第五十五話 突然コンビ
第五十五話になります。
序章のところからココまで読みにくいところがあったと思います。
駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。
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AM9:30
「ぜぇ、ぜぇ、もう勘弁してくれぇ」
「ったく、情けないわねぇ。男でしょ!?」
アレスは今、修練場に設けられているベンチに深く腰掛け、項垂れていた。全身から汗が溢れ、肩で呼吸を行っている。今彼には体を立たせる体力も、ミキの言葉に返答する気力も残ってはいなかった。
「ていうか、今の俺は霊体だろ!? なんで汗なんか」
「魂は感情の塊って前に説明したでしょ。アンタが疲れたという気持ちに身体が共鳴しているのよ。言うなれば、その汗もアンタの魂の一部ってわけ」
「へぇ……じゃぁ、霊体でもトイレでうんk」
「それ以上言ったら、マジで撃ち壊すわよ」
冗談とは思えないミキの言葉に、流石のアレスも口を噤んだ。
約一時間前、修練場にたどり着いたアレスは、様々な機器の説明をブラドとミキ、メルスから教わりながら訓練を始めた。本来は他の部隊も共に使う修練場なのだが、今はたまたま運が良いのか、人っ子一人居なかった。
まず最初に鍛えることになったのは彼の基礎体力だ。センナの話より、アレスは典型的な運動不足により、ドラゴンから逃げている時もすぐに息切れをしていたことをミキ達は知っていた。
それは肉体の『運動神経』や『筋肉』が鈍ってしまっている事が原因なのだが、先ほどミキが説明した通り、今の彼の身体は感情の塊なのだ。
最近運動していなかった事を誰よりも理解しているのは自分自身。正確には、自分が自覚している以上に運動能力が低下している事を魂は理解しているのだ。
霊体は彼の鈍った肉体を精密に再現している。一時間彼は失った基礎体力を取り戻すために現世での事務トレーニングと殆ど変わらぬ訓練をしていた。
スクワットやランニングなどのインターバルトレーニングや座ったり寝転がったりしながら行う体幹トレーニングなど、現世でしている事と何も変わりないものばかりだった。
故にアレスは、もともと知っていたトレーニングだからこそ、疲れる事、厳しいことを頭で理解しているためにここまで激しく疲弊してしまったのだ。
「はい、お疲れ様。頑張ってるね♡」
「ん? おぉセンナ。ありがとう!」
冷たいドリンクを持って来てくれたのは、総隊長の部屋で別れ、今までずっと姿が見えなかったセンナだ。サクラを呼びに行ったはずだが、どこにも彼女の姿が見当たらなかった。
「センナ、サクラは居ないのか?」
「うん。ちょっとね」
笑みを浮かべながら答えるセンナだが、どこか無理をしている。そして自分に何か隠しているのではないかとアレスは思った。
センナやミキ、ブラドとメルスとは上手く溶け込めているとアレス自身密かに自覚していた。
メルスとは、初めは仲良くやっていけるのかと少なからず不安に思っていたのだが、案外話してみると何処か気の合う部分があるのか、今では話すことに全く苦を感じていない。
センナやブラドは、初対面の時から積極的に自分に接してきてくれる。二人とも時には一方的に話を進めてしまう事があるが、普段は話が弾みとても楽しいと思っている。
ミキは毒舌が入り混じっているところがあり、トゲのある話し方にまだ慣れない事もあるが、その中には純粋で素直な気持ちが見え隠れしていることをアレスは知っている。このまま付き合いを続けてゆけば、もっと仲良くなれるだろうと心の中で予感していた。
それに比べて、サクラとは全く話が出来ていないのだ。それどころか、アレスは彼女の顔を見たことさえも一度しかなかった。第七部隊のミーティングルームで初めて彼女と衝撃的な出会いをし、お茶を淹れてくるといってダイニングルームに入ったまま結局戻って来ず、そのまま会えていないのだ。
メルスとの模擬戦の時も、自分の部屋での勉強会の時も姿を現さない事に、アレスは自身が避けられていると薄々勘付いている。
「なぁセンナ。俺、サクラに何かしちゃったのかな?」
「…………」
どれだけ考えても一人では答えが出ないと思ったアレスは、弱々しい声でセンナに尋ねた。
彼女は返す言葉が見当たらずに黙り込んでしまう。沈黙が答えだと感じたアレスの心境はさらに暗くなってしまうが、どこまでも明るい声が二人の暗い雰囲気を照らした。
「ナッハッハッハー! ところでなアレスゥ。今後の方針なんだが」
「方針?」
二人の会話を黙って聞いていたブラドは、唐突に陽気な笑い声をあげ、話題を一気に変えた。
悩みがまだ全く消えていないアレスだが、『自分の方針』という言葉に流石に聞き流す訳にもいかず、ブラドの言葉に耳を傾けた。
「おうよ! 今日は初めてだし色々説明が要るだろうから俺たち皆で来たが、毎回こんな大勢でする必要もないだろ。日に日に交代しながらで十分だ」
「な、なるほど……」
ブラドの言葉にアレスは一応の同意を示した。もともとトレーニング自体、一人の人間に一人のトレーナーが付くのが自然なのだからブラドの言葉は至って当然の事だった。
「それでなアレスゥ! 今週一杯、お前の担当はサクラに任せる!」
「は!?」
先ほどブラド自身が『日に日に』と言ったのに対し、出した指示は『一週間』。完全に矛盾している。あまりに予想外なことにアレスは間の抜けた声で答えてしまった。
さらにセンナも、ブラドの言葉に反応し慌てた口調で止めに入った。
「た、隊長それはいくら何でも」
「隊長命令だ」
センナの言葉に一切耳を貸さず、ブラドは強引に決定を下した。ブラドの後ろの方で話に耳を傾けているミキ達も不安の表情を浮かべながら事の行く末を見守っていた。
「んじゃアレスゥ! サクラにも話を付けなきゃならんから、部屋まで案内してやる。早速行くぞぉ」
「うえぇ!?」
「ナッハッハッハー!」
ブラドはアレスの裾を掴むと引きづる様に修練場を後にしたのだった。
――突然成立したアレスとサクラのコンビ! 果たしてどうなってしまうのか!?――
読んで頂きありがとうございました。
新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」
と思われる所もあると思います。
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裾を掴まれるのがお約束になっているアレス……。




