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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど


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ラ・マンチャの女 -Mujer de la mancha- 4

(ふむ…確か我が国では故郷ともども、大地が揺れるのは天変地異に等しいまでに年老いた土地であるとは習いましたか)怪訝な顔で私の方をご覧になられるイザベルさんですけど。


ですが、これ…本当の事なんですよ…。


(イザベルさん…りええ…室見国土局長が言ってる話は本当なんだ…)後ろの車両に乗るまりりが絞り出すような心話で告げる、衝撃の発言。


(連邦世界では2011年5月に起きたんだけど、マグニチュード5級の…日本で起きたとすると全く被害がないわけじゃないんだけど、まぁ大被害には至らない規模の地震があったと思って欲しい。だけどさ、地震に対応した建物を作ることを法律で義務付けられている地震大国の日本とは違って、それまでに地震らしい地震がろくに起きていないスペインとじゃ、事情は全く違うよな)


そうなんですよねぇ…この地震…スペイン南部地震と称されていますけど、死者9人、負傷者167人、重傷者3人を出す被害となっています。


2018年に発生した、より大きな規模で揺れた大阪府北部地震。マグニチュード6.1と測定されたその地震の被害を見てみますと…大阪府内で死者6名、2府5県で負傷者462名(うち重傷者62名)となっています。


直下型地震だったスペイン南部地震とは揺れの性質や影響範囲が違うとしても、マグニチュード値が1つ跳ね上がればそのエネルギー量は32倍からになると言われておりますので、条件が同じであればスペイン南部地震はもっと多数の死傷者が出ていた可能性があるのですよ。


または、地震のエネルギーが1/32だったのに、負傷者は大阪府北部地震の三分の一にも達していて、更に死者はほぼ同様。同じような交通事故を起こしても、車によっては生き延びるか死んでしまうかどころではないという私の思い、ご理解頂けますでしょうか。


そう、地震というものに縁がないに等しかった国に、いきなり不意打ちのようにこんなもの…かなりの規模の地震が来てはたまったもんじゃありませんよね…。


更にこの地震ですが、さすがに原因調査が入っています。一体全体なぜに地盤の安定したスペインで起きたのか、誰しもが疑問に思ったのでしょうね。


地盤沈下が原因だというのは、その際に判明しているのです。


そう…この地震は「人災」と分類されても仕方ないだろうと思えるものなのですよ…。


(イザベル陛下…で、穴を掘った理由の一つがこの地下水汲み上げが原因となる地震対策なんですよ…地下水脈の状況を調査するのと、将来的に予定している地下水源池を設置する場所の選定のためにも、主要な地域の地下を調査する必要があったのです)


えーと、これは私、室見理恵の国土局長としての管轄事業となります。


そして、痴女皇国世界でのスペイン王国、単なる独立した専制君主国家ではありません。


現時点では王族や貴族他、一部の要人にのみ教える形で情報開示を限ってはおりますが、痴女皇国南欧支部として一国丸ごと拠点化する方向で施政施策を進めております。


つまり、スペインの領土は全て痴女皇国の国内領土扱い。


勢い、スペイン国土の開発はまりりの出産代行者…つまり、第二のお母さんと言うべきクレーゼ通商局長と連携して進める話となります。


以前からお話が出ております通り、スペインが海外を侵略して獲得した植民地から得られるはずだった莫大な金銀、特に銀。


これらはほぼ全て、まりりやエマちゃんの仕業で回収されています。


そして、かねてからこの聖院世界シリーズのそこかしこで語られている処置が採られました。


つまり、精錬されたインゴットの状態で痴女宮地下の巨大金庫室に隠されています。


そして、必要に応じて元来の保有国に貸し付けられたり、スイスはレマン湖のほとりに存在する痴女皇国欧州地区本部のあるシヨン城の地下深くの金庫室に移されて聖母記念銀行欧州本店の信用資本や貸付流動資本として運用されています。


ただし、この措置はあくまでも温泉が湧き出るかのように産出される銀を浪費したあげく、自国の破綻のみならず欧州経済に悪影響を及ぼした連邦世界での金銀産出国の轍を踏まないように考えての事であり、痴女皇国が鉱物資源をガメて溜め込むためではないとお断りしておきましょう。


(ちなみに連邦世界では日本もこれ、やってんだよな…大量の銀を貿易で浪費して、明や欧州の銀相場暴落を招いてるからな…)


ええ、鉱物資源の管理も、財務局と連携する必要はありますけど、私の指揮する国土局の所轄案件でもあるんですよ…。


で、同様の処置は国家開闢(くにびらきした)の祖同士(かみさまどうし)が実の姉妹関係にあって、かつ国同士が密接な提携関係にある八百比丘尼国…つまり痴女皇国世界における日本に対しても行われていまして、佐渡金山や菱刈金山に石見銀山に生野銀山といった有名どころはあらかた掘ってインゴット化した上で、痴女皇国で預かる形態を取っています。


ただ、比丘尼国に置いておいた場合の災害リスクや、比丘尼国内の輸送事故…特に船舶輸送の際の海難事故を回避するためでもありますので、比丘尼国の使用分はかなりの量が密かに京都府北部に該当する山地にある大江山…比丘尼国の本当の朝廷の拠点である元伊勢大神宮の地下に戻されてはいるそうですけどね。


あと、硫酸被害を阻止するために、足尾銅山や神岡鉱山、そして別子銅山の銅は同様の処置を取って強制全採掘処置の憂き目にあってますけど、こちらの分の銅は三河監獄国内の資源管理施設で保管することになっていますよ。


まぁ、採掘済みの資源のうち貨幣原料となるものは財務局…聖院初代金衣のテルナリーゼ様から数えて二十一代目になるのですか、まりりから見てお祖母様になるデルフィリーゼ財務局長の管轄となりますから、わたくし室見理恵が金銀の正確な保有量を把握していなくても仕方ないねと思って頂ければ。


なんせ、連邦世界の金星や木星衛星のイオから大量にガメまくって…金だけでも3万トンは絶対に引っ張って来ているはずなので、金本位制度経済であれば痴女皇国がお金に困ることはない。これだけは断言できるでしょう。


とりあえずは、お金に困ることはないのが我々です。


しかし、お金があっても買うものがない…更には売ってくださる側にも売るべきものがないとなったらどうなるのでしょうか。


その懸念の対象となるひとつが、食料…特に、農産物でしょう。


農産物の不作が原因で起きた暴動や戦争は歴史上、枚挙にいとまがないのではないでしょうか。


特にこの冬から痴女皇国の勢力下に置いて、その影響力を削いでしまおうとしている北方帝国。


このおそロシアな国は基本的に、暖かい気候の下にある農地を含む領土を求めて、常に軍隊を南下させてくる性質が懸念されています。


更に、欧州食糧事情で申し上げますと、自給率が高く輸出すら可能なフランスが異常なだけで、ヨーロッパで安定した農業が見込める国って、結構少ないみたいですね。


これは、産業革命以前に東欧の国々が鯖挟国と戦争をしたり、該当地域の内紛や民族間闘争の歴史を紐解けば…。


(あのー室見局長、こちら(痴女皇国世界)でも似たような事になっておりましたから、何も深く考えずとも私に聞いて下さいましたらぁっ)ああ、乳上ことアルテローゼ東欧支部長様、まさにその東ヨーロッパの農業事情にお詳しかったのでしたね…。


(うう、最近はあまり出番がございませんので…というか、早くその鉄道、こちらにも敷いて下さい! いえ、とらっくでも構わないのですけどね…)


ええ、承知しております。今やダンケ号として痴女皇国女官で知らぬ者とていないどころか、動かせない女官の方が少なくなって来ているハ○エース、東欧支部だけでも、なんと100台以上を運用しているありさまです。


(うちの支部はジーナ様の昔の実家のご家業を生業にしておるわけではないのですよ? みんな馬じゃなくてダンケ号に乗りたいとか聖母教会につき1台は必要とか言いやがるせいで、いつの間にやら…あとあの恥ずかしい文言が書かれた()()()()、そちらに戻したはずですのに何故かうちの支部に来てましてね…あたくしがダンケ号を使おうとしても、あれしか空いてない事ばかりなのですわよ!)


ああ…あの恥ずかしい高収入求人仕様ですよね…確かに車両管理はうちの運輸部でやってるんですけど、私にもどうにもならない事はあるんです…。確か、早苗さんの四駆仕様の鈴菌のトールワゴンもいつの間にか欧州に行ってるはずなんで、それ、どこかの支部から持って来て使ってもらって構いませんよ…。


(更に言うたってくださいよ…オラトリオがあるのになんで精気発電してるんかとか…あれ、エウロパやタイタンから資源引っ張るために使ってるマスキャッチャーとか回収設備やら燃料転換設備で使う電力をまかのうたり、果てはアメリカ大陸で地下水汲み上げるポンプ回したりするので()()()()ですねんで…とてもやおまへんけど、電車走らす電力まで作るんやったらもう1セット組まんと無理っすわ…)


えっと、国土局建設部長のエマちゃんこと皇配騎士エマニエルさんが泣いています。


オラトリオというのは、北欧いけにえ村作戦で兵器として使用されていた電子ビーム砲のことですね。


元来は太陽付近の公転軌道にあるダイソン・スフィアというのですか…リング状の発電モジュールとペアになってる送電用マイクロ波発振モジュールの…。


(オラトリオ・タングラムとアルス・ノーヴァ。この二機のうちどちらかでルナ・ラグランジェ点に設置した中継アンテナに送信します。で、さらに地球圏の北米大陸とサハラとゴビ砂漠に設置したレシーブアンテナ群に送り込むのが、北欧作戦で電子ビーム砲として使ったオラトリオ・ラウダとマドリガーレとバッラータ…対地送電モジュールっちゅうわけですわ)


なるほど。本来なら地球で使う電力の半分くらいはそれでまかなえるらしいんだけど。


(その電力を使うて環境制御してまんねんがな…ついでに地球圏に到達した水分の氷やら凍結メタンの再溶解と、メタンの石油燃料転換処理に使ってますねん…)


はぁ。なんでダンケ号の燃料、いくらディーゼルエンジンのものが多いと言っても、地球上の石油を掘らずに賄ってられるのかと思ったら、そういう調達方法だったのね…。


(ほんま欧州地区への燃料の配達だけでも大変なんすからね…車を持ってる聖母教会にガソリンポンプとタンク置くだけでもうちとカシウスとロンギヌスで手分けしておらおらと設置工事していったんですよ? ううううう)


でもエマちゃん、あんた正体が人型救世主兵器のインマヌエルでしょ…あんたの無尽蔵らしい出力と能力の対消滅発電でなんとかならないのかと思うんだけどぉっ。世の流行は電気自動車でしょっ。


(どこの欧州の意識高い系ですか…冬場の氷点下の気温だとてきめんに性能落ちるんですよ? 全固体電池採用タイプは高いんですし…)


(エマちゃん…電気自動車にしたら、燃料を配りに行く手間が省けるよ…?)


(あきません。理恵さん…やろう思うたら、確かにうちだけでもそれ、出来ますよ。せやけどですね…ベラ子かーさまとかジーナかーさまのケツをあーだこーだする楽しみが奪われるんとセットでっせ。更にはダリアさんの黒光りしてる黒光りを以下略。その楽しみを奪われるのと引き換えになるんを了承してもらえるんやったら、うちだけでも理恵さんをMIDI化できますさかい、それをご自分でやって欲しいんですねんけど)


えええええっ。なじぇ上司(あたし)に振るのよっ。


(りええ…ベラ子はともかく、あたしはMIDIボディ化する弊害を理解してたけどよ、人間の感情はまだしも三大欲求は一旦なくなるんだぞ…ベラ子には痴女種能力を発揮してもらわんと困るから、あえて痴女種時代の性欲と食欲を無意識のうちにエミュレーションさせてるだけなんだよ…)


(あのですねぇパイセン。エマ助(ふしょうのむすめ)は今でも来る日も来る日もドカ○仕事でやさぐれてて、敢えて人間をやめるお酒と健康にものっすごい悪い煙草なしでは生きて行けない姿に身をやつしてストレス発散してるわけじゃないですか。だから、人間発電所をするならパイセンがやってくれって…あ!)


何よベラちゃん。いくらエマちゃんが一応はベラちゃんが産んだ娘さんだからって、実の娘ひいきは…え?


(ほら、パイセンはそもそもほぼ毎日が人間発電所じゃないですか。女官長代行が必須だった日々でもないのに、膣が乾く日はないとばかりに毎日毎日精気授受。…あ、いい機会だから読者の皆様には申し上げておきますよっ。みなさん、パイセンってあたしの陰に隠れてますけどねぇっ、オーニジョルノ…エブリディ○ァックライフにどっぷり浸かってんですよ? その姿、まさしく大根を使う人間発電所のごとくなんですよ? )


こらぁ。あたしはそこまでベラちゃんのようにはなってないわよっ。


全くもう。


しかし、話を戻しますと…そのオラトリオ・システムを動かして現在の痴女皇国世界で産業革命を起こしたとしても、使用する電力他の近代的なエネルギーを全てまかなえるわけでもなさそうですね。


しかし、大規模な気候変動が原因で起きる旱魃(かんばつ)、そして飢饉(ききん)は回避すべき大災害です。


さて、スペインという国を気候区分で分類すると、大きく分けて三つの性質を有する国となります。


まず、大西洋に面したあたりの北部が該当する海洋性気候。


ここに該当する地域は比較的温暖で、雨にも恵まれます。


ですが、残る2つが問題なのです。


で、マドリードを中心とした中央部は、昼夜で気温の差が大きく、夏は暑く冬は寒い大陸性気候となるそうです。つまり…砂漠地帯とだいたい、同じ。


そして今から向かっているセビリアやマラガなど、地中海に面した南部から東部については、イタリア南部やギリシャなどと同じく地中海性気候。


そう…スペインは…国土のかなりの場所に、あまり雨が降らない土地柄なのです。


その年間降雨量、国土全体の平均値としても640ミリですか。東京が1,520ミリなので、その半分どころではありません。


そして、そんなにまで雨が降らないとなりますと、国民全てを養うだけの農業生産量を見込むのは厳しいとなりますよね。


そうです…スペインが海外植民地を獲得していったのは、単に黄金の国を追い求めただけではなく、そこから得られる利潤を強く必要とする諸々の事情があったのです。


(まぁ、人口が少ないうちはそんなに困ることもなかったんだよ。ただ、キリスト教が存在した連邦世界だと、宗教戦争だの色々あって、戦争のためにも資源を大量に必要としたと見るべきだろうな)


で、19世紀から20世紀…特に第二次世界大戦が終わりしばらくするまでの間に、スペインはその広大な海外領土のあらかたを失い、自国民が食べるべき食糧を本国の国内で生産するか、もしくは他国から購入せざるを得なくなります。


そして、農業のために必要な灌漑用水のうち、少なからぬ量をアメリカ同様に…地下水に求めたんですよ…。


更に、何十年も地下水源を汲んだがために、日本でも多くの工業地帯で起きた地盤沈下がスペインでも発生。


あげく、先ほど申し上げました直下型地震の原因になったそうです。


本当に、仕方がないとは言えど…人災だって私が言う理由、お分かり頂けましたでしょうか。


で、痴女皇国世界ではそうした問題を回避するために、連邦世界での水資源確保の手段を踏襲しています。


で、私たちがもともといた地球、まずはサハラ砂漠のど真ん中…連邦世界だとサハラタワーという軌道エレベーターが存在する付近に人工的に設けられた大きな湖同様の貯水湖を設けました。


この水源は…木星衛星のエウロパから得ています。


表面を厚い氷に覆われたエウロパからかき氷よろしく削り出して、付近の外惑星開発用の水資源にするのは連邦世界でも行っていますけど、エウロパの氷はそのまま利用する…特に飲むには問題ありなんです。


前に、聖院のマリーさんの結婚式をした際に金星と、それから木星に行ったお話があったかと思いますけど、その際に木星のガリレオ衛星群と言われる場所については、高濃度の放射能汚染や電磁波の影響を受けるために人がまともに生きていられないと説明を受けています。


そう、そのガリレオ衛星の一つのエウロパも、放射能汚染がすごい場所なのだそうです。


で、不純物除去にあわせて放射能汚染を取り除くために純水化して再凍結した氷を低コストで惑星間軌道に乗せて地球圏まで飛ばして来て、それをキャッチして地球軌道上の施設で再度液体化する処理を行なっていると。


この液体化したお水は軌道上の施設で消費されるほか、軌道エレベーターによって地球に降ろされて砂漠化防止資源にも使われているそうです。


で、まりりとエマちゃんは、この手口を模倣してエウロパの氷から巨大氷塊を再度作って地球に持ち込み、主要な砂漠地帯に水源池を建設する際の湖水にしてしまう方法を思いつきました。


そして、その水源池の場所に選んだ一つが…スペインだったのです。


ただし、あちこちに人が住む街がそれなりの数で点在するスペインです。


いきなり巨大な湖を作るべきか。


そして、同様の状況にある鯖挟国で降雨量を増やす試みを試そうとした際に問題が指摘されました。


と申しますのも、トルコ特有の煉瓦や土を使う住居の街並みに雨を多量に降らせると、家が崩れかねないとなりまして…更にはアラビア半島の遊牧民でテント生活をしておられる方々にも影響大であろうと、シェヘラザード中東支部長から連絡が。


で、類似の危険がないかをイタリア南部やギリシア、更にはスペインで調査しましたところ。


(イタリアやギリシャのブドウや、バレンシアオレンジの味が変わる可能性が高い…水が少ないからこそ果実に糖分が詰め込まれて甘味が増すんだよな…)


こ、これは確かに大問題でしょう…脚気防止のためにも船員向けに良いと宣伝を打っているオレンジがまずくなってはまずい話なの、私にも理解可能。


(パイセンは後でラスプーチンちん使って駄洒落菌検査の刑ですね)


ベラちゃん…今はR15版よ…。


それはともかくベラちゃん。あんた、ギリシアやイタリア産の葡萄ってさ…ワインの原材料でしょ。


甘味が減るって、糖分の少ないブドウから作るワインだと渋みや酸味がきつくならないかな…。


(んぎゃああああ! シチリアレモンはもちろん、トスカーナワインにも影響があるのでは…)


(そうなのよ…雨が降れば皆喜ぶ訳でもなさげなのよ…)


あ、ちなみにベラちゃんのイタリア贔屓(ひいき)は一応、許されています。


連邦世界ではルクレツィア外務局長…るっきーがお母さんという扱いで、イタリア国籍を取得しているからでもありますけど、イタリア人として動く方が色々と都合がいい事があって、ベラちゃんが連邦世界で動く時はローマやニューヨークを拠点として活動することも結構あるんですよ、本編にあまり話が出ないだけで。


(本当は特定国家への肩入れ、比丘尼国以外は許されてねーんだけどな…あと英国とNBはワーズワースお祖父様やクリス父様の関係があるから許可されてるようなもんだ…)


それにしてはフランスとの繋がりが結構、ありますね。TGV採用に至った決断に大きく関与したりええが言うなと言われそうですが。


(ルルドがある。これは二代目様の活動拠点だし、聖母教会としても痴女皇国世界のルルドは将来的な聖地として抑えたい。何より…ポワカール閣下、あたしらに助けてくれって頼んだじゃんか)


そう、これが大事なのです。


修羅県への肩入れが多いのも、三河監獄国に多額の設備投資を重ねて近代化を強く推進したり、あげく連邦世界の監獄社とも提携を結んで自動車購入どころかNBへの輸出やノックダウン生産の道筋を開いたのも「助けてくれ」と頼まれたからなのですよ。


(そして千代田区一丁目一番一号のご一家あるじゃん、兼業農家で学者先生のおうち)


というより日本の皇帝ご一家でしょう、あそこ。


(皇帝より偉いんだぞ…まぁともかく、あそこから日本をよろしくと頼まれたからあたしらは動いてるわけでな…しかも、おかみ様の直系子孫だ。この依頼を断れる権力はあたしにもねぇ)


なるほど。


(まぁ正直、今回の輸出でも日本だけだったら破談になってた可能性が高かったからねぇ…昔の日本ならガンガン輸出する方向に行ってた可能性が高かったんだけど…スペインでも日本の車両、使ってた時期があったのよ?)


これは本当です。日本製の電気機関車を使用していました。


あと、ポルトガル語やスペイン語の繋がりかどうかはともかく、アルゼンチンやチリでも日本製車両…特にチリは現地向けの特急電車すら運用していたんですよね。


まぁ、今回は単に車両を渡すだけではなく、その国のインフラそのものを構築する大きなプロジェクトです。


計画概要を聞かされたJR各社幹部の方々の心まで読めておりましたから申し上げますが、これは我が社の手に余るだの、我が社だけでは処理しきれない等々、手に負えないという反応をお返しになった所あり、ならば社運を賭けてみるかと思われたところあり。


ただ…現地の文化文明水準が「中世時代そのもの」だという話をまりりがするに至ると、これが単なる鉄道輸出に留まらない、まさに産業革命に匹敵する地球規模の事業にお付き合いする事になると悟って頂けたようです。


で、英国を経由したNBへの輸出だけで留めることは出来ないのかという質問もありました。


ただし、これに対するテンプレス・レイルウェイズ取締役専務たる室見理恵(わたし)…つまり痴女皇国の国土局運輸部長としての回答は…ノーでした。


必ず痴女皇国世界での鉄道普及に関与して頂く事になるのが入札条件となります、と。


(うん…NBへの輸出ははっきり言えば隠れ蓑なんだよね…本命はあくまでもこっちへの事業関与。もっとはっきり言っちゃうと、輸送や運輸の専門家を出向させることの方が重要なんだよなぁ…)


そうです。飯島早苗さんの一件などと同じで、鉄道輸送に関するプロの知識や経験をそっくり頂戴する事の方が、痴女皇国としての目的としては大きいのですよ。


日本や英国、そしてNBと…泣きついて来たフランスを支援するために噛ませているだけで、この縛りがなければ我々独自で何とかしようとすれば、出来なくもないのですよ、鉄道普及…。


単に鉄道輸出に留まらず、スペイン王国の食料自給率カイゼンや文明文化の発展のために力を貸すのと、聖母教会の一大勢力地として整備を図ることが企画されているからこそ、痴女皇国も少なくない投資額を振り向けているのですよ。


そして、こうしたプロジェクトに噛ませやすいアルストム社…何分にも親の仇だと承知してはおります。


ま、ぶっちゃけガワ…すなわち車体やら台車の設計データがなくとも、エマちゃんに構造解析してもらえたら模倣や模造は一瞬で済みます。それも、アルストムからの出荷品よりも()()な品質で。


ですが、それをするとしてもとりあえずはライセンス契約を締結してからの方が合法的でしょう。


有り体に申し上げますけど、普通ならノックダウン生産などして元メーカーの設計から無断に変更するところ大であれば、メーカーは怒ると思います。下手をすると訴訟もの。


ただ…今回の車両生産、NBに工場作ってねという前提で契約を交わしてるんですよ…。


そして、思い出してください。


NBと汎銀河人類族連邦(U G H)と名のついている地球社会は未だ正式国交を結んでおらず、休戦状態にある()()だというのを。


つまり、NBでノックダウン生産する理由は、NB国民の雇用がまず、第一目的です。


そして、元来の仕様と違う改良をあたしたちが独自に施したとしても、それをライセンス違反として騒いだり訴訟に踏み切らせないためです。


更には、生体発電システムの技術流出を防ぎたいというのもあるとは聞いています。


(まぁ、あの精気駆動発電装置、痴女種でないと運用できまへんけどな…)


そりゃそうですね。これはエマちゃんの言うとおり。


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などとお話をしておりますと、列車は王の都と称されたシウダード・レアルを通過後、在来線を分けた後で再び地下に潜って行きます。


この先にあるプエルトリャーノという町、連邦世界ではカラトラバ騎士団という十字軍系の騎士団が拠点にしていたり、牧羊で栄えたもののペスト大流行の際に住民がほぼ滅亡して、わずか十三世帯が生き残っただけという歴史があるそうですけど、地形的には谷あいに存在する人口5万人ほどの町ですね。


ですが、ここも連邦世界のAVEと同じ場所に線路を敷くと、カーブがかなりきつくなってしまいますので、通過列車については市街地東側に設けた地下通過線を走って行きます。


そして、シウダード・レアル同様に在来線と共用する駅に分岐線を出す構造になっています。


地形の関係で、通過線は市街地からかなり離れた場所を通過して行きますけどね…。


(しかし、ほんっとーにトンネルばっかりなんだな…)


(地下貯水池への導水管や地上への配水水道管設置とセットの工事してんだし、そりゃトンネルも増えるわよ…それよりヒマなら作動試験を兼ねてでいいから、エンタメシステムが動くか見てよ…)


実はクルブの開放席、左腕側のひじかけにマルチエンターティメント装置…つまり、映像や音楽を楽しめる液晶モニタを装着できます。


ただ…操作に慣れないこの時代の人が変に触って壊すとまずいので、キャビンアテンダント役の女官が、大きなタブレットサイズのパネルを持って来て座席に取り付けてくれるサービス形態を取るように決めまして…。


(りええに言わせると、こだま号の列車電話機を持って来て座席横の差し込みプラグにコードを挿して使わせる感覚らしい)


(プリマ・クラッセ…プレフェンテでは天井からモニターが出て来て映画なり前の光景なりを映すそうですけどね)


(AVEの一等車がそういうサービスしてんのよ…イヤホンを貸し出そうかと思ったけど、座席に指向性スピーカーを埋めて解決したわ…本当にアナログの昭和世代以前の人たちだからね…何かを提供する際には試すってことをしないと危険だとよくわかったわよ…)


(わたくしもじっけんだいにされましたわっ。うう、痴女種化されて、その手の新しいものには慣れておるはずですのに…)


ええ、イザベルさんが何か自信を喪失しておられますけど、この時代の人には、たとえ簡単なものであっても、電子機器だの機械操作をさせる際にはお試しでやってもらって問題を洗い出す必要を痛感するようなことが起きた。


そう思って下さい…。


あ、ベラちゃん、あんたも自分の車のナビのボイスコマンドをミスって結局ナビ画面タッチしてんの、知ってるからね。


こういう時は国土局の盗まれ2号…二千万円くらいする監獄社製の高級四駆の操作性をありがたく思い…。


(パイセン。あのタッチパッドまがい。めっちゃ使いにくいんですけど。あれ使うならまだ指紋つけてもいいから画面をさわる方がましですよっ)


(知らんわっ。あんなもん付けた監獄社に文句言いやぁっ)


(りええ。おめー…だぎゃー語エリアだったか? あそこ微妙に語尾「ら」の浜松弁エリアとかぶってなかったっけ…)


(そうか、それでパイセンには駄洒落菌があまり効かないんですね…)


(ちょっと待ってベラちゃん。あんた、あたしに駄洒落菌変種、使ったわけ?)


(ほほほほほ。うるさいパイセンを黙らせるには有効と思ったから使ったまで。便利なものは遠慮なく使うのですっ)


(あのさぁ…あたしまで実験台にしないでよ…? それと、この列車の空調に駄洒落菌散布装置を組み込むとかいう提案はやめてね。ただでもスペイン仕様ってことで、モロッコやチュニジア仕様のアフリカ向けエアコンに近い強力な奴積むことになって車体設計に影響出てんだからね…?)


ええそうですよ。


デンマークがイスラエル向けに輸出した車両で天井から水がざばざば降って来たり、日本でも初期の0系新幹線電車で壮絶な結露に悩まされたり、あげくドイツが猛暑に襲われるたびにエアコンが止まってるというエアコン問題を回避するために、あらかじめ強力なやつを積んでんです。


(地下トンネルが主体だからあまり強化しなくてもいい気もしたんだけど、バルセロナ線やフランス乗り入れ時に地面の上を走ることも多くなるって話だったしねぇ…)


(いいじゃないですか。車内で猥褻行為にふけるとか、あるいは到着後に聖母教会に直行してもらう。これも痴女皇国らしくていいでしょう!)


(ええことないっ。椅子のクリーニング技術、この世界にはまだロクな方法が存在しないっちゅうねんっ)


えーと。まりり。


本気でベラちゃん、しばいていいかな、今晩。


それと、巻き添え食らいたくなかったらさ、あたしに白金衣っての貸すか、ベラちゃんにパワーダウン制限をかけて欲しいのね。


(提案がある。お前ら二人、開通式の翌日はロイヤル・ソブリンに乗せてもらえ。んでダンケルクかカレーで下ろしてもらうから、あとは二人で心おきなく戦え。今のフランスならちょっとくらい迷惑かけても何とかなるから)


(ねーさん。その前にシャルロットさんをマヨルカに連れて行く件があったでしょう…それか、その帰りにイビサで)


(あ、イビサかマヨルカを使われるのであれば、あたくしも室見様に加勢を。せっかくマリアヴェッラ陛下がお越しなのですから、頂くもん(精製精気)をきっちり頂くのが筋)


(えええええ、イザベルさんには定期的に聖母像で吸い上げや供給がなされるはずでは…)


(何を申しておられるのですか。臣下への慰労も王の務め。マリアリーゼ陛下。皇帝が臣下を慰労せずして何といたしますかというわたくしの思い、間違っておりましょうや)


(うん、わかった。確かサンティシマ型のグレカーレで毒盛り兄貴が来るっつってたから、ベラ子とりええ、帰りにはそっち乗れ。言っとくけどシャルロットさんの護送役だから役目放棄は禁止な)


待てやまりり。


確かマヨルカって、大きい聖母教会作ってたわよね。


(マルタ大聖堂。欧州向け助修士や修練士少年の教育修道院に使うからな。トレド大聖堂が完成するまではスペインの聖母教会統括修道院扱いにしてるはずだから、尼僧の配置も多かったはずだぞ)


(ねーさん。まさか、その尼僧女官に…)


(お前らが戦うだけで精気無駄遣いさせるのには忍びん。それにマヨルカなら公務で行くことになるから報償カットも避けられるし、精気授受の人数も黙って増やせるだろ!)


(まりり。あたし、ベラちゃんと違ってショタ趣味ないよ)


(パイセン。前から言ってるじゃないですか。あたしはクリスおじさまだから少年状態を愛でられるのです。それにベテハリ君は今や茸島保養所貴賓棟に必要不可欠な用人ですし、北方帝国攻略時の現地捕獲者の指導教育もやって欲しいから鍛えているだけなんですよ? )


取ってつけたような理由ねっ。


(とりあえずマヨルカは避暑地整備もしてるから、時期が時期だが海水浴もできなくはねぇんだしよ…それとお前ら、言い争いを延々と続けるから、あたしも嫌々ながらに手打ちを提案せざるを得ねぇんだからよ…)


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2022.11.21追加


マリア「でな、マヨルカって地名やマルタ大聖堂の話が出たわけだが」

ベラ子「あああああ…つまり、これがリンジーさんやシャルロットさんのお話…闇堕ちマリアで延々やっていたお話に繋がって行くということですか…」

マリア「まぁ、そういう事だな」

りええ「実はシチリアのパレルモ大聖堂あるだろ、モンレアーレ大聖堂」

ベラ子「はぁ」

マリア「あれは実の所痴女皇国世界では存在しなかった()()なんだわ」

ベラ子「…つまり、作りましたね…」

マリア「1184年竣工のアラブ様式を再現させてもらったわけだが」

ベラ子「いいんですか…」

マリア「でな。マルタ大聖堂だけじゃ、足らんのがはっきりしてるんだわ」

りええ「何が足らないのよ…あ、孤児や増えすぎた子供の受け入れ先か…」

マリア「そういう事だ。つまり…ケルン大聖堂でもそうだが、連邦世界の名だたる修道院は差し当たって尼僧または修道士を育成する養成拠点としての機能を持たせて行こうと思うんだ」

ベラ子「でも、それでは教育を担当する女官が…」

マリア「まずは教師から必要だと言いたいんだろ?」

ベラ子「あー、それでマルタやパレルモに手を…」

マリア「本当はアトス山を整備したいんだけど、あそこは東方聖母教会向けの教育拠点にしてぇんだよ…」

ベラ子「アトスも陸からは行けない厳しい場所ですよね」

マリア「だから都合がいいんだけどな。まぁ、毒盛り兄貴の聖隷院構想を発展解消させるようなもんだと思ってくれ」

りええ「要するに非行少年少女の矯正施設を作るとか、大型の孤児院を建設するようなもんなのね…」

マリア「そーゆーこった。だからここでちょっと、闇堕ちマリアの方で進めてたリンジーさんの話と連動するエピソードが向こうに入るらしい。だから↓の続きと合わせて読んでもらう方がいいようだな」

https://novel18.syosetu.com/n0112gz/161/

ベラ子「まためんどくさいことに…」

りええ(あとですね、ベラちゃんがクリスさんといけない事を重ねているのも知っといて欲しいんですよ。本当にあの2人と来た日にはですねぇ)

ベラ子「冤罪です…」

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