第五十八話 水の能力
俺はレナ、セリカ、シエラの3人が透明化したのを確認した後、俺は王宮の牢獄に転移穴を開いた。
転移穴の先を覗くが兵士の姿は見当たらない、潜入するのは問題なさそうだ。
俺たちは転移穴を通り敷地内に侵入した。
「じゃあここからは打ち合わせた通り別行動だ、まず3人はこの牢獄に捕らえられている人達を逃してくれ。 あと何回も言うけど、少しでも危険を感じたたらすぐに逃げろよ。 四聖剣の姿が見えたら特にだ」
「はい、気をつけます!」
「じゃあまた宿で!」
俺たちはその場で別れ、俺は別の方向から潜入することにした。
もう日付も変わる深夜だというのに、警備兵の数は前回より増えている。
前回俺が潜入したことを受けて警戒されているんだろうか。
俺は敢えて王宮の正門から内部に侵入する。
一般兵たちは俺の様子に気付く様子もなく、暇そうに大きな欠伸をしている。 透明になっているんだし、四聖剣が異常なだけで普通はこうなんだろう。
俺が探しているのは現実世界から連れてこられた人々、あと可能であればレナの母親の情報も入手したい。
王宮に入り込んだものの、構造が分からずとにかく内部を探索することにした。
——王宮を探索し始めて30分程経った。
今のところ見つけられたのは来客用の待合室のような場所と、映画で見たような豪勢な晩餐会場だけだ。 目的の場所に繋がるような情報はない。
3人はうまくやっているだろうかなどと考えていると、侵入した部屋の部屋の角から風切り音が鳴るのが聞こえた。 不思議に思いその場所を押すと、壁がゆっくりと回転し、ジメジメとした階段が目の前に現れた。
この階段、外から牢獄にに入る時の階段と同じ雰囲気だ、この先には牢獄があるのだろうか。
足元が滑らない様、慎重に階段を下ると、そこは牢獄とはまた違う広い空間だった。
空間の中心部には高さ5mほどの塔が立っており、その塔を囲う様に魔法陣が地面に描かれている。
「何だこれ……」
俺は恐る恐る塔に接近する、近づくと塔には扉のような物がついている事が分かった。
これはもしかして、ルパートさんが言っていた、空間転移持ちと異世界人が入る装置とやらなのか……? だとすればこの近くに捉えられている人々がいるかもしれない。
注意深くあたりを見回すと、空間の端には扉が二つある。 音を立てない様ひとつの扉を開くとさらに下へと続く階段があり、もうひとつの扉を開くと石造りの小道があった。
俺はまずこの階を探索し切ることに決め、その小道をゆっくりと前に進む。
小道沿いには何個かの扉があり、兵士が小道の先の椅子に座っているのが見えた。 看守役とも見える兵士が配置されているということはこの中に……
扉のノブを回して押してみるも、扉は開かない。 鍵が閉まっているようだ。
鍵を持っているとしたらあの看守役の兵士に違いない。
俺は兵士の背後に回り、高速振動で兵士を気絶させた。
兵士が倒れる音が小道に響く、俺は急いで兵士の体から鍵を見つけ、小道沿いの扉を開けた。
そこには現実世界の服を着た人々が数名閉じ込められていた。 外傷などは見当たらないが、目は虚で絶望し切った表情をしている。
「この声が聞こえますか、聞こえたら声は出さず頷いてください」
囚われた人々はハッとした様子を見せた後、ゆっくりと頷いた。
「俺も現実世界から来ました、今転移穴を開くのでこの中に入ってください。 ここから逃します」
俺は目の前にセリカの両親たちがいる小屋への転移穴を開いた。
突然の出来事に戸惑っている彼らだったが、何が起きてもこの状況よりはマシと考えたのか、質問もせず転移穴の中に入って行った。
俺は他の扉も鍵で開き、収容されている人々を同様に王宮の外に逃した。
全員逃し終わったところで、小道の奥から声がするのが聞こえた。
「あーあ、音がしたから来てみたら、こりゃ酷い」
一体誰なんだ。
俺が透明化したまま小道に出ると、アウゼスと戦闘した時に現れた青みがかかったマッシュヘアーの男が立っていた。 つまりは四聖剣だ。
「ん、まだそこにいるみたいだね、じゃあ炙り出させてもらうよ!」
男が手をかざすと、その先から大量の水が噴出する。
狭い小道はあっという間に水で埋め尽くされる。
"能力吸収発動 水天一碧を会得しました"
なるほど、こいつが水の能力を使う四聖剣だったのか。
身体を水が覆い、動気が鈍くなっているのが分かる。
俺は高速移動で無理やり水を引き剥がし、男の背後に回った。
「絶対零度!!」
大量の水はすぐに凍り、動きがなくなった。
「ん、誰かと思ったら君か! 嬉しいなあ、いつ来るのかワクワクしてたよ!」
「敵の侵入をワクワクしながら待つなんて正気か? たった今ここの人間を全員逃したんだぞ?」
「そんなことはどうでも良いんだ、僕は面白い人と戦うために四聖剣になったんだ。 ここにいる奴なんて正直どうでも良い!」
「変わったやつだな……」
「よく言われるよ! さあ、様々な能力を操る少年、戦おう!!」
「言われなくても……!」
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