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生者と死者の掛け持ち剣聖  作者: ☥周幸来
第三章 トーナメント編
57/64

第五十六話 人間花火

第五十六話になります。

序章のところからココまで読みにくいところがあったと思います。

駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。


絵描きの方募集中です。もし、『この作品の絵を書いても良いよ』という方がいらっしゃいましたら、「感想ページ」か「TwitterのDM」か、「【なろう】のメッセージ機能」にてご一報下さい。

よろしくお願いします。

AM9:55


「あ、あの……これ……」


(つ、詰んだぁぁ! 俺の人生ぇぇ!)


 アレスは今、非常に気まずい状況に直面していた。彼が居るのは女子寮、サクラの部屋のベランダだ! あちこちに洗濯物が散りばめられ、しかも彼は四つん這いの体制になり、その下には両腕を胸の前で組みながら唖然とした表情でこっちを見ているサクラの姿が!

 サクラは小柄な体を震わせ、瞬く間に目に涙を浮かべている。いったいなぜ、アレスが彼女(サクラ)のベランダに居るのか。



―――時を少し遡る―――

AM9:50


「良し、着いたぞアレスゥ」


「着いたぞ……って此処、女子寮じゃないか!」


 アレスは修練場からブラドに強引に裾を掴まれ、此処に着くまでずっと引きずられてきたのだ。

 道中に彼はブラドに、何故サクラと二人で訓練させるのか、理由を何度か尋ねたが、結局はぐらかされるばかりで答えは教えてもらえなかった。

 アレスの心境は、未だ殆ど接点のないサクラといきなり一週間コンビを組めと言われても不安しかなかった。

 抵抗しようにも、ブラドに裾を掴まれたら最後、どんなに足掻こうと全く意味をなさない事を、これまでの経緯から身を以って知っていた。何だかんだでアレスは、何一つ質問に答えて貰う事も出来ないまま、ノンストップで女子寮までたどり着いてしまった。


「あ、しまった」


「?」


 突然ブラドは頭を抱え、いかにも『やってしまった』という表情を浮かべている。いったい何事かとアレスは首を傾げながら見ていると、何も聞かずともブラドの方から教えてくれた。


「女子寮に入るには住民に、女子に開けてもらわなきゃならんのだ」


「……そりゃそうだよね!?」


 女子寮と男子寮が隣り合わせということ自体珍しいと言えるだろう。この上誰でも女子寮の中に入って良いという事になれば女性たちはおちおち安心して寝ることも出来ないだろう。セキュリティー面を万全に備え、ブラドのような隊長クラスであっても、中に入ることは出来ないのだ。


「はぁ……。仕方ない。やるぞアレスゥ!」


「へ? やるって、何を?」


 ブラドは体ごとアレスに振り向くと、その巨体を一気に近づけてきた。それだけではない! ブラドは軽々とアレスの体を持ち上げ、肩に担ぐと女子寮の反対側に回り込んだ。

 いったい何事かとアレスは呆気に取られながらブラドに()()()()()()。言わずもがな。抵抗しても無意味だからだ。

 裏側に着くと、女子寮のベランダが一望出来た。ここでアレスは、ブラドが何をする気なのか、直感で分かってしまった。


「ま、まさかブラドさん!? ベランダをよじ登る気じゃ……」


「馬鹿か! そんなことしてもし見つかったら、姐さん(ビエラ)に何されるか分かったもんじゃねぇぞ!?」


 ブラドが『姐さん』と呼ぶ存在は一人しかアレスは知らない。故にアレスは直ぐに頭の中にイメージが出来てしまった。鞭を軽快に地面で弾きながら、罰をする瞬間を楽しそうに微笑んでいるビエラの姿を……。あまりにリアリティーのある恐怖のイメージに寒気が走り、全身をブルブルと震わせるアレス。


「だからアレス! 俺がお前をサクラの部屋のベランダまで()()()()()! これなら一瞬だから誰にも見つからない。完璧だ!」


「どこがだぁぁぁっ!?」


 空いている手でビシッと親指を突き立てどや顔の笑みを浮かべるブラド。その名案を堂々と語りながらも常識外れの内容にアレスはただただツッコミを入れるばかりだった。


「心配すんなって。一部隊の隊長として、全メンバーの部屋の場所は記憶してる。間違えて知らない人のベランダに入ったら不法侵入だからな」


「いや顔見知りでもアウトだからね!? しかもサクラとはどちらかって言うと初対面に近い」


「いくぞぉ! アレスゥ!」


 アレスの言葉を最後まで聞くこともなく、ブラドは肩に担いでいたアレスの体を両手で持ち直すと、女子寮に背を向けた。


「ま、待って! ほんとにやるの!?」


「痛い思いしたくなかったら出来る限り身体丸めろ! 行くぞ!」


 ブラドは腰を曲げ前傾姿勢になる。アレスの体をまるでボールの様に両手で腹の部分に抱え込み、ゆっくりと膝を曲げることで重心を下に下げる。やり投げの様に走ってぶりを付けるのではなく、腕力のみでベランダまで飛ばすつもりなのだ!

 通常ならば絶対に不可能だ。しかしアレスは知っていた。自身(アレス)とたいして体格が変わらないメルスでも、模擬戦の時に軽々と、何の勢いも付けずに10メートルも飛ばしたのだ。服腰でもはっきり分かる程全身の筋肉を鍛え上げているブラドが投げ飛ばせば、決して不可能とは言い切れなかった。


「サクラにはお前(アレス)が事情を話せ。俺の指示だと言えば断らない筈だ」


「いや、ちょっ!?」


「んじゃ、たぁまやぁぁぁ!」


「人間花火かよぉぉぉぉっ!?」


 掛け声とともにブラドは一気にアレスを空へ投げ飛ばした! やや後ろへ傾くように調整したためにアレスの身体は見事に女子寮へと飛んで行った。ツッコミと悲鳴が合わさり、聞くも哀れな声を高鳴らせながら……。


「あぁぁぁぁぁぁぁっっぐへっ!?」


()()()()()()()


 アレスは空中でもがく訳にもいかず、ただ身体を丸めたままの姿勢で目を瞑り続けた。ものの数秒で彼は()()とぶつかった。

 それだけではない。アレスはどこか聞き覚えのある声が聞こえた気がしたのだ。気付けば、ブラドに投げられた時の妙な浮遊感が消えている。それどころか、丸めていた身体が反射的に両手を伸ばし、手と両膝が床に付いていた。恐る恐る、アレスは瞳を開けると……。



―――現在に至る―――


「ひ、久しぶり」


「き、きゃぁぁぁぁぁっ!?」


 女子寮どころか、隣の男子寮にまで響き渡るような叫び声を、少女は高鳴らせたのだった。


「お、もうサクラに会えたのか。良かった。良かった。ナッハッハッハー!」


 一方、女子寮から聞こえてきた仲間(サクラ)の声に、アレスが無事サクラの部屋に入れたことを確認したブラドは、呑気な笑い声を響かせながら、その場を後にしたのだった。

読んで頂きありがとうございました。

新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」

と思われる所もあると思います。

感想を見られるのが嫌でしたら、TwitterのDMでも

募集していますので、遠慮なくお申し出下さい。


まぁ、終わりましたね。アレスの人生……。

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