第五十四話 生まれる絆と一つの亀裂
第五十四話になります。
序章のところからココまで読みにくいところがあったと思います。
駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。
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AM8:10
「なぁ、俺は泊りがけで訓練するんだよな?」
アレスは今、ブラドとメルス、ミキと共に白く長い廊下をたどっている。行先は、昨日メルスと模擬戦を行った修練場だ。修練場は互いの実力を測るために模擬戦も行われるのだが、本来は厳しいトレーニングで更なる実力を付けるための場なのだ。
アレスは家を出る前に、勉強を行うための合宿として母から外泊許可を貰ったのだ。
しかし、いったい何日この神帝教会に泊まるのか、また自分は何処に泊まるのかもまったく聞かされていなかった。
アレスの質問にはブラドが変わらずに前を向きながら悠揚迫らぬ態度で答えた。
「お前の訓練次第としか言いようがないなぁ。一応一週間の外泊許可を頂いているが、早く終わればそれだけ早く帰れるだろう」
「一週間!? よくそんなに許してくれたなぁ……」
泊りがけと言っても、精々二~三泊が常識というものだろう。母の外泊許可は今朝が初対面であるはずの彼らに対し随分と信頼している様相に首を傾げた。
ブラドはその表情を見なくとも、心情を理解し、いつもの彼とは思えない抑揚ない態度でアレスの疑問に答えた。
「お前の母、鈴子さんはひどくお前の事を心配されていた。普段自分は仕事に出ているからお前の面倒を見ることが出来ない。だが、母親の勘って奴なのか、お前が既に勉強を諦めていたことをちゃぁんとご理解されていたんだ。そんなとき、お前の『剣道の時のお友達』という事で俺たちがお前の勉強を手伝うと言ったとき、あの人凄く喜んでいた。俺たちの学歴の事は聞かなかったが、これで息子のやる気が戻ってきてくれるかもしれない。きっとそう思ってんだろう」
(母さん……)
幼い時から母は仕事で外出することが多かったため、アレスは母との思い出が人よりも少なかった。そのまま二十歳まで生活を続けてきたために、今では殆ど寂しさを感じなくなっていた。しかし、唐突の母の優しさを感じアレスは何も言えなくなってしまった。必死に働きながらも自分の事を心配してくれいていた母に、これまで何も考えずにだらけてしまった事への申し訳ない思いと。話すことは少なくとも、自分を支え続け、気にかけてくれていた母に人知れず心の中で感謝の気持ちが、人知れず彼の心の中で交差するのだった。
「アレスよう、剣聖の力を持っている可能性があるお前を今更元の生者にすることは出来ない。だが、貴重なお前の時間を俺たちが奪っちまう事は確かだ。だから、俺たちはお前の訓練とは別に独自でもう一つの目標を掲げる事にした」
「もう一つ?」
ブラドは前へと進む足を止め、隣に体ごと振り向くと、アレスの顔をじっと見つめ真剣な表情で告げた。
「お前を必ず一人前の大人として自立させることだ!」
「っ!」
「まずは名門大学に何としてもお前を進学させる。その後の事も、俺たちはお前への協力は惜しまないつもりだ。それが、せめてものお前への罪滅ぼしなんだ」
「ブラドさん……」
周りを見ると、メルスとミキもアレスの顔をみて真剣な眼差しで頷いていた。彼らもまた悩んでいたのだ。意図したことではないとはいえ、自分たちが天牙を守り切れなかった故に『荒野 優』という生者を巻き込んでしまった。天牙が彼を死者に変えてしまう事も、その彼の身体の中に入ってしまう事も完全に予想外だった。
だが、何千年もの間探し続けた『剣聖』の力を受け継ぐ存在に漸く見つかった以上、彼を立派な戦士に鍛え上げなくてはならない。戦う時だけでは駄目なのだ。常日頃から厳しい訓練を受けておかなければ、返り討ちになってしまう可能性は誰にでも存在する。だからこそブラド達は、訓練の時間の分も『荒野 優』という時間を自分たちの都合で消費させてしまう。
そのことをとても心苦しく感じていた。せめて、彼が生者のうちは存分に、その限られた時間を生き抜けるように支え続けようと皆で決めていたのだった。
「ありがとう……。よろしくお願いします」
アレスはただひたすらに感謝し続けた。頭を大きく下げ自分の中にある大きな感謝の気持ちを、全身で訴え続けるのであった。
――この時、彼らの中ではたしかな絆が生まれたのだった――
(さて、向こうはどうなる事やら……)
アレスの感謝の気持ちを受け取りながら、ブラドの心境は一人の仲間に向けられていた。
―――同時刻―――
「サクラ、いい加減出てきたら?」
「いえ、結構です」
女子寮の一つの部屋の前、サクラを迎えに来たセンナは、いつまでも玄関から出てこないサクラに必死に呼びかけていたのだった。
「どうしてそんなにアレスと一緒に居たくないの? 今後の方針についても、貴方だけ話し合いに参加しないし」
「センナさん。アレスさんって剣聖の力を持っているんですよね……」
「え?」
扉の向こうから聞こえてきた彼女の声は、普段よりもずっと暗い、まるで泣く事を我慢しているようだとセンナは感じた。彼女が今どのような心境なのかセンナには分からないが、質問だけははっきりと答えた。
「まだ可能性の段階だけど、実際に『天牙』は彼を救った。次の主として彼を認めていることは間違いないと、私は思っているわ」
「……剣聖候補でもなかったのに、ですか?」
「……サクラ?」
扉から聞こえてくる声に込められた感情が変わったようにセンナは感じた。サクラから返ってきた言葉の意味を理解するよりも、どうして彼女から怒りの籠った声が聞こえてくるのか、センナは気がかりで仕方なかった。
「サクラ、大丈夫?」
「……」
(アレスさん。メルスさんの思いを踏みにじった貴方だけは……絶対に許さない!)
――一致団結したかのように思えた第七部隊の絆に、一つの亀裂が入ったのだった――
読んで頂きありがとうございました。
新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」
と思われる所もあると思います。
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生者としての時間は皆等しく限られていますからね。




