第四十五話 王都侵入
俺たちはボルグランの外れにある馬小屋にやってきた。
大きな馬小屋の隣には小さな一軒家が隣接しており、そこで一連の手続きができるらしい。
俺たちは一軒家に入り、馬の預入代金を支払った。
馬たちはちゃんとご飯も貰えていた様で、数ヶ月前と特に変わった様子はない。
「長い間待たせてごめんね」
レナが馬たちの頭を撫でている。 馬たちも心を許しているのか、レナにベッタリだ。
「馬たちも元気だった訳だし、王都に向かうか」
「はい、この道沿いを途中で右折すれば王都への道に繋がるはずです」
「そうか、申し訳ないけど運転はまた頼んでいいか?」
「問題ありません、そんな事より一つ気になっている事が……」
レナがいつにも増して真剣な顔をする。
「王都の検問をどうやって突破しましょうか」
「け、検問!?」
その後、王都の検問についてレナから話を聞いた。
要約すると、王都はその重要性からセキュリティが高く、他の都の様に自由に出入りはできず、検問を突破する必要があるらしい。
検問では身元の提示を求められる他、積荷についても全てチェックされるらしい。
「参ったな、てっきり門をくぐったら到着みたいな感じかと思ってた……」
「ボルグランに来たときは何も言われませんでしたしね、レンさんは覚えていないかもしれませんが……」
「そうだった、そもそも記憶ねえわ……」
俺とセリカは道沿いの小さな石に腰かけた。
「二人揃ってそんな哀愁を漂わせなくても…… 何か方法はあるはずです、考えましょう」
「フェニーに乗せてもらって空から侵入できないかな……」
「無理ですね」
「ぐぬぬ…… 王都となると空間転移も使えないしな…… そうだ、ゼラートに頼んで3人分の偽の身分証を作ってもらう事はできないかな」
「もしバレたらゼラート様はただじゃ済みませんね……」
「そうだよなぁ……」
何か方法はないか、俺たちは黙って考えた。
正面突破するのはまず無理として、何か揉め事を起こさずサッと検問を通過できる方法…… そうだ!
「良い事を思いついたぞ! セリカ、俺にくっついてくれ!!」
「え、えぇ〜〜〜〜〜!?!?」
「レン様、不潔です」
セリカは突然の発言に驚愕、レナは俺を蔑んだ目で見ている。
「ご、誤解だ! これならいけるんじゃないかなと思ってな!」
「つまりどういう事です……?」
「こういう事だ! 身体透過!」
俺の体が徐々に透明になって行く。
「なるほど、それなら門兵さんも気付きませんね!」
「だろ? この能力でセリカも透過できたらと思って」
「それってくっつかないとダメなんですか?」
「今は慣れた状態でセリカを透過しようとしてるんだけど、難しそうだな」
「そうですか…… じゃあまずは手でも繋いでみますか?」
セリカは立ち上がり、俺の声がする方に手を差し出す。
俺はセリカの手を握り、セリカの身体も透過するイメージをする。
「れ、レンさんいけそうです! 腕が…!」
セリカの腕が透過している。だが腕までだ、顔や体までは透過できていない。
「ふう、これが限界ってとこかな」
「そ、そうですか…… じゃ、じゃあ次はハグですかね……?」
「た、試してみるか」
セリカの顔は火に焼べた鉄の様に真っ赤っかだ。 そして透明だからバレていないが俺も同じ様なもんだろう。
俺は目線がくるくると回っているセリカの腰に手を回す。
「移動する事も考えたら、おんぶの方が良いんじゃないですか?」
レナの冷静なツッコミが響く。
「は、はは、そう考えればそうだな!」
「さ、流石レナさん〜〜」
俺はそのままセリカをおんぶした。
「重いとか言わないで下さいよ……!」
「何とか大丈夫そうだ」
「何とか……?」
セリカのムスっとした表情が頭に浮かぶ。
「それよりもセリカは透明になってるか?」
「はい、側から見ると完全に消えています」
「よし、成功だ! これで行こう!」
俺はセリカほ地面に下ろした。
セリカが俺の体から離れた瞬間、能力が解ける。 これは注意しないといけない。
「ちなみにこの方法だとレンさんと私しか王都に入れないと思うのですが、レナさんは?」
「そこはゼラートに何かしらの理由をつけてもらおう。 首領の使用人だ、疑われる事はないだろ」
「じゃあ一度空間転移でウィンドピアに戻りますか?」
「そうしよう、俺とレナで行ってくるから、セリカは少し馬車を見ておいてくれるか?」
「分かりました!」
俺とレナは空間転移でウィンダム邸に戻った。
転移先はゼラートの執務室だ。
「君はこの部屋が出入り自由だと勘違いしていないか?」
「すみません、ここに来ればすぐお話しできるかなと……」
「まあ良い、ハウエルとの修行は終わったのか?」
「はい、何とか……」
「そうか、すると次はどうするんだ?」
「王都に行ってみようかと思ってます。 それで、レナと馬車一台の通行許可が必要でして……」
「なるほどな、それで私の前に現れたと。 良いだろう、私の名前で証明書を書こう」
「あ、ありがとうございます!」
ゼラートは引き出しから一枚の紙を取り出し、机の上の羽ペンで署名をした。
「持っていけ。 この事がバレたら私もこの立場から追われるかもしれないな、上手くやってくれよ」
「努力します!」
ゼラートは視線をレナの方に向ける。
「それとレナはレンについて行くのか?」
「はい、色々な世界を見ておこうと思いまして」
「分かった、怪我はしない程度にな」
「ありがとうございます」
「じゃあ、戻るか」
俺とレナはゼラートに一礼した後、転移穴を通り馬車に戻った。
「お帰りなさい! どうでしたか?」
「無事ゲットだぜ!」
俺はゼラートから受け取った証明書をセリカに見せた。
「よし、これで問題はなくなった。 馬車に乗ろう」
俺たちは馬車に乗り込み、王都を目指した。
王都に向かう途中、現実世界では行方不明者の再発について連日報道がされていた。
早く王都に辿り着かねば。
——数日後、天高くそびえる塔が俺たちの視界に入る。
「あれが……」
「そうです、王都です」
俺たちは遂に王都に着いた。
これから身に降りかかる危険のことを考えると、正直このまま引き返したいくらいだ。
だが絶対に王の侵略を止め、セリカを両親に会わせる。 それが俺がこの世界にいる理由だと思うから。
少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたら、ブックマーク登録や評価をよろしくお願いします。
小説を書き続ける励みになります!
(下側の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にして下さると、死ぬほど喜びます!)




