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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど


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ラ・マンチャの女 -Mujer de la mancha- 2

さて、ここはマドリードのオリエンテ宮殿すぐそばのプリンシペ・ピオ駅。


では、地理の時間ですが…連邦世界同様、痴女皇国世界のマドリードには、大きく分けて3つの駅を作らせて頂いたとお考え下さい。


この3つの駅は、連邦世界のマドリードに存在する同じ名前の駅と、ほぼ同じ位置に作っています。


まず、連邦世界では従来の中央駅に該当する役目を果たしていたチャマルティン駅。


そして、北部方面列車やセルカニアスと称される近郊列車を扱っていたプリンシペ・ピオ駅。


更に、今回の高速線の主要拠点駅として連邦世界同様の場所に作ったアトーチャ駅。


このうち、プリンシペ・ピオ駅はスペイン北部やポルトガル北方への列車発着を目的として、1860年台に建設された歴史と由緒ある駅でした。


しかし、その後の路線建設やマドリードの発展に伴って次第に主要駅の地位を奪われて、連邦世界では近郊列車の発着駅と…他の駅を工事する際の臨時の始発駅として使われるくらいでした。


が、中世欧州の世界に近い痴女皇国では、そもそもマドリードの市街そのものがまだまだハッテン途上。


何せ、雅美さんが密かに寄越して下さったアンチョコによりますと西暦1500年代に開都した際の人口はわずか一万五千人、1600年代でも五万人を下回っています。


伝染病や大規模戦争を回避できている痴女皇国世界でも、マドリードの人口はせいぜい…。


(ごまんにんを超えるくらいですわねぇ。なにせここ、亡き夫が貴族を引き連れて開いた都でして…ようやっと都らしくなってきたところに王宮の火事とかですねぇっ)


と、またしても借金を増やされて憤懣(ふんまん)やるかたないイザベル陛下が(いか)っておられます。


ああ、オリエンテ宮殿は本当ならもっと後の時代に出来るとか、まりりが言ってたな…。


しかし、豪壮華美な作りはオテル・ド・マリニーはもちろん、エリゼー宮と比較しても劣らずといった具合でしょうか。


わざわざこのために融資を許可しただけはありますね。財務企画部顧問をしていた当時のたのきちがめっちゃ渋ってたらしいですけど…。


(いや…りええ、スペインは決して貧乏国でもないぞ)


まりりから訂正が入りましたが。


(痴女皇国世界でも浪費してたけど、連邦世界であまりに浪費が過ぎて国がコケたけどな…もともとスペインはカネを持ってたんだよ。植民地化した南米で掘ってたことの是非はともかく、銀1トンで1億円としてみろ。うちが握ってるポトシとグアナファトとサカテカスの銀だけで一万二千トンはあるぜ)


どっひゃあ。そりゃ、メキシコやボリビアにあれだけ大きな町ができたりするよね…。


(しかも当時の銀の価値って今とまた違う…よね?)


(どっちかっつーと銀貨1枚で何が買えるかだな。年代や国によって価値は変わるけど、ドレイクさんやネルソンさんとこの水兵なら1日1ペニー銀貨3枚。概ね九千円ってとこか)


(あの人たちはどれくらい貰ってんのかな。騎士称号持ちで貴族枠でしょ)


(変なところに目が行くな…日当24ペニーだからヒラの8倍ってところか)


(日当七万二千円かー…お船に乗ってない時を考えて月25日勤務として月給180万円…結構貰ってるよね…)


確か、ベラちゃんですら普段はそのくらいでしたかね。


はっきり申し上げますと、あたしはもちろん、ダリアよりもらってますよ、ドレイクさん…。


おこづかいのお話はこの辺あたりを参考にして頂くとしましてぇ…あたしとダリアの直近の業務報償金の明細、ちょっとだけお見せしますね。

https://novel18.syosetu.com/n5728gy/93/

https://novel18.syosetu.com/n0112gz/97/


Rie Muromi. 室見理恵 Million Suction(Limited Ten million)百万卒(限定一千万卒) Slut Visual. 痴女外観 Pink Rosy knights, Imperial of Temptress. 桃薔薇騎士団 Land Development Bureau Manager. 痴女皇国国土局長(Priestess. 女官長業務代行可能)


Rie Muromi. 室見理恵 H.A.1048 10er.


基本報奨金額 SOKR 60,000-

政務報酬初級 SOKR 100,000-

騎士職級俸額 SOKR 5,500-(私は騎士階級のランクが低めです)

女官管理手当 SOKR 50,000-(女官長代行扱い業務のおかげです)

特別管理手当 SOKR 50,000-(これ実は皇族扱いと育児手当の代用らしいです)


被服管理費用 SOKR -1,000-(私の制服はほぼ1種類ですから、経費がかからないそうです)

合計       264,500-


つまり、私でだいたいの月額、日本円に直すと50万円超え。


Dahlialiese Muromi. 室見ダリアリーゼ Hundred-Million Suction 一億卒 Slut Visual(ogre mode). 痴女外観 Commendatore, Order of knights, Imperial of Temptress. 痴女皇国統括騎士団長


Dahlialiese Muromi. 室見ダリアリーゼ H.A.1048 10er.


基本報奨金額 SOKR 80,000-

政務報酬中級 SOKR 200,000-

騎士職級俸額 SOKR 10,000-

被服管理費用 SOKR -2,500-

小計       287,500-


特別管理手当 SOKR 250,000-(これは統括騎士団長の経費負担目的だそうです)

合計      537,500-


そして、ダリアでだいたいの月額が100万円を超えるくらいですね。


ダリアは億卒…つまり完全な皇族な上に職務が全騎士を統括する立場なので、精気吸引実績で見ればいくらでも上乗せできかねません。


で、ダリアとアルトさんとベラちゃんとまりり、それからクレーゼ様やデルフィリーゼ様にベルナルディーゼ様のような億卒超えの金衣認定者は毎月の実績や持ち出し費用を鑑みて、月ごとに特別管理手当の金額が変わると聞いています。


(あ、ドレイクさんもネルソンさんも妻子持ちだし、あの人たちは結構な持ち出しもあるぞ。確か提督服とか自腹だったんじゃないかな。礼服の費用で困ってんなら後で聞いとくか)…ああ、ドレイクさんは確か出席されるのでしたね。


記念式典の前日にジブラルタル入りして、一般列車の試運転に便乗してそのままマドリードへ。


そして女王陛下の名代として祝賀祝いを渡し、記念列車に往復乗車後式典翌日にカディスからHMS ロイヤル・ソブリン号というお船に乗って英国にお戻りになるスケジュールを頂いていたはずです。


なお…女王陛下が来ないのは、世界初をスペインに取られて()ねているからだそうです…。


(本当は来たくて仕方ないのですよ…一応、来賓席をご用意頂いておりますかと)と、試しに聞いてみましたところ、ドレイクさんからこんなお返事が。


(サリアン様に本心を調べて頂いたのですよ…こういう時にそちら様のお力があると、要らぬ気遣いをせずに済みますので助かります。ははは)


あーなるほど。やっぱり来たから接待よろしくとやるわけですね。なるほど…。


(この時代の専制君主あるあるという気もするけど…)


(まぁ、お金も出して頂いてるんだし、最恵国待遇でお迎えするって通告してるんだから、あとはドレイクさんの説得結果次第だな! )


そう言えば、この時代のイギリスはまだまだ大国という認識ではなかったようですね。


しかし、海戦でスペインを負かしたり、陸戦でもフランスを押しのけるなど武力で他を押し退けて勢力を広げている最中だったはず。


ただ、痴女皇国世界ではそれをやる途中でまりりが介入しまして、NBや本国の意向を伝えーの武力恫喝込みの説得に及びーの。


更には軍艦や新技術の優先提供や、鉱物資源に植民地という名の首根っこを押さえたスペインとイギリスを手打ちさせて提携関係を無理からに結ばせるわ、南北アメリカ大陸やアフリカの開発利権を調整して互いに発展するように持って行ったのが痴女皇国世界での両国の関係です。


(むしろフランスを抑えて頂けるなら願ったり叶ったり。痴女皇国はもとより教皇庁やフランスにも伝手がある現在の女王陛下が率いるイスパニアが友好を申し出ているのに、この勝ち馬に乗らない話はないでしょうな)とはドレイクさんのお話です。


ちなみに連邦世界の同年代で欧州各都市の人口、比較するとですねぇ。


ロンドンが当時としてもそれなりの規模になってますので、それなりにウチは都会やでと大きな顔できそうなものですが…もっと大きな顔が出来そうな町がぁっ。


マドリード 49,000 バルセロナ 43,000 コルドバ 45,000

セビリア 90,000 リスボン 100,000 バレンシア 65,000

グラナダ 69,000 ウィーン 50,000 ロンドン 200,000

パリ 220,000 パレルモ 105,000 ローマ 105,000

ジェノバ 71,000 フィレンツェ70,000 ミラノ 120,000

ベネチア 139,000 ナポリ 281,000 アムステルダム65,000


(ベラちゃんさぁ…な、なんかこの時期のイタリア、割と人…多くない? ローマ帝国ならまだしも、この時代のイタリアって奴隷は一般的じゃないはずだし…スペインは確か、この時代の人口が一千万人を下回っていたはずよ…ポルトガルと合わせてようやく一千万人超えるくらいかな、資料によって異なるけど、少なくともイベリア半島には五百万人は住んでいたはずなのに…)


(ほーっほっほっほっ…パイセン、そりゃナポリに外交官が来るはずですよ…地中海の大港湾都市で、連邦世界ではナポリ公国の首都だったんですから…)


(んでもパリも大概、異常だと思わない? ベネチアが商業都市で賑わってたのはまだわかるけど…いくらこれが連邦世界のデータで、大航海時代だから南米なんかにスペインの人が移住してたとしても、ちょっとこれおかしいわよっ)


(マダム雅美、我が国はフランス同様縦にも横にも広い国、確か…この時代のフランスよりは狭いはずですわ。ただ…あの国、私の故国でもあり事情は知っておりますが、岩山や荒れ野も少なくないイスパニアの地と違って、畑を作れる場所には事欠かないのですよ…)


(イザベルさん正解。スペイン五十万平方キロ、フランス六十四万三千平方キロだな。生まれた子供の半分は大人にならずに死んでしまいかねなかった当時の連邦世界の地球の状況を考えても、パリがそれなりに食糧事情やらが良好なのはともかく…りええ、おめーの方がわかると思うんだけどな、スペインってその広さが災いして、ある程度の人口の町や村がそこかしこに点在してるじゃんか…あれでどこに線路敷くかって悩んだろ? )


そうなんですよねぇ、水場の問題とかあって、そこそこの水源が確保できる場所には問答無用で都市を作っちゃう感じなんです。それがイベリア半島に何十箇所もある上に、イタリアみたいに長靴地形で串刺しにして行けないんですよ…。


で、みなさんの世界のマドリードでは、在来線長距離列車と一部の高速列車(AVE)がチャマルティン駅、そして大多数のAVEがアトーチャ駅発着とされていて、駅で役割を分けていたと思います。


これは先述したスペインの国情が絡んでいまして、首都から放射状に道なり鉄道なりを展開せざるを得なかった上に、連邦世界ではまず蒸気列車から走り出しましたから、駅に到着した列車を再び走り出せるように整備するだけでも大変ということで、複数の拠点駅を作って対応せざるを得ませんでした。


ま、これは同じような事情を抱えていた上に、草創期は民間会社によって線路が敷かれたフランスも似たようなことになっているのはルルド編でも少し、話題に出ておりましたかと。


そして、オリエンテ宮殿から馬車なりを走らせてチャマルティン駅に女王陛下をいちいちお送りするのも面倒となりましてですね。


で、オリエンテ宮殿のすぐそばにある立地を活かした宮廷駅としての整備が考えられた結果、痴女皇国世界での貴賓列車はこのプリンシペ・ピオ駅の地下から発着することにしました。そして北への延伸は工事中ですけど、現時点ではJの字のような弧を描いて地下トンネルを建設してアトーチャ駅に繋いでいます。


で、アトーチャ駅から更に北へ向かう線路の途中に設けたのがチャマルティン駅でして、これまた現状では北方への線路は工事中であるものの、その先に伸ばした向こうに車両基地と貨物駅を設けています。


行き止まりの駅にしなかったのは、到着した長距離列車の清掃や機関車への補給整備付け替えを基地で行うためでもあります。そして、同じように到着後の貨物の積み下ろしに時間が取られる貨物列車を旅客列車とある程度切り離して走らせたかったからでもあります。


ちなみに連邦世界と違って、蒸気機関車の導入をすっ飛ばしているためもあって、マドリード市街地の線路はあらかた地下トンネルとして建設していますよ。これ、内燃機関に必要な燃料という可燃物を積まない生体発電動力車を導入したからこそ出来た荒技でして…。


で、本格的な営業運転が始まった(あかつき)には、チャマルティン駅が在来線列車の発着を主に担当することにしています。


そして高速列車はアトーチャ駅へ。更には一部の高速列車や在来線列車…はっきり申し上げますと王族利用を考えた列車はプリンシペ・ピオ駅を始発とすることを計画しています。


ただ、今回は本当ならばアトーチャ駅で出発式典を行う予定なのですが、イザベルさんの件がありますので試運転列車は臨時にプリンシペ=ピオ駅から出してもらう事に。


で、プリンシペ・ピオ駅から直接バレンシア方面に向かえる分岐トンネルも掘ってありますので、そのままマドリード市街の南側に出てトレドやシウダード・レアルを経由してコルドバやセビリアに向かうことも可能。


さて、プリンシペ・ピオ駅のホームに停まっている割と長い列車…全長400mを少し超える程度ですから、みなさんの世界の新幹線のぞみ号と同じ程度ですね。


その流線型の先頭車は、TGV東線や南東線他でおなじみ…ルルドにお邪魔する際に乗ったのと、色はともかく見た目は変わりません。


RENFEロゴの代わりにRFE…Reales Ferrocarriles Españoles.つまり王立鉄道のロゴが入っていたり、白い車体にラッピングテープで描かれた帯…連邦世界のAVE車両の赤と紫の帯が巻かれている辺りに、スペイン国旗がモチーフの赤と黄色に変わったものが貼られているくらいですかね。


それと、機関車の屋根にパンタグラフが存在しません。


あとで付ける事も出来るようにしてるのは知ってますが、今のところこの46900型というフランス流の形式名が与えられた機関車、その車体中央部にコンパクトに収まるように改良された生体発電機とインバータ回路が搭載されています。


そして…このS1919型という精気駆動TGVともいうべき列車、痴女種から直接に精気供給を受ける以外にも、一種のリモートドレイン処理によって駆動精気を供給される仕様となりました。


これ、比丘尼国やNBに納車する分のBD69型機関車はもとより、以前から運用されていた生体発電機で既に問題になってたんですけど、その燃料たる精気の充填に幹部痴女種を要するという点が運用の障害として取り上げられたんですよ。


つまり、万卒以上の痴女種が港や駅、または車両基地に出向かないと精気が充填できないことになります。


で、どないかならんかという話になりまして…駅舎または付近に聖母教会があれば、そこからの遠隔供給で精気を充填できるような改良型生体発電機が開発されました。


で、痴女皇国仕様のヘリカル水流ジェットエンジンや発電機は軒並み、この改良型に差し替えられて行っております。


あ、そうそう。


ベラちゃんがぶつくさ言ってた、自分がモデルの慈母観音像や聖母像。


これが実は…精気管理用の遠隔アンテナなのですよ。


あまりに遠隔地でより上級の痴女種女官に精気を貢納出来ない場合はもちろん、お船はもとより、今後は列車に対していちいち女官が駅に出向かなくても充填できるようにするそうです。


電波の代わりに精気を受信したり、逆に共有精気プール…特殊時空に存在するそうですけど…に神官や尼僧女官が吸い上げた精気を蓄積する役目があるようですから、そんな重要な機能を内蔵したものを簡単に作り替えられないそうですよ。


だからちょっとばかりエロエロな見た目で、しかもラスプーちんちん丸わかりの像にされたと言って泣いてるベラちゃんには気の毒なんですけど、仕方ないと思って諦めてもらいましょう。


むろん、今回お邪魔するプリンシペ・ピオ駅から王宮を挟んですぐ南にアルムデナ大聖堂という教会が作られていますが、そこにも珍珍を生やした聖母像がですねぇ…。


(いたたたたた! いきなり何すんのよ!)見れば、はりせんを持ちながら威嚇的な表情で仁王立ちするエロ皇帝がっ。


(パイセン…あたし、完全な女性形態でヌードモデルやったんですよ? なのにそんな仕打ちをされた上に、思いっきり笑われて水に流せるほど、あたしは人間ができてませんからね…? )


ぼうりょくはんたーい。


さて、皇帝の暴虐には今晩、絶対に仕返しするとしまして。


この46900型機関車、実は船舶用と比べて最大出力をかなり落とした型の新型生体発電機を搭載しています。


その代わりにコンパクトで軽く。


なにせ、連邦世界のフランス高速線LGVとそれに準拠したスペインの線路に対応するどころか、ヘタをするとより地盤の軟弱な八百比丘尼国での運用すら前提とした車両です。


軸重17トン未満に納める設計、必須。


そして、エマちゃんとアルストム・この木何の木イタリア社と本社と…更に豊川稲荷社と放出(はなてん)新車センター社他、日仏の鉄道車両メーカーが頭を悩ませた結果、ほぼTGVと同一仕様で誕生したのがこの、痴女皇国世界とNBに送られるTGV-Hシリーズというわけです。


「あ、室見さん、運転台の臨時添乗があると伺ったのですが…」見れば、S1919型のセビリア・バルセロナ方運転台の脇に壮年の制服の上にジャンパーを羽織った作業帽姿の男性が。


「あ、遠藤さん…ご無理申します、実はかくかくしかじかで」


「なるほど、とりあえず今日は私の指導で運転士の方をお教えする予定でしたが、見学であればどうぞ」


そうです。以前の米沢行きの際に救援列車の指導助役として添乗された緑文字社員の遠藤さん、今回のスペイン開業時の指導職員として出向して来られた立場なのですよ。


ちなみに選抜理由、私たちと知り合って特性を理解されたという事で、その後もBD69開発はもとより、このクラス369の製造から実車試験走行に至るまでに関与する部署に配転され…私たちとのご縁も深い方になっておられます…。


でまぁ、遠藤さんなら私とは顔馴染み以上のレベルですから、招かれるままに…。


あ、ベラちゃんとまりりは後ろのクルブ車にでも。確か今はまだ使用不可能だったかな…。


(えーとな、汚れないようにカバーかかってるから無理だな。プレフェンテってのか、4両目の車両に乗れるみたいだけど)


「あ、高木さん…クルブの3両目の開放席でしたらお使い頂いて大丈夫ですよ。VIP添乗ってことで開けさせます。…おーい!」と、メディアウォッチでどこかに連絡を取られる遠藤さん。


「あの開放車っての繋いだのはヒットだったよな。むしろ個室よりこっちの方が人気出るんじゃねぇか?」


「社交サロンとして使われる可能性があるとボルジア猊下やデステ閣下も申されておられましたわね…」


で、プラグドア…外側に向けてスライドして出てくるドアから中に入るまりりとベラちゃん。


で、イザベルさんですが…手際よく、テンプレス・レイルウェイズの作業服に既に更衣済みです。


流石に痴女種女官の格好で運転台というのもアレですから…。


ちなみに、まりりは宙兵隊作業服、ベラちゃんもジーナさんと似たような感じのショーパン姿になっていますよ。


で。


出発の儀式を済ませている最中の運転台後方にお邪魔しまして、勧められたパイプ椅子に腰掛けて…と。


「室見さん。指令から連絡入りました。篠塚君の慣熟は臨時に出すT101で行いますので、T103(このれっしゃ)、イザベル陛下の慣熟に使って頂いてよいそうです。今、こっちに回す回送で列車情報カードを持って来てくれますから、運転情報を書き換えてしまいますよ」


「え、今はこれがT101ですよね…」


「ええ…ほら、2番線に今、回送が入って来たでしょう。私と篠塚君があっちに乗って先に出ますから、5分後を続行する形で運転して頂ければ」


えー。手回しが早過ぎませんか…。


(あたしが連絡した。ほれ、今回は遠藤さんが運転乗務員訓練の指揮を取ってるだろ。本来なら今日の午後に走るはずだった編成を前倒しして出してくれるんだとさ。計測機器ってのも積んでるらしいから人が移るだけで済むらしいぞ)


ま、まぁ…TGVの運転台は割と手狭ですし、セビリアまで1時間半の間見学というのも何でしたし…。


で、回送として到着した同じ編成から届けられた運転用のメモリーカードを差し替えて車両側の運転情報を書き換えますと、運転支援表示ディスプレイに出ていた列車番号がT101からT103に置き換わります。


更に、運転者認証が…。


Main Driver "Rie Muromi"

Co-Driver"Isabel de Valois"


えええええ、往路はあたしが運転するんですか…まぁ、慣熟で何度も走ってますからいいんですけど…。


そんな訳で、イザベルさんには右隣の補助席に座ってもらいます。


と言っても、開業式当日の一日だけの催し物ですから、本格的な運転操作を覚えて頂く必要はないでしょう。本番の時には私とは座る位置が変わるくらいですし。


でまぁ、改めてJR職員用兼・スペイン王立鉄道職員モードにした聖環で車両に運転者認証を認識させますと、車上信号機の現示変更を待つことになります。


その間にも先行するT101列車になった編成が、赤いテールランプを灯した状態で地下のホームから離れて、地下鉄そのものといった感のトンネルの中に消えて行きます。


で、プープーと鳴った車内電話機兼無線機を取って、後ろの運転台におられる車掌役の方と連絡を取り合います。本番の運転では後部運転台は無人となりますけど、試験中は後部運転台にも係員の方が詰めて車両データ計測や軌道監視を行いますからね。


『T101改めT103列車運転車掌の岩上です。イザベル陛下、室見さん、よろしくお願いいたします。後ろ出発準備完了。ドア閉めよし』


「岩上さん、T103レ前の運転士室見です。よろしくお願いいたします。戸閉灯点灯よし。電圧電流空気圧よし。TVM出発現示確認。前照灯よし。リバーサー前進投入。ブレーキ緩解。T103列車、発車」


そして、右足で警笛ペダルを踏むとぼへーという、TGVやフランスの機関車同様の警笛音がします。


がっこん。左手でハンドルレバーを前に押し込むと、するすると機関車は動き出しました。運転台の後ろからはブロア…機器室を冷却するためのファンの音と、インバータ回路が作動する独特の音…機械類が日本製だからか、日本製の電気機関車を思わせる音とともに、こちらも地下駅を出発します。


で、がったんがったんとポイントを渡り、アトーチャ駅方面への分岐地点を抜けて、作りたてほやほやな感じに満ちた白く明るいトンネル内を走っていきますよ。


ぽん。


チャイム音とともに、正面の速度計表示の側に出ている制限速度が変わります。


「制限60」


で、この地下区間ですが…実は将来はマドリード地下鉄と共有する部分としても考えられているそうですから、ところどころに駅を設ける準備工事がされています。


つまり、プラットホームが設けられています。


そこを通る際に、明かりがついていて作業している方がいらっしゃる場合は黄色い回転灯がついてますから、左足で警笛ペダルを踏んで…と。


ぱーぱーぱー・ぱーぱーぱー・ぱーぱーぱーぱー…ええ、通称ドケヨホーン、私の希望で装備させました。


どこぞの私鉄の名古屋駅進入と同じで、これを鳴らすのが鉄道運転者の醍醐味いえお作法だと思うのです。


原型同様にお洒落なTGV車両が鳴らすべきではない気もしますが、いいのです。


これは浪漫というものなのです。


(室見さん…迷鉄さんは社歌を鳴らして欲しかったとか…)


(ああ、青いパノラマ車限定のあれですね。ただ、今回は私どもの計画に関与しておられませんので、さすがに謹んで辞退させて頂きました)


この通称ドケヨホーン、一部では大人気だそうですけど、確かにスペインの大地で鳴らすべき音でもない気がします。


しかし、将来は魔神なロボットに出てくるおっぱいミサイルとやらを撃ち出す女性型ロボットのコスプレをした女性が並んで行進するようなお祭りをするに至る現地の日本への認識を考えますと、これくらいはやっていいんじゃないかと思います。


(おい。試運転の時に調子こいて鳴らしまくってたのは聞いたぞ。りええ…おめーはゴッドファーザーのテーマを鳴らして珍しい走り方をする部類かよ…騒音問題で怒られても知らんぞ…)


(いいじゃん!それにこの時代のスペインって連邦世界の時に輪をかけて無人地帯が多いのよ? 人のいそうな場所で鳴らしてないわよっ)


ええ。先行する列車や、後ろの車両から呆れたような感情が伝わって来ますけど、私も中京地区で生まれましたので「赤い電車はあの音が出る」のを常識としております。


そして、どちらかと言えばあれを鳴らしたい部類なのです。心おきなく。


…いいじゃないですか、少しくらいは趣味に走っても!


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マリア「少しじゃない。全然少しじゃない」

りええ「地下トンネル区間だけでも!」

ベラ子「そーいえば、連邦世界と違ってやたらトンネルが多いらしいですね」

りええ「その話は次回以降で。実は結構、深刻な理由もあってそうしたんですよ」

マリア「連邦世界のAVEと違って、今回のスペインでは全線の7割か8割をトンネルにしたらしいんですよ…」

りええ「在来線も、割とね…地下トンネルにしたとこ多いのよね…」

マリア「まぁ、大きく分けて言うと二つの理由があるから、次回をお楽しみにってところか」

ベラ子(それ以前に、パイセンの運転でちゃんと目的地に着くんでしょうか…)

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