第五十三話 雰囲気が変わるとき
第五十三話になります。
序章のところからココまで読みにくいところがあったと思います。
駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。
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AM8:00
「あぁ、痛てぇぇ……」
「姐さん。なんで俺まで……」
「姐さんは止めろ。部下の失態は上司の責任だ馬鹿者」
アレスとブラドはビエラの罰を受け、床にのたうち回りながら激しい痛みを全身で表現していた。
厳密にいえば入室の挨拶を噛んだアレスの失敗なのだが、彼の面倒は第七部隊が請け負うことになっているので、隊長であるブラドも等しく罰を受けさせられたのだ。
総隊長の部屋にはビエラの他にも、センナとミキ。メルスとルドウの姿があった。ビエラの『鞭打ち』による痛みに苦しむ姿にセンナは引き攣った笑みを浮かべ、ミキは眉間に手を当てながら呆れる様を隠しもせずにため息を吐き、メルスは眼を瞑り無反応。ルドウはさも面白そうに顎髭を撫でながら見守っていた。
「さぁ。もういい加減立て! 話が進まん」
「いや、まだ痛みが」
「立て!」
ヒュッビシッ!
「「ハイ!」」
ビエラが力強く鞭を床で弾かせる。その痛みを体に叩き込まれた二人は飛び跳ねながら起き上がった。
場が整った事を見計らったタイミングでルドウが咳ばらいをして話始める。
「さて、もうこの面子なら前置きは必要ないじゃろ。早速本題に入る」
ルドウの言葉で全員の顔が引き締まる。これから語られる内容にはこの場に居る者達だけではない。神帝教会及び六道に直接関わるほどの重要な話だからだ。
「小僧の身体から出てきたという『黒刀』。調べたんじゃが……やっぱり何も出なかった」
「出なかった?」
アレスにはルドウの言葉の意味が分からなかった。ブラドの話では彼が黒刀について調べたことは、現在も『天牙』としての機能が残っているのか? それとも『別の何か』に変わってしまったのか? そのどちらかをはっきりさせることだった筈だ。
『出なかった』というのはどういう事だろうか? アレスは疑心を込めて彼の言葉を復唱した。
ルドウはその気持ちを察し、アレスの言葉に小さく頷くと説明を始める。
「小僧は知らぬだろうから、基本的なことから説明してゆくぞ。まず、覚醒者の大半は己に最も合う武器を所持しておる。武器は覚醒者の強い意志の結晶と言ってもいい代物なんじゃ」
「強い意志……」
覚醒者の能力は、戦闘に備えるためと言っても間違いではなかった。その殆どは、六道の世界にて悪事を行い、世界を乱すものに裁きを与えるための物だった筈だった。だが、四千年前の悲劇の後に突然現れた『レース・ノワレ』。彼らもまた、特殊な能力を使い六道の世界を幾度となく襲撃してきた。伝説の時を含め、彼らに壊された戦士は数えきれない。今の神帝教会に所属する戦士たちの能力には、六道の世界の管理に加えもう一つ、レース・ノワレと戦うという強い意思の表れも意味している。
「言うなれば武器は闘志という感情そのもの。武器はもともとは魂の一部なんじゃ。じゃから神帝教会の戦士は普段は武器を魂に納めておる」
「こんな風にね」
ルドウの言葉をより分かりやすく証明するために、センナは右腕を持ち上げ、空っぽの手を拡げた。何も握られていない掌が水色に輝き、光は一本の棒状に形を変えてゆく。瞬きをする暇もない、あっという間にセンナが戦いの最中に使ってる杖が光の中から姿を現した。
「そうか、だからセンナはあの時」
優はセンナの家に初めて招いて貰った時の事を思い出した。あの時、優を案内しながら帰宅するセンナの手には何も握られておらず、杖を忘れたのかと思い、アレスは慌てて聞いたのだ。
『センナ、杖を持っていないけど良いの?』
『えっ?……あぁ、私の杖の事ね。大丈夫よ、ちゃんと持ってるから』
『……持ってるって……』(手ぶらじゃん!)
その言葉の意味が漸く分かった。彼女はあの時既に魂の中に武器を収めていたのだ。センナは、驚きの光景に呆気に取られてしまったアレスの顔に楽しそうに微笑むと再び杖を光の中に隠した。光はみるみると縮んでいき、センナの掌に収まるサイズにまで小さくなるとそのまま消えてしまった。彼女の身体の中に入ったのだ。よくよく見てみると、先ほどアレスとブラドを苦しめたビエラの鞭も姿が消えていた。
「見ての通りじゃ。もう一度言うが武器は魂の一部。じゃから武器からは微量じゃが、常に持ち主と同じオーラが検出される筈なんじゃ。『天牙』のもともとの持ち主は『剣聖』。じゃが、四千年前から幾ら調べても天牙からは一度もオーラが検出されることはなかった。今回小僧を救った時に、『銀色の光』を天牙が放っていたと聞いたが、その正体も一切分からん」
「「「「「…………」」」」」
誰も言葉を発することが出来なかった。ルドウの手を以てしても、天牙の秘密は何一つ判明すること叶わなかったのだ。神帝教会にとっては、『剣聖』の力が復活することこそ『希望』であると期待している。その期待が報われるのか否か。その答えすらも分からなかった。暗い心情になるのも無理はない。だが。
「行くぞ。アレス」
「え!?」
「何をボケっとしている。訓練を始めると言っているんだ」
メルスはアレスを先導するかのように扉の前まで歩き出す。他の皆、彼の行動が理解できずにただただその様を見つめるのみだったが、彼の次の言葉が一同の心を動かす!
「希望はまだある。分からないという事は、可能性は潰えていないという事だ。ならばお前が訓練を受けて答えを出すしかない。もとよりそのつもりで来たのだろう? 『エキストラ戦士』!」
「っ!……おう!」
メルスの言葉が一気にアレスに活力を与え、彼は力強く答えた。他のみんなの顔にも笑みが戻り、部屋の雰囲気が明るいものへと変わった。
「ナッハッハッハー! そういう事なら俺も力を貸すぞぉ。おいセンナ! サクラも呼んで来い。第七部隊全員でコイツを扱きまくりだぁぁ!」
「ハイ♡ 了解です!」
「いや、流石にそれは死ぬんじゃ」
「心配ないでしょ。もう死んでるんだから」
「……」
「ナッハッハッハー!」
ブラドの言葉に流石に後退るアレスだが、悲鳴の意を込めた言葉は此処では何の説得力も持たず、ミキにツッコミをされて沈んでしまった。
ガックリと項垂れるアレスの肩をブラドが抱きながら扉の外へと歩き出す。センナもミキが微笑みながら、メルスもうっすらと口端を上げて横並びに歩む。
その背中を暖かい眼差しで見つめるルドウとビエラ。
「なんじゃ。もうすっかり馴染んでおるのう」
「あぁ、あの第七部隊に入れたのは正解だったようだ。……それはそうと」
ビエラの手にはいつの間にかまたあの鞭が握られている。
「部屋を退出するときも『失礼します』を忘れるなぁぁぁ!」
「「「「エェェェェェッ!?」」」」
ヒュッビシッ!
――明るい雰囲気からさらに一変、恐怖の罰が第七部隊を襲ったのだった――
読んで頂きありがとうございました。
新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」
と思われる所もあると思います。
感想を見られるのが嫌でしたら、TwitterのDMでも
募集していますので、遠慮なくお申し出下さい。
挨拶を怠ってはいけませんよね(汗)。




