第三十五話 決着
「君にも言いましたよね? 彼女は特別だと。 なんせ王の血筋を引く者なのですから」
「フェラルが…… 王の血を……?」
「驚くのも無理はないですね、彼女自身もそんな事は知らないのですから」
「じゃあ何故お前がそんな事を知ってるんだ」
「私の暗殺対象が王家のはみ出しものだっただけの事、単純な話です。 依頼主は赤子が生まれていた事など知らなかったが為に、暗殺依頼の対象としていなかった。 なので後々役に立つかとここまで育ててきました」
「この十数年一緒に過ごしてきて、お世話になった支配人のためにと必死に働いていたフェラルを見て、情も湧かなかったってのか」
「はい、全く。 これでも暗殺者としては一流でしてね、感情なんてものは忘れてしまいました」
「暗殺者としては一流……か…… 人間としてはど三流だな」
「お話はこれくらいにしましょうか、投降しますか? まだ戦いますか?」
「俺のスタンスは変わらないよ、ぶっ殺してやる」
「はぁ、残念です……」
俺は2回ほど支配人に攻撃している、そしてそのどちらも手応えはあった。
なのに支配人は無傷で目の前に立っている、どういう仕組みなんだ。
能力かとも思ったが、まだ俺は支配人の能力を吸収できていない。
つまり俺は支配人が能力を発動する瞬間を見ていないという事だ。
闇雲に支配人に攻撃しても血を失うだけだ、考えろ……俺……
——そうだ、この方法なら!!
「(心理読解)!!」
思考を読むこの能力なら支配人の能力が分かるのではないか。
俺は注意深く支配人の心を読む。
——ダメだ、全く心が読めない。
さっきの支配人の言葉が頭を過ぎる、"見えているものだけを信じるな"。
もしかして、今俺が見ている支配人は本体ではなくて、別に本体がいるのか……?
俺は注意深く周りを見渡す、何やら声が聞こえる。
「(そろそろ終幕ですな……)」
「そこか!! 風刀!!」
「何っ!?」
声がした方面に向かって俺は全力で風刀を飛ばした。
風刀は勢いよく声がした方面へ飛び、部屋の古時計を真っ二つに切り裂いた。
直後、俺が見ていた支配人の姿は消え、古時計の脇に支配人が現れた。
「何故私の場所が分かったんです?」
「言う訳ねぇだろ」
「なるほど、でしたら正面から殺すしかなさそうですね。 暗殺は気づかれない様に殺す事が美学なのですが」
「タネは分かったし軽くあしらってやるよ」
「こんな事で勝った気にならないでください……」
支配人から怒りを帯びた声が発せられる、何だしっかり感情があるじゃないか。
次の瞬間、支配人は3人に分身した。
"能力吸収発動 幻影騎士を会得しました"
幻影か…… 通りで凍らせても切っても無傷な訳だ。
支配人は3人に分身して俺の周囲を囲んだ。
なるほど、これだけリアルな幻影に囲まれたら誰だってどれが本物か分からなくなる。
だが俺の能力なら……!
「無駄だ!! 能力結合、風刀零度!!」
俺を中心に凍てつく風が周囲に放たれる。
冷気は強烈な風によってさらに威力を増し、部屋中を凍らせていく。
支配人の動きもどんどん鈍くなってきた。
「くっ…… こんな!!」
「もっとだ!!」
俺は冷気の温度を限界まで低下させる。
気づけば部屋に存在するもの全てが凍っていた。
いつしか支配人の幻影は消え、支配人の本体のみがその場に残った。
「さて、覚悟はできてるか」
「君を働かせるなんて馬鹿げた事を言わなければ良かったよ」
「……だな」
俺は風刀をふりかぶり、支配人の首元に目がける。
その瞬間だった。
「レン、やめてくれ!!」
フェラルの声だ、ドアの外から声がする。
俺の心を読んで、これから俺が何をしようとしているかを察知したんだろう。
「こいつはフェラルの両親を殺した張本人なんだぞ」
「でも……でも確かにアタイを育ててくれたのは支配人なんだ。 演技だったとしても、幸せだった。 だから、殺さないでくれ!!」
「フェラルがそう言うなら……」
俺は地獄業火でドアの氷を溶かした。
気が緩むと足がふらつく、俺ももうこれ以上は無理か。
俺はその場で倒れた、体が動かないが意識はある。
支配人は怒りとも悲しみとも言えない様な不思議な表情をしている。
色々と言ってはいたが、ほんの少しくらいはフェラルに情が移っていたのかもしれない。
氷を溶かしたドアが開く。
「レン!!」
フェラルが俺のもとに駆け寄ってくる。
「ありがとうな、お前の気持ち、嬉しかったよ」
「心が読めるってのも悪いことばかりじゃないだろ?」
「……ああ」
フェラルは笑いながら泣いている。
そんな感動的なムードをぶち壊すかの様にドアの方から聞き覚えのある声が聞こえる。
「よーし助っ人に来たわよォ!! ……ってもう終わってる……?」
「あ、おかげさまで……」
「何よ! お店の片付けをサボってまでこんなところまで来たって言うのに!!」
「俺が知ってる中で最強の助っ人がハウエルさんだったもので……」
「急に転移穴が開いてビックリしたわよ、でも生きてるなら良かったわ。 さて悪人はどこの誰っと…… ん? アンタターナーじゃない!!」
支配人の顔を見たハウエルは驚いている、知り合いなのか?
「お久しぶりです、ハウエル様……」
「まさかアンタが黒幕とはねぇ…… やっぱり王家の直属は性根がひん曲がってる奴しかいないのね。 アンタ、警備兵に突き出す前に私が性根叩き直してあげるわ」
「ハウエル様、ご勘弁を……」
「半殺しで勘弁してあげるわ、ほら」
ハウエルは地獄業火で氷を溶かし、懸命に逃げようとする支配人を捕らえ、どこかに消えていった。
その後、彼がどの様な目に遭ったのかは誰も知らない。
「レン、どれだけ感謝しても足りないとは思うけど、私の感謝の気持ちを受け取ってくれ!!」
「え、受け取るったってどうやっ……」
唇に柔らかい感触がする、今まで味わった事のない感覚だ。
——もしやこれは……キス?? 俺はファーストキスを済ませてしまったのか?
俺は左右に視線を動かす。
誰かが俺とフェラルのことを見ている、深緑色の少女と赤髪の少女、セリカとレナだ!
俺のファーストキスは一緒に行動している女子二人に目撃されてしまった。
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