第六十二話 トーナメントの狙い
第六十二話になります。
序章のところからココまで読みにくいところがあったと思います。
駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。
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PM2:00
「ビエちゃんや、このコーヒーなかなか旨いのぉ」
「部下が淹れたものだ。私ではない」
「しかし、ブラドももう少しゆっくりして行けば良かったのに」
「仕方ないじゃろ。今回の件で一番忙しいのは第七部隊じゃろうからな」
総隊長室の中では、ビエラとルドウ、シグレがテーブルを囲み茶事を興じていた。先刻まではブラドもこの席に入り茶を嗜みながらトーナメントの事を話し合っていたのだが、話が纏まった途端に第七部隊のミーティングルームへと戻って行ってしまったのだ。
「しかし今頃小僧は狼狽えておるじゃろうなぁ。その顔が目に浮かぶわい」
ルドウはアレスがトーナメントの主力メンバー入りが決定した直後の反応を頭の中で思い浮かべ、逸楽に笑みを浮かべている。普段よりアレスをからかう事を楽しんでいる彼はアレスの毎度驚く様を見ることが楽しみになっているのだ。
「しかし、よく上層部が許したな。一部を除いているとはいえ神帝教会全体の一大イベントだぞ」
「許可は取っていない」
「ぶっ!?」
「じゃろうな」
シグレが訝しげな眼差しをビエラに向けながら上層部の話を振った。神帝教会最強決定トーナメントなどこれまでの神帝教会では一切行った事がなかったために、上層部が易々と首を縦に振るものなのかと狐疑を感じていたのだ。それ故にビエラの答えを聞いた途端、口にしていたコーヒーを危うく吹き出してしまうところだった。
一方、ルドウはさも当然の事だと言わんばかりに落ち着いた体配でコーヒーを啜った。
「まさか許可なしで執り行うのか? また怨言を浴びることになるぞ」
「構わん。それに、アレスの力を覚醒させるにはどうやらピンチに追い込んだ方が早そうなのでな。この方法が一番効率が良さそうだ」
幾分か乱れた佇まいを正したシグレが厭々しい表情を浮かべたままビエラに献言をすると、ビエラは一切の関心も示さない態度で返した。現世での一件の報告を受けた彼女は、
・アレスの身体から黒刀が出現したこと
・黒刀から眩い銀色の光が迸ったこと
・光りが収まった直後老災の左腕が無くなっていたこと
この三つに目を付けたのだ。
アレスがセンナを守るために老災の前に立ちはだかり、直後に黒刀が現れた。このことにより極度に彼がピンチに陥ると黒刀が何らかの反応を示すことがはっきりとしていた。ビエラは事象を狙ったのだ。
「だが、もし第七部隊があっさり負けてしまったら?」
「剣聖の登場に興味を抱いている輩はメルスだけではない。それは第八部隊も同じだろ?」
「……なるほどな」
シグレの部隊である三人もアレスの姿を見るや否や積極的に絡んでいた。その理由を知っている彼女は苦々しく笑みを浮かべるしかなかった。何の前触れもなく剣聖の力を秘めた可能性のある存在が現れた事に全員が納得できる筈がないのだ。ビエラは隊全体の事を、シグレは自分の部隊の事を気にかけていた。
「小僧がどんな戦いをするのか。見ものじゃのぉ」
いろいろな思考が織り交ざる中、余興を愉しむ老人が一人。愉快そうにその口元を歪ませながらカップに口を付けたのだった。
PM11:30
「さて、今日はゆっくり休んで明日に備えろよぉ!」
「し、死ぬぅぅぅ」
「もう死んどるぞ? ナッハッハッハー!」
アレスは全身から聞こえる悲鳴から逃れるか如く備え付けのベッドに倒れこんだ。此処は男子寮、合宿中にアレスが泊まる部屋の中。本来は個人部屋は一人前の戦士にしか与えられないのだが、今回は特別にアレスが使う事を総隊長が許可したのだ。部屋には何も模様されることもなく、予め備え付けられている物しかない極めて殺風景な状態だったが、彼には部屋を気にする余裕も、ブラドのツッコミに応える余力も残ってはいなかった。
ブラドがトーナメントの日付と主力メンバーを公言した直後、アレスは第七部隊全員の許で時間一杯厳しい訓練を受ける羽目になった。サクラも同じく主力メンバーに選ばれたのだが、元々彼女は見習い戦士を卒業した一人の戦士だ。限られた時間の中で誰を一番鍛えなくてはならないか、答えは火を見るよりも明らかだった。
結果、アレスは殆ど休み時間を与えられることもなく、現時刻までみっちり扱かれたのだった。
「明日・明後日・明々後日のたった三日間の辛抱だ! しかも戦うのは三部隊だけだぞ?」
「一戦でも俺が役に立てたら奇跡だろ。なんで俺が主力メンバーなんだよ……」
厳しい訓練を終えて尚、アレスの心に欠片の自信も沸き起こることはなかった。当然だ。一日二日訓練を受けただけで戦士になれる筈がないのだ。アレスが教わった事は基礎の基礎にすぎない。やさぐれた声でブラドに諍おうとするが、彼が知らないだけで、事は総隊長が決めた決定事項。今更反論しようと後の祭りなのだ。
「明日は早くから迎えに来るから、その前に起きとけよぉ! んじゃあなぁ!」
それだけ言い残すと、ブラドは部屋を後にした。一人残されたアレスは、途端にシンッと静まり返った部屋の中で一人ボヤキ始める。
「しかし、霊体とはいえ飯が要らないとはなぁ……」
アレスは神帝教会に来てからというもの、水分以外に何も口にしていないのだ。それなのに彼は今においても全く空腹感を感じていない。アレスがこの事に不審を抱いたのは午後の訓練中の事だった。
―――時を遡る―――
PM3:00
「だぁぁ、ちょっと休ませてくれぇ」
「ダメに決まってるでしょ。ただでさえ時間ないんだから」
修練場にて訓練に励んでいたアレスはベンチにどっしりと座り込み、憔悴しきった身体を休ませていた。すぐ傍ではミキが腕を組みながら思いがくすぶる表情でアレスを見つめている。
「ったく、何でアンタが第七部隊の主力メンバーなのかしら。隊長の考えが分からないわ」
ミキは未だアレスが主力メンバーである事に諒解出来ていないのだ。それは彼女だけでなく、センナやメルス、彼と同じく主力メンバーに選ばれたサクラも同様だった。隊長の指示でアレスを鍛えているが、ミキの感情は複雑だった。
「センナとメルスは流石ね。隊長が鍛えろって言ったらすぐに行動できるんだから」
ブラドにアレスを鍛える様に指示を出された時、センナとメルスは迅速に行動に移した。彼女達にも思う事があった筈だが、隊長の言葉にはとても忠実なのだ。ミキもブラドに逆らう気は毛頭ないが、だからといってすぐに切り替えられるほど器用ではなかった。
「ブラドさんの考えは俺にだって分からねぇよ。でもまぁ、どのみち訓練を受けるために此処に来たんだからこの現状には不満はないんだけど……」
「けど、なによ?」
「ちょっと峻厳にも程がないかぁ?」
アレスは既にサクラ、センナ、という順に訓練を受けてきた。彼女の後にもメルスとブラドという如何にも厳格な顔ぶれが待ち構えている。想像するだけでアレスは身体が重くなった感覚を覚えた。
「仕方ないでしょ。本当に時間ないんだから」
「俺、昼飯も食べてないんだぜぇ! いい加減腹が……あれ?」
それは、アレスがサクラとの待ち合わせまでブラドに城内を案内してもらう形で潰している時の事だ。彼の予想以上に有意義な時間だったために、気付くと約束の時間が差し迫っており、彼は昼食を済ますこともなく、大急ぎで修練場に向かったのだ。
いい加減腹が空いてきた筈だとアレスは無意識に自分の腹を撫でるが、一向に空腹感を感じる事はなかった。
彼の心情を察したミキは聞かれるよりも早く疑念に答えを差し伸べた。
「お腹が空くのは肉体的に栄養を欲しているからよ。でも、霊体に栄養は必要ないわ。本来なら水分も要らないんだけど、霊体の身体から噴き出す汗は、当人に水分を消費している事を意識させてしまうのよ。霊体は感情の塊だから、身体から水分が消えていく事を思い浮かべるだけで、自然と喉が渇くって訳。消費するエネルギーは目に見えないからね。だから神帝教会では、水分だけ用意されているの」
視覚はもっとも情報を引用している部位だとアレスも知識として知っていた。故にミキの言っていることは理解できない事はなかった。しかし、これまで行ってきた食生活がいきなり絶たれたという事実は、アレスに形容しがたい歯痒さを感じさせた。
「さぁ、休憩は終わりよ! 訓練を再開するわ」
「へぇぇい」
―――現在に至る―――
「やれやれ。もう霊体に慣れた気でいたけど、俺は結局まだ何も……すぅ、すぅ、」
一人の青年の寝息が、静まり返った部屋の中で小さく響めいていた。
――刻々と迫る神帝教会最強決定トーナメント! その中で、大きく進化する彼の命が、後々あの世全土を巻き込む巨大な災いを齎すことを、この時はまだ誰も知らなかった――
読んで頂きありがとうございました。
新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」
と思われる所もあると思います。
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お待たせして大変申し訳ありませんでした!
ここから、トーナメントによるバトルシーンとアレスが仲間達と過ごす面白いかつ魅力的なシーンを皆様にお届けしたいと思いますので、ぜひ読みに来てください。




