ゴールデンニシン・道南イカづくし物語・8
皆様チャオ&ボナセーラ、マリアヴェッラです。
えーと、今回のお話、フェミニストやフェミ騎士と言った方は読まない方がいいらしいです…。
って言うかシニョーレ・テンノコエ…あなたが書いてるあたしたちの話、ことごとくがフェミニストや同性愛者向けのようで、実は男性にも女性にも同性愛者にも、果ては全ての人に平等に猛毒でしょ!
さて、夜も明けまして洞爺湖岸。
何かこう、色々と疲れ切った表情ですよ、あたし。
まぁ色々あったの、闇堕ちマリア枠で散々に話が出たかと思いますが。
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とりあえず、姉や慶次郎さんたちはこの後、北海道巡り。
「それはいいんですけど、その熊、どうするんですか…」
「とりあえず連れて行く。それにこいつらがいると獲物を探す手間が省けるだろ? 鹿狩りとか」
はぁ。
例の蟹衣装で熊にまたがる姉の姿に吹く者と、神妙な顔をする者に別れていますけど。
ただ、最近は単に笑いを取るためと、真剣にこの衣装で戦う場合との識別ポイントを設けたとかでして…。
「この蟹の被り物の目のところが発光してたらさ、蟹光線を発射可能だってレディライトの意味があんだよ。蟹ビームの連射5秒でちょっとした町くらいは吹き飛ぶぞ」
わかるかそんなもん。
あと、それ実際にやったら怒られますからね。あたしも怒りますからね。
まぁ、この蟹服を着用した姉が、真剣に暴れたら極めて危険だというの、松前藩の方には理解頂けたのでよしとしましょう。
なぜならば…ちょっと道を作ってみるかと、朝のジョギングを兼ねて街道を広げてやるかと姉が走ったんですよ、そこらの獣道。
ええ…戦闘機を地表高度で音速飛行させたなんてもんじゃありませんでした…。
倒木の片付けだけで大変だったんですからね。
幸いにして、製材すればアイヌの皆様や松前藩の皆様にとっては貴重な資源となりますので、倒れた木々を無駄にすることはありませんでしたけど…。
ただ、武将のお二人には大受けでした。
「これはよい!大将殿が駆けるだけで万の軍勢が蹴散らされると申すか!」
「いやはや全くじゃ、今度何か大いくさがあらば、是非松平の先陣をお切り頂きたいものであるな。将兵の士気、さぞや上がるであろう」
ええ、それなりの大軍を率いたり、その陣中に加わって…姉の言葉を借りますと「ガチの大戦争に参加した本物の戦国武将」であればこそ、姉の力の一端を一瞬に理解できるのでしょう。そしてその戦略的価値も。
「実際の戦果以上にさ、こういう演出ってのは現代戦でも受けるには受けるんだよ。例えばそこの熊さん。あの熊さんたちが先陣を切って、しかも弓矢も鉄砲も効かないとかなったら普通の兵士の皆さんはどうなる?」がおがおと姉になつく熊さんですが、その恐ろしさを知るアイヌの皆様、熊を簡単に手なずけてしまう姉の方に畏怖の視線を向けておられますよ…。
「まぁ、算を乱して逃げまどうでしょうなぁ」とはその熊さんを興味深そうに眺める捨丸さんのご感想。
「いやね妹姫様、たとえば長谷堂城の退きいくさ、わしらは負けに負けとったのですよ。あのお強い山上道及様も刀に倒れ、後少し遅ければ直江様も討ち取られておったところでして…」
「ところが旦那の発案で、わたしらは最上義光様の陣に正面突撃しましてね…」
「ああ、あれは痛快だった。もはや我らの勝利は確実と考えていた敵の大軍、ここで死んでは何のために勝ったのかと逃げ腰になってな…俺たちを阻むどころか上官がけしかけないと確実に回れ右していた者ばかり、あわや敵の大将の陣まで迫る勢いだったからなぁ」凄腕忍者の骨さんどころか、普段は寡黙で無表情な金悟洞さんまでが当時を思い出して興奮したのでしょう、自慢げに話されます。
「最上殿ですら、慶次郎殿が鬼や仏すら斬り捨てる勢いで迫ったと記録を残し語らねばならぬほどに痛快であったとはのう。妹姫様、普通は敵兵の強さを讃えるのも良し悪しがござる。あまりに強い強いと語りまするとな、いざ一戦の際に腰が引けよるのよ、兵の」とは秀康さんのお話です。
「いくさ人なら武勇を聞いて腰が引けては末代までの恥なんじゃが、そこらで駆り出された足軽雑兵にそれを求めるのも酷な話なのじゃ。で、例えば大将殿のような万軍何するものぞ、天運我らにありという象徴を押し立てて士気を上げるのもいくさの手法の一つなのじゃよ。むろん、妹姫様の先陣でも、充分に我らを率いて士気を高むるに値するがの」ふふ、慶次郎さんも、あたしをおだてるのが上手いですねぇ。
(ベラ子はおだてに弱い。アグネスさん…父さん、よく覚えておいて欲しいんだ…)
(つまり、ベラちゃんに何かしてもらうためにはまずヨイショ)
(いや、それ僕も前から分かってたけどさ、あまり露骨に持ち上げるのも失礼だから控えてたんだよ…)
ねーさんがいらん事をバラしたのはともかく、おじさまの優しさが身に染みます。
そしてアグネスさんが何を依頼しようとするのか、ちょっと怖いです。ゾクっとします。
まぁともかく、アイヌの皆様や松前藩の方々を送り届けるべき場所に送りーの後片付けーの。
そして、姉一行の見送りを受けて、スケアクロウは洞爺湖を眼下に見下ろして離陸します。
…三頭の熊のうち、二頭を積み込んで…。
一頭は阿寒湖の湖畔、もう一頭は流氷いまだ途切れぬ知床半島の付け根に放してくるのを指定されています。
で。
後ろ、聖院のテンプレスが飛んでるんですが。
仕方がないので並飛行します。
で、どうせ来たついでにあたしたちと同じコースを辿って北海道観光とか考えてるなら、スケアクロウを飛ばすのがめんどくさいから着艦させてと頼みましたところ。
(ベラちゃん…テンプレスに載せた間の機長乗務の飛行時間が差っ引かれるわよ…)
聖院姉から嫌な突っ込みが入りました。
そうです。パイロット免許はペーパードライバーというものが許されません。
そして一定の期間中、免許の種類ごとに規定されている飛行時間を飛びましたよ、という証明が出せないと免許を取り上げられるのです。母様が嫌々ながら嘉手納に出かけて飛んでいたり、あるいはあたしが事あるごとにスケアクロウに乗ってるのもこの規則の縛りがあるからなんです。
ですから、今回も嫌々ながら機長席に座って飛んでるの、免許維持のための飛行時間を稼ぐ意味も大きいのです…。
で、スケアクロウをテンプレスに載せたら、載せていた分の時間はたとえコクピットにいても、飛んでなかった事にされてしまうんですよ…。
腹が立つので前方を飛んで乱流を起こそうかと思いましたが、スケアクロウ程度の乱流じゃテンプレスの大気圏内整流機能の邪魔はできない、むしろインシデントをフライトログに記録されてNB空軍本部に出頭とかややこしいメーデー話にハッテンするからやめろと母様にも言われます。
「うちが取り調べて報告書を送っても同じ話や。それどころか少将閣下が横にいながら何してるんですかとニューロンドン基地で二人して大将閣下からチクチクやられるハメになるで…」
実はスケアクロウ、あたしたちの好きに飛ばせるようで、実はあまり好きにできない扱いらしいのです。
特に事故や、事故につながる重大操作ミスの場合は、たとえ痴女皇国世界でも後で厳しく追求があると…。
理由はNB空軍所属機をリースされており、乗員訓練をNBが請け負っているからに他なりません。
そしてあたしたちが何かやらかした場合、スケアクロウを貸したりパイロットの養成を手伝ったNB空軍も責任を問われるそうです。
では、完全にあたしたちの物にしてしまえば、うるさく言われないのでは。
「聖院の13号機もそうやけど、100年リース契約やからな…100年間で保守点検費用込みで5千億円を支払うけど、減価償却も見込んでの値段やからある意味では大サービスは大サービスなんよな…」
つまり、100年経過しないと完全にあたしたちのものにするかどうかすら決められないと…。
スケアクロウも一応は飛行機、それも複葉機と単葉機の姿を切り替えられる複雑な変形構造を持った変態飛行機なので、定期的な整備点検はやはり必要なようです。
つまり、飛ばしたら飛ばしたで車で言う車検を受ける必要がある、そしてユーザー車検と言うのですか、必要最低限の整備点検だけで済ませる事は出来ない仕掛けがあるというのはあたしにもわかります。
例えば宙兵隊から借りている扱いのバンシーにしてもババヤガーにしても、あるいは大型装甲ロボット戦車というべきTAPPS7、あおかん号にしても母様がしかるべき場所に持って行って整備点検を頼んだり、あるいはアークロイヤルに乗って来た人たちがあれこれしているのは知っていますから。
「痴女皇国にあれを保守する技術基盤を作らす気か…それに、アグネスさんの話が上手く行けば、今後100年以内には実質的にNBは痴女皇国の属国化する話になるやろが…つまり、リース費用は最終的にはどうにでも出来る話や。今でも実質的なNBへの支払いは年額ゼロに近いやろ?」
そう、経理上のマジックというやつです。
NBの高速道路網や空港敷地建設に鉱山採掘といった、痴女皇国への支払い費用と、テンプレスやスケアクロウのリース費にNB国立銀行への会計処理委託代行…実質的にスパコンのレンタル費らしいですが、こうした痴女皇国からの支払い費用を相殺している訳ですよ…。
定期的な整備点検といえばテンプレス2世もそうですね。
あのお船は今、あたしたちの横を飛んでいるテンプレスと違って自動整備保守機能がついていますが、それでも年に1回はNBのニューポーツマス海軍基地のドックに入って点検を受けています。
聖院のテンプレスに至っては、その整備機能を持っていないから絶対にニューポーツマスに行く必要、あるんですよねぇ…。
そんなことを話しておりますが、スケアクロウは大雪山を左に見て雌阿寒岳を避けるコースを取って飛んでいますよ。洞爺湖からの飛行コースを経由地名で申しますと千歳・占冠・新得・士幌・陸別ですか。
ちなみにあたし、士幌と陸別はもてぎチャンネルのモータースポーツ特番で、とちぎメディアとマリアンローズがスポンサーのチームの遠征参加にキャンギャル枠でついて行ったので場所を知っております。で、勢い北海道の広さも体験、せざるを得ませんでした…。
(スケアクロウにレーシングカー積んで飛んで行きたかったですよ…)
(アホか…さすがにスケアクロウを民間のサーキットに着陸させられるか…ベラ子、言うとくけどスケアクロウはいまだに連邦世界やと機密兵器の扱いやから、誰彼なしに晒されへんねんぞ…)つまり、レースに出る車は専用のトラックかトレーラーに積んで苫小牧の港から延々と陸送、人間は千歳空港からレンタカーまたはフェリーで送り込んだバスなどで延々と走ったんですよ…あたしはこっそり乱暴ルギーニを転送で持ち込みましたけどね…。
そしてオートパイロットを切って、阿寒湖畔のコタン…アイヌ集落から少し離れた場所に着水、バックで砂浜に乗り上げてお尻を開けます。うう、足が冷たいです…。
そうです、熊さんを下ろすだけならまだしも、野外活動があるのですよ…。
で、この時代だとマリモは阿寒湖のあちこちで見られるそうですので、これがマリモだというのを生徒さんたちに見せることになります。
その間に熊さんの一匹を、密かに湖岸に放します。
(なるべくあの人の住んでいるあたりから離れてね)と言い聞かせると、無言で頷いて森の中に消えて行く熊さん。
この辺りならばエゾシカなど、熊さんの餌も少なくはないでしょう。そして、メスの熊さんに出会える事を祈っておきます。
そしてマリモ見物を終えた後、再びスケアクロウを上昇させます。
(雄阿寒岳か雌阿寒岳でヤクザが温泉卵を作って荒稼ぎしてる話があったやろ)
(あれは別の場所では…確かにあのお話を知った時、あたしの乱暴ルギーニが買えそうなくらい儲かっていたと言うのを知って心が動きましたけどね…母様、この時代の北海道ってそもそも阿寒湖も弟子屈の温泉地も観光地じゃありませんよ…北海道の人口、下手したらまだ10万人単位くらいじゃないんですか…)
(まぁ確かに、アイヌの皆様は自分たちの貨幣すら持ってないらしいからな…)
(そりゃ文字や数字を自分たちで作ってないんですから、他の文明的な活動も推して知るべしじゃないですか…アイヌの人には悪いんですけど、文明レベルで言ったら縄文人か、弥生時代初期くらいではないかと)
(いや、アメリカ大陸とかアフリカに較べたら、連邦世界のアイヌの皆様への扱いはまだマシな気もするで…今まさにアレーゼさんが泣いとるけどよ、現地住民の文化を尊重してやりたくても、向こうがこっちの文明や文化に憧れてそっちがええわ言い出したら、先住民文化を守れやと強制させるわけにもいかへんからな…)
(うちの女官でも還俗を嫌がるのは多いですよね…特に本宮勤務を経験した人はものすごく抵抗します…)
(女官種時代と違って、はいそうですかと上級に上げられん事情が出来たからな…)
(で、最終は強制還俗をせざるを得ないんですよね、記憶もいじって)
(ベラちゃん…ベラちゃんは生まれた時から痴女種だからあまりわかんないと思うけどさ…普通の女性から痴女種になったら、確かに考えてる事全部ダダ漏れ筒抜けってデメリットもあるよ…あるけどね、それ以上に色々と女を悩ませるものごとがあらかた解消されちゃうでしょ…あれを手放せってのは結構、残酷な話だと思うよ…)
(ああ、お化粧やら体毛処理とか、あと虫歯に体臭に…)そうですよねぇ…ゆっきーの話も、確かによく分かります。
特に生理痛や、あの日絡みの血液系排泄物の処理。
あれが何より辛いというのは、あたしも身体機能維持のために年に何度か擬似的に女の子の日になるのを経験しますから特によく理解できますよ…。
ですが、百人卒未満でもそのまま世の中に戻せば大混乱は間違いないでしょう。
そして、痴女種の子は痴女種。
通常人類の男性にはなりません。
妥協策として、一時的に人間女性の子宮にチェンジして懐妊させる方法も模索されましたが、母体が痴女種であれば最終的に影響を受けてしまうとも…。
「それはそうと屈斜路湖やけどな、クッシーおらんかクッシー」阿寒湖よりはるかに大きな湖の上を周回しながら、眼下を指差す母様ですけどね。
「あのですねジーナさん。確か屈斜路湖って、聖院湖と同じカルデラ湖でしょう…しかも聖院湖と違って昔の金衣が持ち込んで放流したり、あるいは流れこんでる川に住んでた魚がいっぱい住んでるような環境じゃなかったそうですよ…」と、パイセンが母様の夢を見ると書いてお金儲けの種を探すと読む行為に水を差します。
なんて残酷な仕打ちを、と思いますが、考えてみればエサもいないのに何で恐竜が住んでるのよって話も、冷静に考えて見ればその通りです。
そして…恐竜の中には温血動物もいたらしいという学術的研究もなされているようですが、このお話の時点では湖岸に雪もまだ多く残る三月の北海道、恐竜が冬を越すのはいささか辛いのでは…。
「阿寒湖もそうだけど、湖底から温泉が湧いてるみたいなのよね。ただ、屈斜路湖は昭和初期に地震のせいで海底から硫黄成分が噴き出して酸性化したようなの。そして湖の生き物があらかた死んでしまったって話もあるわよ…」
「湖底から二酸化炭素が噴き出る湖も大概やけど、硫酸の原料が噴き出すのも大概やな…」
「でもでもジーナさん、エウロパで原生細菌が発見されたって話があったじゃないですか」
「ああ、あれな…ただ、エウロパは現時点でも表層の氷塊を削り出してるプラント、ほぼ無人で運用せなあかんくらいに放射能がきっついねん…無人探査機を送り込んで調べるのにも限定的やからな…」
えっと、これ、注釈が必要みたいです。
木星の衛星のエウロパって星がありますでしょう。
このエウロパの表面はほぼ、氷です。
そしてその氷の下に水の層があり、更には海底火山はもちろん、地球の深海にあるような高温高圧で重金属類や有機体を含んだ熱水…文字通り熱い水を噴き上げてる場所がいくつもあるそうです。
そして、連邦世界ではエウロパの氷を採掘したり、氷の下から汲み上げたお水を精製して近辺の宇宙空間にある大規模基地…トロヤ群とかいう重力均衡エリアにあるのが代表的らしいのですけどね…や火星に送り込むための積み出し設備が存在します。
その際の事前調査で、この熱水を噴出する辺りの水を調べたところ原初生命が発見されて、ちょっとした騒ぎになったんですよ。
ただ、以前にねーさんやエマちゃんが金を掘りに行ったイオほどではないにしても、エウロパ表面も専用の対放射能防護装備を備えたTAPPSや宇宙機で行かないと、普通の人はすぐ死んでしまうほどに放射線が厳しい環境だそうなんです。
で、その原初生命の調査研究もあまり進んでないようです。
まぁ、いきなり予定を変更してエウロパまで行くとか言い出させないようにしましょう。
何せ、今乗っているスケアクロウは大気圏外行動はもちろん、スティックス・ドライブレベル3以上の機能を使ってNBまで一瞬で転移することも可能なG型です。
その気になれば、今から1分以内にエウロパの地表に着陸することすら可能は可能なんですよね…。
で、次の目的地…知床半島に向かいます。
ここでもう1頭の熊さんとはお別れです。
皆さんの世界の知床でも、熊さんが住んでいて人間の居住地まで平気で入り込む騒ぎになっていると思うんですけど、ここならばメスに出会えるのではという事で、熊さんを連れて来たわけです。
そして、海中に住む生物を見せるのも目的です。
エマちゃんが手早く「それ」の周囲の海水を凍らせて手を触れずに海の中からすくい上げ、子どもたちに見せてくれます。
そう、クリオネ。
この見た目は可愛らしいのですけど、エサを捕まえる一瞬だけはものすごく凶悪な姿に変わる生き物が住める水温、ものすごく厳しいようですね。
ですから、飼育可能な環境を整えるだけでも一苦労なのは連邦世界でも同じ、あたしも生きてるクリオネを生で見るのはこれが初めてです。
「母様。これも貝類らしいですよ…つまり、母様が苦手なアレの海版ですよ…ひひひ」
「ベラ子。そんなに滝壺で親子の対話を交わすんが希望なんか」
「それは良いのですが、あの辺のナの字の駆除処理、終わってましたっけ…」
「あの辺には淋の森と同じで、こうがいびる君を入念に撒いてくれ言うたはずや…酷道一号線沿道と智秋記念牧場の周辺には絶対にあれを繁殖させへんのが鉄則やろ…うちが苦手以前に、子供さんらや牧場の家畜を寄生虫に感染さす話になってまうからな…」
ちっ。
そうなんですよ、母様が苦手だって以前の問題で、痴女島からはヒルと陸棲貝類、根絶対象です。
特に、あの貝殻のないカタツムリとか、おっきなタニシみたいなのは確実に住血吸虫のような有害寄生虫の宿主だと言う事で、一部のホタルなどの餌になる種類を除けば根絶の方向で、生存継続種についてもナノマシンを使って体内の寄生虫を根絶する処置が取られています。
ただ、ナの字以外は一気に絶滅させるのではなくて、沖縄で果実に有害な外来種のハエを根絶した際の方法と同様の「放射線処理で卵に受精させられない種無し種」を撒いて繁殖個体数を漸減させて行っているそうです。
「エマちゃんエマちゃん。仮によ、人類が絶滅または痴女種に取り込まれてしまう未来があるとするでしょ。もしそうなりそうな場合の対策とかないのかな」ゆっきーがふと、思いついた事をエマちゃんに聞いていますけど。
「ええとですね、宇賀神さんの質問に答えるのはうちじゃなくて、そーですねー…例えばサン=ジェルマン氏あたりに聞いてみまひょか」と、月面のルナテックス本社に量子通信で連絡を取っている模様。
(えーとね、マドモアゼル・ウガジン。僕はあくまでも助言をさせて頂くだけで、対策は当事者の君たちにお願いしたいんだけど、それを前提でなら思いつくことを答えてあげよう)
はぁ。
(君たちは身体の要所要所を擬似人工器官や微小な半生体組織…マイクロマシンやナノマシンといったものに置き換える事で、天然由来の超人類たる女官種の欠点でもあった発熱の問題を解消しようとしている現状をまず、認識しているよね)
(はい。それは習いました)
(で、痴女種の側にいると痴女種に変容してしまうのは、女官種の生態を模倣しているからなんだよ)
(ふむふむ)
(これは聖院女官の時代をよく知るマダム・タカギやマダム・ムロミが詳しいか、経験として知っている話だろう。女官種の細胞は鬼族…聖院世界では日本神話由来の超人の生体細胞と同じ起源から来ていてね…同様の身体構造を持つ劣性種、つまり人類を上位化する働きがあるんだよ。だが、それでは女官種は他種類の神の眷属と同じで、自らの食物を自分達で絶滅させてしまうことになるよね)
(ええ、それも習った話ですね。ですから人間、特に男性の保存と個体数確保は女官の使命であるとも)
(でね…君たちは最悪の場合、人間牧場めいた繁殖施設を考えてもいるようだけどさ、僕から言わせたらそっちの地球自体がさ、僕や他の特殊な存在の思いつきが具現化した一種の実験空間めいた存在の可能性がある事も承知して欲しい。これは、月の僕の会社に来て僕と会った方々は知ってるだろ?)
ですねぇ。あまり明らかにして欲しくない事実ですけど。
(まぁ、実験とか云々はともかくとして、君たちが君たちの主権を持っている存在として自分たちの食い扶持を確保するぶんには、そうした考えに基づいて人類を制御しようとする方向性が出る。この思考自体は全面的に否定すべきでもないんだよねぇ、僕からしてみると)
(でも、人類を家畜にしてしまうようなものでは…)
(君たちはさっき、熊を野生の環境に返したよね。そして、野生を思い出させるという事も学習させてから送り出しているだろう)
(ええ。まりあ先輩がやってました)
(で、人類の発想や着想能力を確保するためにはある程度の野生の生態を容認する事も必要じゃないかな。でないと熊は熊ではない生き物…ノボリベツのクマ・ファームの熊が本当の熊らしい生き物だと言えるかな?)
(なるほど、確かにあの飼い慣らされたクマがクマかと言うと違いますよね。熊本のあれなんかゆるキャラですし)
ゆっきー、それ熊と違う…中の人が一人かどうか天皇陛下ご夫妻に問い詰められる生き物よ…。
(まぁ、あの熊を発想するような想像力も人間の特殊能力だとしよう。で、皆さん…人間の発明でさ、男性と女性の発見発明、果たしてどちらが多いか考えてみてよ)
う…確かに、男尊女卑などの様々な理由が存在しますが、歴史上の発明や発見の多数が男性由来では…。
(ふふふふふ。これがさ、マリアリーゼが男を残せ残せってあの手この手の対策をしてる理由なんだよ…。むろん、女性がその手の発明や発見、そして冒険をしないできないと僕は思ってないけどね。だけど結果論として、連邦世界では男性の功績の方が大きいって言えるんじゃないかな)
具体的な件数とかを数値にして出せとか、フェミニズム団体がいかにも騒ぎそうですよね。
(そんな面倒臭いもんにいちいち構ってられないよ。それにさ、そんなうるさい人たちこそ、君たちが推し進めている、そう言う男女同権や女性優越主義の過激な主張をする人たちを痴女皇国に害のない状態に去勢する作業の対象にして行くべきじゃないかな。君たちは女性の権利を主張するんじゃなくて、痴女種に必要な精気を採集できるだけの人類の人口を確保するのが至上命題の上位生物だ。そうだろ?)
うわー、それ思ってても、言っちゃダメってねーさんが怒る話では…。
(事実だし、仕方ないじゃん。それにマリアヴェッラ…いやベラちゃん。君自身が痛感したはずだろ。そういう女性の権利を妙に認めたり、女性の社会進出云々を進めた結果、ついさっきまで君の頭を悩ませていた存在がいたでしょう。あんな子が今後、痴女皇国の世話になる件数…あれで終わりと思う?)
(ベラちゃん…これはサン=ジェルマンさんの言う通りよ…あたしらお受験学校だから、元来ならさ、悪い意味で男どもと同列の受験競争に晒されてる立場でしょ…)ええ、ゆっきーの言う通りです。男性同様の総合職や、果ては研究開発に経営にと、言ってみれば「男として生きる」が如き思考の同級生や先輩後輩の女子、かなりの数で在校していますね。
(ベラちゃん。あんたは言いづらいでしょうから、あんたの代りにあたしが一つの結論を提案したげるわよ。まず、女性が普通に男性と結婚・出産をすることを最善と考えるように強制的な意識誘導を図る。これは既に、駄洒落菌を使って着手してるよね)パイセンが真剣な声で言います。
(で、賢明なマドモアゼル・ムロミに僕からもう一つの提案をしよう。マダム・タカギが死ぬほど苦手なリマス…殻のないエスカルゴがいるでしょう。あれはオスとメスが分かれていないのを知っているかな)
(はい。あのジーナさんに見せたが最後、泣き叫びながら最高速度でその場から走り去るアレが2匹いたら、どちらかがオス役になって、受精卵を作るんですよね。で、あたしたちみたいに男女両方の生殖器を持っている…あ!)
(ふふふ、気づいてくれたようで何よりだよ。超常能力を持たない引き継がない限定の痴女種を作って、そこから精気を取れば、とりあえずの精気問題は解決すると思うんだよ。ただ…君たちがそれを受け入れるかどうかはまた別。世の人類が全員、痴女種化する世界を君たち自身が受け入れるのかは君たちと人類で考えて欲しい話ではあるね。付け加えておくと…)
と、恐ろしい提案をそこで一旦区切られるサン=ジェルマンさん。
(あのさぁ、君たちが反社会的な日本人を狩り出して収穫したことあったでしょ、ほら、月に連れて来た女の子のお仲間たち。あの中の男性で女官や痴女種になるのに無抵抗だった人、いたかな?それを思い出してくれたら、もしも僕の与太話を真に受けて実行する前に少し考える気になれると思うよ。…うん、僕も女の子になった上にさ、Coqを生やすのは正直嫌だしねぇ…男の心理ってもんも一応は考慮してくれるとさ、それやっちゃった後々で起きる様々な面倒ごとが想像できると思うからね?)
べらこ「結局サン=ジェルマンさんはあたしたちに何をさせたいのですか!」
ジーナ「確かにそれは言えてるな。おっさんは与太話を吹くだけで、よくよく聞いてみれば建設的な話を何一つ言うとらん」
べらこ「でしょでしょ。あたしは怒りたいわけですよ。そんな無駄な話を聞く時間が無駄だって」
ジーナ(やっぱりベラ子も関西人の考えに感染しとる…イタリア人やロシア人の元来の血筋なら、もう少し気が長いはずや…わがままを言い出さへん前提やけど…)
さんじぇるみ「あのさー、だから僕は積極的に君たちの舵を取ったり責任を負うような事はもうしたくないんだよ…MIDIシリーズを作って懲りた。これが僕の今の態度の根拠なんだよ…」
べらこ「何か疲れる話があったようなのはお察ししましょう。しかし、あたしたちに関わった以上は何かをしてもらうまで。シニョーリ・サン=ジェルマンの無責任男生活は今日限りにさせてもらいますよっ」
さんじぇるみ「ふん、ベラちゃんの手の内は読めているよ。MIDIアーキテクチャを作り上げた、いわば創造主の僕に勝てると思ってんのかい…って!」
えまこ「あのですねぇおじさん。うちをベラ子かーさまに製造させたのが運の尽きってご理解頂いてないようですねぇ。うちもド○タ生活をいい加減やめたいんですわ、ほんまに」
べらこ「エマちゃんのストレスがたまってるのはわかるんだけど、この場はブラーヴォよね」
えまこ「あたしもMIDIシリーズ最高レベルの性能機能を土建業ごときで使わざるを得ないはらたつのりな現状のストレスが溜まってますから、腹いせにサン=ジェルマンのおっちゃんも働かせるのに異存はおまへん。おっちゃんも諦めてください。痴女皇国に関わると労働させられるんですわ」
ジーナ「まるで何かに呪われているようやな…」
マリア(あたしの呪いも入ってるぞ…多分だけど…なんせあたしが生まれてすぐこき使われたからさ…)
べらこ「あーそうそう、このお話は闇堕ちマリアの方の温泉むすめ編と連動していますよ。こちらもお読み頂くと話がきちんと通るそうです」
https://novel18.syosetu.com/n0112gz/108/
えまこ「それと、アルトさんのお話に続いて行きます。そちらも合わせてお読みください、だそうですわ」
https://novel18.syosetu.com/n5728gy/117/
ジーナ(って言うかアルトくんの話も闇堕ちマリアもR18指定やろが…)
えまこ(ジーナかーさま。それも見なかった方向で!で!)




