第1話 うるさい子犬とはがれた猫(1)
やっと本編入りました!
「本当に、後悔はありませんか?」
「はい。もちろんです」
「では、こちらを。・・・あなたの最期が良きものとなります様に」
「ありがとう」
そう微笑んだ女はとてもやつれていたが、そのことを感じさせない足取りでスタスタと去っていった。
その姿はあの女を彷彿とさせるもので、嫌でも昔を思い出す。
――最悪だ。
あの女の所為で俺の機嫌は地の底に落ちた。
「・・・あの女は今月中だな」
俺はボソッと呟いた。
「砥上さん!今のってもしかしなくても『死神予報』ですよね?!」
「は?何それ」うざい。
「え?知らないんですか?!『死神予報』です!めっちゃ有名なんですから!私ここに配属される前から知ってましたよ?」
テンション高いな、コイツ。
「へぇー、そんなのあるんだー」どでもいーわ。
「見事な棒読みですね、砥上さん」
「うん」だって興味ないし。だから、話し掛けないでくれるかな?
「砥上さん、どうやって予測してるんですか?彼らの死期」
ニッコニコしやがって。何が楽しいんだよ。
「私が知るわけないだろう」
目を輝かせて詰め寄ってくる水谷の言葉を一刀両断――バッサリと切り捨てる。
「そんなことは『死神予報』とやらを発表している奴に聞けばいいだろうに」俺は知らん。
「だから砥上さんに訊いてるんじゃないですかぁ」
だからって何だよ・・・ん?
「今、何て言った?」
「・・・だから砥上さんに訊いてるんじゃないですか。ですか?だって『死神予報』やってるの砥上さんでしょ?」
はぁ。前々からアブナイ奴だとは思っていたが、ここまでトチ狂っていたとは。
「ちょっと?砥上さん今失礼なこと考えたでしょ」
コイツはエスパーか?とはいえ
「水谷がトチ狂っているのは失礼でも何でもないただの事実だろ?」
すぐに噛みついてくる水谷が段々躾けのなっていない子犬に見えて来た。全く不思議だ。
つーかキャンキャンうるさい。
「支部長ー!砥上さんが私のことトチ狂ってるとか言うんですー!失礼過ぎませんか?!」
コイツ、気配を殺していた権力者《支部長》に泣きつきやがった。
「・・・。悪いね水谷さん。僕からはノーコメントだ。巻き込まないで欲しいなぁ」
支部長、目が虚ろだな。水谷がうるさすぎるんだろう。
「え?」
「・・・僕はこんな所で死にたくないの。君も長生きしたければ、早急にここのパワーバランスを察するべきだと思うよ?」
ここの支部のトップである鴫澤支部長は、伸びやかかつ棘のある声でそう言った。
――嗚呼どいつもこいつもうるさいなー。特に子犬、キャンキャンうるさい。
欠伸をすると、ジト眼で俺を見てくる支部長。俺、何かしたかな?
――面倒くさい。
「えー?察するも何もここのトップは鴫澤支部ちょ」
――ガンッ
あ。気付いた時には机を蹴っていた。
それと同時に、「ブチッ」と頭の奥で何かが引き千切れる音がした。
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