第七話 行き違い
第七話になります。
序章のところから読みにくいところがあったと思います。
駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。
AM9:00
「マジで何してくれてんの!? 今君が殺したよね? 完全な殺人事件だよねっっ!?」
「大丈夫♡ 現世の人間には私は見えない。つまり捕まらないの!」
「いやそういう問題じゃねぇだろ!」
「だって、こうしなきゃ神帝教会に行けないんだもの!」
「だから俺はあの世に行くつもりはないって!」
自分を殺された事に流石に腹を立てた優はセンナに反論を繰り返していた。
一方センナは、どうしても優を向こうの世界に連れて行くことに、まるで使命の様に必死になっていた。
優自身、どうしてここまで強引になるのか気になっていた。ドラゴンの起こした突風によって吹き飛ばされた俺を救ってくれた彼女に優は少なからず感謝をしている。
あの時、彼女と鬼の男の間で行われた会話は何一つ分からなかったが、きっと何らかの理由でアイツを追わなければならなかった筈だ。
それなのに彼女は見ず知らずの自分を助けてくれた。
(そういえば……)
あの時鬼の男が言っていた言葉に優は今更ながらに引っかかりを感じた。
『残念だったな! トランクは既にワレらが手に入れた。もう用済みだ』
(トランク、そういえば、あの穴から落ちてきたトランクは?)
優は周りを見渡して見たが、たしかに床に置きっぱなしだったトランクが見当たらない。
「どうしたの、優?」
急に黙ったと思ったら、探し物をするように辺りを見始めた優にセンナは首を傾げた。
「いや、俺を刺してきた刀、あれが入っていた
トランクが何処にも見当たらなくてさ」
「それは多分、奴らが持っていってしまったんだと思うわ」
「え、何で? あのトランクアイツ等のものなのか?」
「ううん、あれは歴とした神帝教会の備品よ、それは間違いない。盗まれたのも本当は良くないんだけど」
「けど、何?」
「もういいの、だってそのトランク中身空だったでしょ?」
「え? 何で知ってんだ!」
「やっぱり、貴方は天牙に選ばれた戦士なのね。なら尚の事、空箱に気付いた奴らが此処に引き返してくる可能性もある、一緒に来てもらうわよ、優!」
センナはそう言うと、杖を持って立ち上がり
何もない壁に手をかざした。
するとどうだろう。壁が途端に眩く光り出し次第に円上に形を成していき、壁に光の穴が空いた。
優はこの穴に見覚えがあった。
「あぁぁっ! この穴は!」
「うふふ、見たことあるのよね?」
そうだと思ったと言わんばかりにセンナは微笑んでいた。
「ごめんなさい。実はあのトランクを穴の中に入れたのは私達なの」
「え? じゃあ最初から俺に……」
「ううん、それは違うわ。貴方の所にトランクが落ちたのは偶然……(いえ、もしかしたら天牙は自らの意思で彼のもとに……)」
「どうしたんだ? 急に黙って」
「え、ううん何でもない! いいから行きましよ!」
そう言うと、優の手を握りセンナは穴の中に入って行った。
「え、いや、だから俺は行くつもりはってうわぁぁぁっっ!」
センナに引っ張られ優もまた、穴の中へ吸い込まれていった。
穴は二人を飲み込むとすぐに消え、部屋の中には、優の遺体だけが残った。
―――――――――同時刻―――――――――
別の場所では………
「おい! これはどうなっている? 中身が無いではないか! 儂は空箱を持って来いと言ったか!?」
部屋の所々の壁に蝋燭を立てたれているだけで、薄暗い部屋の中。
部屋中に響き渡るほどの怒鳴り声を上げているのは、ドラゴンに乗った鬼と同じようなマントとフードを被った老人だった。
「『リガード』! 『イラ』! ヌシ等に任せたのは失敗だったか……期待を裏切りよって!」
「待ってくれ旦那! 俺は水女野郎と戦ってただけだ! トランクを持ってきたのはコイツだぜ!?」
「コイツじゃない……それに『お祖父様』もトランクを持ってこいって言った……命令、失敗してはいない……」
リガードと呼ばれ、必死に言い訳をしているのは、先程優達を襲ったオーガだった。そしてもう一人、イラと呼ばれた女性は室内で傘をさし、段差の地面に腰掛けている少女だった。その顔は傘によって見えない。
「黙れイラ! 毎度毎度言葉の揚げ足を取りよって! 『ボス』が空のトランクなんぞ欲しがると思うのか? あのお方が欲するのは天牙のみじゃ!」
「でも旦那、変じゃねぇか? その天牙は己の決めた相手にしか触れることが出来ないんだろう? 誰がトランクから出したんだ?」
「ふむ、たしかにそれは妙だ。何千年ものあいだ懲りずに剣聖とやらを待ち続けた神帝のクズ共に、今更あれに触れられる者なんぞいるはずがない。……しかしこのトランクは間違いなく天牙を納めていた物、どういうことだ?」
「そういえば、トランクを拾ったとき近くに男の死骸があった……でもあの死骸、なんか変な感じがした……」
「あ、それを言うなら俺も変なガキに会ったぜ、霊体だけど戦士には見えねぇ、普通の霊体のような」
「普通の霊体? 現世でか?」
「あぁ、見つけたときオーラを何も感じなかったから戦士じゃねーのは間違いねぇ! ドラゴンの餌にしてやろうと思ったのによ」
「あ、任務サボろうとしたの、自白した……」
「な、バカ! 余計なこと言うな!」
「ふぅむ、その小僧とやらが気になるのう。リガード、イラ、再び現世に行きその小僧を連れてこい!」
「オッシャァァッッ!」
「……ヤダ」
「「は!?」」
「お腹空いた……おやつの時間……」
「何を戯けたことをぉ!」
「良いよ旦那! こんな奴居なくたって、俺一人で十分だ! その代わりあのガキ連れてきたら俺だけ罰なしってことで!」
「失敗すればリガード一人の責任……」
「……よかろう、リガード今度はしくじるなよ」
「任せとけ旦那ぁぁ!」
そう言うと、リガードは部屋を出ていき、再び現世に向かうのだった。
読んで頂きありがとうございました。
新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」
と思われる所もあると思います。
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悪党側も書いて、漸く時間を書いてきた甲斐が少しだけ出てきました。
もっとも、本当の役割は別に用意していますので
続きを読んで下さったら幸いです。