第五十三話 三人目の四聖剣
焦るセリカに呼ばれ異世界に戻ると、そこで待ち受けていたのは四聖剣の一人、アウゼスだった。
「長引かせると体力が持たない、これで決める。 能力結合!」
俺の手元に白く光る刀が出現する。
ハウエルの地獄業火による超高温の炎をゼラートの風刀で刀の形に圧縮している。
その刀身のあまりの高温に地面の草花が燃える。
「何だ? その剣は……」
「今度はこっちから攻めるぞ!!」
俺はアウゼスに向かって走り、刀を振る。
アウゼスは体を反らし攻撃を避けたが、刀身が放つ熱風に顔を歪める。
「クソ、何だってんだその能力」
「ほらほら、まだだ!!」
俺は連続で攻撃を続ける。
あまりの熱風に耐えきれないのか、アウゼスはどんどん後退していく。
いける、この調子ならコイツを下せる。
「あまり調子に乗るな!!」
後退したアウゼスは地面に手を当てる、すると程なくして地面が大きく揺れ始める。
立っているのがやっとだ、現実でもこんな地震は体験した事がない。
俺はその場で膝をつき、アウゼスを探した。
……姿が見当たらない、アイツどこに行ったんだ。
目の前に黒い影が映る、これはもしかして!
「上か!!」
「死ね!!」
アウゼスの剣は俺の左腕を貫いた。
体に激痛が走り、俺はその場で地面に倒れる。
「これで終わりだな」
「くっ……」
「さて、これからどう甚振ってやろうか」
アウゼスは剣をグリグリと動かす、わずかな動きであろうと俺の身体は敏感にその動きを感じとる。
「ぐぅぅぅっ……」
「何だその反抗的な目は。 もう一回最初からやるか?」
アウゼスは余裕の表情で俺の左腕から剣を抜き、少し距離をとった。
こいつ、俺が手負いだからと油断している。 だがその油断が命取りという事を分からせてやる。
「立ち上がるか、その根気だけは褒めてやるよ。 いくぞ!!」
アウゼスはまた俺に近づいてきた。
また思い切り剣を振る、高速移動で辛うじて避けているが能力を解除した途端切られそうだ。
「その怪我でまだ避けるか!! でもいつまで持つかな?」
アウゼスの攻撃が緩める気配はない。
だが攻撃を避けているうちにあることに気付いた。
——こいつの攻撃、一箇所に集中している。
気のせいなのかもしれないが、どうやらアウゼスは次に俺の右腕を狙っている様な気がする。 四肢を使用不可能にした上でトドメを刺そうとしているのか?
「まだまだ!!!!」
アウゼスの剣が俺の脇腹を掠める。
間違いない、こいつは俺の右腕を狙っている。
狙っている場所が分かったなら、あとはそれを避けて反撃に転じるかだ。
だが避けても避けてもアウゼスの攻撃は止まらない、他の能力が発動できない。
——どうする…… どうする…
「そろそろ避けきれなくなる頃だよなぁ!?」
「もうこれしかない……!!」
アウゼスの剣はまた俺の腕を突き刺した、不思議とさっきよりも痛みが少ない。
意識が飛びかけているのだろうか。
ここで意識を飛ばすわけにはいかない。
俺は俺の身体を貫いた剣を掴み、アウゼスが離れられない様、思い切り力を込めた。
「お前まさか……!!」
「能力結合……」
俺の辛うじて動く左手から、先ほどの白い頭身が伸び、アウゼスの体を貫く。
「グアアァァァァ!!!!」
アウゼスの傷口から煙が出る、苦痛の表情を浮かべた後、アウゼスはその場で倒れた。
やっとこいつを倒した、痛みと失血で頭がクラクラする。
「やあやあ、すごいね!君!」
背後から拍手の音と男性にしてはやたら高い声がする。
振り向くと仄かに青みがかかったマッシュヘアーの男が立っていた、こいついつから背後にいたんだ。
「君たちの戦い、見せてもらったよ」
「だ、誰だ……」
「んーこの男の同業者かな?」
——という事は四聖剣の一人……
「あ、そんなに睨みつけないでよ。 確かに空間転移持ちを連れ出した犯人を捉える様指令は受けてるけど、その前にこの威勢の良い馬鹿を連れて帰んなきゃ」
「俺を捕えないってことか」
「なんか君、面白そうな能力持ってるしね。 その腕が治ったら戦おうよ、その方が面白いに決まってる!」
男は少年の様に笑う、その顔からは悪意などは全く感じ取れなかった。
「面白い……か……」
「ま、今日のところはこいつを連れて帰るよ、じゃあまた会おうね!」
男は100キロはありそうな巨漢を軽々と抱え、草むらを駆けて行った。
あのまま王都まで帰るんだろうか、少し気になるが今は自分の怪我をどうにかしなくては。
俺は目の前に転移穴を開き、宿泊している宿に戻った。
血塗れの俺を見たレナはどこからかすぐに救急箱を持ってきて、出来る限りの応急処置をしてくれた。
「私にできるのはここまでです、あとは一度ボルグランに行ってお医者様に見てもらった方が……」
「隻眼の魔女に襲われたときに世話になったところか… あそこはいい医者なのか?」
「はい、そういう能力を持ったお医者様なので……」
そういえば俺は気絶していたから治療の様子を見ていなかった。
一体どんな能力なんだろうか、行ってみるしかないか。
程なくして目の前に転移穴が開く、セリカが戻ってきた様だ。
「戻りました! ……レンさん!?」
血塗れの包帯に包まれた俺を見たセリカはそのままその場で倒れてしまった。
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