第五十七話 少女のツッコミ
第五十七話になります。
序章のところからココまで読みにくいところがあったと思います。
駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。
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よろしくお願いします。
AM10:00
「本当に……ゴメンね」
「いえ、もう良いですって」
アレスは今、サクラの部屋のリビングにてサクラにもてなされていた。
先程ベランダにてこれ以上にないと思えるほど最低最悪のシチュエーションから部屋の中に入れて貰える事が出来たのか……。
――時を少しだけ遡る――
AM9:57
ブラドに投げ飛ばされ、見事にサクラの部屋のベランダに辿り着いたのだが、間が悪くその時丁度
ベランダではサクラが洗濯物を畳んでいた。真下の方から叫び声が聞こえると思い壁に近づこうとした途端、アレスとぶつかってしまったのだ。肉体ならば両者共に大怪我をしていた筈だが、彼らは霊体だ。痛みを感じる事はあっても冷静を失わない限り壊れることはない。
幸か不幸か痛みを忘れてしまう程の衝撃が彼らを襲った。それは、サクラの体に覆いかぶさる様な形でアレスが四つん這いになっていた事だ。何も知らない第三者が見れば、間違いなく幼い少女を押し倒した痴漢としてアレスは総隊長にキツイ罰を受けていただろう。
初めは泣き顔でひたすら怯え続けたサクラだが、アレスはすぐにサクラの身体から離れると、その場で土下座をした。
まったく動揺を隠しきれていない早口な言葉で、アレスは懸命に自分が何故ベランダから飛んできたのかを主張し続けた。
・初めはブラドと共に女子寮まで歩いてきたこと
・女子寮には住民が一緒に居なければ入れないことを彼が忘れていたこと
・ブラドの提案で、無理やり人間花火をさせられたこと
すべてを聞き終えたサクラは……。
「わ、分かりました。人間花火はよく分からないですけど、隊長ならやりそうなので」
(部下にどういう印象持たれてんだあの人……)
「へっくしょんっ!」
タイミングよく、他の地でブラドがクシャミをした事は、誰も知らない話。
「と、とにかく。早く中に入ってください! 出来れば、そのまま下を向いたままで」
「え、なんで?」
消え入りそうな声で下を向いたまま中に入れと言われても、アレスはその理由が分からなかった。だが、土下座したままの体制で少しだけ顔を上げると、その答えは彼の周りに散りばめられていた。
「あ……」
「ひ、ふぇぇぇ」
サクラは此処に洗濯物を畳みに来たのだ。籠の中に入れた洗濯物を部屋の中に片付ける前に、アレスと激突してしまった。必然的に彼女の洗濯物は籠の中から飛び出て、あちこちに落ちてしまった。その中には、下着も混ざって……。
「し、失礼しましたぁぁぁっ!」
アレスは顔を真っ赤に染めて、これ以上下着を見ない為に目を瞑りながら、空いていたテラス窓から部屋の中に駆け込んだ。サクラはあまりの恥ずかしさにその場に座り込み、一人項垂れてしまった。
テラス窓の先はリビングだった。部屋の構造自体はセンナの部屋と殆ど変わらないものだったが、少女らしいと言うべきか、ソファには可愛らしいクマの人形がチョコンッと座っていた。他にも、インテリア全体が可愛い動物に模様替えされていた。
「あ、あの。そこのテーブルで休んでいて下さい。今お茶を淹れますから」
「あ、あぁ」
洗濯物を再び籠の中に回収し終えたサクラが、ベランダから中に入りアレスを席に勧めた。口調は何処か緊張を感じさせ怯えている風情が見て取れた。先ほどの出来事も然り、初対面の時も、サクラとはまともな出会い方をして居ない為、彼女がアレスを怖がるのは無理のない話だった。アレスは言われた通りに席に着いた
――現在に至る――
(まさか、また居なくならないよなぁ……)
以前の時も、サクラはお茶を淹れてくると言いダイニングルームに入った後姿を消してしまった。今回もとても良く似たシチュエーションのためアレスは同じことになるのではないかと案じたが、此処は彼女の家の中なら流石にないだろうと思い直したのだった。
「どうぞ、コーヒーです……」
「うげぇ!?」
「ふぇ!? どうかしましたか?」
センナの部屋で起きた事とまったく同じだ。サクラの持っているトレイに乗せられたコーヒーカップを見て、アレスは顔を顰め低く声を上げた。彼の声にビクッと身を震わせたサクラは、表情を見るとなんとなく察することが出来た。
「あの、もしかして……コーヒー嫌いでした?」
「……はい」
「……ぷふっ!」
「あぁ笑ったぁぁぁ!」
アレスがコーヒーを飲めないことを知ると、サクラは小さく肩を震わせて笑ったのだった。アレスが笑われたことに反応すると、彼女は顔を逸らしたが、よほど可笑しかったのか未だ笑い続けている。この時アレスは初めて彼女の笑みを見た。まったく仲良くなれない訳じゃなさそうだと密かに心の中で呟くのだった。
「ではどうぞ。紅茶です」
「ごめんな。わざわざ淹れ直してもらっちゃって」
「いえ、気にしないでください」
再びダイニングルームに入ったサクラは、今度は紅茶を入れてリビングへと戻ってきた。
二人向かいの席同士で腰掛けながら、紅茶を啜った後、アレスの方から本題に入り始めた。
「それで、サクラ……さん。俺が此処に来た要件なんだけど」
「は、はい」
サクラの表情に再び緊張の色が浮かび上がった。
ちなみに、アレスは彼女の名前を直接呼ぶのは今回が初めてだった。見た目はアレスの方が完全に年上なのだが、死者という点をふまえると、サクラの方が年上の可能性が高いのだ。センナやミキの時は流れで呼び捨てになってしまったが、あまり面識もないうえに目の前で緊張した表情でこちらを見ている彼女を呼び捨てにすることが出来なかったのだ。
「ブラドさんの命令で、俺の訓練に一週間付き合って欲しいんだ」
「分かりました」
「早っ!?」
絶対に否定的な反応を取られと思っていたアレスは、サクラの即答の了承に返って声を荒げた。
「え!? 良いの。俺が言うのもなんだけど、サクラさん何も事情知らないでしょ?」
「隊長が決めたのなら、私は従います。それだけですから」
アレスの疑問の言葉に対し、サクラは言葉にまで緊張の感情を乗せて答えてきた。アレスは彼女の態度と同時に、返答にも強い違和感を感じたのだった。
(隊長が決めたらって……)
自分の中に生まれた引っ掛かりを言葉にして吐き出してしまおうかとアレスは思ったが、まだ自分は彼女の事を何も知らないのにこの事を言うのはまずいと考えなおし口を噤んだ。
「と、ところで、私からもアレスさんにお聞きしたいことがあるんですが……」
「ん? なに?」
膝の上に乗せた両手をぎゅっと握りしめ、恐る恐るサクラはアレスに質問をしてきた。
「アレスさんは……『剣聖』、なんですか?」
「っ!……分からない、かな」
サクラの言葉にアレスは一瞬返答に困ってしまった。アレスが剣聖であると信じて、先ほどまでサクラを除く第七部隊皆が協力をしてくれている。しかし、まだアレスは未覚醒者であるが故に、剣聖であるという証拠がないのだった。アレスの身体の中にあった天牙が出てきても尚、彼からはオーラを全く感じ取ることが出来ず、天牙も彼の中に入る前と何も変わり映えすることがなかった。
アレスはいい加減な答えを返すつもりは微塵もなかった。はっきりと断言出来ない以上、『分からない』としか答えようがなかったのだ。
「天牙が出てきても、俺は覚醒出来なかった。だから、俺が覚醒できるのか、そして本当に剣聖の力を受け継いでいるのかを確認するために訓練を受けているんだ」
「……でも、剣聖の力を今一番期待されているのはアレスさんなんですよね?」
「……サクラ?」
心なしか、彼女の口調が少しだけ荒々しく感じられたアレスは、下を向いたままの彼女を覗き込む形で顔を近づけた。すると、
「剣聖候補でもないのに」
「っ!?」
顔を近づけ、耳を澄ましていなければ聞き取れなかっただろう消え入りそうな程とても小さな声でだが、サクラの言葉ははっきりとアレスの耳に届いた。
(剣聖候補? それって……)
以前ミキに教えてもらった時の事をアレスは思い出した。神帝教会全戦士の中で剣聖の可能性を秘めた有力候補、それが『剣聖候補』。第七部隊所属のメルスは、その中で最も有力候補だった。メルスは彼が剣聖の力を秘めているという事に最後まで納得せず、模擬戦まで仕掛けてきた。戦いの結果はメルスに惨敗したが、それでもアレスはメルスと和解することが出来た。
「ま、まさかサクラさん。君も剣聖候補の」
「剣聖は、メルスさんだった筈なのに」
「え? メルス?」
アレスはてっきり、サクラも剣聖候補の一人で、メルスの時と同じように突然自分が現れたことに腹を立てているのかと思った。しかし、サクラは己の感情に一杯一杯なのか、アレスの言葉を遮りながら続けて言葉を発してきた。
「どういうことだ。なんで今メルスが出て来るんだ?」
「だ、だって! メルスさんはいつも剣聖になるために必死に努力してて、そんなあの人を見るのが好きだったのに」
「へ? 好きだった?……好きぃ!?」
「ふぇ!? ふぇぇぇぇぇぇっっ!?」
サクラの言葉があまりにも予想外だったためにアレスは無意識に復唱してしまい、遅れて驚きの意を込めてもう一度声を荒げて言い放った。
その言葉にハッと前を向いたサクラは、呆気に取られたアレスの顔を見て、自分が何を言ってしまったのか思い出したサクラは顔から湯気を噴き出すほど真っ赤に染め、悲鳴を上げながらテーブルに左手を付き体を一気に前へ乗り出し、空いた右手から人差し指と中指だけを真っすぐ前へ突き出した! したがって……。
「イヤァァァァァァァッ!」
「目潰しぃぃぃぃぃぃぃっ!?」
――サクラの目潰しは綺麗に入ったのだった――
読んで頂きありがとうございました。
新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」
と思われる所もあると思います。
感想を見られるのが嫌でしたら、TwitterのDMでも
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遅くなってすみませんでした!
読んで頂いてお分かり頂けると思いますが、今回はいつもより字数が多い為、書くのに時間がかかってしまいました。
本当に申し訳ありませんでした!!!




