込まれます。
で、送られた尼僧や修練士男児、そして偽女種助修士はその聖母教会の管轄下にある人々を最終的に支配し、痴女皇国に都合の良い子供を産ませていくか、はたまた自らが産むのです…。
(最初に聞かされた際には、これまた、あまりに恐るべき話。人を家畜とするにも程があると、アルテローゼ様には強く申したのですが…)
(しかし、人々の中には古い考えに囚われており、革新を受け入れぬ者も多数。我が南洋島、そして茸島でもそうした古い考えから脱却できない原住民が問題となりました。ましたが…)
(悪霊とやらが跋扈する話に乗じて、慈母寺の普及を早めておしまいになったのですよねぇ。そして、南洋王国の政変がやむなき正義であると民衆に刷り込み…アルテローゼ様が呆れておられましたよ。私が東欧を支配したよりも上品に、しかも早く事を進められたと)
(乳上の時とは場所も人の気風も、そして他の条件も違いますよ。一概に比べるものでもないでしょう)
(いえいえ、南洋島の政変については、我ら東欧支部では逆に非常な注目をしております。何故ならば今後は我らも聖母教会を通じ、この地を完全に支配せねばならぬ身。そして…オリューレ様の率いる南洋行政局に注目しておるのは、何も我ら東欧支部だけではありません。ジニア)
(ええ。アンヌマリーはいずれ欧州に戻し、フランス隷属作戦に投入する事になるとはベラ子陛下から伺っています。つまり、南洋王国の行政制度をある程度直接に知っている彼女を欲している支部があるとも言えるでしょう)
(彼女の母親のところですね…)
(正しくその通り、ストラスブール中仏支部は最終的にフランス支部への昇格、かねて強く意向していました。そして痴女皇国本国としても、フランスを支配下に置くということの重要性を理解しています)
そう、この場でのジニアは、まさしく皇帝たるベラ子陛下…すなわち痴女皇国本国の代理人的な立場なのです。
白薔薇三銃士の中で、少なくともジニアについては一番、当初の設立意図の通りの動きを見せているでしょう。
三人の中では一番目立たぬ立場ですが、その陰でしっかりとやるべき事をやっていたからこそ、アトスとメテオラの監督業務に派遣されているのです。
(実のところは、このアトスとメテオラがひと段落したら、マヨルカ大聖堂のテコ入れの話も出ているんですよねぇ…ルイーザ様が育ってくれれば、サルディーニャだけでなくマヨルカも管轄としてくれるとは思うのですが)
(ああ、教皇様の娘さんですね。あの方は統治の才覚はあると思うのですが、母親離れできるかが鍵でしょう…。ただ、お母様がフランス生まれというのは今後、非常な価値があるとか)
(確か向こうの王族…ナバーラ王の妹君のシャルロット様が母親であらせられるとか。で、ナバーラ王がフランス貴族の地位も得ておった関係で領地も持っておられるのですよね)
(ナバーラがスペインに従属したとは聞いておりますが…まぁ、話を戻しますと、フランスについては、人も物もそっくり無傷で手に入れたいというのが重い枷なのですよねぇ…王族貴族を皆殺しにするか追放できれば楽なのに…)
どうも、ボルジア教皇猊下のご家族には皆さん、あまり触れたがりませんねというのはともかく。
(エステラーネ院長、それが出来れば黒薔薇の欧州派遣団長が既にやってますって。私の母親もそう言ってますよ…)
(ああ、ジニア…あなたは黒薔薇の内情に詳しかったのですね)
確かに、ジョスリーヌさんならそういう手段には明るいでしょう。
そして、ジニアの母親といえば、黒薔薇創立期の団長で、今はその黒薔薇を含めた全騎士団を統括する存在です。
その、ダリアの娘さんがここに来ているというだけでも色々と読めるものがあります。
ティアラにはかわいそうなのですが、正直、痴女皇国の注力度で言えば欧州が最優先となるでしょう。
しかし、その軍事的な侵略の橋頭堡として考えられているのは、やはりスペインよりこの、東欧。
鬼汗国の騎馬隊ですら完璧にはなし得なかった欧州侵略を、馬と騎兵ではなく修道服の部隊によって成し得るために、このメテオラもアトスも尋常でなく大規模な施設として建設されています。
そう…アトスに、あの大きなお船のテンプレスが入れるだけの穴を掘っているのも、あそこが要塞として機能することの証でしょう。
どちらかと言えば文官たるこの私、オリューレですらあそこが軍事施設的な要素も持っているのを容易に理解できました。
案内こそされませんでしたが、作戦管制室ですとか騎士装備を格納した倉庫などもきっちり存在しているのは、透過視覚で見えましたから…。
あ、この私は文官体質で鈍臭い奴であるかのような描写があちこちでされておるようですけどね、一応は幹部痴女種である程度ならば壁の向こうを透かして見たりの痴女種能力、あるにはありますからね。
(体育会系じゃないのが悩みの種ってことですね)
(陛下。他人の欠点をあげつらうのは主君として、上司としていかがなもんでしょうか)
(明日の試験を一発合格したら考えてあげますっ)
ふん、ちょっと車を運転できるからって…まぁ、この話題を今続けると、確実に私は涙目となるでしょうから、これ以上陛下に言い返すのは控えましょう。
それよりは、眼前のエステラーネ院長、そして補佐役についているジニアとの会話。
(島国の南洋王国と違って、こちらは陸続きですから…特にメテオラは確かに険しい山の中ではありますが、アトスと違って四方を陸に囲まれておりますので、複数方向から攻め込める場所ではありますからねぇ…いざとなればアトスに篭れるような構造にせざるを得なかったと伺っております)
「オリューレ局長、いえオリューレさん…明日はブダペストで運転の試験と伺っておりますけど、その際に文化科学宮殿に立ち寄る話は出ているんですか?」
と、ジニアに聞かれます。
つまり、彼女は東欧支部の少年少女育成事業の肝心要なところはその、文化科学宮殿にあると言いたいわけです。
しかし、私は運転免許試験の後は早急に灸場を目指す立場。この上欧州のどこに寄れここに寄れという話があっては、視察スケジュールが大きく狂ってしまいます。
そう、確かにこの視察旅行はカルノとの新婚旅行めいた要素が大きいのですが、あまり痴女島や茸島から他に派遣された経験がない私に対して、南洋島以外の視察を重視した行程を組んで頂いているのです。
この上にどこかに寄れとあれば、内務局に相談して立ち寄る場所を増やして頂く必要があるでしょう。
おまけに、視察の足として用意されたテンプレス…この船が誰でも彼でも動かせないのを知っているだけに、視察期間が伸びれば私だけではなくベラ子陛下も拘束する話となってしまいます。
「ジニア、文化科学宮殿での騎士教育については…今、我々とは別れてベラ子陛下とアリアディーネが案内している対象のスカルノ陛下に見て頂くのが良いでしょう。これならば、オリューレ局長の運転試験にも影響を及ぼさないはず」
そう…明日の夕方には私たちはアトスを離れて、一気に灸場を目指すことになっています。
で、私がこのメテオラに来ている理由は、単に視察だけではありません。
東方聖母教会の組織について、実際にメテオラの城下町めいたカランバカという山の下の町にある東方聖母教会の修道院を見学することを勧められたからです。
(聖母教会との違いは、教会の名称と十字架以外には少ないと思いますよ)
で、私の運転試験の予行演習を兼ねて、行きはジニアがハンドルを握るダンケ号で…。
「ちょおっと待ったぁああああ」
何ですか、ベラ子陛下。
今日はもう、我々はアトスの視察の際におめこ疲れしたのですよ。
ええ、アリアディーネさんとカルノはまだしも、ベラ子陛下が院長室に乱入して来ました。
しかも、日本人らしい偽女種の方まで連れて来られてますが。
…ですからねぇ、我々と陛下の行程を分けたのも、実のところ陛下にカルノを食べさせる意図もあったというのに、一体全体何をやっておられるのですかぁっ。
思わず、女管理室長時代の思考になってしまいます。
ええ、皇族の部屋使用状況の点検と指導は元来、内務局皇帝室…つまりはジーナ様の管轄だったのですが、痴女宮を空ける事も多かったジーナ様の依頼で、皇族居室派遣女官を介して居室の清掃や使用状況点検と指導は女官管理室長たるこの私に回って来ておったのです。
つまり、その頃からベラ子陛下への指導を許可されていた立場ではあったんですよ…。
「オリューレさんは意外とベラ子に厳しい、と…メモメモ」
(あたしがあんだけ庇ったり手を尽くして支援してんのにぃっ)
「前から厳しめではありますよ。それより陛下、明日の行程ですが…」
(それとこれとは話が別ですっ。で、変更があるならはよ、皆に伝えませんと…)
「ああ、少し変更します。オリューレさんは乳上とブダペストで運転試験は変わりませんけど、あたしはちょっとアトスを中座する用事が出来ました。具体的には、庄司甚右衛門さんを転送で送りついでに、日本の吉原を視察することになります」
ふむ。邪魔者がいなくなって何より…って何を言わせるのですか。
「オリューレさんはあたしを厄介払いしたいようですね。まぁともかく、カルノ君に文化科学宮殿を見せること自体は反対ではありません。ただ、あそこを意外によく知る人物が、南洋王国の統治の参考とするならば、文化科学宮殿よりも、もっと良い場所があると申されまして」
で、その人物が院長室に入室されます。
ええ、シェヘラザード中東支部長様。
「イェニチェリ本部の視察許可を取りました。東方聖母教会の所属騎士団であれば、イェニチェリもそれに該当するでしょうし…何より」
「ああ、あの件…イェニチェリを偽女種化して揉めた件ですね…」
で、これについては注釈が必要でしょうから、へーか。
「シェヘラザードさんの方が適格でしょうに…」
「はいはい。ではオリューレ、鯖挟国の国家騎士団でもあるイェニチェリについて、貴女がよく知らぬのも無理はありません。しかし、この騎士団こそはある意味では我が痴女皇国の従来の方針に背く存在として、かねてから問題にはなっていたのです」
はぁ。
「具体的に言っちゃうと、鯖挟国に敵対する国と戦争して得た捕虜や、はたまた近隣国から人質として差し出させた少年たちを互いにほもらせていたのです。更には鯖挟皇帝の好みの少年を愛人とするようなことまで」
ベラ子陛下の口から出る、衝撃の情報。
ああ…美男公がまさに、その頂点であったそうですね。
「そうそう、あの根性なしが率いていたにしては勇猛果敢で知られていたのですけど…」
「ですが、その鯖挟国が美男公と結託して企てた痴女皇国本国への謀反。これを契機として、鯖挟国を管理下に置く試みが始まったと言って良いでしょう。私の復帰や中東支部長への就任も、その流れで決まったことなのです。そして、今般の偽女種化技術の一応の確立は、イェニチェリに対しての改革の鉈として振るわれるに至ったのです」
ふむふむ。シェヘラザード様の説明を聞くだに、悪い予感がしますね。
「即ち、イェニチェリを皇帝直下の兵力としてではなく、痴女皇国中東支部の兵力としてしまう事を、このわたくしが企画しました。そして、偽女病が鯖挟国でも蔓延した形を取って、一千名を超すイェニチェリを全て偽女種化したのです」
…シェヘラザード様が中東に赴任してからというもの、過激な政策や作戦を取っていると噂になっていた中東支部ですが、その中にはこんなこともあったのですね。
「まぁ正直、海綿菓子国への偽女種化は拙速な作戦であったと思います。しかし、その事が逆に、鯖挟国への偽女種化攻撃が偽女種病であるということで言い訳が立ったのは幸いというもの。更には、彼の国で我らに敵対する者を偽女種化することで勢力を削げたのはまさしく天佑というべきでしょう。マリアリーゼ陛下とイザベル支部長には悪いのですが、状況とは最大限に利用するものなのです」
「確かに、イェニチェリの兵力と独特の忠誠制度は痴女皇国としても、何らかの対抗措置を取らざるを得ませんでしたからね…しかも、従来ならばほもっていることで精気を収集不可能。痴女皇国皇帝としても、シェヘラザード支部長の上奏を承認せざるを得ませんでした」
「ほほほ、結果的にイェニチェリも、あの国の皇帝好みの少年軍団となったのですから良しとしましょうや。その後の治療と称して、指導偽女種として少年の姿にもなれるように計らってやったのですから、むしろ我々に感謝を頂きませんと」
むぅ…確かに、シェヘラザード様の取った処置は、伝え聞く海綿菓子国への当初の苛烈な処置もかくや。
精強な男どもの騎士集団を、か弱い少年や…果ては偽女種に変えてしまったのですから、誰がどう見ても鯖挟国の戦力は弱まったと思ってしまう危険が考えられます。
「それを補うのが各地の聖母教会であり、赤薔薇騎士団東方分隊…東欧支部との合同騎士団なのです。即ち、中東支部と東欧支部の教会に配属する尼僧は全て、赤薔薇騎士としての訓練も受けた者たちとなります」
これはまぁ、私としても納得の範囲です。
なぜならば、慈母寺でも同じで、橙騎士団としての教育や訓練も受けさせてから、各地への配属となるからです。
その理由たるや、各地の聖母教会と同じで、所轄教区の警察力としても機能するため。
更には、慈母寺があるところの管轄内の住民には聖環を使わせています。
そして、住民には貨幣経済に関する知識を無理からにでも流し込んでおりますので、絶対確実に徴税やお布施の寄進だの、更には作業報酬や産品売買だの何だのの支払いや受け取りのための金銭授受に該当する行為が発生します。
あと、考えが進んでいる住民や役人、更にはバタヴィア辺りに出稼ぎに行った者が家族に金を送るための振り込みをします。つまり、聖母記念銀行の出張所としても機能しているのですよ。
(聖環持ちにはあまり縁がありませんが、聖母教会と慈母寺は郵便局に該当する聖母記念信書電信郵配公社…長いので聖母記念郵便局と略するようにします…の出張所でもあります。つまり、慈母寺も聖母教会も、一種の簡易郵便局のような感じで通信と入出金や納付窓口としても機能してるんですよ)
ですから、どんな小さな寺院でも、住職以外に勘定役と騎士役の職員を必要としますので、慈母寺における僧侶の定数は最低、3名となります。
そこに小僧たる偽女種や少年が必要に応じて加わりますから、少なくとも6名の人員が一軒の慈母寺の常駐者として必要となるのです。
「聖母教会でも同じですね。小さな教会だと炊事役すら置いてもらえず、皆で食事の支度をするとかあるのです」
「で、人手不足を解決する方法として考えられた案の一つが聖隷少女団であり、各地の教会での実習を兼ねて司祭や助祭の補助に従事してもらっていますね」
で、ここで聖母教会と、そして慈母寺の組織の違いについての話となってしまいます。
解説は…ベラ子陛下。
「まず、聖母教会では神社の社格ほど厳密な格式の違いは設けていません。そして、その教会で使える予算や建てられる建築物の規模は実のところ、割り当てられた教区の人口に比例しているのです。広い地域を割り当てられた教会の建物は相応に大きなものとなったり、はたまた人員や輸送車両が多く配属されることがありますが、基本はその管轄教区の面積に応じた人口を持つことを期待されます…このメテオラの設備がまさにそうですが、あたしたちは人口を増やせますからね…」
ほうほう…。
「で、基本的には聖母教会も東方聖母教会も施設呼称は教会となるのです。そして南洋慈母寺も本山たるボロブドゥール寺院以外は南洋慈母寺、または慈母寺が呼称となります。例えばデンパサールですとデンパサール慈母寺が、彼の地に所在する慈母寺を示します」
では、このメテオラは大修道院とされていますが。
「聖母教会では教育や研修施設を修道院と称する事にしました。ただし、特別な神学を教える場として、聖院学院神学部の分校扱いとして神学校を罰姦他に設けております。これは神学校として組織図にも記載されますね」
「そして、アヤ=ソフィアなどの大きな祭礼や聴講を行える聖堂を備えた教会は大聖堂とされました。これは罰姦聖母教会も同じ呼称としています」
ふむふむ、この辺りはお寺の名称を決める規則として、南洋慈母宗にも伝えておく必要がありますね。
「で、先程の話で出た予算と教会規模。これは聖母教会ごとの教区に登録された所轄人民数に左右されます。具体的には精気を吸引する対象千人ごとに司祭または輔祭が配置されます。尼僧の給与は実のところ、痴女皇国から出ているのですけどね…」
「これまた知った時には驚いた話なんですよねぇ…アンヌマリーはお母さん達から聞いていたって言ってましたけど、ティアラと私は口開けて間抜け顔を晒しておりましたから…」
「でも、尼僧も女官なら痴女皇国から報償金を出すのが基本でしょう。それに…ジニアちゃん、例えば南洋王国のようにまともな貨幣が存在しても流通していないとか、ティアラちゃんも一時期関わっていた尻出国、あそこのアマゾン川の流域住民のように貨幣経済そのものを知らずに生きていたとかいう場所に赴任した場合、少なくとも赴任地から必要な寄進を得ることが出来るまでは痴女皇国がその面倒を見てあげる必要がありますよね」
「むむむ…確かに、茸島でも多くの人々は物々交換で生きておりましたね…」
これ…すなわち、支部所属の女官の報償金を本宮扱いで支払っている件ですとか、支部の経理事務を本宮財務局で見てもらっている件なのですが、支部の間でも実のところは賛否両論だったりします。
と申しますのも、支部経理を独自にやりたい中仏支部に南独支部に南欧支部や、逆に経理関係に明るい人物を簡単に確保できない中米支部辺りとの温度差があるのです。
かく言う私の南洋行政局も、元来は独立採算を行なっても良いほどの統治面積と管理対象の住民を抱えてはおります。
しかし、行政局として立ち上がった期間からすればたかだか2年や3年。
管理対象区域への慈母寺…すなわち地方支配の拠点設立もまだまだ進めて行かなくてはならない立場ですので、本宮財務局による経理や財政の管理代行を受け入れているのが実情なのです。
(確かに経理事務要員の派遣それ自体は有難いのですが、点検が厳しいのですよ…)
(何が困るって、経費使途まできっちり調べ上げられますからねぇ…)
(オリューレさんはまだ無駄遣いしてない部類ですけど、イザベルさんやマリーさんはちょっと…)
(田野瀬さん、財務部のお手伝いとか文教局のお仕事と兼務で大丈夫なのですか…)
(そこのエロ皇帝が姉…まりりに掛け合いやがったせいで、財務局に私の本体を置く羽目になりましたのでお気遣いなく)
この瞬間に舌打ちの意思が数名から漏れたのは気のせいでしょう。
ええ、文教局長の田野瀬麻里子さんは本来ならば日本の財務省に在籍していた人物です。
そして、痴女皇国に招かれた当初は両替処と称した当時の財政管理部門を仕切る立場に早々と出世。
両替処を財務部、そして財務局に押し上げ、マリア様から数えると先先代金衣のデルフィリーゼ様を復活させて局長に招請して痴女皇国の財政管理を大規模な国家発展に対応させた業績で知られた人です。
例の少年少女を集めておめこさせる孤児院構想やら、宗教的な教育教程を受けさせて痴女皇国への忠誠を高める提案を自らの手で実現させよという話がなければ…いえ、あっても財務局との実質兼任をなさっておられた方です。
つまり、この方が財務局にいてお仕事をしていると言うことは、支部経理や財務の間違いはもとより、無駄遣いや不正をしようにも困難ということです。
実際、私の裏金作りを暴かれた云々がありますので、正直、仲が良い人物とも言えない…。
(バナナやパイズリナップルにマンコーだけじゃなくて、珈琲淫や槍大麻にチンポピーに…それに乾燥粉末とはいえ、インポタケの密輸による裏金作りを密かに認めてるじゃないですか…あれ、絶対に他の支部に気づかれないでくださいよ…南洋行政局と慈母寺の秘密予算口座を認めたベラちゃんも泣きますからね…)
(承知しております。その代わりにと言ってはなんですが、聖院学院本校に特待生として留学させております選りすぐりの美少年、局長のお好みに合えばよろしいのですが)
(財務や教育者向けの人材として推薦を頂いております件は感謝しております…それ以上言わさんでくださいっ)
(ほほほほほ、せいぜいご活用下されば重畳)
ええ皆様、口封じや口利きとはこのようにするものなのです。
なにせ、堅物で知られた田野瀬局長と言えど、室見女官長代行が草案を作成した女官性癖調査票にきっちりばっちり、その性癖趣向趣味が記載されておりますのを見れば、どのような少年少女を向かわせればお気に召すかは一目瞭然。
(どういう訳か、オリューレさんは女官管理室長執務権限を有したままなのですよねぇ…名目はリミルシューネさんやおキヌちゃんとの女官管理室業務引き継ぎのためですけどぉ…誰のおかげでそういう本宮行政への干渉権限を持てているかを時たま思い出して頂けますと幸いですけどぉっ)
なんと嫌味な皇帝陛下なのでしょうか。
(だから天塩にかけて育てているカルノを味見して下さいよってお願いしておるんですけどぉっ)
まぁ、こういう皇帝陛下や本宮幹部への付け届けめいた諸々、どこの支部でも大なり小なりやっておることのはず。
ティアラが以前、イザベル支部長が人身御供に私を陛下にやたら差し出そうとするとか言って泣いていましたが、こういう贈賄収賄めいた行為は何も南欧支部だけの専売特許ではありませんよ。
むしろ、如何に他の支部に先駆けて密かに行うか、そして他よりも有利な立場で行うか、なのです。
(この辺りはこのわたくしですらオリューレには今ひとつ先を行かれる分野。しかしながら、我が弟子がわたくしをないがしろにする事もないでしょう)とまぁ、聖院時代からの実質的なお師匠様たるシェヘラザード様からも一目置かれるようにもなれるのです。
「これというのも、管轄支部の予算はその支部の経済規模や換金作物や産品に左右されてしまうからでもあります。支部間の格差を防ぐためにも、建前では本宮が過不足ない予算を供給する代わりに、経理不正がないかを厳しく調べざるを得ないのですよねぇ…本音ではお金を渡して好きにせぇって言いたいところなんですけど」
「陛下のお気持ちもわかります。しかしながら、何処の国であろうと、金蔵は無尽蔵にあらず。しかも無駄遣いをしそうな者共ばかりとあっては、マリア様の仕置きも納得出来ようものだね」
シェヘラザード様が申される件は、言うまでもなく各地の金山や銀山など、主な場所から価値のある石をあらかじめ掘り出しておいて痴女宮の地下で預かっている件です。
何を隠そう、我が南洋行政局でもグラスベルク鉱山という巨大な金山を抑えられている立場だったりします。
しかし、この金山は連邦世界の技術でないと採掘が難しいとあって、恐らくは南洋王国では存在すら掴めなかったのではと言われておりますけどね。
(その金山の存在を教えて南洋行政支局の予算枠に組み込んだのは誰かを思い出しながら、あたしの足や股間を舐めてもらえると嬉しいんですけどねっ)
はいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはいはい。
(はいは一回で充分ですっ)
でまぁ、裏で言い合いをしておりますが、少し真面目にお話をさせて頂きましょう。
この支部予算の中には当然ながら、その支部に属する聖母教会関係者の人件費も含まれております。
実際には衣食住を痴女宮や支部勤務者同様に痴女皇国が面倒を見ておりますから、正規の賃金ではありませんが、とりあえず千人卒になれば、大抵の国では過不足なく暮らせるような額のお給金も、報償金の形で頂けます。
で、この場では僧侶や尼僧の階級や待遇についても、聖母教会と南洋慈母宗とで格差が生じていないかを確認しながら、ベラ子陛下を中心に私やカルノに教える立場となるようです。
まず、僧侶の役職は現状ではこうだという表、エステラーネ院長のぱそこんを借りた陛下が投影出力なさいます。
聖母教会 東方聖母教会 南洋慈母宗
教皇 全地総主教 大僧正 千万卒以上
枢機卿 主教・総主教 中僧正 百万卒以上
大司教 掌院司祭 小僧正 十万卒以上
司教 典院司祭 大僧都 一万卒以上
司祭 司祭 中僧都 千人卒以上
助祭 輔祭 大律師 百人卒以上
修道司祭 副輔祭 中律師 十人卒以上
修道助祭 堂役輔祭 律師 一人卒以上
修練士 修練士 学僧 ※
助修士 助修士 学侶 ※
※男子・女子・偽女種の性別強制変更処置については教派宗派により異なる
https://ncode.syosetu.com/n6615gx/127/
「東方聖母教会において、男性修道士は最終的に修練課程を満たしたとの認定を受けますと、指導偽女種…慈母寺における姦官とほぼ同位の立場に叙せられます。ですが、学侶から先に進めない場合は罰姦同様の助修士偽女種となり、このメテオラかアトスで人生を終えることになります…」
ああ…それは、私たちの方では亀地獄島またはボロブドゥール本院の外庭送りということですね…。
(このメテオラでもそうですが、主要施設を地下に置いた理由は…そういう処分の諸々を外界に見せぬためでもあります…)
「で、実際のところ、聖母教会教会はまず確実に司祭が仕切ります。そして、慈母寺では住職という役名で住み込みの長を呼称しますよね」
そして、あれを生やした女官…千人卒でなければ司祭や住職の職務を遂行できない件や、教会の規模によっては助祭や輔祭も千人卒女官が就任する事を聞かされます。
「このメテオラの直下のカランバカではどうなのでしょうか。修道院があるとは伺いましたが」
ええ、そのカランバカ修道院とやらまでの間に作られた山道をダンケ号で往復する練習行路、乳上から申し渡されております。
この時代では人口二千人程度のまぁ、村としては大きめで町というべきところですか。
「カランバカの人口を鑑みますと、本来は司祭も輔祭も千人卒が望ましいところではあります」と、エステラーネさんが申されます。「ですが、ここメテオラからは短時間で行ける場所でもあり、司祭候補者の実習に適していることもあって、教育役の司祭の元に派遣された修練士が輔祭役を1ヶ月交代で勤め、教会実務習得の助けとしております」
なるほど、教育実習用の修道院として運用しておられると…。
つまり、私が今からカランバカに赴くのは単なる運転の練習だけではなく、実際の東方聖母教会の日常実務を見学することになるのですね。
「その通りです。という訳で、オリューレさんの運転するダンケ号は教習仕様として助手席側にブレーキがついたものを用意しました。で、監督役にあたしが乗り込みますよっ」
ええ…何かこう、ベラ子陛下の宣言に恐ろしいものを感じるのですが。
これはもう、絶対にカランバカで何かを見せられる話になるのでしょう。
恐らくは、未成年の方には申し上げられない事となるのかと…。
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べらこ「もちろんです」
べらこ(ええ、こうなりました)
https://novel18.syosetu.com/n0112gz/208/
おりゅーれ「運転慣熟だけにしませんか」
べらこ「あきまへん。聖母教会の実態、カルノ君にも見せる必要があるのでしょう?」
おりゅーれ「それは灸場かナッソーに行ってからでも…」
べらこ「そもそも灸場は罰姦聖母教会所轄。東方聖母教会とは微妙に違いますよっ」
おりゅーれ「うううううう」
かるの「僕はどちらでも良い気がするんだけど…」
べらこ「細かい違いがあるのですよ。それに…視察のために、カルノ君を頂いてはいないのです…」
かるの「陛下。お言葉ながら、僕はオリューネ…オリューレに飼われている身の上です。南洋王国の王たる立場ではオリューレを養っているかのように振る舞っておりますが、実態は真逆。出来れば、僕ごときではなくもっと陛下に相応しい少年をお相手する方が格式としては…」
かるの(公式の場だとオリューレって呼んだ方がいいんだよね…)
おりゅーれ(ですよ。カルノの気遣いは嬉しいのですが、私より上位の騎士資格者が同席している時は女官呼称のオリューレで構いませんよ…)
べらこ(オリューレさん…カルノ君って、何か妙にしっかりしてませんか)
おりゅーれ(ベテハリとアニサの子供ですよ。そりゃ陛下、しっかりもしておりますって…)
べらこ(そ、そうですね…そして、うかつに無理強いをするとベテハリ君とアニサちゃんが怒りますよね…)
おりゅーれ(南洋慈母寺の大僧正と小僧頭を誰かに交代させるならば問題はないかと)
べらこ(実際には無理でしょ…あの盆踊り風習を発案して、悪霊を退けたという伝説の男女だからこそ慈母寺を率いている設定なんですよ? あの二人の代わりを考えるならばもっと南洋王国の民衆の支持を得る逸話の持ち主でないと難しいじゃないですか…)
おりゅーれ(それがわかってるんならカルノを食べるなら食べるで慎重にお願いしますよ…ただでもカルノは指導偽女種の身体で、子作りにも慎重にならないと寿命の問題が出てくるのを聞かされて冷や冷やしているんですから…)
べらこ(このオリューレさんの発言、実はカルノ君について、結構大事な話らしいので覚えておいてくださいね…)
おりゅーれ(アトスでも本当は、ミルチャ君の子種で私が妊娠とか、カルノの種で乳上が孕むとか恐ろしい話があったのです…これを断ろうと必死になっていた理由がこれなのです…ですから陛下も無茶はなさらないでくださいよ…)
べらこ(ううううう、あたしのお相手はやはりクリスおじさま)
他全員(意外と扱いが大変な皇帝陛下を制御できるの意味でもクリスさんって、貴重なんですよ…)
くりす(それもあって、僕の意志や感情はなかなか聞き入れてもらえないんだよね…)
べらこ(おじさまの頭上にも、いつか幸せの星が輝くのです。ほら、あの北斗七星のすぐそばの星のように)
他全員(それ、輝いてたらあかん星…!)




