第四十二話 因縁の相手
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レナ、セリカと今後の方針について話した後俺は就寝し、現実世界に帰ってきた。
現実世界は至って平和だ、王の侵略の話は白紙になったのだろうか。
それが一番なんだが、唯斗が襲われた時に聞いたあの台詞が頭から離れない。
「座標が乱れる……か……」
「また今日も気難しそうな顔してんな」
「陰キャはそういう宿命の下に生まれてきてるんだよ」
「自分から塞ぎ込んでるだけじゃねーか? もっと他人に興味持った方がいいぞ」
唯斗は俺の肩を叩く。
「と言われましても……」
「あ、そうだ! 今日放課後何か用事あるか?」
「特に予定はないけど」
「じゃあカラオケに行こう! 他にも数人来るけどいいだろ?」
「そんなの俺が行っても迷惑だろ」
「そういう所だよ! じゃあ決まりで!」
「あっ、ちょっとま……」
唯斗は行ってしまった。
どうしよう家族以外とカラオケなんて行った事ない。
しかも知り合いは唯斗だけで他のメンバーは誰が来るのかすらも知らない。
これは授業が終わったと同時に気配を消してコッソリ帰るしかない。
——一日の授業が全て終了した。
俺は怪しい素振りは見せず、何気ない顔で教室を後にしようとする。
教室から出てしまえば後はダッシュで昇降口に向かうだけだ。
「おい蓮、どこいくんだ? みんなこっちに集まってるぞ」
努力も虚しく俺の退路は断たれた。
「は、はい……」
唯斗の方を見ると、クラスの陽キャ男子が3人、陽キャ女子が4人いる。
俺を含めると4対4のまるで合コンスタイルだ。
唯斗は教室の出入り口に佇む俺を捕まえて無理やり輪の中に押し込んだ。
「改めて紹介しよう俺の友達の蓮だ!」
「よ、よろしく……」
緊張から自分でも声が小さいのが分かる。
クラスのカースト最上位の陽キャたちはまるで珍しい物を見るかのように俺をみている。
気まずい…… だから陰キャがこんなグループに入り込むだなんて無理だったんだ。
「そっか、宜しくな! お前話しかけるなオーラがすごいよな!」
あれ? 思ってた反応と違う。
てっきり何でこんな奴連れてくるんだよみたいな事言われるのかと思った。
「ごめん、そんなつもりはないんだけどこういうの慣れてなくて……」
「同じクラスなんだし遠慮すんなよ! 今日は楽しんでいこうや!」
「う、うん」
そうか、もしかすると唯斗が言ってた通り、俺は塞ぎ込んでいただけなのかもしれない。
「よし、じゃあ行くぞ!」
唯斗が号令をかけ先陣を切る。
皆の後をついて10分ほど歩くと、駅前のカラオケ店に到着した。
8人という事で大きめの部屋に案内されると、それぞれ歌いたい曲を入れて行く。
俺の所にデンモクが回ってくる頃には既に他の全員が曲を入れ終わっていた。
何の曲が盛り上がるのかわからず、俺は無難に小学生の頃流行っていた曲を入れた。
あれだけビビっていたカラオケも、吹っ切れて一曲歌ってしまうと緊張感は無くなる。
俺の選曲は間違ってはなかった様で、俺が歌えないところも皆がマイクを回してカバーしてくれた。
——3時間が過ぎ、部屋の電話が鳴る、どうやらもう時間の様だ。
「よし、じゃあ出るか!」
「あーあ、喉ガラガラだぜ」
「私も明日もう声出なそ〜」
そんな会話をしながら俺たちはカラオケを後にし、駅前に集合した。
「じゃあ今日のところは解散!また明日な!」
「蓮もまた来いよ!」
「じゃあね〜」
各々帰宅ルートに向かって歩き出す。
俺は唯斗と今日初めて話した同級生の彩と同じ方向らしい。
彩は茶髪にポニーテールの女子で、玲奈と同じく学年のマドンナ的存在だ。
大人しく優しいイメージを持たれている玲奈とは対照的に、彩はとてもテンションが高い。 カラオケ中もどこからそんな声が出るんだってくらいに騒いでいた。
「今日来て良かったろ?」
「ああ、久しぶりに……楽しかった」
「お前もそんな事言うんだな、なんか珍しいもん見た気分だぜ!」
「か、からかうなよ!」
「はは、ワリワリ!」
唯斗が無邪気に笑う。
その様子を見ていた彩が話しかけてきた。
「二人はいつからそんなに仲良くなったの?」
「そ、それは! まあ色々あったんだよ! な、蓮!」
「色々……な」
俺は唯斗の事を軽く睨んでやった。
唯斗は玲奈狙いで俺に近づいてきてるもんだと決めつけていたが、案外そうでもないらしい。
玲奈に関係あろうがなかろうが変わらず接してくれる。
……思ってたよりもいい奴なのかもしれない。
「ふふ、男の子って不思議だね! あ、じゃあ私家こっちだから! またね〜」
「おう、お疲れ!」
彩は手を振りながらT字路を曲がっていった。
「どうだ? 今日の女の子、蓮のタイプは居たか……?」
「打ち解けるのに必死でそんな目で見てなかったわ!」
「くそ、蓮に恋人ができれば早坂を落とせると思ったんだが……!」
「お前やっぱそう言う意図か!!」
「冗談だよ冗談!」
俺らがそんな雑談をしていると、背後から女性の悲鳴が聞こえた。
「この声もしかして彩の悲鳴か!?」
「痴漢でも出たのか!? とにかく行こう!」
俺と唯斗は彩が向かった方向に走り出した。
曲がり角を曲がった瞬間、信じられない光景が視界に入った。
転移穴だ。
暫く何も起きなかったから油断していた、もしや座標とやらが直ってしまったのか。
「おい、あの穴俺が連れ去られそうになった時と同じ……」
「そんな事言ってる場合じゃない、彩が連れて行かれる!」
現実世界で能力が使える事は確認している。
だが知り合いに見られてる状況で発動しても良いのだろうか。
……そんな事言ってる場合じゃないか……!
「高速移動!!」
俺は転移穴の側に移動し、彩を掴んでいる腕を蹴り飛ばした。
引かれる力を失い、彩はその場で倒れた。
俺は彩を抱き抱え、唯斗のところへ戻った。
「お前、今の……」
「今は聞くな、そんな事より彩を連れて逃げろ!! 早く!!」
「あ、ああ」
唯斗は恐怖に震える彩の肩を抱え、その場を去った。
転移穴の中から声がする、聞いたことがある声だ。
「この俺の足を蹴飛ばすとは、いい度胸してんじゃねーか」
中から鎧を着た兵士が出てくる。
あの赤い鎧…… 間違いない、四聖剣の一人アウゼスだ。
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