第六話 生者と死者
第六話になります。
序章のところから読みにくいところがあったと思います。
駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。
AM8:40
「信じられない、どうゆうこと?」
センナは未だに信じることが出来なかった。優は自分の生きた肉体に戻ることが出来た。
霊体の優が中に入った後、息をしていなかった身体は電池を入れた機械のように再び機能し始めたのだ。
しかしそれは、死んだ人間が生き返ったということになる。息を吹き返したのではない、本当に死んだ人間が、再び生を宿したのだ。
しかも驚くべきことはそれだけではない。
センナは先程、生身の優にビンタを食らわせたのだ。当然通常そんなことは不可能である、ただの人間が、幽霊と会話したり、触ることなど出来る筈がない。
センナはまるで、新種の生き物を観察するような目で優を見つめ、割れ物を扱うかのように慎重に身体に触っている。
しかし優としては、そのような目で見られることは、あまり気分の良いものではなかった。
「なぁ、いつまで触っているんだ? もういいだろ! もとに戻れたんだから……」
「そんな簡単にまとめられる話じゃないでしょう! 貴方今、肉体に戻ったのよ!? つまり、この世に蘇ったの! ありえないことよ!」
「だから俺は死んでなかったんだって! 幽体離脱ってさっきから……」
「それはありえないことだってこともさっきから言ったよね?」
互いに己の持論が正しいと思っているため、決着のつかない言い合いをしていた。
「ふぅぅ、ここで言い合いしていても埒が明かないわ。やっぱり向こうで調べてもらうのが一番よ!」
「向こうって……」
「勿論! 貴方の言うあの世よ」
「イヤイヤイヤ、俺生きてるから! 今身体あるから!」
「あら、さっきまでなかったじゃない! それに神帝教会の者としても、貴方のような未知の存在を見逃す訳にはいかないの! もしも拒否するなら、無理にでも連れて行くわ!」
センナはそう言うと持っていた杖を握り、
先程ドラゴンに乗っていた鬼と対峙した時のように、身体が青い光を纏い始めた。それはまさしく、これから攻撃せんとばかりの迫力だった。
虫の知らせというのだろうか。優は直感的にこの状況は危険と思い、逃げ腰ながらもセンナを落ち着かせることに専念した。
「ま、待て! センナ、俺を調べるんだろ?だったらその俺を傷つけるのはまずいんじゃないか?」
「平気よ。どのみち向こうの世界には生身では行けないもの。また霊体に戻ってもらうだけだから!」
「えっと、それってつまり……」
センナは天使のような優しそうな顔で
「優、もう一回死んで♡」
「ウソだぁぁぁぁぁっ!」
センナは杖を大きく天井に掲げた。すると、杖の先から水が大量に溢れ、センナを中心に渦を巻く様に広がっていった。優の部屋はあっという間に水に浸かってしまった。
優は荒い渦から逆らうことも出来ず、息を止めることだけしか出来なかった。中心にいるセンナには渦の影響はなく、まるで台風の目の様にそこだけは穏やかだった。センナは杖を立たせると両手を広げた。
「大丈夫だよ優、加減はしてるから」
(いやもう死にそうなんですけど………)
もがき苦しみながら、優は内心で悪態をついた。
『ブルー・カタストロフィ』
優の部屋は青い光に包まれていき、優自身は、身体が急に全方位から押しつぶされるような痛みに襲われ、意識を手放した。
AM9:00
「う、うぅ………」
優は悪夢から目覚めるように苦しそうな顔をしながら瞼を開けた。
「おはよう♡」
目を開けるとすぐ近くに、センナの顔が見えた。それだけでなく、後頭部に枕にしてはとても柔らかいような感触があった。
優は理解した。自分は今、膝枕されているのだと。普段ならば驚くことであるが、それよりも先に確認したいことがあった。
「俺、生きているのか?」
「いえ、死んでいるわよ」
「……え?」
「ほら、と・な・り」
そう言いながらセンナは優のすぐ横を指さした。優もつられるように横を見ると、まるで棺桶に入れられているかの様に、両手を胸の上に組まされ安らかに眠っている自分の姿があった。センナは再び天使のような笑顔で言った。
「ご愁傷さま♡」
「な、な、何してくれとんじゃぁぁぁぁぁっ!」
こうして、優は再び死者となった。
読んで頂きありがとうございました。
新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」
と思われる所もあると思います。
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ヒロインが殺人犯になりました。
イレギュラーというより、只の危ない話になってる気がする・・・