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第六十三話 デート?

 **********************


「蓮、本当に寝坊するわよ!」

「今起きた、すぐ行く!」


 俺はベッドを飛び出しリビングに向かった。


「ここ最近起きるの遅すぎない?」

「うーん、疲れが溜まってるのかな」

「疲れが溜まるようなこと何もしてないでしょ」


 あなたの息子は毎晩異世界に行って世界を救おうとしているというのに、なんてことを言うんだ。 ま、言っても信じてもらえないだろうけど。


 俺は朝食を済ませ、いつも通り電車に乗って学校に向かう。

 昨日異世界から救出した人達は、その後うまく家に帰れたろうか。 誘拐され所在が分からなかった人々が突然全員帰ってきたんだ、今日のニュースは決まりだろう。


 学校に着くと、この前カラオケに行ったメンバーが前方で仲良さそうに固まっている。


「蓮くんおは!」

「お、おはよう」


 彩が俺に声をかけると、前方のメンバーも俺に挨拶をしてくる。 少し前じゃ考えられない事だ、クラスメイトと話すことすら1日にあるかないかだったのだから。

 席に座ると、俺の方に彩が向かってきた。


「蓮くん、今日の放課後時間ある……?」

「え、あ、うん」

「良かった、じゃあちょっと付き合って!」

「……? 分かった」


 彩は俺の返答に対して笑顔で答えたあと、教室の前方に戻っていった。

 これは何のお誘いなんだ? またカラオケか?

 そもそも他にも人はいるのか? 二人なのか?

 そして付き合うってどういう意味なんだ? まさか恋人として……みたいな意味じゃないよな。


 玲奈以外の女性と現実世界でほとんど接したことがないので、もし二人だとしたらテンパってしまいそうだ。 なんだかドキドキしてきた。

 ——なんだか視線を感じる。 

 視線を辿ると、視線の主はは玲奈だった。 俺と目があった瞬間、玲奈はすぐ逆方向を向いてしまった。 玲奈だったら二人でも全く気を使わないし楽なのになあと思ってしまった。 でもこんなんじゃ一生女性と話すことが出来ないんだ、俺は覚悟を決める事にした。


 ——1日の授業が全て終わり、下校の時間になった。

 最後のホームルームが終わった後にネットニュースを確認していたが、行方不明者の帰還はしっかりとニュースになっていた。 負傷をしている人もいたが、ニュースによると命に別状のある人はいないらしい、本当に良かった。

 俺が携帯でネットニュースを見ていると、また彩が俺の方に歩いてきた。


「蓮くん」

「は、はい」

「それじゃ行こっか」

「う、うん」


 俺と彩は教室を出て昇降口に向かう。

 学年のマドンナと歩いているのが俺みたいな陰キャなもんだから、すれ違う人が皆俺たちのことを見ている。


「あのー今日は他に人は来ないのか?」

「あ、そう! 今日は二人なの!」

「なるほど……」

「他にもいた方が良かった……?」

「いやいやそんなこと!!」


 二人だったか、これから解散するであろう時間まで一体どんな会話をすれば良いんだ。 俺は彩と数回くらいしか喋ったことがないから、彩の趣味嗜好が全く分からない。 ……というより彩についてきているが、どこに向かっているんだろうか。


「い、今はどこに向かってるの?」

「渋谷に行こうと思って!」

「行きたいお店があるとか?」

「そう! 新しくできたお店があってそこに行きたいの!」


 渋谷で女の子と二人っきり……

 これは間違いなくデートだ、俺の直感がそう告げている。

 それにしても何故突然…… 誘うなら俺じゃなくても唯斗とかがいるはずなんだけど。

 俺の方からそれを聞くのも何だか野暮だ、あえてそこは聞かない事にしておこう。


 俺たちは学校を出て最寄りの駅に向かった。

 話の中で緊張して相槌しか打てていない俺に対して、彩は気さくに話題を振ってくれた。 思ってたよりは気まずくない、少し安心した。

 好きな音楽などの何気ない会話をしているうちに俺たちは目的地の渋谷についた。


「こっち来て!」

「ちょ、ちょっと待って」


 早歩きの彩に導かれ、地上に出てすぐの坂道を登る。

 息を切らしながら辿り着いたのはテレビで見たことがあるような高級ホテルだ。


「ほ、ホテル……?」

「さあ行こう!」


 何が起きているのかも分からぬまま俺と彩はホテルのロビーに入った。

 彩はホテルの受付を素通りしどんどん遠くに進んでいく、俺は一体どこに連れて行かれるんだろうか。

 しばらく歩くと、華やかな装いのドアが俺の視界に入った。


「行きたかった店ってここ……?」

「うん、最近できたレストラン!」

「良いとこそうだな、でもお高いんじゃ……?」


 俺はバイトをしておらず、親からもらっている小遣いしか自由に使える金がない。 こんなところで食事をしたら数ヶ月分の小遣いが消えてしまうだろう。

 まさか彩は俺に多く払わせようっていう算段なのか!?

 よっぽど俺が気難しい顔をしていたのだろうか、彩は笑いながら口を開いた。


「大丈夫、お金は気にしないで! 蓮くんは今日無料で飲み食いできるんだよ」

「え、無料……?」

「ま、詳しくは後で話すから入った入った!!」


 彩に背中を押され俺は見るからに高級そうなレストランに入店した。


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