第0話 プロローグ~それは今よりもずっと先の未来~
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――それは今よりもずっとずっと先の未来のお話。
人類は医療技術の発達によって長生き出来るようになりました。
しかしその反面、少子高齢化は更に加速し、人口の減少が世界的な問題となりました。
そこで、世界中の偉い人たちが話し合った末に、まずは人が死んでしまう原因を減らすことになりました。
その結果、死因ランキングのトップに入っていた心疾患の対策をしようということになったのです。
そこで、人々は考えました。
――「心臓病の予防には、運動するのが良いのでは?」
――「いやいや、それができていないから問題になっているのだろう」
――「特効薬の開発でもするか?」
――「心疾患は一種類だけではないのだぞ?そもそも薬の処方は医者にしかできないだろう」
彼らは、様々な意見を出しましたが、どれも良い結果を見込めそうにありません。
――「そんなことでは、どうしようもないではないか」
しかし、途方に暮れていたある時、一人の老人がポツリと呟きました。
――「いっそのこと心臓自体を丈夫にできれば良いのだが・・・」
――「だったら、作ってしまえば良いのではないか?」
それはとても、画期的なアイデアでした。
心臓が病気になるのなら、病気にならない心臓を作ってしまえば良いというのです。
――「それだ!心臓を機械化して移植しよう!」
そうして、機械心臓は誕生したのです。
機械心臓は、世界屈指の技術を惜しみなくつぎ込んで作られた、当時の最高傑作でした。
その後、機械心臓の有用性は多くの人に認められ、人への移植作業が始まりました。
それは日本も同じです。
日本では、十八歳を迎えたすべての人に機械心臓の移植が義務付けられました。
機械心臓を使うことによって、死因ランキングからは心疾患の名が消え、寿命も延びました。
――しかし、機械心臓は人々の想像よりはるかに優秀でした。
優秀過ぎる機械心臓は人口減少を食い止めるのにとどまらず、圧倒的な速度で人口を増加させ《《過ぎて》》しまったのです。
その所為で、世界各国のお偉いさんたちは新たに対策を講じることになりました。
そこで登場したのが機械心臓停止システムです。
これは、その名の通り機械心臓を停止させるためのシステムで、一人一つ――機械心臓の数だけ用意した専用デバイスにそれぞれ搭載されました。
それと同時に、世界は人々に死ぬ権利――自死権を与えたのです。
ですから、今では生きるのも死ぬのもすっかり個人の自由となり、人口も適度な数に安定しました。
――これは、そんな世界で生きる一人の男の人生。
このままもう一話投稿します。